宝塚大劇場雪組公演『f f f-フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~・『シルクロード~盗賊と宝石~』

樽井美帆です

 

雪組公演

ミュージカル・シンフォニア『f f f-フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~

レビュー・アラベスク『シルクロード~盗賊と宝石~』

が、宝塚大劇場2021年の幕開けを飾る公演として1月1日(金)~2月8日(月)まで上演され、

東京宝塚劇場では、2月26日(金)~4月11日(日)まで上演されました。

この公演は、雪組トップコンビ望海風斗さん・真彩希帆さんのサヨナラ公演でした。

 

当初、2020年10月11日に宝塚歌劇団を卒業される予定でしたが、

コロナ禍で公演のスケジュールが大幅に変更になったことから半年遅れの卒業に。

 

公演は、舞台上および舞台裏での密集状況を避けるため、

1公演あたりの出演者を減らして上演されました。

また、オーケストラによる生演奏も見送られ録音演奏での上演となりました。

 

 

ミュージカル・シンフォニア

『f f f-フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~
作・演出/上田 久美子

 

音楽史に革命を起こしたルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンを

ドラマティックに描いたミュージカルです。

彼の前に姿を現した謎の女、そして彼が崇拝する英雄ナポレオンや

文豪ゲーテ達との関係を交えて紡がれるベートーヴェンの物語。

失恋、孤独、失聴・・・

あらゆる不運に見舞われ続けたベートーヴェンが、なぜ至上の喜びを歌う

「第九」を完成させることができたのか。

 

昨年2020年は、ベートーヴェン生誕250年でした。

本来は、その記念の年に上演されるはずだったのですね。

 

開演前、舞台の幕には五線譜と無数の音符が映し出されていました。

 

3人の天使によるファンファーレが高らかに鳴り響き

ここで、望海風斗さんによる最後の開演アナウンス。

「あけましておめでとうございます」というお正月公演ならではのアナウンスでした。

 

舞台上に次々に登場する白い衣装の人々。

舞台の左側から登場し、舞台奥の天国の扉へと消えて行きます。

 

そこへ、ヘンデル(真那春人さん)・モーツァルト(彩みちるさん)・テレマン(縣千さん)が登場。

彼らはなぜか行く手を阻まれ、天国への扉を通ることができません。

天国の扉を守る門番ケルブ(一樹千尋さん)から、

まだ地上にいるお前たちの後継者が、音楽を何のために使うのか、

それを見届けてから連帯して裁かれるのだと告げられるのです。

 

するとその時、下界から爆発音と同時に鳴り響く交響曲「英雄」が。

 

録音演奏のため誰もいないはずのオーケストラボックスに人影が・・・

激しくタクトを振り回す一人の男が見えます。

望海風斗さん演じるルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンです!

タタタタン・タタタタンと激しくリズムを口ずさみます。

オーケストラボックスを使った新しい演出に目を見張りました。

出演者が登場し、はける場所が一つ増えたという印象でしょうか。

そして、目の前からパッと消えてしまうというイメージも。

 

雪組『f f f-フォルティッシッシモ-』3

 

望海風斗さんが登場し歌う第一声は「ああ~」

声量たっぷりに劇場の隅々まで朗々と響き渡る歌声。

「ああ~」だけで表現される歌声に感動しました。

 

望海風斗さんが演じるのは信念のある人物で、演じるにはとてもパワーがいる役だと思います。

望海風斗さん演じるルートヴィヒの魂の叫びが痛いほど胸に響きました。

 

雪組『f f f-フォルティッシッシモ-』1

 

舞台の照明がどちらかというと全体的に暗く、

暗闇が効果的に使われていたように感じました。

耳が聞こえないルートヴィヒの不安、彼が感じている閉鎖的な世界、

そして孤独が伝わってきました。

 

真彩希帆さんが演じたのは謎の女。

基本無表情なのですが、まばたき一つからも伝わってくるものがありました。

強気な表情と美しい歌声のバランスが絶妙でした。

消え入りそうな小さな声で高音域を歌われる真彩希帆さん。

一体どこから聞こえてくるの?と感じるほどでした。

 

望海風斗さんと真彩希帆さん二人だけの場面は息がピッタリで、

何度もクスリと笑わせていただきました。

コンビを組んできたお二人だからこそ生み出せる間合いですね。

 

夢を追うルートヴィヒ対現実を突きつける謎の女。

真彩希帆さんの短いながらもインパクトある言葉の数々。

二人の関係は凸凹なのに、いつの間にか二人でひとつに見えてきました。

 

ルートヴィヒが一目置いているゲーテを演じた彩凪翔さん。

ルートヴィヒを諭すように話す説得力。

未来を見据えた助言の数々に、ルートヴィヒだけではなくナポレオンも彼を頼ったことに納得です。

重厚かつ知的で美しい存在感をまとう彩凪翔さんでした。

 

とても力強く自分の理想を追い求める彩風咲奈さん演じるナポレオン。

自分の理想と時代が追い付いてこない苦しみに葛藤する姿は、

強いだけでなく繊細なナポレオンを感じることができました。

 

望海風斗さん演じるルートヴィヒと彩風咲奈さん演じるナポレオンの

魂をぶつけ合うかのような迫力ある歌。

これまでともに舞台を作り上げてきた信頼と絆が強く感じられましたね。

 

ナポレオン戦争の場面は、舞台にも花道にも火の粉が舞い迫力満点!

