梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 星組公演『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』

 

宮村裕美です

 

現在、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで

上演中の星組公演

『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』

 

潤色・演出は谷貴矢さん。

 

この公演は、星組トップスター礼真琴さん率いる

20名の星組の皆さんと専科より

英真なおきさん・紫門ゆりやさんがご出演されています。

 

原作は、フランスの文豪スタンダールの

長編小説である「赤と黒」。

宝塚歌劇では、1957年に菊田一夫さん脚色、

1975年に柴田侑宏さん脚本により上演され

その後何度も再演がおこなわれてきました。

 

今回は、「1789」

「ロックオペラ モーツァルト」

などを手掛けられたフランスのプロデューサー

アルベール・コーエンさんによる

「ロックオペラ 赤と黒

-Le Rouge et le Noir, l’Opéra Rock-」

ということで、これまでとは少し違う「赤と黒」が楽しめます。

 

物語の舞台はフランス。

貧しい製材業の息子として生まれた

ジュリアン・ソレルは、立身出世をし

富と名声を手に入れるという

強い野望を秘めていました。

 

そんな彼のもとに、町長である

レナール家の家庭教師の話が舞い込みます。

 

レナールには、貞淑な妻 ルイーズがいます。

恋を知らずに結婚した彼女は

周りの男性たちとは違うジュリアンに今までにない胸のときめきを覚えます。

 

心から想いあう二人でしたが、二人の仲を

密告する手紙によりルイーズは

夫の前でジュリアンに冷たい言葉を投げかけます。

 

傷心したジュリアンは、パリに向かったのち、

やがてラ・モール侯爵の秘書となります。

ラモール侯爵の娘 マチルドと

愛し合うようになっていき、

いよいよジュリアンの立身出世への扉が開かれたかに思えたのですが・・・。

 

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今回の公演は、暁千星さん演じるジェロニモが

ストーリーテラーを務め、ジェロニモが

私たちにジュリアンの物語を見せるという

芝居小屋が舞台となりこのお芝居が始まっていきます。

 

幕開きすぐには、暁さんが客席に向かって

話しかけるところから物語がスタート

というのもあり、

開演前の真っ赤な幕の映像と併せて

最初からグッと赤と黒の世界に誘われていきます。

 

またセットも非常に凝っており

ジェロニモをはじめ様々な人が

ジュリアン達を周りから見ているような囲い込まれたセットとなっています。

 

 

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礼真琴さんが演じるのは

野心を持った青年 ジュリアン・ソレル。

 

聡明さや強い自尊心を持っているのですが、

とにかく自信満々というとそういうわけでもなく

繊細さや陰を併せ持つ礼さんのジュリアン。

 

上流社会への嫌悪感や敵対心を持っていた

ジュリアンは、ルイーズと出会ったときにも

はじめは彼女を征服するべく愛の告白をします。

 

次第に心から想いあうようになるジュリアンとルイーズ。

この幸せな瞬間というのは

本当に一瞬なのですが、

この時の礼さんと有沙さんの

燃え上がるような愛や情熱を感じる

互いに相手の愛を心から求めている表情が色っぽくドキドキしてしまいます。

 

そして、礼さんといえばどの公演でも

役に合わせた歌い方

歌声で魅了してくださいますが

今回の公演でもさらに進化し続けている

礼さんのロックな歌声が劇場全体に広がります。

 

礼さんが歌う曲はもちろん、

他の皆さんが歌われる

どの曲もキャッチ―で耳に残るのですが

礼さんの歌の中でインパクトが強かった一つは

「知識こそが武器」。

 

ルイーズが選んだ聖書の段落を

読み上げるところから始まるのですが、

レナールたちがジュリアンの実力に

心奪われるのと同じように

登場してきた時の

素朴な雰囲気たっぷりのジュリアンから、

内に秘めた強さが溢れ、その瞬間に

舞台の空気が一気に変わるのを肌で感じるパワフルな歌声が魅力的でした。

 

