梅田芸術劇場メインホール 月組公演Grand concert『G.O.A.T』~Greatest Of All Time~

 

宮村裕美です

 

現在、梅田芸術劇場メインホールにて上演中の月組公演

Grand concert『G.O.A.T』~Greatest Of All Time~

 

この公演の監修・演出は石田昌也さん。

構成・演出・振付は、三井聡さん。

宝塚歌劇の作品では、これまで振付家として携わってこられた三井さんが、初めて演出を手掛けられたのが、今回の公演となります。

 

公演名の『G.O.A.T』とは、Greatest Of All Timeの略語で、史上最高のといった意味を持つスラングだそうです。

 

上演時間は100分で、休憩時間がない1本のショー作品となっています。

100分と聞くとあっという間ではあるのですが、お芝居仕立てな場面や宝塚メドレー、男役群舞だけでなく娘役だけの場面に、歌だけで魅せるアコースティックのコーナーなど、月城かなとさん、そして月組の皆さんの魅力がふんだんに詰まった作品となっています。

 

この公演は、始まり方も特別です。

開演前から舞台上には、あと何分か分かるように開演時間までのカウントダウンがされており、月城さん扮するMr.Tが、周りのみんなに小道具は?心の準備は?と、準備が進んでいるか聞く様子が開演前アナウンスとして流れるなど、始まる前から臨場感たっぷりとなっています。

 

そして、時間になるとスクリーンに映像が映し出されるのですが、そこには椅子に座った正装姿の月城さんが。

アカデミー賞など、アメリカの授賞式がテーマとなったオープニングで、月城さんが扮するMr.Tは司会者です。

リポーターに扮する柊木絢斗さんが「これから何が始まるんでしょうか?」とMr.Tに聞くと「オープニングでは、軌跡をお届けしようと思うんだ」という言葉の通り、これまでの月城かなとさんの軌跡が凝縮されたオープニングの始まりです。

 

幕が開くと、先ほどまでスクリーンに映し出されていた月城かなとさんの姿があるのですが、この映像、録画したものではなくその時のリアルタイムを映し出しているので、この幕が開いたタイミングでは、月城さん越しの客席がバッチリ映るようになっています。

 

今回の公演は、『没入型』とも表現される参加型のコンサートですが、この客席が映ることもその一つかと思います。

より月組の皆さんと同じ時間を共有している気分に浸れ、特別な体験となること間違いなしです。

 

オープニングでは、これまで月城かなとさんが出演された作品が披露されるのですが、『グレート・ギャツビー』に始まり、『ブラック・ジャック』『ダル・レークの恋』『銀二貫』『今夜、ロマンス劇場で』など、様々な作品が歌詞として歌われるのはもちろん、いくつかの作品から役が登場するコラボレーションパートもあります。

 

『カンパニー』の「ブレイク・スルー」を歌っている途中には、『今夜、ロマンス劇場で』にて、鳳月杏さんが演じる俊藤龍之介が登場し、劇中と同じセリフを言い、海乃美月さんが演じる美雪にこれまた物語と同じ流れで「触るな!」と、平手打ちをくらってしまい倒れてしまいます。

しかし、そこにはたくさんのブラック・ジャック先生や美海そらさんが扮するMissピノコがいるため、舞台袖に俊藤が運ばれていき…と、とても贅沢な夢のコラボレーションが実現しています。

 

また、月城さんが『るろうに剣心』より四乃森蒼紫に扮し、緋村剣心ならぬMr.剣心に扮する風間柚乃さんと殺陣を行った後には、宝塚歌劇のコンサートではお馴染みのマジックが行われたりと、オープニングだけでも盛り沢山の内容となっています。

 

オープニングの私の好きなポイントは、月城さんが『ピガール狂騒曲』で演じたムーラン・ルージュの支配人、シャルルの気持ちとなりこれまで出演された作品を、見事に早口で言う姿。

月組時代はもちろん雪組時代など、本当にたくさんの公演名を言うのですが、思わずどこで息継ぎをされているのだろう?と感じるほど、きちんとメロディに伴っているにも関わらず、滑らかかつ明瞭な声が素敵すぎて、そのチャーミングさに笑みがこぼれました。

 

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そんな豪華なプロローグの後は、宝塚メドレーとなっています。

宝塚でお馴染みの曲はもちろん、月組といえば…という曲が様々披露されるのですが、私が特に印象に残ったのは海乃美月さん率いる娘役の皆さんでの『Apasionado!!』。

 

月組のショー作品としてお馴染みの曲ですが、情熱的なこの曲は男役の皆さんが中心となり披露されているイメージも強く、美しさや可愛さと同じように強さやかっこよさを併せ持つ月組の娘役皆さんの個性が、とても大きなパワーとなり、見て・聴いて元気のもらえる1曲でした。

 

そして、脚を上げる振りでは誰よりも高く上がる脚や、ターンの時に決してぶれない安定した軸、指先や足先まで意識された一つ一つのポーズと、ダンサー海乃美月さんのしなやかさと、キレのバランスがとれたダンスが本当に美しく、心を奪われました。

