宝塚大劇場月組公演『今夜、ロマンス劇場で』・『FULL SWING!』
樽井美帆です
月組公演
ミュージカル・キネマ『今夜、ロマンス劇場で』
ジャズ・オマージュ『FULL SWING!』
が、宝塚大劇場にて2022年最初の宝塚大劇場公演を飾る公演として、
1月1日(土)から1月31日(月)まで上演され、
東京宝塚劇場にて2月25日(金)から3月27日(日)まで上演されました。
月城かなとさん・海乃美月さんの新トップコンビ宝塚大劇場お披露目公演、
そして月組101年目のスタートとなる公演でした。
ミュージカル・キネマ『今夜、ロマンス劇場で』
脚本・演出/小柳 奈穂子
2018年に公開され、大ヒットを記録した映画「今夜、ロマンス劇場で」。
ヒロインの美雪を綾瀬はるかさんが、映画監督を夢見る青年の健司を坂口健太郎さんが演じました。
映画愛に溢れる世界観と映像美、ファンタジックなストーリーで多くの観客の心を捉えた名作が、
宝塚歌劇で舞台化されました。
映画監督を目指し助監督として働く健司と、彼が密かに想いを寄せていた
古いモノクロ映画のヒロイン美雪。
ロマンチックで切ない恋物語です。
脚本・演出小柳 奈穂子さんは、
『フットルース』・『Shall we ダンス?』・『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
『オーム・シャンティ・オーム -恋する輪廻-』・『幕末太陽傳』と、
これまでにも映画が原作の作品を手掛けてこられました。
『今夜、ロマンス劇場で』が小柳さんの演出により、宝塚の舞台でどのように繰り広げられるのか、
上演前から期待が高まりました。
開演前に緞帳が上がり、『今夜、ロマンス劇場で』の文字がモノクロで浮かび上がります。
舞台の左側には、まだシャッターが下りているチケット売り場の窓口、右側にはドアが一つ。
これから映画の世界に入っていくんだなと胸が高鳴ります。
お芝居のスタートは、患者や看護師たちが行き交う病院の廊下。
看護師の吉川天音(天紫珠李さん)が、年老いた男性患者から借りた映画の脚本を手にしています。
その入院患者のもとには若い女性がよく訪ねてくるが、彼が転んでも手を貸さず
黙って見ているだけだという。
年老いた男性患者が書いている脚本のタイトルは、『今夜、ロマンス劇場で』。
看護師の吉川天音は脚本を読み始めます。
そこへオーケストラのチューニングの音が聞こえてきて、
吉川天音が読む物語に合わせてモノクロの映画が映し出されます。
映画の世界の舞踏会が、実際舞台の上で繰り広げられていきます。
映像から舞台への切り替えにワクワクしました。
トップスター月城なかとさんが演じたのは牧野健司。
映画会社の京映で助監督として働く真面目な映画青年。
馴染みの映画館・ロマンス劇場で見つけたモノクロ映画のお姫様・美雪に恋をしています。
月城かなとさんの新人公演初主演は、2013年の雪組公演『Shall we ダンス?』。
周防正行監督の映画『Shall we ダンス?』が原作です。
脚本・演出は、小柳奈穂子さんでした。
ご縁を感じる宝塚大劇場トップお披露目公演ですね。
月城かなとさんが月組のトップスターとなり、注目の初登場は、
とてもさりげない登場の仕方でした。
キャラが立っていない役なのにかっこいい💗
受け身なのにかっこいい💕