盆とセリが組み合わさった舞台転換が多く迫力があました。

 

そして、ナポレオンが亡くなる場面は衝撃的でしたね!

銀橋からゴロンとオーケストラボックスへ消えていきました・・・

 

雪組『f f f-フォルティッシッシモ-』2

 

少年ルートヴィヒを野々花ひまりさん・青年ルートヴィヒは彩海せらさんが演じましたが、

ルートヴィヒの親友で医師ゲルハルトは、朝美絢さんが声や雰囲気を変えて

一人で演じられました。

ルートヴィヒが軸として感じていた身近な大人がゲルハルトだったのかもしれませんね。

朝美絢さん、声量と歌声がまたパワーアップしたように感じました。

 

ルートヴィヒのパトロン、ルドルフ大公は綾凰華さん。

美しい立ち姿と歌声が麗しかったです。

 

ルートヴィヒ初恋の人ロールヘンを演じたのは朝月希和さん。

ルートヴィヒが求めたものをすべて持った理想の女性。

聖母のような美しい歌声と存在感でした。

 

ルートヴィヒがこの世界に別れを告げる場面となるラストシーン

「最後のシンフォニー」では、ルートヴィヒに関わった人々が舞台に登場。

ルートヴィヒから謎の女へのセリフが、これまでトップコンビが歩んできた

二人の道を思わせます。

 

ルートヴィヒと謎の女が二人でピアノを弾きながら喜びを歌う場面は、

神々しく清らかで、望海風斗さん・真彩希帆さんコンビらしいラストシーンでした。

 

出演者が白い衣装で舞台に勢ぞろい。

Sinfonie Nr. 9と書かれた五線譜とベートーベンのサインが舞台上に輝きます。

銀橋にはルートヴィヒの望海風斗さん。

舞台では素晴らしい雪組のコーラスが響き渡ります。

望海風斗さんが率いてきた雪組生とその素晴らしいコーラスを背中に受けて

望海風斗さん演じるルートヴィヒは、運命を受け入れ幸せいっぱいに輝きます。

 

大迫力のエンディングでした。

 

 

レビュー・アラベスク 『シルクロード~盗賊と宝石~』

作・演出/生田 大和

 

路往く隊商を襲った盗賊は、一粒の青いダイヤモンドを手にいれる。

ある者には幸福を、そしてまたある者には悲運をもたらしつつ

幾度となく持ち主を変え、遙か古よりこの「シルクロード」を彷徨ってきた宝石の、

その煌めきの中に宿る数多の記憶を辿る旅へと盗賊は誘われてゆく…

時代と空間を超えた旅の中で綴られるストーリー性のあるショー。

この作品は演出家・生田大和さん初のショー作品でした。

 

開演前、舞台には巨大な砂時計が置かれています。

天から堕ち、地に突き刺さったかのように斜めに傾いた砂時計。

永い時や風化も感じますが、砂時計に詰まった砂はキラキラ輝いています。

この公演で退団される望海風斗さんと過ごす残り時間とも重なります。

 

砂時計がキラキラ輝き、赤い髪の彩凪翔さんが

アラビアの神秘的な雰囲気漂うメロディーを歌いショーがスタート。

優しく神秘的にいざなう、彩凪翔さんの歌声とコーラス。

「砂の海へ」という歌詞が印象的な『時の砂原』の作曲は、菅野よう子さん。

菅野よう子さんは、『花は咲く』・NHK大河ドラマ『おんな城主直虎』の音楽を担当。

また2019年、天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典にて『Ray of Water』を製作し、

指揮もつとめらられました。

 

雪組『シルクロード~盗賊と宝石~』1

 

黒い衣装とターバン姿、マントを翻し望海風斗さんの登場です。

剣を持った白い衣装の美しき盗賊たちと望海風斗さんが踊りながら、

「奪え奪え」と荒々しくかっこよく歌い、

キャラバン隊のリーダー彩凪翔さんが手にしていた『青い宝石』を奪い取ります。

 

そこへ真彩希帆さんの歌声がミステリアスに響き渡ります。

濃紺のキラキラしたドレス姿でブランコに乗って

宝石(ダイヤモンドホープ)の真彩希帆さんが登場。

真彩希帆さんはとても清潔感がある娘役さんですね。

美しさの中に宿る清々しさや優しさ、そして凛とした圧倒的なオーラ。

 

彩凪翔さんが真彩希帆さんをエスコートし、踊る時には長いマントを優しく腕にかけてあげる、

その美しい流れるような所作にもうっとり。

 

次々に銀橋で歌い継いでいく場面で披露される

煌羽レオさん・笙乃茅桜さんのデュエットダンス。

退団されるお二人の超絶リフト!

