宙組バウホール公演 「双頭の鷲」 感激日記

姿 美保子です。

 11月22日(火)から公演が始まった「双頭の鷲」は

2016年のバウホール公演を締めくくるのにふさわしい格調高い作品です。

 

この作品は、1946年に書かれたジャン・コクトーの戯曲「双頭の鷲」を原作に植田景子さんが脚本・演出した作品で、19世紀末に起きたアナーキストのルキーニによるハプスブルグ家皇妃エリザベートの暗殺事件に着想を得たものです。

「双頭の鷲」は映画にもなり、舞台でも繰り返し上演されています。

 

宝塚の舞台でコクトーの独特の世界観を表現するにあたって、植田景子さんは、

「コクトーが描いた世界の中の登場人物」と、

ストーリーテラー(案内人)を含めた「物語の行方を注視する人々」の

二つのグループによって物語を進行させました。

 

主人公の アナーキストで詩人の暗殺者・スタニスラスを演じたのは専科の轟 悠さん。

轟さんといえば、20年前宝塚初演の「エリザベート」でルキーニを演じたことで知られていますね。

ヒロインの王妃を演じたのは宙組トップ娘役の実咲 凛音さん。

実咲さんは、今年、宝塚歌劇「エリザベート」上演20周年記念公演で見事なエリザベートを演じました。

 

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それでは舞台を観ていきましょう。

舞台の案内をしてくれるのはストリーテラーの和希そら(96期)さんです。

 

とあるヨーロッパの王国・クランツ城で、王妃と暗殺者が倒れて発見されました。

いったい何が起こったのでしょうか。

王室スキャンダルに目がないパパラッチたち(風馬 翔さん、綾瀬あきなさん、など男役女役合わせて14人)が群がってきます。

過去から現代まで繰り返される王室スキャンダルは政治を取り巻く愛と死の歴史。

パパラッチたちが物見高く歌っていきます。

そして私たちはここクランツ城でおこった3日間の出来事をパパラッチと一緒に観ていくことになるのです。

そう、この後もパパラッチたちは王妃の部屋の半透明の壁の後ろから、舞台の袖からも、興味しんしんとばかりに事の成り行きを観続け、時には臣下になり、王妃の夢の住人になり、死のダンサーにもなりながら物語に加わっていくのです。

 

10年前、国王と王妃の婚礼の日、馬車に乗って国民の祝福を受けていた王は王妃の目の前で暗殺者によって殺されてしまいました。その日から王妃は、王と過ごせたであろう幸せな日々を思いながら黒いベールで顔を覆い、城の中に籠って暮らしているのでした。

今日は王の命日。嵐の風を浴びながらバルコニーに佇み、部屋の中で亡き王を偲んでいる王妃(片方の肩が出た黒いドレスが素敵に似合っています)。

突然銃声が響き怯える王妃の前に、待ちわびた運命が飛び込んできました。

王にそっくりの男・スタニスラスが警護に追われ足に怪我を負い、バルコニーから王妃の部屋に逃げ込んできたのです。

その男は王妃を暗殺しようと城に忍び込んだのでした。

 

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王妃はその男が自分を暗殺しに来たのを知りながら側近くに仕える聾唖の黒人少年・トニー(穂稀せり)に彼の手当を命じ、匿います。

戸惑う彼に王妃が告げました。

「3日の猶予を与える。その間に私を撃たなければ私がお前を撃つ」と。

気高く言い放つ王妃の言葉に圧倒されるスタニスラス。

 

飛び込んできた暗殺者・スタニスラスが、自分もその作品を愛読している詩人であることを知った王妃は

次の日、彼を自分の読書係りに任命し、王太后から使わされていた読書係・エディット(美風 舞良)を側から遠ざけます。

(亡き王の母である王太后は国の実権を握るため、国民に人気のある美貌の王妃を陥れようと世間に悪評を流布させ、警察長官のフェーン伯爵(愛月ひかる)を使って策略をめぐらせていたのです)

王妃が信頼を寄せるのはトニーと秘かに王妃を慕う亡き国王の友人・フェリックス公爵(桜木みなと)だけでした。

 

一方スタニスラスは、暗殺者の自分を匿うという奇妙な行動をとる王妃に「自殺できないから自分に殺させようとしているのだろう」と怒りをぶつけます。

そんな時、警察長官のフェーン伯爵が王妃を訪ねて部屋へやってきて前夜の事件について話し始めます。

黒い警察官の制服が彼の冷酷さを象徴しているようです。

物かげから王妃と伯爵の話を聞いていたスタニスラスは、権力によって自分が巧妙に操られていつの間にか王妃の暗殺者に仕立て上げられたことを知り愕然とするのでした。

追われる身となった男と命を狙われた女。

嵐の後の静けさの中、二人はそれぞれの孤独を抱いて向き合います。

心を開き語り合う二人は惹かれあい、やがて一つの言葉を口にしたのでした。

「愛しています」

 

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急かすように刻まれるリズム。流れるようなピアノのメロディー。

スタニスラスと王妃の心の動きを音楽が後押しをしています。

そして二人が歌う主題歌「双頭の鷲のように」

二つの頭 一つの命、二つの体 一つの魂、決して離れられぬ運命、双頭の鷲のように

・・・・・・共に生きて 共に死ぬ あなたこそ命 心解き放ち 自由に舞う鷲よ・・・・

 

王妃はスタニスラスから国の為に立ちあがる勇気をもらうのでした。

共に生きることを決意した二人

二人のほとばしるような命の息吹を感じて

モノクロだった部屋の調度品があっという間に鮮やかな色彩に変わりました。

 

そして3日目。運命の日です。

 

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そこで私たちはバルコニーに向かう階段に重なり合うように倒れている二人を観ることになります。

パパラッチ達と観た王妃と暗殺者の謎の3日間は

壮絶な、けれど悲しいほど美しいラストシーンで幕を閉じたのでした。

そこで何があったのか

舞台でごらんいただきましょう。

 

原作が戯曲で、主な登場人物が6人だけという作品は始めから膨大なセリフのやり取りが続きます。時に激しく、冷たく、時に甘く、轟 悠さんと互角に渡り合う実咲さんのお芝居に感服しました。

これから観劇される方は心を落ち着け、始めから集中してしっかりとセリフのやりとりを味わって下さい。

案内人役の和希さんは滑舌もよく、そのさわやかさが程良いエッセンスとなって皆さんをなごませてくれますよ。

パパラッチの皆さんのおしゃれな衣装(有村 淳)やキレのあるダンス(振付:大石 裕香)もお見逃しなく。

 

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松井るみさんの装置、斉藤恒芳さんの音楽が物語の世界をより効果的に彩っていますので、こちらにも注目して下さいね。 

ショーアップされた作品のみならずこうした本格的な舞台劇も堪能できるのが宝塚歌劇の魅力と改めて感じたバウホール公演でした。

 

「双頭の鷲」感激日記は

11月25日(金)午後2時~放送の【レビュー・ステイション】で

11月26日(土)午後4時~再放送予定