 

宝塚メドレーの後は、月ノ塚音楽学校が舞台となったお芝居調の場面です。

まず、月組が誇る若手の歌姫たち、きよら羽龍さん・咲彩いちごさん・一乃凛さん・美渦せいかさん4人にて、新しい学校のリーダーズより「オトナブルー」を歌われます。

 

美しい歌声の中に、低音が効いた「どこからそんな声が?」と思う力強いパワフルなパートもあり、しかし振り付けは可愛らしくと、皆さんのギャップが素敵でした。

 

幕が上がると、学校の教室となります。

男役の皆さんは学ラン、娘役の皆さんはセーラー服を着用し、本日新たにやってくる担任の先生を待ちます。

 

この月城かなとさんが扮する月城先生が登場するまでも、たくさんのコメディ要素が散りばめられた場面となっており、例えば柊木さんが毎公演月組にまつわるクイズを出題したり、風間さんの可愛いとっておきのエピソードが暴露されたりと、この場面もただ見ているだけではなく、共に楽しむことができる時間となっています。

 

そうしていると、月城先生が教室に入ってきますが、そこにはまだ1席誰も座っていない椅子が。

みんなで名前を呼ぶと、まるでスケバンかのようなロングスカートのセーラー服に機関銃を手にした、鳳月杏さんが登場します。

 

ようやく全員揃ったところで、月城先生が今日は皆さんとダンスをしたいと思いますと、ダンスの授業を行おうとするも、ダンスをしてこなかった生徒の皆さんは興味を示さず、教室中がざわざわとしはじめます。

そこで、月城先生が教卓をバンっと叩くとみんな一斉にぴょんと椅子から一瞬飛び上がり…という、お馴染みの動きを何度か繰り返します。

 

そうすると、「皆さんもできますよね?」と、今度は客席に向かって声を掛ける月城先生。

先日、この公演を観劇させていただいたのですが、3階席から見た劇場中全員のジャンプは、見事な揃いっぷりで、ここでまたより同じ特別な時間を過ごしているという、舞台上・客席上だけではなく劇場全体が一体となっていることを体感できた瞬間でした。

 

その後は、月城先生によるダンスのレッスンとなりますが、この場面のタンゴでは、娘役の皆さんは椅子に座る仕草までもが艶っぽく、男役の皆さんは髪を撫でつけたりと、振り付けがない、ただそこに立っているというだけでも余裕を感じさせる色気があり…と、大人な魅力に溢れる踊りとなっていました。

 

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続いては、白の衝撃。

「死の舞踏」がテーマとなり、魅惑的な女性に男性が堕ちていく…という場面とのことで、この場面の導入では、礼華はるさんがおひとりで登場されたところに、麗泉里さんが現れ、翻弄したかと思いきや礼華さんがはけたタイミングで月城さんが登場されます。

 

舞台の幕が開くと、階段上には中央に海乃さん、その周りに娘役の皆さんがいらっしゃるのですが、幻想的な照明が娘役の皆さん含め階段や舞台全体にかかっており、娘役の皆さんがシンプルな真っ白の衣装というのも相まって、どこか異世界のような独特な空気感が広がります。

 

手を使った振り付けなど、振り付け自体がクラシカルな雰囲気ではありながらも、月城さんを囲んでの踊りなど、フォーメーションが変わりながらの様々ダンスが新しく、あまりこれまでには見てきたことのないように感じる構成が新鮮でした。

 

また、月城さんを翻弄していく娘役の皆さんなのですが、その堕ちていく様子を喜ぶかのように、ダンスの後半ではラストに近づくにつれ純粋な笑顔で踊る海乃さんに対して、どんどん苦しそうになる月城さんと、お2人の表情の対比が分かりやすく、美しくもありどこか恐ろしさも感じられる、不思議な場面でした。

 

そして、なんとこの白の衝撃の場面で客席降りがあり、通常の盛り上がる客席降りとは少し異なり、客席もまるで舞台のようにこの場面の世界感が広がる客席降りが斬新でした。

 

 

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そして、日替わりのMCコーナーの後は、月城さん・鳳月さん・風間さん3人のアコースティックのコーナーです。

 

はじめに3人で綾香×コブクロの「WINDING ROAD」を歌われるのですが、アカペラの部分もあり、その見事に調和されたハーモニーがとても心地よく、永遠に聴いていたいと感じる1曲でした。

 

その後、月城さんは「空も飛べるはず」鳳月さんは「Your Song」風間さんは「リメンバー・ミー」と、それぞれ1曲ずつ歌われた後には、ここまでは椅子に座った状態で歌われるのですが、舞台手前に登場され、ペンライトを振りながら「ABC」を歌われます。

 

この時にも、時には目配せをしつつ歌われたりと、3人の魅力的な歌声はもちろん、給水のタイミングでの些細な会話などから、今の月組の雰囲気の良さが感じられ、温かな空気感に癒されると共に、月城さんが率いてくださる今の体制での月組の残り時間が迫ってきているのが感じられ、楽しくもあり、少し切なくなる瞬間を何度も感じました。

