宝塚大劇場宙組公演『El Japón(エル ハポン)-イスパニアのサムライ-』・『アクアヴィーテ(aquavitae)!!』 ~生命の水~
樽井美帆です
宙組公演
宝塚ミュージカル・ロマン『El Japón(エル ハポン) -イスパニアのサムライ-』
ショー・トゥー・クール『アクアヴィーテ(aquavitae)!!』 ~生命の水~ が、
宝塚大劇場で2019年11月15日(金)から 12月15日(日) まで上演されました。
2019年、そして宝塚歌劇105周年ラストを飾る宝塚大劇場公演でしたね。
東京宝塚劇場では、2020年1月3日(金)から 2月16日(日) まで上演されました。
2019年(令和元年)から2020年(令和2年)、年をまたいでの公演となりました。
宝塚ミュージカル・ロマン
『El Japón(エル ハポン) -イスパニアのサムライ-』
作・演出/大野 拓史
スペイン南部の町コリア・デル・リオに「サムライの末裔」を自認する「ハポン(日本)」姓の人々がいる。
なぜ遠い異国の地に日本の侍の伝説が残ったのか……。
慶長遣欧使節団として派遣された仙台藩士を主人公に、その侍らしい心情や異文化との出会いを描きあげる作品。
慶長18年、仙台藩が派遣した慶長遣欧使節団の中に、夢想願流剣術の名手・蒲田治道の姿がありました。
約一年の航海を経て使節団は目的地のスペイン(イスパニア)に到着するが、
国王フェリペ3世との交渉が膠着し、港町セビリアの郊外にあるコリア・デル・リオで無為な日々を過ごすこととなります。
ある時、奴隷として農場に売られ脱走した日本人少女を助け出した治道は、
匿う場所を探して宿屋を営む女性カタリナと知り合います。
近隣の大農場主からのどんな脅しにも屈しないカタリナの凜とした姿に、
治道はかつて心惹かれた女性の面影を見出していきます。
開演前に緞帳が上がり、赤茶色の大理石、アーチ状の柱が印象的な
マドリードの王宮のセットが舞台に。
ドラマティックな音楽が聞こえてくると、地球儀がスクリーンに映し出され、
なぜスペイン、アンダルシア州のコリア・デル・リオには
ハポンという名を名乗る人たちがいるのか、また歴史的な流れが説明されます。
舞台は慶長18年、宮城県の北東部 牡鹿半島(おしかはんとう)、月の浦。
仙台藩主 伊達政宗(美月悠さん)は、イスパニアとの貿易交渉のため使節を派遣することに。
出航の時、門出にふさわしく夜通し囃子、舞を続け華やかに見送るよう命じます。
突然その中の数人が、勇壮な鬼剣舞(おにけんばい)の最中政宗に切りかかります。
その時、一人の男が現れ、敵を次々に斬り捨ててゆきます。
真風凉帆さんの登場です!
青い着物姿で舞台右手から颯爽と走って登場。
真風凉帆さんが演じるのは、伊達政宗の家臣、夢想願流剣術の名手、政宗の護衛役を勤めている蒲田治道。
華麗な立ち回り
政宗の命を狙った者の正体は、和賀一族の生き残り、
かつて治道が愛した女性の弟、藤九郎(和希そらさん)。
政宗は、船の外に騒ぎを悟らせず、治道、藤九郎を乗せて出航させます。
出航!
支倉常長を演じる寿つかささんの声で、船はイスパニアへ。
マストが開かれ、風になびきます。
そのマストに大海原が映し出される中、舞台はイスパニアへ。
黄緑色の衣装に口元とあごに髭をたくわえたアレハンドロ(芹香斗亜さん)と
ブルーの衣装に不敵な笑みを浮かべたエリアス(桜木みなとさん)が歌い、
イスパニアの人々が踊る中、一年あまりの航海を経て、慶長遣欧使節団が到着します。
蒲田治道役の真風凉帆さん、悩み苦悩する姿、そしてため息さえも魅力的。
表情を大きく変化させなくても、様々な心情が伝わってくる真風凉帆さん。
不思議な魅力ですよね。
カタリナから、踊ったことのない踊りに誘われためらう姿にもキュンとしました。
言葉数少ない、ゆったりした動きに、治道の心の大きさが見えました。
カタリナが忘れかけた上着を着せてあげる治道もステキでしたね!
