宝塚大劇場花組公演 ミュージカル『アルカンシェル』~パリに架かる虹~

樽井美帆です

 

花組公演

ミュージカル『アルカンシェル』~パリに架かる虹~

が、宝塚大劇場にて2月10日(土)から3月24日(日)まで上演されました。

なお公演日程見直しのため、初日が当初の2月9日より変更となり、

一部の公演と2月29日の新人公演は中止となりました。

また、複数の出演者から新型コロナウイルスの陽性が確認されたため、

3月2日から7日の公演は中止となりました。

 

この公演で、花組トップスター 柚香光さん、花組トップ娘役 星風まどかさん、

舞月なぎささん・帆純まひろさん・愛蘭みこさん・美里玲菜さんが退団されます。

 

 

ミュージカル『アルカンシェル』~パリに架かる虹~
作・演出/小池 修一郎

 

 

ナチス・ドイツ占領下のパリ。

フランスが生んだレビューの灯を消すまいと立ち上がった

ミュージック・ホール「アルカンシェル・ド・パリ」のダンサー・マルセルを主人公に、

歌手のカトリーヌとの恋、愛する祖国のための戦い、パリ解放に至る過程を

レビューシーンを交えてドラマティックに描いた一本立てミュージカルです。

 

柚香光さんの「みなさま」という爽やかな呼びかけ。

愛がこもっていて早くも泣きそうになる開演アナウンスでした。

 

2024年の現在を生きる、ミュージック・ホール「アルカンシェル・ド・パリ」の

若き歌い手でキーボード奏者の聖乃あすかさん演じるイヴ・ゴーシェが物語の語り手をつとめ、

とても爽やかに情感豊かに物語の世界へ引き込んでくれます。

 

「アルカンシェル・ド・パリ」のコメディアン・ペぺ(一樹千尋さん)が、

指揮者の上垣聡さんに「マエストロ、シルブプレ」と言うと、

ミラーボールが煌き華麗なる音楽がスタート。

舞台は、一気にナチス・ドイツ占領下のパリへ。

優雅にカーブした階段に、黒燕尾にシルクハット姿でケーンを手にした男役さんがズラリ。

新作レビュー「魅惑のパリ」の舞台稽古が始まり、柚香光さんが登場です。

レビューの正装とも言える黒燕尾での登場で胸元には白い花。

退団を思い胸にグッとくるものがありました。

軽やかに優雅に歌い踊る柚香さんには重力を全く感じません。

星風まどかさんはマゼンタ色のドレスで華やかに登場。

「サ・セ・パリ」などシャンソンにのせて、銀橋や花道も使ってレビューが展開していきます。

 

一本立ての作品ですが、レビューシーンが多く繰り広げられます。

 

次期花組トップコンビ永久輝せあさんと星空美咲さんの場面もあり、

現トップコンビから未来を託されるようなセリフもありました。

 

「ヌーヴェル・アルカンシェル」という歌には、「次の時代に希望を託す」という歌詞があり、

退団される柚香さん・星風さんからのメッセージソングのようでした。

 

柚香光さんが退団公演で演じたのは、

ミュージック・ホール「アルカンシェル・ド・パリ」スターダンサーのマルセル・ドーラン。

 

色んな柚香さん、最後にもう一度見たかった柚香さんをすべて見ることができると言っても

過言ではないかもしれません。

 

悩みながら振付を考える姿。

軽く踊りながら考える姿がカッコいい🥰

 

細く長い美しい指で、実際にピアノ弾く姿。

腕まくりシャツ姿でピアノに向かう背中。

柚香さんが奏でる優しい音に合わせて、星風さん演じるカトリーヌが歌う様子を

心配そうに見守る姿がステキ😍

 

花組『アルカンシェル』1

 

お酒を飲む姿。

今回は、お酒におぼれることなく優雅に美しくシャンパンを飲んでいらっしゃいました🥂

 

花組『アルカンシェル』3

 

様々な人に向ける眼差し。

愛する人、仲間、守るべき人、幼い子ども、それぞれへの愛や思いがあふれる眼差しでした😭

父親の帰りを信じて待つアコーディオン弾きの少年イヴ(湖春ひめ花さん)には、

しゃがんで目線を合わせて、本当に優しい眼差しを向け「偉いな」と励まします。

あの「偉いな」を思い出し、自分に言ってもらっていると置き換えると、

一生懸命頑張って生きていけそうだなと思ってしまいます🤩

 

黒燕尾、シャツ姿、レザーのジャケット、ラテンのギラギラフリフリの衣装、

タキシード姿などなど様々な衣装の柚香さん。

一本立ての作品ですが、着用された衣装の数は多かったのではないでしょうか。

どの衣装も美しい完璧な着こなしでしたね。

自分で腕まくりをし、そのあとジャケットを着るという流れもくぎ付けになりました😍

 

