月組トップ娘役 海乃美月さん 退団記者会見

宮村裕美です

 

現在、宝塚大劇場にて上演中の月組公演

ミュージカル・ロマン『Eternal Voice 消え残る想い』

レビュー・アニバーサリー『Grande TAKARAZUKA 110!』

この公演の東京宝塚劇場千秋楽をもって退団される海乃美月さん。

 

2023年9月25日(火)月組トップスター月城かなとさんと共に、月組トップ娘役 海乃美月さんの退団が発表され、退団発表の翌日9月26日(水)、宝塚大劇場3階エスプリホールにて退団記者会見が行われました。

 

会見に出席されたのは、(記者会見当時の)宝塚歌劇団理事長 木場健之さん。海乃美月さんです。

 

この日の海乃さんは、柔らかな素材の白のワンピース。

首元や正面に小さなフリルが付いており、落ち着いた雰囲気や上品さの中にも大人の可愛らしさがあり、この控えめな甘さと品あるバランスがとても海乃さんらしいなと感じられました。

 

身に付けていたアクセサリーは、耳元には小さなパールがいくつか付いたライン状の長めのイヤリングに、同じくシンプルながらも、ところどころにキラキラと輝くポイントがデザインされた短めのネックレス。

 

レビュー・ステイションから、どのような思いでこの日の服装を選ばれたかお伺いしてみると、「退団の会見ということで、白にしたいなという思いがあり、白のお洋服を選びました。そして、もっと華やかな衣装の方がいいのかなとも思ったのですが、私らしいものがいいなという風に思いました。私らしくシンプルに、少し学年も上がってきたころなので、落ち着いた大人っぽいお洋服を選ぼうかなと思い、この洋服を選びました。」

少し照れたように柔らかな笑顔でお答えくださった海乃さん。

 

退団記者会見中、質問を聞くときも答える時も、常に柔らかな笑顔でいてくださる海乃さんからは、まるでマイナスイオンが出ているかのような爽やかで優しい空気感を終始まとわれており、会場中がゆったりとした時間の流れに感じられました。

 

海乃①

 

海乃さんのご挨拶は、「私は月組に配属になり、ずっと月組一筋で育ってまいりました。月組の皆さんはもちろん、月組に携わってくださったたくさんの方々に育てていただいて、宝塚人生を全うできたと思っております。最後の日まで、私らしく、そして月組の皆さんと共に、月城さんと共に丁寧に全力で舞台に取り組んでまいりたいと思いますので、最後の千秋楽の日までどうぞよろしくお願いします。」と、月組生としての想いが詰まったものでした。

 

海乃さんがどのように退団を決められたかというと、「月城さんから『グレート・ギャツビー』の公演中に、5作目で卒業されるというお話を伺いました。その時に、月城さんが自分のことだけではなく、月組の今までの歴代の方々が紡いでこられた月組に、とても想いを抱いていらっしゃることをお聞きして、私もその組の流れに合わせて最後までご一緒できたらいいなと思いましたので、決意させていただきました。」

 

卒業にあたり月城さんからは、私は5作目でと思っているけれど考えてみてねと、時間をもらったことに対して、「月城さんは、わたくしの宝塚人生のこともとても尊重してくださって、考える時間をいただきました。娘役を10年以上させていただいている中で、一度立ち止まって考えるという時間をいただけたことを非常にありがたいなと思いました。

また、自分自身一度立ち止まって冷静に考えてみることも大事だなと思いましたので、改めて一緒に卒業させていただくにあたり、一人で考える時間があってよかったなと思いましたので、一緒に卒業させていただけることが今はとても幸せです。」と、海乃さん自身も退団を決める際には、一度立ち止まって考えることができたそうです。

 

そして、この後の宝塚人生をどのように歩んでいきたいかというのを改めて考えられた後、『フリューゲル -君がくれた翼-』『万華鏡百景色(ばんかきょうひゃくげしき)』のお稽古が始まるころに、月城さんへ「一緒に卒業させていただきたいです」と伝えられました。

