宝塚大劇場月組公演 ミュージカル『エリザベート-愛と死の輪舞-』

樽井美帆です

 

8月24日(金)から 10月1日(月)まで、宝塚大劇場では月組公演が上演されました。

 

ミュージカル『エリザベート −愛と死の輪舞−』

潤色・演出/小池 修一郎
 
1996年の初演以来、多くの人々を魅了してきた『エリザベート』。
名実ともに宝塚歌劇を代表する人気ミュージカル、今回の月組公演は
宝塚歌劇において記念すべき10回目の上演となります。
 
9月20日(木)11時の公演をもって、来場者数250万人を達成し
終演後に舞台上にて記念セレモニーが行われました。
 
この公演は、2012年より月組トップ娘役をつとめてこられた愛希れいかさんの
サヨナラ公演であり、千秋楽の日にはサヨナラショーが行われました。
 
また、台風21号の影響で9月4日(火)15時公演と、台風24号の影響で30日(日)15時公演の2公演が
1995年の阪神大震災以来、23年ぶりの休演となりました。
 
そして、フランツ・ヨーゼフ役の美弥るりかさんが、体調不良のため9月22日(土)から25日(火)まで休演され
27日(木)から復帰されました。
月城かなとさんがフランツ・ヨーゼフ役、風間柚乃さんがルイジ・ルキーニ役の代役をつとめられました。
 
 
 
今回の月組公演でミュージカル『エリザベート』は10回目の上演となりますが、
何度観ても新しい感動と発見がありますね。
同じ役でも演じる人によって印象が全く変わるところも面白いところです。
 
今回の月組公演に対する私の印象は、どの登場人物も一生懸命生きていて
みんなを応援したくなるというものでした。
 
開演アナウンスの直後、上手袖から銀橋へ登場するのは、手錠をつけたエリザベート暗殺犯ルイジ・ルキーニ。
月城かなとさんです。

登場の瞬間からあまりのカッコよさにくぎ付けに!

月城かなとさんのルキーニは、8割がイケメンで2割がトートに操られて正気を失っている

というような配分に私には感じられました。

時々ゾクッとする表情を見せます。

目の威力がすごく、髭もリアル。

今回は魅力的な縦えくぼも封印です。

言葉の語尾が甘く魅力的。

エリザベート暗殺から100年以上も、煉獄での裁判が続いていることを思わせる出で立ちでした。

なぜエリザベート皇后を暗殺したのかを問われ、皇后本人が望んだと答えるルキーニが、

様々な立場になりながらエリザベートの生涯を振り返っていきます。

 

月組『エリザベート』4

 

エリザベートとともに生きた人々の霊魂がよみがえるプロローグ。

それぞれが違う歌詞、違うリズム、違う音を歌っているとても複雑な曲。

あらためて『エリザベート』の音楽の素晴らしさを感じ鳥肌が立ちます。

指揮は佐々田愛一郎さん。

1998年の宙組は、TAKARAZUKA1000days劇場で上演されたため、

オーケストラボックスがなく、音楽は録音でした。

佐々田愛一郎さんは、1996年の初演の指揮もつとめられており

これまで10公演中、8公演の指揮を担当されています。

 

エリザベートが少女時代を過ごしたバイエルン王国のポッセンホーフェン城での、

シシィと彼女が大好きな父マックスとの場面。

自由に気まぐれに、のぞむまま、パパみたいになりたいと

シシィの愛希れいかさんとマックスの輝月ゆうまさん、

95期生コンビが息ピッタリに、とても自然な流れで微笑ましく歌われました。

 

フランツ・ヨーゼフ役は美弥るりかさん。

太く低い声が魅力的なのですが、時々裏声を駆使して歌われ、

皇帝の立場と愛する人への思いの狭間で葛藤する切ない思いが伝わってきました。

母親であるゾフィー皇太后が、結果的にはすべての決断をくだすことは分かっているけれども、

自分自身も一生懸命考えていることが伝わってきました。

人の気持ちを理解しようとする優しい表情、優しい話し方、フランツは本当に優しい人だったんだなと感じました。

悩む姿も美しい美弥るりかさんのフランツ

正統派のリーゼントは久しぶりだったのではないでしょうか?

 

月組『エリザベート』1

 

フランツの母 皇太后ゾフィー役は月組組長の憧花ゆりのさん。

今回が退団公演です。

皇太后の立場上当然の発言、行動だという説得力があり、

怖くないゾフィーだと私は思いました。

フランツがシシィに『母の意見は君のためになるはずさ』と言うのを聞いて

うれしそうな顔をしたり、エリザベートとフランツを引き離すための策を練り

『キレイな女なんてたっくさんいるわ、うふふふふ』とほくそ笑むゾフィーは

可愛いらしくも感じました。

 

10人目のトートを演じたのは珠城りょうさん。

トート役史上最も下級生のトートです。

まだ黄泉の帝王に就任して間もない若き帝王のような印象を私は受けました。

声があたたかく甘いビブラートが魅力的で、これまでにない新たなトート。

これまでのトートのカラーは緑や青が多かったように思いますが、

珠城さんのトートは赤を多く衣装に取り入れているように思いました。

トートといえば血が通っていない冷たいイメージですが、

珠城さんのトートは触れるとあたたかそうで、表情を感じ人間に近い感じがしました。

腰より長い細かいウェーブがかかった金髪、

右側はパープル、左側はグリーンのメッシュが入っています。

心も体も大きく、冷たさとあたたかさが同居したトートの魅力に心をつかまれました。

プロポーズの場面のあとに全身赤色の衣装とマントで登場するトート。

珠城さんがより大きく見え、とてもステキでした。

 

月組『エリザベート』3

 

エリザベートを演じたのは、愛希れいかさん。

本当に自由が大好きなんだなと感じる元気いっぱいの笑顔のシシィ。

登場から元気溌剌!