花組『アルカンシェル』4

 

激しいダンスの稽古で疲れているマルセル。

その疲れ方も美しいく、疲れている目がリアルで美しかったです🤩

 

これまでは、襟足が長めの髪型が多かったイメージの柚香さん。

今回は短めに刈り上げられていました。

後頭部の形の美しさと、横顔の美しさが美術館に飾りたいと思ってしまうほど芸術的でした。

 

外出禁止時間を過ぎたため、マルセルの部屋で過ごすことになったマルセルとカトリーヌ。

コーヒーを入れるため、マルセルは一旦部屋の隣にあるキッチンへ行き姿を消します。

そこへドアからひょっこり顔だけを出し、大きいのと小さいのどちらがいいかと

コーヒーカップの大きさをカトリーヌに尋ねます。

小さい方でという返事を聞いたマルセルは、続いて

「お砂糖は?甘め?甘め?」と聞くのですが、その顔が甘~い💕

 

その後、ふたたび姿を消した柚香さんは声だけのお芝居になるのですが、

きっとカトリーヌのためにたっぷりお砂糖を入れたコーヒーを作っているんだろうなと

容易に想像できてニヤニヤしてしまうほど、声からウキウキが伝わってきました。

 

そのあと、ベッド兼ソファーに座って、カトリーヌの話を聞きながらコーヒーを飲もうとしますが、

一旦コーヒーカップを置いて、タキシードのタイを外してシャツのボタンを外します。

その姿、なんて爽やかな色気なのでしょう!

 

そして、柚香さんといえばタイミングの天才。

これまでも、『はいからさんが通る』や『TOP HAT』で、幕が下りる絶妙なタイミングでの

美しいキスシーンでときめかせていただきましたが、今回も抱きしめてからキスをするという

タイミングが神がかっていましたね。

 

お芝居のストーリーなのですが、花組と柚香さんのお話しのようにも感じるところがありました。

レジスタンスとして戦っている際、マルセルが負傷した帆純まひろさん演じるロベールの手当をします。

「すまない」と謝るロベールに、「ずっと同じ舞台を踏んできた仲間じゃないか」と答えるマルセル。

この公演でともに退団されるお二人。

帆純さんは新人公演で柚香さんの役を数多く演じてこられましたね。

 

舞台からはける直前に、サッとかっこよく銃を構えるなど、

やっぱり柚香さんは舞台から姿が見えなくなる最後の瞬間まで目が離せません。

 

柚香さんが歌うたび、踊るたび、笑うたびに涙がこみ上げ、

しっかり見たいのに視界が曇って困ってしまいました。

 

星風まどかさんは、ミュージック・ホール「アルカンシェル・ド・パリ」の

看板歌手カトリーヌ・ルノー。

 

笑顔もメイクもキラキラと華やかに輝いている星風さん。

衣装の着こなしや立ち居振る舞いが美しく、

星風さんが微笑むとあたたかく幸せな空気が満ちる気がします。

発光しているかのように輝いてもいらっしゃいます。

 

瞳の奥に強い輝きを宿し、キッパリと自分の意見を言うカトリーヌは、

自分をしっかり持ち自立していてとても魅力的でした。

 

ドラマティックで透明感あふれる力強い歌声は心地よく、

カトリーヌの心情が痛いほど伝わってきました。

 

トップコンビ柚香さん・星風さんは、同じ場所を見るお芝居の際、

見事に目線が同じ方向を向いています。

その眼差しからマルセルとカトリーヌが、

同じ方向性・同じ温度の思いを持っていることが伝わってきます。

 

花組『アルカンシェル』2

 

カトリーヌがマルセルの手に触れて「熱っ!」と言う場面では、

毎公演お二人がどんな反応をしあうのかが楽しみでした。

星風さん全力のアドリブに、柚香さんが思わずクスリとステキに笑っていらっしゃいましたね😊

 

仕事相手に恋はしないと言っていたのに、早々に恋に落ちた二人。

タキシード姿の柚香さんとピンク色のドレスの星風さんが、ダンス・歌との出会いや

舞台にかける思いや夢を語り合います。

客席に背中を向けた立ち位置の二人なのですが、これまで数々の舞台経験を重ねてこられた

お二人の背中は美しく、後ろ姿でも十分伝わるものがありました。

 

向かい合って手を取り合い、二人でリズムを感じあい、息を合わせ見つめ合って歌う場面は、

二人の思いがあふれ涙が込み上げました。

 

二人で抱き合ってクルクルまわり、手をつないで銀橋を渡り、途中で肩を抱き合い虹を眺める🌈

トップコンビとして過ごしてこられたお二人の時間と関係性を感じるかのようなひとときでした。

 

次期トップスターの永久輝せあさんは、

ナチス・ドイツの文化統制官で演劇を担当しているフリードリッヒ・アドラー。

 