 

月城さんと海乃さんのトップコンビは、互いをとても信頼し合っているという、まるで師匠と弟子のような、男役と娘役だけではなく、舞台人としての固い絆が感じられますが、月城さんから海乃さんへ退団する時期について考えてみてねという投げかけも、海乃さんには海乃さんの人生があるからと気遣っており、互いを大切に想ってきたからこそのおふたりの関係性がとても尊いなと感じられます。

 

海乃③

 

宝塚人生の中で、様々な作品にてヒロインを務められ海乃美月さん。

ターニングポイントとなった作品に、月城さん主演の『THE LAST PARTY ~S.Fitzgerald’s last day~』を挙げられました。

「それまで宝塚の娘役というものに対して、また舞台に立ってお芝居をするということに関しても、少し自分の中でくすぶっている、どういう風に振る舞っていったらいいのかなと悩んでいた時期でした。植田景子先生をはじめ、公演の座長であった憧花ゆりのさんをはじめ、とてもたくさんの方々にお芝居などに真摯に向き合う機会をお稽古中からいただくことができました。

また、月城さんが月組に組替えされてから初めての主演公演でしたが、本当に不器用な私に何度も何度もたくさんお芝居のセッションをしてくださって、その公演をきっかけに、改めて宝塚で娘役として頑張りたいなという思いを強く抱いたお稽古であり公演でしたので、私の中で一番大きな思い出となっております。」

 

月城さんが雪組から月組へ組替えをされてこられ、初めての主演公演でヒロインを務めた海乃さん。

トップコンビを組まれるまでも、一緒の作品や場面が多かった印象です。

 

そんな海乃さんに、レビュー・ステイションから月城さんについて伺ってみると、「月城さんは相手役さんなのですが、人生の師匠のような存在の方で、とっても愛のある方です。一言では表現しきれないのですが、本当にご一緒させていただけたことを深いご縁だなと感じていますし、この後卒業まで残り9ヶ月ほどしかないのですが、どの一瞬一瞬も、れいこさんからいただく一言一言を、大事に自分の人生の糧にしていきたいなと思います。

また、ふたりで生み出せるものは、毎公演同じ作品をやっていても、その日によって生まれるものが全然違うので、その瞬間瞬間を大事にしながら月城さんと共に最後まで精一杯舞台を努めてまいりたいと思っております。」と、月城さんと歩んでこられた日々についてお話しくださいました。

 

続いてもレビュー・ステイションからの質問です。

娘役としてどのようなことを心掛けてこられたかお伺いしました。

「私は、宝塚に入るときには遠野あすかさんに憧れて、宝塚に入りました。自立されている娘役さんで、とても可憐なのにかっこよくて何だかたくましい部分も感じたりしていました。私もそのように、男役さんにすみれの花のように寄り添える方でもあり、そしていざ一人で舞台を引っ張っていかないといけない時にはしっかりと務められる人になりたいなと、娘役を志した時から思っておりました。私は月組配属になった時に愛希れいかさんがトップ娘役に就任されて、本当に素敵な娘役像を作られた愛希さんの背中をずっと見て育ってきました。そして、その後は美園もすごく自立した素敵な娘役でした。ふたりの背中を見ながら月組の娘役として育ってきましたので、本当に今まで私にそのように背中見せてくれた方々にとても感謝していますし、私もそのように月組娘役を引き継いでいけたらいいなという思いでおります。」

 

私が海乃さんの魅力と思い浮かんだものが、いつも月城さんをしっかりとそばで支えられている、娘役としての魅力はもちろん、一人でも場面を務められる舞台人としての自立された力、そのどちらもを兼ね備えていらっしゃるところだと思ったため、娘役としての寄り添い力と自立、どちらも魅力的だということをお伝えさせていただいた時には、「今言っていただいたように思っていただけたことが光栄です」と、嬉しそうに目を輝かせてこちらを見てくださり、その微笑みが天女のように神々しく、思わず私が照れてしまいました。