お芝居用の張った声ではなく、ボソッと話す声と話し方がステキ💖
普通の会話がかっこいい💛
縦えくぼが可愛いふんわり笑顔。
その笑顔は、切なくも見え、哀愁も漂わせます。
月城かなとさんのお芝居の素晴らしさをあらためて感じました。
年老いた健司の白髪とお髭姿も、とてもステキでした✨
健司の部屋にもこだわりが詰まっていましたね。
1964年の日本が舞台ということで、電化製品や懐かしいペナントが。
そして、壁のポスターはどこかで見たことがある楽しいものでした。
トップ娘役海乃美月さんが演じたのは、古いモノクロ映画『お転婆姫と三獣士』のヒロイン美雪。
スクリーンの中から見える色のついた世界に行ってみたいという思いから、
現実世界に飛び出してきました。
常に上から目線の命令口調のしゃべり方。
しもべとして振り回される健司が、とてもほほえましかったです。
色のついた世界に新鮮に反応する美雪。
海乃美月さんの生き生きとした表情が魅力的でした。
大勢を相手に立ち回りをしたり、勇ましい姿の海乃美月さんも新鮮。
退屈だと伝えるために、健司を傘でチョンチョンと突く姿はとても可愛かったです。
色彩に満ちた世界での新たな発見・感動に対する、美雪のうれしそうな顔や心の動きから、
私たちは美しい物に囲まれた幸せな日常を過ごしているということに感謝の気持ちを持ちました。
美雪のオシャレな衣装の着こなしもステキな海乃美月さんでした。
海乃美月さんの前髪も新鮮でお似合いでしたね。
月組トップコンビが登場されると劇場の空気があたたかくなったように感じました。
お二人の歌は情感たっぷりでしたね。
美雪が暮らしていた世界からスクリーンの外の世界に行くにあたっての掟。
それは、人に触れることができないということ。
そのため、二人はハンカチを通して手をつなぎます。
切なくて胸がいっぱいになりました。
鳳月杏さんは、大人気映画『ハンサムガイ』シリーズの主演を務める京映の看板スター、
俊藤龍之介を演じられました。
ナルシストで超ポジティブな性格!
月城かなとさんとは正反対!
鳳月杏さんは派手な登場でした✨
スーツのボタンも豪華、腕時計は金時計✨
出てくるだけで大物感があり、一挙手一投足が面白い愛すべき存在。
座る時は、毎回長い足を見せつけるわざとらしい座り方がカッコイイ💓
健司のミスで俊藤の頭に金ダライが落ちてしまいますが、俊道は怒らない。
心の広い人物です。
『怪奇!妖怪とハンサムガイ』という映画の衣装は、真っ白で大きなフリフリの襟が付いている
王子様のような衣装で、足元は白いスターブーツ。
よく見ると首にはニンニクの首飾り!
左腕には悪霊退散の文字、右腕にはかわいいアマビエちゃんが付いていました。
いつも前向きで広い心を持つ、さすがスター⭐
心に響く言葉を健司にいくつもかけるのですが、それは私たちにもためになる言葉でした。
「男が簡単に下を向くな。男の視線は常に未来。下を向いていたら今しか見えないぜ!」
鳳月杏さんの俊藤龍之介、最高でした⭐
公演中の1月11日に、5月27日付で星組へ組替えが発表された暁千星さん。
この公演が月組生として最後の大劇場公演となりました。
暁千星さんが演じたのは大蛇丸。
美雪が住む世界の隣国の王子で、美雪を手に入れたいと狙っています。
銀髪サラサラストレートヘア。
口紅も黒っぽく、一見悪人ぽいのですがとてもかわいい純粋な人物。
健司の部屋の押し入れからカッコよく登場!