 

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暁千星さんが演じるのは

パリで活躍する歌手であり

ストーリーテラーも務めるジェロニモ。

 

ジュリアンの人生の中で唯一の理解者

というのもあり、ジェロニモの視点から

ジュリアンの人生が語られます。

 

華やかな見た目に明るく豪快な振る舞いと、

一見正反対のように見えるふたりなのですが

互いにその時代を生き抜くために

それぞれ自分の個性を武器として

世間と闘っているという、同志なんですよね。

 

ストーリーテラーとして冷静に物語を進めつつも

希沙薫さん演じるルージュや

碧海さりおさん演じるノワールと踊られる際など

要所要所で披露されるキレのあるダンスで

舞台を華やかに彩っていました。

 

 

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有沙瞳さんが演じるのは

レナールの貞淑な妻 ルイーズ・ド・レナール

 

紫門ゆりやさん演じる

ムッシュー・ド・レナールとの幸せな今を

守ろうと慎ましく生きる女性です。

 

有沙さんご自身の本来の魅力として

輝くような美しさや華がありますが

今回はあえてメイクを控えめに

髪形も全て地毛だそうで

圧倒的な華やかさを少し抑え、

内から滲み出る品や秘めた中に感じる艶やかな美しさが魅力的でした。

 

併せて、ジュリアンの黒い部分を

明るく照らすような真っ直ぐさが潔く

彼女の美しい瞳にジュリアンが惹かれてしまうのも納得の麗しさでした。

 

 

詩ちづるさんが演じるのは

ラ・モール侯爵の娘 マチルド・ド・ラ・モール。

 

登場は2幕からとなるのですが

登場してきたときの

とびきりの可愛さに心を撃ち抜かれました。

 

侯爵の娘ということで、

何でも思いのままに手に入れ

生きてきたであろうというのもあり、

父が薦める男性たちに対してもつまらない

退屈な日々だと歌います。

 

そんな中、周りの人たちとは違うジュリアンに

興味を持ち惹かれていきます。

 

気高く聡明がゆえにはじめは素直になれず、

ジュリアンに対しても

ツンツンとしているのですが

次第にマチルドの本来の愛情深さが表現されていきます。

 

そして最後に彼は私が守る!と、

ジュリアンのために立ち上がる姿が印象的でした。

 

彼女は、「私の夫の名誉は私が守る!」という

自分自身のプライドもあるかと思うのですが、

ジュリアンを見つめる詩さんマチルドの

切なく苦しそうな表情からは

やはり彼を愛しており、守りたいと

心から思っていたのだろうなという深い愛を感じました。

 

 

物語が終わった後にはお芝居の延長線上にて

礼さん・有沙さん・詩さんが踊られるフィナーレがあります。

 

礼さんは、真っ白なロング丈のジャケットに

赤と黒のバラが描かれており、

有沙さんは黒のドレスに真紅の大きなバラが

埋め尽くされた真っ赤な羽織を着られ、

詩さんは、上半身には細やかな黒いバラ

黒いスカート部分には立体的な大きなバラが

描かれたドレスと、役にぴったりな衣装にもご注目いただけたらと思います。

 

代わる代わる3人で踊られますが

振り付けも役に合わせたものとなっており魅力的な踊りでした。

 

 

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その後には、笑顔で皆さんが登場されるのですが

お芝居とは少し切り離し

腕を組んで笑顔で見つめ合う

紫門さんレナールと有沙さんルイーズや、

可愛らしくリアクションを取り合う

英真さんラ・モール侯爵と詩さんマチルドなど

舞台上にいる皆さんの素敵な表情に、

深くずっしりとくるお芝居を心で堪能した後に

笑顔で締めくくれる宝塚らしいフィナーレとなっています。

 

 

現在、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで

上演中の星組公演

『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』

3月29日(水)までの上演です。

 

また、4月4日(火) ~ 4月10日(月)までは

日本青年館ホールにて上演予定となっています。