宝塚大劇場月組公演 ミュージカル『グレート・ギャツビー』
樽井美帆です
月組公演ミュージカル『グレート・ギャツビー』が、
宝塚大劇場にて7月16日(土) から8月22日(月)まで上演されましたが、
公演関係者から新型コロナウイルスの感染が確認されたため、
7月16日から21日、7月29日から8月18日の公演と新人公演が中止となりました。
東京宝塚劇場では、9月10日(土) から10月9日(日)まで上演されました。
ミュージカル『グレート・ギャツビー』
-F・スコット・フィッツジェラルド作“The Great Gatsby”より-
脚本・演出/小池 修一郎
「グレート・ギャツビー」は、20世紀米国文学を代表するスコット・フィッツジェラルドの同名小説が原作。
1991年、雪組公演『華麗なるギャツビー』として世界初のミュージカル化に成功。
2008年には月組が日生劇場で再演し好評を博しました。
今回は宝塚歌劇として3度目の上演となりました。
舞台は、1920年代のアメリカ。
大邸宅に住む孤独な成功者ジェイ・ギャツビーは、かつての恋人デイジー・ブキャナンへの思いを捨てきれず変わらぬ思いを寄せ続ける。
デイジーの住む屋敷の対岸に建てた家で、夜ごとパーティーを開くギャツビー。
ある日、ギャツビーの屋敷の隣に越してきたデイジーのいとこニックの橋渡しでデイジーと再会。
2人の間に愛がよみがえりますが・・・
開演5分前、『THE GREAT GATSBY』の文字が舞台に輝きます。
とてもおしゃれなフォントでした。
サックスの優しくも色っぽい音色で公演はスタート。
ギャツビー邸では華やかなパーティーが毎晩開かれていますが、誰もギャツビーの姿を見たことがないと話しています。
そこに「私がギャツビーです。」と月城かなとさん演じるギャツビーが黒燕尾姿で登場。
話し方にとても品があります。
『グレート・ギャツビー』といえば、名曲「朝日の昇る前に」。
作品とともに心に残っている方も多いのではないでしょうか。
白いスーツ姿で、対岸に住んでいるデイジーを想い歌うギャツビー。
客席に背中を向けながら歌うのですが、その背中の美しいこと✨
歌い終わると朝日が昇り夜が明けます。
今回の公演では、新曲「入り江がひとつだけ」も披露されました。
月城かなとさんのなんとも美しい笑顔。
その美しい笑顔を通して心の動きが見えます。
言葉を発したあとに気持ちを飲み込む悲し気な瞳。
言葉の裏にある本当の感情も見えます。
デイジーへの愛、耐える気持ち、チャンスをうかがっている様子、人々が立ち去った後の寂し気な表情、
諦めない気持ちなどが伝わってきて、月城かなとさん演じるギャツビーの色々な感情に心が揺れ動かされました。
デイジーのことを本当に愛おしそうに見つめ触れるギャツビーでしたね。
愛する人を守るため、車を運転していたのはデイジーではなく自分だったと言い聞かせるギャツビー。
真実を決して誰にも言ってはいけないと念押しして、「行きなさい」とデイジーに促す時の手が、
とても優しくそして悲しく寂しかったです。
また、清潔感あふれる様々な美しいスーツ姿も印象に残っています。
赤い照明の中、薄い水色のスーツの上にコートを肩にかけるスタイルで、潜り酒場のテーブルの上で歌い、
ステキなポーズを次々に決めていく場面。
白く美しい自分の屋敷に初めてデイジーを招いた時はピンクのスーツ💖
喜びがスーツの色に表れていましたね。
たくさんのシャツを投げる姿は、まるではしゃぐ子どものようでした。
デイジー・ブキャナン役の海乃美月さんはブロンドの髪が美しく、どの衣装もとても素敵に着こなしていらっしゃいました。
どことなく少し冷めていて、勝気で小悪魔的で。
放っておけない魅力的な女性でした。
ギャツビーに出会って純粋な愛に真っ直ぐ向き合いときめいていた頃と、