手の指の動きでヌルヌルネチネチを表現。
何を言っても何をしてもなぜか面白くて、愛おしい大蛇丸でした。
雪組から月組へ組替えとなり、初の月組公演出演となった彩みちるさん。
京映の社長令嬢・成瀬塔子を演じられました。
容姿端麗なのですが、恋愛には奥手な性格。
映画監督を目指す健司のことを心から応援し、密かに恋心を抱いている健気な人物。
ワンピースやジャケット、ヘアバンド姿がとてもかわいくキュートで清楚なお嬢様。
でも芯の強さは感じました。
彩みちるさんが舞台に登場されると、明るく清らかな空気が漂っていました。
そして、今回私が注目したのは愛すべきお付きのみなさんです。
美雪のお付きは三獣士。
大きなしっぽが可愛いたぬきの狸吉・蓮つかささん。
虎の虎右衛門・英かおとさん。
寅年幕開けの公演で福の神にも見えましたし、宝塚ファミリーランドにいた
ホワイトタイガーを思い出し懐かしい気持ちになりました。
鳩の鳩三郎・柊木絢斗さん。
脚本家の怠慢によりセリフがないため、すべての感情を見事にクルックーだけで
表現する愛くるしい鳩三郎でした。
お姫様をとにかく心配している三獣士なのでした。
大蛇丸にも従者が二人。
大蛇丸に心酔している雨霧・天紫珠李さんと狭霧・礼華はるさんです。
すごいダンスとポーズを真顔で決めていましたね。
俊藤龍之介のお付きは、まさしくスターの付き人を絵に描いたような三人。
馬場・蘭尚樹さん、猪倉・彩音星凪さん、丑太郎・彩路ゆりかさんです。
深々と頭を下げたり、椅子を運んだり、うちわであおいだり、灰皿を持ったり、傘をさしたり。
気の利く掛け声をかけたり、テンションの上がる言葉をかけたり。
俊藤龍之介をキラキラの憧れの眼差しで見つめ『勉強になります!』。
俊藤龍之介のことが大好きな三人でした。
ラストシーンでは、幕開きに映し出されたモノクロ映画が流れます。
スクリーンが上がると、なんと映画と同じシーンが鮮やかなカラーで舞台に再現されているのです!
その重なり具合に心がパッーと明るくなり、幸せなマジックにかかったような感動を覚えました。
モノクロの世界に生きていた人たちに色がついてカラフルになっています。
美雪がいたモノクロの世界の人たちは、衣装がモノクロでしたが、
美雪のじいや・春海ゆうさんのネクタイは青色に。
ばあや・夏月都さんのブラウスのリボンはピンクに。
色が付いたことをうれしそうにちょっと恥ずかしそうにされていて、
とても微笑ましかったです。
三獣士の狸吉は茶色に、虎右衛門は黄色に、そして鳩三郎は足がピンク色に!
緞帳が下りきる時まで姿勢をかがめて手を振る可愛い三獣士でした。
大蛇丸は首飾りが金色になって誇らし気でしたね✨
みんなそれぞれ一生懸命に一途に生きていること、そして当たり前の幸せを再確認することができ、
あたたかい気持ちで笑顔で見終えることができた、新年のはじめに心が前向きになる舞台でした。
ジャズ・オマージュ『FULL SWING!』
作・演出/三木 章雄
心躍る音楽ジャズで綴るショー。
衣装の色味が大人な雰囲気の落ち着いた色合いでゴージャスでした。
月城かなとさんは、帽子をかぶっての登場が多かったのですが、
毎回帽子の取り方が違うので、それもカッコよくて見どころの一つでした。
ザ・ショーという雰囲気のセットにもワクワクしました。
リズミカルなシンバルの音に合わせて音楽が徐々に盛り上がり、
月をイメージした赤いリングの中に登場した月城かなとさん。
ゴールドに輝くトレンチコートに黒のソフト帽姿です。
月城かなとさんのアカペラの歌声でショーがスタート。
月城かなとさんの「フッ」という掛け声で、同じくゴールドのトレンチコートにソフト帽姿の
鳳月杏さん・暁千星さん・風間柚乃さんが加わって歌います。