パパの銃を手に馬術の競争の動きをするシシィは、本当に馬術がとても上手そうですし、

空中ブランコの動きをしながらイスから飛び降りる時のジャンプの高さも

数々のダンスシーンで私たちを魅了してくださった身体能力に優れた愛希さんならでは!

『ベー』もとても自然で可愛らしく

愛希れいかさんならではのシシィですね。

おてんばだけど品のあるプリンセスを表現されているのは、

トップ娘役を6年7カ月つとめてこられた愛希さんだからこそではないでしょうか。

フランツが一目でひかれてしまうことが納得の

初々しく、可愛く、自由なシシィでした。

 

エリザベートの見せ場の一つ『私だけに』

愛希さんは、美しく澄んだ可愛い声で歌われ、生命力を感じました。

カーテンを開けて振り返って歌う時には、これまでとは違う力強さが

明らかにそなわっているエリザベート。

自分を信じる強さを持ったエリザベートに、頑張ってとエールを送りました。

 

月組『エリザベート』2

 

木登りに失敗し転落して、意識不明の重体に陥って冥界に迷い込んだシシィとトートの出会いの場面。

エリザベートの命を奪おうとした瞬間、『私を返して』と言われた時の

今までそんなことを言われたことはない!なんだこの子は!というトートのビックリした顔。

生気に満ちた眼差しに心を射抜かれてしまう珠城さんトートの表情も新鮮でした。

 

夢奈瑠音さんをはじめとする10人の黒天使。

みなさん足が長く、とってものびやかで優雅なダンスが美しかったです。

トートの感情を表現したり、マントを着せたり、イスを運んだり、

亡くなったゾフィーを運んだりとトート閣下のためにつくすく黒天使たち。

トートとエリザベートが結ばれ、『二人きりで泳いで渡ろう』という言葉を聞いた瞬間、

自分たちの役目を終えたのだと言うかのようにと静かに去っていく瞬間が私は大好きです。

 

バートイシュルにお見合いに向かう場面。

姉のヘレネとフランツのお見合いに付き添いで行ったシシィ。

退屈するシシィをからかう荷物運びのルキーニ。

豪華なドレスを着せられ暑がるシシィを帽子であおいであげる優しいルキーニ。

ここでも愛希れいかさん・月城かなとさんの同期コンビの息がピッタリでしたね。

 

シェーンブルン宮殿鏡の間で結婚式の舞踏会で、トートはエリザベートの前に現れ、

最後に勝つのはこの俺だと『最後のダンス』を歌います。

二人の愛は見せかけ、陛下の腕に抱かれて、あなたはそっと私にも微笑みかけていると

トートに言われ『嘘よ』と逃げるエリザベートの腕をトートは見事につかみますが、

この時のスピード感に、体育会系トップコンビの姿を見た気がしました。

 

1幕最後の鏡の間の場面。

フランツ役の美弥るりかさんが、部屋の奥にいるエリザベートに思いが届くようにゆっくり丁寧に歌います。

鏡の間の扉が開き登場したエリザベートは美しく輝いていますが、その表情からは色々なことが感じ取れました。

フランツの言葉を聞いて、愛希さんのエリザベートは自分が選ばれたことへの喜びというよりは余裕を感じさせました。

輝くような美しい姿は、彼のためにではなく自分のため。

美しさが武器になることを知り、美しさを保つことは義務になっていくのですね。

 

トートとエリザベートのナンバー『私が踊る時』

余裕の笑みのエリザベート。

愛希さんにとてもお似合いの場面でした。

今回のトートの衣装のテーマは『割れたステンドグラス』

この場面のトートの首に巻かれた赤い布がとても印象的。

はっきりした赤を使ったトートは珍しいのではと感じました。

 

少年ルドルフ役は蘭世惠翔さん。

とても澄んだ美しいソプラノでした。

自分は強いんだぞと頑張って歌うルドフルを見て、ちょっと笑っているトート。

エリザベートを追い詰めるためにルドルフに近づいたが、

エリザベートの面影を感じるルドルフに魅力を感じてしまったのでしょうか。

 

食事もとらず体操をつづけるエリザベートの前に、ドクトルゼーブルガーの姿になって現れるトート。

杖をついた老人としての登場は10回の公演の中で初めての演出ではないでしょうか。

 

暁千星さんのルドルフは、歌声も明るくとても前向きな青年。

シシィの自由な魂を受け継ぎ、少女時代に似ているように感じました。

僕はママの鏡だからママは僕の思いすべてわかるはずという歌詞の説得力を強く感じました。

 

月組『エリザベート』5

 

しっかりと抱き合い愛を確かめて昇天していく二人。

珠城さんのトートには、エリザベートから初めて愛された喜びと

まだ信じられないという戸惑いもみられたように思います。

対するエリザベートは幸せな笑顔。

愛の大きさが逆転し、エリザベートのトートへの愛の方が大きくなったことの証なのでしょうか。

ラブストーリーとして自然に納得できるラストシーンでした。

 

フィナーレでは、珠城りょうさん・愛希れいかさんトップコンビ最後のデュエットダンスも。

愛希さんが白いドレスでせり上がり、『最後のダンス』をアレンジしたデュエットダンス。

何度も目を合わせながら、走る飛ぶ回るそして見事なリフト!

 

10回目の公演となった『エリザベート』、また新たな発見がたくさんありました。

やはり大好きな作品です。

 

東京宝塚劇場では、10月19日(金)~ 11月18日(日)まで上演され、

愛希れいかさんは11月18日(日)、宝塚歌劇団を卒業されます。