梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 雪組公演 ミュージカル『心中・恋の大和路』

宮村裕美です

 

現在、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティでは

雪組公演 ミュージカル『心中・恋の大和路』が上演中です。

 

主演を務めるのは、和希そらさん。

 

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脚本は、菅沼潤さん。演出は、谷正純さん。

 

和希さんは、2018年の宙組公演

『ハッスル メイツ!』にて

初の宝塚バウホール公演主演を務め、

昨年2021年には、宙組公演『夢千鳥』にて

2度目の宝塚バウホール公演主演を務められました。

 

今回の『心中・恋の大和路』は、

和希さんにとって初の東上作品となります。

7月28日(木)までは梅田芸術劇場

シアター・ドラマシティにて公演を行い

8月3日(水)から8月9日(火)までは、

日本青年館にて公演が行われます。

 

江戸時代に浄瑠璃や歌舞伎の作者であった

近松門左衛門の代表的な世話物の一つである

「冥途の飛脚」をミュージカル化したのが、

『心中・恋の大和路』

 

世話物というのは、

浄瑠璃や歌舞伎などで江戸時代の

主に町人社会のできごとや人物を

取材して作られた作品です。

 

宝塚歌劇では、1979年に初演が上演され

なんと今回で6度目の再演となります。

前回の再演は、壮一帆さん率いる雪組で

2014年に梅田芸術劇場シアター・ドラマシティと日本青年館にて上演されました。

 

物語の主人公は、飛脚問屋

亀屋の養子で若旦那の忠兵衛。

 

忠兵衛は、新町の遊郭

槌屋に通っており、そこで働いている

遊女の梅川とは互いに惹かれあっている恋仲です。

 

梅川を身請けしたいと思いつつも

それほどの大金を用意できないため、悩む忠兵衛。

ある時、梅川を身請けしたいという客が現れ、

すでに手付金も納めてしまったことを知ります。

心から忠兵衛を想っている梅川は、

忠兵衛と一緒になれないならこの場で死ぬ!と、

カミソリを手にし自分に刃を向けます。

 

そんな健気な梅川の姿を見て、忠兵衛は

一緒になりたいとより強く想ってしまいます。

そして、友人である八右衛門の

お金に手を付けてしまうのですが、

事情を知った八右衛門は、

お金を返すのはいつでもいいと忠兵衛を許します。

 

しかし、これ以上

忠兵衛が道を踏みはずさないように

と思う八右衛門は、槌屋へ行き

わざと忠兵衛や梅川に聞こえるような声で

梅川の手付金として納められたものは、

元は自分のお金だと話します。

 

この言葉によって

これまで抑えていたものが弾けてしまい

忠兵衛は他の客のお金に手を付け、

ついには封印を切ってしまいます。

 

八右衛門や与平、梅川が忠兵衛の手や腕をつかみ

必死に抵抗をするも、

歯止めが利かなくなった忠兵衛は

次から次へと封印を切っていきます。

 

この時の和希さんの忠兵衛の表情は、

梅川を手に入れられるという気持ちや

もう後には戻れないという

様々な複雑な気持ちを抱えており

迫力満点の一幕ラストは圧巻でした。

 

 

和希そらさん演じます、亀屋の若旦那 忠兵衛。

亀屋で働く女中のおまんに、

器量が上がってますますいい女になった!

と褒めつつ、本当は朝に帰ってきたのですが

夜中に帰ったことにしてくれと頼む姿は、

和希さんの本来持っている愛嬌と相まって

だらしないはずなのに、見ているこちらも

仕方ないかという気持ちに自然となってしまいます。

 

また、与平がかもん太夫を想う気持ちを知り、

それだけ想っているなら一度会おうと

槌屋に連れて行ってあげるのですが、

与平から太夫の話を聞いた際の

誰よりも嬉しそうで無邪気な姿には、

忠兵衛のいい人であり

可愛げのあるところがよく表れています。

 

この太夫の話を与平から聞く前には、

実は与平が「このお金が

あれば会うことが出来るのに…」と、

店のお金に手を付けそうになるところを見つける忠兵衛。

 

与平に声を掛ける際も、

真正面から咎めるのではなく なんとなく

そんな雰囲気を感じ取ってという風に、

「お金があればどんな願いでも叶えられる。

だが、その小判には封印がしてある。

他人のものや。過ちであれ、その封印を切れば

お仕置きにおうて命も終わりや」と、優しく説きます。

 

そして、その思いは誰しも胸にあっても

実際に行動には移せないものだと話すのですが、

このやりとりがあるからこそ、

忠兵衛が封印を切ってしまう場面の重さがよく伝わりますよね。

 

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新町の遊郭、槌屋で働く

遊女の梅川を演じるのは、夢白あやさん。

遊女なので、仕草や表情

佇まいはもちろん色っぽいのですが

彼女は擦れていたり

こじらせているような雰囲気が全くなく

ただひたすらに純粋な心を持っています。

そして、そのピュアな部分が声や言動によく表れています。

 

あんなにも真っ直ぐに自分を見つめて

愛してくれる可愛い存在を

忠兵衛が愛おしく思うのも納得ですよね。

 

