宝塚大劇場星組公演 スペクタクル・ミュージカル 『1789 -バスティーユの恋人たち-』
樽井美帆です
星組公演スペクタクル・ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』
が、宝塚大劇場にて6月2日(金)から7月2日(日)まで(6月3日から18日11時公演まで中止)、
東京宝塚劇場では7月22日(土)から8月27日(日)まで上演されました。
(8月15日13時30分開演 第2幕から18日の公演まで中止)
8月19日(土)11時公演より公演は再開されましたが、星組トップスター礼真琴さんが休演。
ロナン・マズリエ役を礼真琴さんに代わって暁千星さんが演じる代役公演が行われました。
礼真琴さんは、8月24日(木)13時30分公演より復帰されました。
宝塚大劇場では、公演関係者に複数の体調不良者が判明し、公演準備に遅れが発生したため
初日の開演時間が変更となり、待望の初日を迎えた翌日からの公演中止。
東京宝塚劇場では第2幕から公演が中止となる緊急事態、トップスター礼真琴さんの休演など、
胸が苦しくなるお知らせが続きましたが、代役公演を見事に成功させられた生徒のみなさんや
スタッフのみなさんのプロとしての熱量に尊敬と感動を覚えました。
2015年に日本初演を果たした月組公演『1789 -バスティーユの恋人たち-』。
初演から8年経った今年、星組で再演されました。
革命前夜のフランスを舞台に、運命に翻弄されながらも愛と理想を追い求める
若者達の姿を描いた物語。
初演の月組で主演のロナンを演じたのは、当時のトップスター龍真咲さん。
トップ娘役の愛希れいかさんはマリー・アントワネットを演じました。
今回トップ娘役の舞空瞳さんが演じたのは、ロナンの恋人オランプ。
トップコンビの関係性をはじめ、初演との演出の違いを楽しまれた方も多いのではないでしょうか?
スペクタクル・ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』
潤色・演出/小池 修一郎
劇場内に入ると、青をベースとした幕に黄色に輝く1789という数字。
この1789という4つの数字のデザインを見ただけで、
これから激動の物語が始まるんだと胸が高鳴りました。
トップスター礼真琴さんが演じたのは、官憲に父親を銃殺された青年ロナン・マズリエ。
2019年、『ロックオペラ モーツァルト』の初日に来日した作曲家のドーヴ・アチアさんに、
礼さんは『1789のロナンをやらせて欲しい!』と熱弁を振るったと
プログラムに小池修一郎さんが書いていらっしゃいます。
礼さんにとって念願の役だったんですね。
若さと正義感にあふれた、真っ直ぐな礼さんのロナン。
前半は前髪を下ろしているロナン。
その前髪に若さ、可愛さ、やんちゃさが表れていると感じました。
そして、激しく動いて乱れた前髪もとても素敵でした。
後半は前髪を上げたスタイルに。
自分のことだけではなく広い視野で国や仲間のことを考え大切にするよう成長した
ロナンの決意の表れのように感じましたし、凛々しさが増しましたね。
礼さん演じるロナンは、デムーラン役の暁千星さんやロベスピエール役の極美慎さんよりも
年下のため、下級生であるお二人を「兄さんたち」と呼んでいることが少し新鮮でした。
そして、その三人のハーモニーがとても力強く響き渡りました。
オランプの嘘で悪者にされビックリする時の裏返った高音の『ヘェ!』という叫びがかわいいロナン。
そんなかわいいところとカッコイイところが絶妙に合わさったロナンを好きになり、
何とか助けたいと願ったのはオランプだけではなく客席の私たちもでしたよね💕
常に孤独を漂わせる背中。
その孤独感は仲間といても漂っていて、痛々しいけどたくましい背中でした。
舞空瞳さんは、オランプ・デュ・ピュジェ。
王太子の養育係でロナンの恋人です。
健気で一生懸命、王妃のためならなんでもする、とにかく一生懸命で真っ直ぐで強い
舞空さんのオランプ。
そんなオランプは、ひたすらかわいい!