シャンパンゴールドのまばゆい衣装の月組のみなさんが加わり、テンポの速い主題歌が歌われました。
風間柚乃さん・暁千星さん・鳳月杏さんの銀橋での主題歌歌い継ぎでは、
「フルスイング」という歌詞の歌い方に、みなさんの個性があふれたように感じました。
トップコンビでの大人なムード漂うデュエットダンス。
海乃美月さんはショーでも前髪がキュート、頭の羽根飾りもステキでした。
雰囲気が変わって、黒と赤の世界『No Rain ,No Rainbow』
暗黒の太陽がギラつく乾ききった世界、砂漠。
青い衣装の暁千星さんを中心とした、素晴らしい跳躍が繰り返される躍動感あふれるダンス。
5分間、歌なし踊りのみの場面。
エネルギーを出し続けるダンスにくぎ付けになりました。
鳳月杏さんを中心とした『Just a Gigolo』
晴音アキさんをリフトした後の鳳月杏さんのいたわるような優しいお顔。
そっとほほをなでる仕草がカッコよかったです。
キュートでダイナミックな晴音アキさんダンスもステキでした。
デニム調のコート姿の月城かなとさんのせり上がりから始まる『Le Café~シャンゴに捧ぐ~』
この場面の帽子を脱ぐ時の月城かなとさんが特にカッコよかったです💖
お芝居を見ているかのようなステキな場面。
活気あふれるダンスが繰り広げられます。
海乃美月さんの鮮やかなグリーンのタイトな衣装もステキでしたね。
トップコンビを中心に様々なカップルが踊るダンスに魅了されました。
続いて、JAZZの名曲がメドレーで歌い継がれます。
メドレーの最後は、月城かなとさんがシナトラに扮してマイウェイを。
深い青のキラキラしたスーツに帽子、白いマフラーをかけた姿で銀橋を渡ります。
ポケットに手を入れた姿がかっこいい💗
舞台では海乃美月さんが踊ります。
銀橋と舞台から響き渡るでマイウェイの合唱は、感動的な歌声でした。
きらめく噴水のセットが印象的だった『ミッドナイトイン巴里』
薄暗い舞台に灯る街頭の下に、白のストライプスーツのモーリス月城かなとさん。
1950年代のパリ、コンコルド広場で繰り広げられる映画のように美しい世界でした。
海乃美月さんの悪女っぷりも魅力的で、赤と黒のタイトな衣装や
洗練されたヘアスタイル、目と口元の表情のバランスが美しかったです。
月にちなんだ名曲が歌い継がれる『センテニアル・ムーン』
衣装に黄色が必ず使われていました。
彩みちるさんの黄色いドレス姿、とてもフレッシュでした。
黄色の衣装の暁さんがクルクル回転し見事なダンスと歌を披露しラインダンスへ。
帽子に猫の耳とお髭がデザインされており、かわいいシッポも!
シッポをクルクル回す振付が可愛かったですね。
月のリングが青く輝き、青い輝く大階段に黒の変わり燕尾の月城かなとさん。
赤と黒のドレスの娘役に囲まれて、ラテンのリズムで踊ります。
娘役さんと入れ替わりに男役さんが黒の変わり燕尾で大階段を下りてくると、
月と大階段は赤く輝き、とても熱く力強い群舞が繰り広げられました。
そして、華麗な3組のデュエットダンス。
男役は、月城かなとさん・鳳月杏さん・暁千星さん、
娘役は、海乃美月さん・彩みちるさん・天紫珠李さんです。
暁千星さんは、彩みちるさんに続き海乃美月さんの二人を連続で優雅に美しくリフトされていました!
舞台の月は最後は黄色に輝いていました。
大階段が七色に輝き、風間柚乃さん・白河りりさん・きよら羽龍さん三人の歌から
パレードがスタート。
シャンパンゴールドの衣装でのパレードです。
ごあいさつの時、シャンシャンのリボンをクルクルふりふりする振付が特徴的でしたね!
大劇場トップお披露目公演で月城かなとさんが背負われた羽根には黄色が使われていました。
月組新トップスターの誕生を、背中の羽根もあたたかくお祝いしているようでした🌙