カタリナ役の星風まどかさん。
星風まどかさんがこれまで演じた役の中では珍しい姉御肌な役。
黒いドレスもお似合いでしたが、華やかなドレスに着替えて出てこられた時は
息をのむほど可憐で美しかったです。
愛する人を失った悲しい経験からどこか影がある・・・
自分のことよりも人のことを守りたいという強い気持ち
治道とどこか通じるところがあるり、お互いに惹かれていく過程が
切なく美しく描かれていたと思います。
最後まで謎の剣士のアレハンドロ役の芹香斗亜さん。
黒い衣装、肩にかけたストールをなびかせて登場。
ワイルドでセクシー、ちょっとプレイボーイ、でも品がある!
ピストルの名前はキキちゃん。
父親からの言葉に『は~い』と返事するアレハンドロ。
今回も芹香斗亜さんは、色々なギャップを見せてくださいましたね。
天彩峰里さんが演じたはるは、ドン・フェルディナンドの農場に売られた日本人奴隷。
同期の星風まどかさんと一緒にお芝居をする場面が多くありました。
健気で一生懸命、異国の地でも感謝の気持ちを忘れず懸命に生きている姿に感動しました。
桜木みなとさんは、ドン・フェルディナンドの息子エリアス。
おさえた野心、常に顎が上がっていて目線も斜め上。
でも何かに怯えていることがよく伝わってきました。
英真なおきさんは、大農場主ドン・フェルディナンド。
英真なおきさんの悪役は、とても分かりやすいですね。
英真なおきさんの声が悪い人そのものでした。
瑠風輝さんは、仙台藩士 西九郎。
治道の先達です。
真風凉帆さんよりも下級生ですが、治道のよき理解者で懐が深い人物でした。
道化ニコラの綾瀬あきなさん、道化セバスティアンの留依蒔世さんの
素晴らしい歌声も印象に残っています。
立ち廻りの場面が多くありましたが、このお芝居では洋剣と日本刀の立ち廻りという
珍しいものでした。
盆が回り、建物のセットが回る中での立ち廻りは、とても迫力がありましたね!
国を越えて人を思う心に、温かい気持ちになることができました。
ショー・トゥー・クール
『アクアヴィーテ(aquavitae)!!』 ~生命の水~
作・演出/藤井 大介
2002年花組『Cocktail』、2017年花組『Ssnte!』とお酒のレビューを手掛けてきた藤井大介さんの第3弾。
芹香斗亜さんは、花組時代に『Ssnte!』に出演されています。
香り高く味わい深い大人の飲み物ウイスキーをテーマにした作品。
宙組は、2018年『シトラスの風 -Sunrise-』以来の洋物のショーとなります。
真風凉帆さんにとっては、トップになって初めてのオリジナルの洋物ショーですね。
アクアヴィーテは、ラテン語で生命の水という意味です。
主題歌のサビの部分はすぐに歌えるようになりましたし、
歌詞に藤井大介さんのウイスキーへの愛があふれていました。
ウイスキーボトルをデザインしたセットが輝き、ショーがスタート!
各章が時系列になっていました。
幕開きは午後11時。
ウイスキーは大人の飲み物。
このくらいの時間がよく似合いますよね。
【第1章 ザ・キング・オブ・リカー 酒の王者】
琥珀色のマントを翻し、ウイスキーの精エイトモルト、8人の男役が踊り出し、ショーの幕開きを告げます。
オーケストラボックスから煙の出る魅惑的なボトルを持った錬金術師アルカミストJが登場。
彼の錬金術によって世界初の蒸留酒、ウイスキーが誕生します。
【第2章 ジェントルマン・クラブ 紳士の社交場】
舞台一面に巨大なカウンターが並び、ウイスキーキング真風凉帆さんが一人、グラスを片手にスツールに腰かけてせり上がり。
真風凉帆さん独特の大人の雰囲気。
衣装はギラギラ総スパンコールで、琥珀色の上品な輝き
ブルースを歌います。
カウンターの後ろから次々にウイスキーダンディとウイスキーレディが登場し、ウイスキーパーティーに発展!
真風凉帆さん・星風まどかさん・芹香斗亜さん・桜木みなとさん・和希そらさんが銀橋下へ。
宙組生のみなさんが銀橋を次々に渡って行きます!