作品の中でもみんなから愛されれるオランプ。
緊張感の高いストーリーの中で、可愛らしく笑わせてくれる存在でもありましたね。
オランプと王妃マリー・アントワネット(有沙瞳さん)、二人だけの別れの場面。
お互いを思い合う姿に涙があふれました。
愛する人との別れを決意した王妃が、愛する人のもとへ行くことをオランプにうながす。
愛する人の元へ行くことを決断し、王妃の元を走り去るオランプ。
様々な愛の形があることを考えさせられた本当に美しい場面で、
白い衣装の舞空瞳さんも有沙瞳さんも輝いていました✨
舞空さんの歌声・歌の迫力と説得力は、心の叫びにも聞こえ胸が締め付けられました。
運命とさだめに従って生きるオランプ。
オランプの強さは人を魅了しますね。
王妃の元で、控える姿勢をとる舞空さんのオランプもかわいくて私は大好きでした。
ロナンとオランプのやり取りが面白くかわいくて、激動の舞台の中で貴重な笑いが生まれました。
困難な生活の中でも、明るく芯のある二人でしたね。
ロナンを監獄から脱出させた後、二人が舞台を下りて客席へ。
客席の私たちと同じ高さに登場するだけで臨場感が増してドキドキしました!
客席下り復活の兆しを感じました。
第2幕の幕開けは、民衆が客席から登場。
迫力満点!歌声や声が間近で聞こえること、走られると風を感じることなど
懐かしい感覚に感動しました。
銀橋での二人の言い合いにもキュンキュンしました💗
言いたいことをきちんと言う強気の舞空さんのオランプは魅力的。
助けてくれたお礼にとロナンにキスされて慌てて走り去るオランプ。
「二度と会わないから」というオランプの叫びが「大好き!」に聞こえたのは私だけでしょうか😊
王太子が亡くなったのは自分のせいだと責めるオランプの顔をのぞきこんで
一生懸命なぐさめる優しいロナン。
結ばれない愛はないと銀橋で歌うロナン。
その背中についていくオランプ。
自由になったらまた会おうと約束し、それぞれの使命に立ち向かう二人の姿に、
必ずまた会えますようにと祈らずにはいられませんでした。
ルイ16世の弟シャルル・アルトワは瀬央ゆりあさん。
赤毛が入ったロングヘア、いつも遠くを見ているように感じる美しい目、
この世のものではないような妖しさ。
登場されるたびに美しい姿とオーラにゾクッとしました😍
私は神と歌い、オランプに媚薬を飲ませようとする独特の世界観のアルトワですが、
手に入らないオランプに躍起になる姿はちょっとかわいらしさもありましたね。
瀬央ゆりあさんは、東京宝塚劇場公演千秋楽の翌日8月28日付けで、
15年間過ごされた星組から専科へ異動されました。
専科生として出演される瀬央さんに早く会いたいです。
革命家でジャーナリスト、ロナンの友人カミーユ・デムーランを演じたのは暁千星さん。
暁さんは、初演の月組公演にも出演。
スウェーデンの将校で王妃の愛人ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンを演じられました。
歌声がより太くなり、説得力が増した暁さん。
知性と品性に満ちた表情。
婚約者リュシル(詩ちづるさん)に向ける優しい眼差し。
いつもすぐにリュシルと手をつなぐデムーラン。
その手の取り方から、どれほどリュシルを大切に思っているかが伝わってきました。
お二人の並びもとてもお似合いでしたね。
極美慎さんは、第三身分出身の若い議員マクシミリアン・ロベスピエール。
力強い眼差しと歌声。
手を叩いて足を踏み鳴らし、体を叩いて音を鳴らすボディーパーカッションを使った
迫力の群舞ではセンターで力強く仲間を先導。
自由を求めるパワー炸裂のダンス。
極美さんの瞳に炎が見えました🔥
フランス王妃マリー・アントワネットは、この公演で退団された有沙瞳さん。
ルーレットをデザインした豪華衣装で登場された有沙さん。
美しいけれども、そこに見え隠れする愚かさもきちんと表現されているように感じました。
ゴージャスで華やかで美しく、無邪気で可愛らしく愛らしい。
見ていて飽きない、ずっとずっと見ていたい可愛らしい有沙さんのマリー・アントワネット。
ふくれっ面もかわいかったですね!