ギャツビーとの将来を母親に反対され本当の自分の愛や心にフタをし、
これからの人生を考えることを知らない女の子になって生きていこうと決めたあとの表情。
ギャツビーと再会した時の表情やラストシーンでの表情。
希望と諦めの中で、この時代を生き抜く女性の姿が見えました。
これからの生き方を誓った歌『女の子はバカな方がいい』の歌声は力強く、目にも力強い光が宿っていました。
デイジーの夫トム・ブキャナンを演じたのは鳳月杏さん。
初登場は、ポロのユニフォーム姿なのですが、これがとてもかっこいい💗
本人が意識していなくても一目で虜にしてしまうこと、モテてしまうことに納得です。
プロゴルファーでデイジーの親友ジョーダン・ベイカーは彩みちるさん。
黒髪のショートヘアが可愛らしくキュート。
姉御肌な彩みちるさんが新鮮でした。
ニックの風間さんとジョーダン彩さん、とてもかわいいカップルでしたね💕
今回は、月城かなとさん演じるギャツビーと風間柚乃さん演じるニックの2人のお芝居が多かったのですが、
お芝居の質感や温度感がとても心地いいなとと私は感じました。
そして、風間さんの友人具合が絶妙だと思いました。
風間柚乃さん演じるニックは色々なデザインのおしゃれなジャケットを着ていましたね。
ニックの目を通してギャツビーを紹介していく展開です。
ちょっと頼りないけれども人がいいニックが紹介することで、ギャツビーが救われたような気持ちになりました。
ギャツビーの父を演じられたのは専科の英真なおきさん。
墓地で息子への思いを語る姿は、息子を信じている親心がにじみ出ている素敵な背中でした。
専科の輝月ゆうまさんは、暗黒街の顔役マイヤー・ウルフシェイム。
月城かなとさんと同期生です。
恰幅がよく髭と白髪交じりの髪がステキ。
黒いけれども憎めないかわいらしさがありました。
少年時代のギャツビーを演じられた瑠皇りあさん。
月城かなとさんにとても似ていらっしゃって、成長過程に納得でした。
この公演で退団された副組長の夏月都さんが演じられたのは、デイジーの乳母ヒルダ。
デイジーの恋に対する冷たい態度は、一見デイジーが可哀想に思えてしまいますが、
それはデイジーを生まれた時から育て見守り愛し、とにかくデイジーの幸せを願っての行動なのだという
説得力がありました。
これまでのお芝居でも深い解釈と説得力で魅了してくださった夏月都さんです。
同じくこの公演で退団された晴音アキさん。
幕開けのパーティーの女、マーゴット、客の女、タンゴの女、アンナ(歌手)、ゴルファー女と様々な場面に出演されましたが、
そのどれもが美しい佇まいと魅力的な笑顔。
パレードで大階段から下りてくるトップスターを迎える時の表情と角度にも、いつも見とれていました。
フィナーレでは、同期生の月城かなとさんのお隣で大階段を下りてこられましたね。
月城さんと晴音さんが笑顔で見つめ合ったり、月城さんが晴音さんの肩に手を置いたり少し組んで踊ったり。
お二人の美しい表情が、同期生の絆を表しているように感じました。
大きな舞台セットがたくさん使われ、回り舞台(盆)がよく回っていた印象があります。
また、階段を下りて入るようになっている地下の酒場のセットがステキでした🍷
フィナーレの男役群舞は、大階段から男役さんが白いジャケット肩にかついで登場。
ジャケットを時に相手役のように、時に闘牛のムレータのように使って踊ります。
宝塚歌劇の男役さんとジャケットの組み合わせは無敵ですね💘
トップコンビによるボレロアレンジのデュエットダンス。
衣装は赤。
お芝居の中では、お二人とも淡い色合いの衣装を着ていらっしゃったのでとても新鮮でした。
パレードで月城かなとさんが背負われた白い羽根には、白・黒・ゴールドでデザインされた朝日のような飾りがついた
珍しい形のものでした。