時間は午前0時。
【第4章 ダフタウン・ビースト -ダフタウンの猛獣-】
午前1時。
アフリカの岩山でガオーと雄たけびをあげ、野獣ラムページが激しく歌い、
9人の男役ビーストマンたちが燃え上がるウイスキーのように熱く踊ります。
赤い衣装で目つき鋭い芹香斗亜さんがウイスキーボトルを手に登場し歌います。
高嶺の花ロフティドリーム実羚淳さんが赤いダルマ衣装で登場。
数字の1か、アルファベットのIかと思うポーズ!
とにかく足が長く、素晴らしいダンスに魅せられました。
日々の努力と鍛錬の成果をラストステージで存分に発揮され、
目が離せず息をするのも忘れるほどの感動を与えてくださいました。
宝塚市出身、宝塚北高校出身の実羚淳さんは、この公演で退団されました。
【第5章 スモーキーナイト -煙った夜-】
舞台は南の島、スコットランドのアイラ島。
世界でウイスキーの聖地と呼ばれるほど有名な場所でです。
午前1時30分。
ダティオ真風凉帆さんが南の島の男たちと激しく踊ります。
やがて夜の浜辺に女の子たちも集まって来て、ダティオは星風まどかさん扮する屋台の看板娘サインボーダと恋に発展。
真風凉帆さんがカラフルな衣装を着られたり、トロピカルな雰囲気の場面は珍しく感じ
とても新鮮でステキでした。
男役・娘役に分かれて踊る恋のかけひきダンスが楽しかったです。
【第6章 リファインド・テイスト -洗練された味わい-】
午前2時。
ミステリアスクラウン桜木みなとさんが妖しくパーティーの始まりを告げます。
白のシルクハット、白いズボン、黒のジャケット姿の桜木みなとさんが、
光るケーンを手に歌いながら銀橋を渡ります。
舞台はニューヨーク、背景のビルがボトルの形!
ここでも男役が黒のダルマ姿で2人登場。
中性的なアマーミ、春瀬央季さん・七生眞希さんです。
ウイスキーに纏わる曲をジャズアレンジで真風凉帆さんから次々に歌い継いでいきます。
白いタコ足ドレスの和希そらさんがキュートでした。
コーラスのみなさんがハンドマイクを持っていらっしゃったのも珍しくて新鮮でした。
続いて、2組のデュエットダンス。
トップコンビと・芹香斗亜さん&夢白あやさん。
桜木さんの歌にのせて優雅なダンス
うっとりしていると・・・
真風・芹香・桜木の3人が客席へ
甘い言葉をささやき、人々を酔わせていきます!
名言続出!
ときめきがとまりませんでした!
そして、客席降り!
ロックグラス片手に乾杯!
時間は午前2時。
【第7章 ヒーローズ・テスティモニー -勇者の証-】
和希そらさんを中心とした19名の若手男役のダンス場面。
退団される星吹 彩翔さん・桜音 れいさんの美しい歌声にも酔いしれました。
【第8章 タースト-孤高の渇き-】
舞台はアルゼンチン。
世間に、恋につかれた真風凉帆さん演じるシークが、青いスーツにソフト帽を目深にかぶりが歌いながら銀橋を渡ります。
ANJUさんの振付。
影のあるタンゴがカッコイイ!
男役の秋音光さんが美女ミマを演じました。
最後は、真風さんが星空の下、広い舞台をいっぱいに使って一人で一脚のイスを使って哀愁漂うダンス。
【第9章 リザサウンド・リッチリー -豊かに響く-】
麦芽が蒸留され熟成されて、やがて最高級のアクアヴィーテになる過程をダンスで魅せます。
宙組生は麦芽となって!
音楽には太鼓や笛の音も使われていました。
ゴールドの戦士のようなかっこいい衣装。
ヨサコイのように勇ましい激しいダンスに圧倒されました。
瑠風輝さんと夢白あやさんがロケットボーイ・ガールをつとめた白い衣装のロケットに続いては、
午前5時、朝焼け・朝もや中の舞踏会。
胸に赤い花を挿した黒燕尾の男役と、裾にかけて白のグラデーションが入ったピンクの柔らかい素材のドレスの娘役が
大階段から登場して華麗なダンスを披露。
そして、芹香斗亜さんが声量たっぷりに歌いあげる中、
トップコンビの夢のようなデュエットダンス
小春乃さよさんの美しいエトワールから琥珀色のパレードへ。
シャンシャンにはもちろんウイスキーボトルが輝いていました。