鍛え抜かれたお二人のダンスには、ただただ感動でした。

 

「夢幻蜃気楼」は、次期トップコンビ彩風咲奈さん・朝月希和さんを中心とした場面。

ブルーの衣装の次期トップコンビ。

幸せそうな笑顔と「共に生きていこうと誓う」という歌詞に未来を感じました。

穏やかなメロディーに合わせて飛んだり跳ねたり見つめあったり。

お二人のハーモニーもステキでした。

 

千夜一夜物語を題材とした場面では、

赤い羽根飾りのついた豪華なターバン、赤いゴージャスな衣装の朝美絢さんの

すべては自分のものだという自信に満ち溢れているお顔が美しかったです。

 

美しいシェヘラザード真彩希帆さんと、鍛え上げられた娘役さんのダンスに

娘役さんのカッコよさを感じました。

 

鎖につながれ苦悩する黄金の奴隷・望海風斗さんと真彩希帆さんの

美しいデュエットダンスは切なさで胸がいっぱいに。

 

インド神話の神々が登場し、踊り歌い継ぐ「サイケデリック・マサラ・カーニバル」

銀橋にズラリと並ばれた様子は、大いに御利益ありそうでしたね。

 

2010年の宝塚バウホール花組公演『BUND/NEON 上海-深緋の嘆きの河-』に由来する

上海の夜を彩るナイトクラブ大世界(ダスカ)の場面。

望海風斗さんは当時、劉衛強を演じました。

この場面でも役名はずばり劉衛強。

望海風斗さんがやってみたいと思っていた黒い役。

ファンの方からもあの役が良かった、あの役を見てファンになったという声が多かったそうです。

またこの作品は、望海風斗さんと同期入団である演出家・生田大和さんのデビュー作。

生田大和さんは、望海風斗トップお披露目公演

『ひかりふる路〜革命家、マクシミリアン・ロベスピエール〜』も担当されています。

お披露目公演も退団公演も担当されることになった生田大和さん。

ファンのみなさんの思いにこたえた場面ですね。

黒いチャイナ服の望海風斗さん。

髪をタイトにまとめ、クールで洗練された美貌が輝いていました。

真彩希帆さんが黒いドレス姿でビートがきいた曲をカッコよく

羽織夕夏さん・有栖妃華さんとともに歌われます。

退団公演でも新しい真彩希帆さんを見せてくださいましたね。

 

「世界の再生」では、望海風斗さんは黒・真彩希帆さんは濃紺の衣装。

手を取り合い踊る姿、見つめる方向、息遣い、これまでコンビを組んできた

お二人が表現する世界に引き込まれます。

望海風斗さんの力強く響き渡る歌声、真彩希帆さんの消える時も美しい高音、

トップコンビの叫びとも感じられる素晴らし歌声にただただ感動しました。

 

盗賊と宝石は、二人だけの最後の旅に出ます。

後に続く人々に夢を託して・・・

望海風斗さんと真彩希帆さんが育てた大きく美しい木が茂り、

白い二羽の鳩の次期トップコンビ彩風咲奈さん・朝月希和さんが踊ります。

黒い衣装の争いのコロスも笑顔で。

 

時を超え、場所を変えて、キャラバンはまだまだシルクロードを行く。

彩凪翔さんは、笑顔で「じゃあね」という言葉を残して・・・

 

望海風斗さん最後の黒燕尾群舞は、飾りの付いていないシンプルな黒燕尾。

望海風斗さんが1輪の青い花持って、

同じく青い花を1輪ずつ持った青いドレスの娘役さんに囲まれて踊ります。

穏やかな愛いっぱいの包み込むような笑顔で。

続いて、黒燕尾の男役さんとの群舞に変わると望海風斗さんの表情は凛々しく。

望海風斗さんの背中を見てきた男役のみなさんの眼差しと、

これからの雪組を仲間に託す望海風斗さんの思いがキラキラ輝いていました。

彩風咲奈さんに青い花を手渡し去って行く望海風斗さん。

彩風咲奈さんを中心に、望海風斗さんの背中を追いかけるかのようにたくましく踊ります。

 

真彩希帆さんが白いドレスで銀橋に登場。

彩風咲奈さん・彩凪翔さん・朝美絢さんと次々に組んで踊ります。

彩風咲奈さんにリフトしてもらっていると大階段から望海風斗さんが。

 

望海風斗さん・真彩希帆さんが二人で手をつないで階段を下りてきます。

白い衣装の二人がスモークがたかれる中「時には昔の話を」という

優しい音楽にのせて最後のデュエットダンス。

戦友とお互いを表現したお二人ならではの、お互いをたたえ合い信頼しあうダンスでした。

 

雪組『シルクロード~盗賊と宝石~』2

 

パレードでも真彩希帆さんの美しい高音ソロが、

雪組のみなさんの歌声の中からキラキラ浮かび上がりました。

 

劇場中を優しく全力で見渡しながら笑顔で手を振る望海風斗さん。

ゴージャスな衣装にも煌びやかなライトにも負けない光を放っていらっしゃいました。