遊女なので、これまでそんなに長い距離を

歩いたことはないはずと思うのですが、

二人で逃げる時も、大変なはずなのに

辛そうな姿を全く見せず、

気遣ってくれる忠兵衛へ向ける表情や声は、

大好きだというまっすぐな愛情が自然と伝わってきます。

 

そして、取り繕うことなく全力で好きの気持ちを

表して一緒にいてくれるからこそ、

忠兵衛も同じように

深く大きな愛情で包み込めるのだろうなと感じます。

 

夢白さん梅川が好きの気持ちを

ありのままに表すのは、忠兵衛だけではありません。

同じ槌屋で働く花魁、かもん太夫を慕うその姿も

好きに溢れてとっても可愛らしかったです。

 

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身請け先が決まり、笑顔で送り出さなければと

分かってはいるものの、寂しくて

ただただ一人でお酒を飲みすぎてしまう梅川。

 

吹っ切れて、一緒に踊りましょうと、

かもん太夫と二人で踊るのですが

その時の嬉しそうな表情からは、

どれだけ彼女を慕っていたかというのが

表情一つでよく分かります。

 

そして、かもん太夫もまた

梅川のことを可愛く思うからこそ

忠兵衛との恋を諦めることはできないの?

と、優しく問いかけます。

 

人生の幸せは、目の前の恋だけではないと言い、

自分が身請け先に行くことを決めたのも

遠い先の幸せを考えてのことなのだと

話してくれるのですが、この話が心に染みます。

 

最後に槌屋を出ていくときには、

大門をくぐり抜けると先ほどまでとは

歩き方がすっと変わり、まとう雰囲気はもちろん

町娘へと切り替わるところからも、

ただ美しいだけではなくて

知性に溢れた素敵な人柄というのが一瞬で分かります。

 

これは、かもん太夫を演じている

妃華ゆきのさんの魅力あってこそだと、

その演技力・娘役力に心を奪われました。

 

心中②

 

忠兵衛の友人である

丹波屋八右衛門を演じるのは、凪七瑠海さん。

物語の最初から最後まで忠兵衛をどこまでも思う

とてもいい人で、その優しさに胸が何度も締め付けられます。

 

特に、最後に宿衆の皆さんに

忠兵衛と梅川の居場所がばれてしまい

追い詰められたシーンでは、もうこれ以上

逃げられないことを分かりつつも、

煎り豆と路銀を渡して二人に逃げるよう言います。

 

そして、二人が逃げた後は

宿衆の皆さんには

もちろん詰め寄られるのですが、

こんな雪山では自ら探しに行かなくても

逃げきることはできないという風に伝え、

二人を追いかけるのはやめてほしいと

全力で止める姿、この姿にはグッと来てしまいますよね。

 

また、最後に雪山をバックに歌う

「この世にただひとつ」

忠兵衛を想う八右衛門の心情が歌声に乗り

とても素敵な歌声でした。

 

 

2幕では、少しずつやつれ

心中へと一歩ずつ近づいていく

和希さん忠兵衛と夢白さん梅川の姿が

切ないのですが、ただ切なくて

悲しいだけではありません。

 

互いに想い合って声を掛ける姿や、

藤井寺に付いたら草餅でも食べようかと

話すやりとりなど、

幸せな空気がそこには溢れていました。

 

梅川が「あんたとこうしていると

ずっとずっとこの世で暮らしたくなります」

と言うのに対して、忠兵衛は

「当たり前や。

生きるために歩いてるんや」と言い、

二人して笑いあう姿は、

心中に向かっているのではなく

二人にとっては生きるために

歩んでいる瞬間だということがよくわかります。

 

そして、

だからこそ最後のその時まで二人で歩み、

どんな時も一緒にいたいという強い愛を改めて感じます。

 

雪が舞う中、息絶える最後の最後まで

ずっと梅川を愛おしそうに

見つめ続ける和希さん忠兵衛からは、

それだけ彼女のことを

深く愛していたことがとても伝わってきます。

 

また、もうほとんど気力もないにもかかわらず

最後まで二人とも互いを想って

目を合わせる姿からは、

周りから見たら不幸かもしれませんが

二人にとっては想い合う人と最後まで過ごし、

命を落とすときも一緒というこの選択肢が

幸せなのかもしれないと感じさせるほど、

二人の想い合う気持ちが手に取るように感じられました。

 

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最近の宝塚の公演では、大劇場ではなく

別箱でもフィナーレがある公演が

比較的多いと思いますが、この公演は

これまでの再演と同様フィナーレはありません。

 

最後に雪山の中で息絶えた忠兵衛と梅川の二人、

和希そらさんと夢白あやさんお二人だけが、

舞台前方に出てこられ、お辞儀をするご挨拶のみです。

そのため、見終わった後の余韻や世界観が、

観劇後も強く残る作品だと感じました。

 

 

梅田芸術劇場シアター・ドラマシティでの

千秋楽である7月28日(木)15:30公演は

タカラヅカ・オン・デマンドにてライブ配信がおこなわれます。

 

販売期間は、7月28日(木)の16:00まで。

詳しくは宝塚歌劇公式ホームページをご確認ください。