 

宝塚人生を振り返っての質問には、「舞台のことに関して、私はお芝居などは学ばずに宝塚音楽学校に入りました。舞台のことはもちろんなのですが、人として、一人の人間としてとても成長させていただいた場所だったなと感じております。そして宝塚は、同期という切磋琢磨してつらい時期も乗り越えてきた仲間がいます。10年以上この宝塚に在籍させていただいている中で、そういった宝塚の温かさというものを学年が上がってからより実感するようになりました。本当に愛に溢れた場所だなというのをとても感じております。」と、これまで周りで舞台を作り上げてこられた皆さんのお顔を思い出すかのように、少し懐かしそうな柔らかな表情でお話しくださいました。

 

芸名に月が付く月城さんと海乃さん、現在の月組トップコンビ。

そんなおふたりの退団日はなんと今年の7月7日、七夕です。

退団される日が七夕ですが…という質問にはこのようにお答えくださいました。

「全然想像していなかったので、日付を聞いた時はとても驚きました。月城さん自身にも私は非常にご縁を感じているのですが、まさか日付までそのような素敵な日に一緒に卒業させていただけるということを、本当に幸せだなと思います。それもある意味ご縁なのかなと感じながら、とても嬉しいなと思いますし、最後その日は特別な日になると思うので、しっかり胸に刻んでその日一日を過ごしたいと思います。」

 

また、七夕に合わせて千秋楽の日に短冊に何かを書くとしたら?という質問には、「う~ん。そうですね。これからの月組が益々素敵な組でありますようにと書けたらいいなと思います」と、輝く笑顔でお答えくださいました。

 

海乃②

 

男役さんに寄り添える存在でありながらも、自立した娘役になりたいと、娘役になられた時からここまで歩んでこられた海乃さん。

舞台で拝見する海乃さんはまさにその言葉通りで、月城さんをよりかっこよく輝かせる可憐な存在であり、娘役を率いてなど、海乃さんが中心の場面では、ただ美しいだけではなく、きりっとしたかっこよさがあり、どんな時もキレがありダイナミックな海乃さんの踊りは、まさに舞台に大輪の花が舞うような鮮やかさがあります。

そんな娘役としてかっこいいイメージのある海乃さんですが、退団記者会見で静かに微笑みながらおっとりとお話しされる姿は、とても柔らかで優しさそのものでした。

そして、マイクを持つ手元や、皆さんのお話を聞いている表情は、娘役らしく清楚かつ上品で、落ち着いた話し方や控えめな姿勢は大人の余裕を感じられ、上級生トップ娘役としての自覚や誇り、男前な魅力にさらに惚れ惚れとしてしまいました。

 

記者会見の服装選びも、私らしいものをと決して背伸びをせず自分に合ったものを選ぶ姿も、まさに海乃さんらしいナチュラルな魅力で、美しいのに飾らず自然体でというところには、とても月城さんと通ずるものがあるなと感じられ、まさにふたりともしっとりとした月の女神だなと感じられました。

 

海乃④

 

海乃美月さんからファンのみなさんへのメッセージをお届けします。

「宝塚に入団してから今年(2023年)で13年目になります。本当にファンの方々の温かい応援のおかげで私はここまで頑張ることができたと思っております。月組の一員として月城さんと共に最後の瞬間まで精一杯月組娘役を全うしたいと思いますので、どうぞ最後までよろしくお願いします。」

 

海乃⑤

 

現在、宝塚大劇場にて上演中の月組公演

ミュージカル・ロマン『Eternal Voice 消え残る想い』

レビュー・アニバーサリー『Grande TAKARAZUKA 110!』

宝塚大劇場での公演は、5月12日(日)まで、

東京宝塚劇場での公演は、6月1日(土)〜7月7日(日)までとなっています。