ともすれば暗くなってしまうお話しも、永久輝さんが持つ明るい声質に救われたように感じました。

底抜けに明るく、芸術を心の底から愛する品のある優しい紳士でした。

 

次期花組トップ娘役の星空美咲さん演じるアネットにプロポーズしOKもらえた時は、

「わ~い!軌跡が起きた~!!」と大喜び。

次期トップコンビの婚約発表のようで微笑ましかったです😊

 

専科の輝月ゆうまさんは、ナチス・ドイツの文化統制官として音楽を検閲している

コンラート・バルツァー。

 

固い動きで強引なのですが、どこか愛嬌があって暗くなり過ぎない悪役。

私は宝塚歌劇の男役としての美学を輝月さんに感じました。

 

マルセルら「アルカンシェル・ド・パリ」の仲間たちにクルクル回されたり、

引っ張りまわされたりおちょくられたり・・・

そんな時も「わぁ~!あぁ~!何をする~!」と大慌てなコンラート。

輝月さんの声や表情がどこかにくめないんです。

 

コンラートの指示でベルリンでガラコンサートに出演するカトリーヌ。

幕が下りてすぐにカトリーヌのもとにコンラートが行こうとすると、

アンコールでもう一度幕が開いたことに驚いて「おっと!」と言って急いで引っ込む姿も

人間味があって憎めないところでした。

 

でも、カトリーヌを口説く時は、椅子の背もたれの縁をねっとりと指でなでているんです。

大切に愛おしそうにカトリーヌの手に触れるマルセルとは大違いですよね。

 

フィナーレは、永久輝さんによる歌唱指導からスタート。

ミラーボールが輝き、舞台に虹が輝く中、銀橋を渡りながら「たゆたえども沈まず」を歌います。

光沢感のあるベビーピンクのマント付きの衣装です。

明るく伸びやかな歌声に、未来や希望を感じましたし、

それとともに柚香さんへの敬愛も感じました。

 

大階段がピンク色に染まり、ピンク色のドレス姿の娘役さんに囲まれた

ピンク色の衣装の柚香さんが大階段の中央に。

花びらのようなフリルや美しく輝く色とりどりのラインストーンがきらめきます✨

曲は「ラ・ヴィ・アン・ローズ」。

娘役さんを宝物のように見つめる優しい笑顔の柚香さんの優雅なダンス。

周りで踊る娘役さんが柚香さんを見つめる目は、完全に恋している目ですよね😍

 

赤く染まる大階段を下りてくる男役さん。

赤と黒のコントラストがはっきりとした衣装で、曲はロック調にアレンジされた「愛の讃歌」。

柚香さん率いる最後の男役群舞。

スタイリッシュでカッコよくてどこか切なくて、胸がギュッとなる柚香さんの表情と

気迫を感じる男役さんたちのダンス。

一瞬たりとも見逃したくないと息をすることも忘れるほど見入ってしまいました。

 

男役さんがジャケットを脱ぐとゴールドのシャツ姿に。

柚香さんがあとを託して去り、永久輝さんを中心とした男役群舞がパワフルに繰り広げられます。

 

トップコンビ最後のデュエットダンスは、ブルーの光沢感のある衣装。

見つめ合いながら踊るただひたすら幸せな夢の時間。

手を広げて「おいで」と言っているかのように待ち構える柚香さんの元へ、

星風さんが喜びいっぱいに飛び込んでいくリフト。

軽やかに高い位置で回転し、徐々に回転速度を緩め完全に止まってから

星風さんを大切におろす柚香さんのリフト。

軽やかなリフトはお互いへの信頼の証のように見えました。

 

星風さんが去り、一人舞台に残る柚香さん。

たくさんの光が降り注ぐ青く輝くステージで、のびのび軽やかに美しく踊られます。

永遠に続いてほしい時間、そしてこれまでの感謝を柚香さんに伝えたい時間でした。

最後のポーズを決めた瞬間、柚香さんを虹色のスポットライトが包み、大階段には虹がかかります🌈

 

エトワール星空美咲さんの美しい歌声でパレードがスタート。

舞台の上に虹が輝き、大階段も七色に輝きます。

エッフェル塔と虹がデザインされたシャンシャン。

柚香さんの衣装は、シルバーの総スパンコールで、ジャケットの胸元には虹色のフリル。

最後に背負われた大羽根は、なんと虹色の羽根!

最近、大羽根は毎公演進化しているように思いますが、虹色の大羽根は初めてですよね🌈

虹色の大羽根を背負った柚香さんが銀橋で華麗に一回転。

最後の最後までふんわり優しい夢を見せてくださいました✨

 

花組『アルカンシェル』5

 

東京宝塚劇場では、4月14日(日)から5月26日(日)まで上演されます。