美しさと愛嬌で、周りが愚かさも許してしまうということを伝えるに十分な説得力を
私は感じました。
まばたき一回一回さえも可愛らしいんですよね💖
時が流れ、現実を受け止め、逃げ出さずに王妃のつとめ全うすることを
決意したマリー・アントワネットは、シンプルな白いドレスをまといメイクも薄め。
最後の賭けに出る姿は、貫録がありとても美しく神々しく輝いていました。
オランプを愛する人の元へ行かせた後、王妃として最後の役割を全うすることを決意した
歌を歌うマリー・アントワネット。
慈愛に満ちた柔らかい笑顔で歌う姿に、卒業していかれる有沙さんを重ねずにはいられませんでした。
あたたかく優しく柔らかく優雅な有沙瞳さんの舞台姿と歌声などを、
最後にすべて見せてくださったように感じました。
専科より出演されたのは輝月ゆうまさん。
貴族将校ラザール・ペイロール役です。
礼真琴さんと同期生の輝月ゆうまさんは、月組時代に初演に出演されています。
本公演ではアルトワの手下を、新人公演ではなんと今回演じられたペイロールを演じられています。
目の動かし方が怖い、あごひげも怖い。
黒いマントの翻し方が、身長177㎝の輝月さんをより大きく見せました。
自分の思い通りに国も民衆も操ろうと、指揮をしているかのような動きが、
ゾクッとするほど恐ろしく不気味でした。
ロナンの妹ソレーヌ・マズリエは小桜ほのかさん。
清楚なイメージの小桜さんが演じた熱い役が新鮮でした。
地声と裏声を使い分け、込み上げる思いを歌いあげられました。
高音の叫びのような歌声が切なかったです。
王太子のミサが行われているサン・ドニ大聖堂での、都優奈さんと瞳きらりさんによる
美しいカゲソロも印象に残っています。
ミュージカルの幕が下りるとフィナーレがスタート。
瀬央ゆりあさんが目が覚めるほど鮮やかなピンクの衣装で、「二度と消せない」を歌います。
瀬央さんが銀橋を進むたびにジャケットの裾のフリルが美しく揺れます。
真っ直ぐで誠実な歌声、キラキラ輝く瀬央さんは、
本当に美しく幸せな気持ちにさせてくださいますよね。
私は大きく美しい目も、美しい頬も大好きです。
大階段で娘役さんに囲まれて登場した礼真琴さん。
ミュージカルであれだけハードな歌と動きを披露されていたにもかかわらず、
銀橋では飛距離の長いジャンプを披露!
男役群舞では、ジャンプに足上げと、どんどん激しくなるダンスを披露されました。
大階段に1789の文字が浮かび上がり、色はトリコロールカラーに。
オーボエの優しく甘い調べから、礼真琴さん・舞空瞳さんトップコンビによる
デュエットダンスがスタート。
次第に華やかな音楽へと展開し、お二人の伸びやかなダンスにひたすらうっとり🤩
一本立て作品には珍しく、役の衣装ではないパレード。
白い衣装で、娘役さんは背中にトリコロールカラーの小さな羽根を背負っていました。
舞空瞳さんが登場された時は、ミュージカルでのオランプのイメージとのギャップに、
思わず「オランプちゃん、どうしたの😲」と思ってしまいましたが、
自然と笑顔になってしまうほどかわいくて幸せな気持ちになりました。
東宝版でロナンと革命家たちの結び付きを歌う「革命の兄弟」が追加。
さらに今回は、ロナンがオランプに来るべき社会を語る「愛し合う自由」が新曲として追加。
今回ミュージカル中では使用されなかった「世界を我らに」は、
フィナーレ・ナンバーで使われました。
前向きな歌詞の数々。
ロックのビートの心地よい振動とともに伝わってくる魂の叫びを全身に浴びた公演でした。