 

続いては、赤がテーマとなったダンス場面。

真っ赤な大きい布を腰に巻き付け、まるでとても大きなスカートを着用した状態のような海乃さんが登場されます。

周りにいらっしゃる男役さんたちが赤い布を動かすと、空気に合わせて布が靡いたり膨らんだりと、そんな布の動きに合わせるかのように手や足を使い、決してその場を大きく動かれているわけではないのにも関わらず、ダイナミックに踊られる海乃さん。

 

そこから、一瞬で布を外すと黒いダルマ姿となり、海乃さん率いる娘役の皆さんは赤い扇子を持ち、男役さんたちと皆さんで踊られます。

この場面のタイトルは、「Sophisticated~Rubrum~」なのですが、その名の通り、洗練されたスタイリッシュな動きがかっこよく、男役の皆さんと娘役の皆さんが一列になり踊るなど、個々のダンスや振り付けだけではなく、全体の構図も魅力に感じられる場面でした。

 

そして、この後には真っ赤な衣装の男役の皆さんでのボレロに続きます。

はじめは鳳月さんが歌う中、階段の上には月城さんが登場し、月城さんと鳳月さんで踊ります。

2人が舞台上に直線上に横に並ぶというよりかは、月城さんが階段にいる時には、舞台前方に鳳月さん、鳳月さんが階段で踊られる時には、月城さんは舞台前方で踊り…と、前後の立ち位置にて異なる振り付けを踊るのですが、この同じ振り付けではないにも関わらず、同じ温度感で踊られる2人からは、信頼関係が垣間見えました。

 

そして、月城さんが大切にされてきた宝塚の男役としてのクラシックな魅力を感じることができたのはもちろん、他の男役の皆さんが登場されてきてからも、皆さんが月城さんの想いを感じながら踊られているのがよく分かり、それぞれの表情がとても生き生きとしていたのが印象に残っています。

 

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コンサートの中盤では、この公演でのデュエットに相当する月城さん・海乃さんの場面。

最初は、元気いっぱいな海乃さんの「Bonjour,Amour」から始まります。

『グランドホテル』の新人公演で歌われたこの曲は、海乃さんにとって特別な1曲だと思うのですが、階段の上を移動しながらかつ踊りながらも、しっかりと歌声が前に出て安定しており、感情に合わせたチャーミングな歌声とコロコロと変わっていく豊かな表情がとても可愛らしく魅力的でした。

 

そして、月城さんが「愛はるかに」を歌われます。

ゆったりとしたメロディーラインに合わせて、一つ一つの歌詞をとても丁寧に歌われ、劇場いっぱいに広がる伸びやかな歌声が胸にずっしりと響きます。

 

続いて、月城さんと海乃さんで「Cheek to Cheek」。

海乃さんが登場するタイミングで、なんと月城さんが先ほどまでキュッと結ばれていた首元の蝶ネクタイを外し、カフスに触れるという、本当に瞬きをする暇もないほど、さり気なく男役ならではの仕草をされるのですが、この一瞬に男役としてのかっこよさ・美しさが詰まっており、あまりにもナチュラルなかっこよさに、思わず時が止まった感覚に陥りました。

 

お2人とも楽しそうに笑顔を交わしながら歌われ、見ているこちらが幸せになれる一曲なのですが、特にこの公演では、この場面まで月城さん・海乃さんが舞台上に2人だけ(MCコーナーの最初はお2人のみですが)という場面がなかったのもあり、この時の海乃さんが月城さんへ向ける表現がとても可愛らしく、どの一瞬を切り取っても心から幸せというのが伝わってくる、愛に溢れた柔らかな微笑みが眩しかったです。

海乃さんが月城さんへ向ける優しい笑顔からは、月城さんへの信頼や愛がとっても大きいということが改めて感じられ、これまで紡いでこられたおふたりの特別な時間に想いを馳せ、幸せな余韻が広がるのを感じました。

 

そして、今回の公演のテーマソングである『G.O.A.T』を出演者の皆さんで歌われた後には、月城さんが舞台上におひとりで残られ、中島みゆきの「銀の龍の背に乗って」を歌われます。

 

この公演では、この他にも月城さんの歌声を様々な曲にて聴くことができますが、この曲を歌われる時は他のどの曲とも異なる歌声のように感じられました。

歌詞によっては少し音が高めの部分もあるのですが、透き通った歌声はふんわりと客席側へと広がり、とてもナチュラルな歌声で、自然体な月城さんを一番感じられる曲のように思いました。

 

曲の後半には、出演者の皆さんが順番に登場され、月城さんと踊られる場面もあり、感動的な1曲での終演となりました。

 

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現在、梅田芸術劇場メインホールにて上演中の月組公演

Grand concert『G.O.A.T』~Greatest Of All Time~は、1月31日(水)までの上演です。