宝塚大劇場花組公演『エンジェリックライ』・『Jubilee』
樽井美帆です
花組公演
ファンタジー・ホラロマン『エンジェリックライ』
レヴュー グロリア『Jubilee』
が、宝塚大劇場にて9月28日(土)から11月10日(日)まで上演されました。
花組新トップコンビ永久輝せあさん・星空美咲さんの大劇場お披露目公演です。
この公演で、綺城ひか理さん・泉まいらさん、
専科の凪七瑠海さんが退団されます。
千秋楽には凪七さんのサヨナラショーが行われました。
ファンタジー・ホラロマン『エンジェリックライ』
作・演出/谷 貴矢
天界一の大ホラ吹き天使アザゼルは、人間たちへの尽きない興味から、
下界の人間の動向が全て記録されている天界戸籍台帳に手を触れてしまいます。
天帝の怒りを買ったアザゼルは、天使の称号と一切の能力を封じられ、
人間界に堕とされてしまいます。
アザゼルが堕ちた場所は、美しい海に浮かぶラズーリ島。
大宝石商フェデリコがオーナーをつとめるリゾート「エンピレオ」の
完成記念セレモニーの真っ只中。
アザゼルは自分が天使であることを説明しますが、誰も信じてくれません。
エンピレオの伝説の秘宝ソロモンの指輪を狙う盗賊エンジェルシーフを名乗る
トレジャーハンター・エレナに出会ったアザゼル。
天使や悪魔も従えることができるというソロモンの指輪の力があれば、
天界に戻れるかもしれないと考えたアザゼルは、エレナに一緒に指輪を盗み出さないかと提案。
エレナは戸惑いながらも協力を誓います。
ですが、この指輪の影には悪魔フラウロスの存在が・・・
大宝石商フェデリコを利用して魔界を牛耳ろうと目論む悪魔フラウロス。
そしてフェデリコもまた自らの望みを叶えるべく、
悪魔と知った上でフラウロスと手を組んでいたのでした。
人間、天使、悪魔が入り乱れる騙し合い。
果たしてアザゼルは、無事に天界に帰れるのでしょうか。
開演前の舞台には、爽やかで美しいブルーと白を基調とした映像が映し出されています。
白い花、白い鳥、薄っすらと建物も見えます。
どうやら天界のようです。
新花組トップスター永久輝せあさんによる開演アナウンスの途中から、
讃美歌のような美しいコーラスが聞こえてきます。
舞台は神々しく透明感のある照明で明るく光り輝き、白い衣装の天使たちで埋め尽くされ、
人間観察省に就職したばかりの新米天使たちに働く上での心構えが説明されています。
「分かりましたか?」と言われて新米天使たちが可愛らしく「はい」と返事をする中、
「退屈そうな仕事だなぁ」という声が。
永久輝せあさんの声は聞こえるのに姿が見えません。
どこにいるの?と探していると、頭からかぶっていた白いマントを脱いで
アザゼル・永久輝さん登場!
白いライダースジャケット・白いパンツ・白い編み上げロングブーツ・美しいシルバーヘア。
令和の天使、宝塚歌劇の天使はなかなかハードな衣装です🤩
他の天使とは衣装のテイストが違いますし、ヘアスタイルも毛先の遊びにやんちゃさが見えます。
ビートがきいた曲を、ファルセットも聞かせたり、
イエ~イと叫びながらロック歌手のように歌って暴れます。
永久輝さんの明るい声と屈託のない笑顔から、やんちゃだけど悪気のない天使なんだなと感じました。
永久輝せあさんさんが演じたのは、天界一大ホラ吹き天使・アザゼル。
爽やかで可愛くて憎めないオレ様天使。
天界から堕とされて、リゾート「エンピレオ」の完成記念セレモニーの真っ只中に到着した場面では、
オーケストラボックスからヒョッコリ顔を出して登場。
「これはひょっとしてみんなオレに注目してるのか!」ととっても前向き。
思わず「そうだよ~」と言ってあげたくなってしまいました😊
ずっと大きく全身を動かしている永久輝さんのアザゼル。
天使の能力を一切封じられているので、人に何かを伝えるのに一生懸命なのかなと感じました。
時に子どものように、時に頼もしく、色々な動きをするアザゼルが楽しめます。
この公演で退団される綺城ひか理さん演じる天帝の右腕ラファエルとの場面は、
同期生ならではの距離感やコンビ感、ケンカはするけどお互いを思い合っていて
引きずらずに仲直りするところが親友であり兄弟のようで微笑ましかったです。
星空美咲さんは、秘宝ソロモンの指輪を狙うトレジャーハンター・エレナ。
ヘアスタイルがピンク色のボブ、オレンジがかったロングヘア、栗色のボブ、
衣装もかっこいいものからベレー帽にミニスカートという可愛らしいものまで、
またメガネをかけたりと、同じ人物だと分からない変身レベルで髪型も衣装も
色々と変えられますがどれも可愛くてキュート🥰
きっぱりハッキリした勢いのある話し方が、星空さんの澄んだ声によく合うなと感じました。
ピョンピョン飛び跳ねているような元気でフレッシュな永久輝さん・星空さんコンビ。
ファンタジーの世界がよくお似合いだと思いました✨
二人ならどこへ行ってもそこが天国だ、そう断言できるぜ!
君に惚れたからさ。
など、新しいスタートを感じさせるセリフの数々も。
専科の凪七瑠海さんが退団公演で演じられたのはフェデリコ。
エンピレオのオーナーで一代で財をなした大宝石商。
ソロモンの指輪を所持しています。
ミラーボールが青く輝く中、豪華な白いジャケット姿で登場。
ライオンのタテガミのようにカッコよく後ろに流したヘアスタイルとあごひげ。
ただ者ではないカリスマ性とオーラを放つ凪七さんのフェデリコ。
なめらかでよく響く歌声がステキ😍
「七つの海を閉じ込めた瑠璃色の輝き」と歌い出された時、
歌詞に凪七瑠海さんが表現されていることに気づき涙があふれました。
私は、役によって歩き方を変える凪七さんのお芝居が大好きでした。
今回のフェデリコの歩き方は、カリスマ性とオーラをまとった人物ならではの広い歩幅、
なめらかで自信に満ちた、でも優しい歩き方だなと思いました。
目のお芝居も大好きでした。
フェデリコは、ギロッでもなくジロッでもなく、グーッと奥まで見抜くような圧を感じる目力。
でもその奥には輝きと優しさも感じました。
ゆっくりとしたまばたきにも男役の色気が漂っています。
娘を思う深い愛情がこもった目もステキ🤩
フェデリコの若い時代の回想シーンでは若々しく瞳を輝かせ、
声も明るく演じていらっしゃって、渋い凪七さんのお芝居だけでなく若々しいお芝居も、
最後に一つの公演の中で観ることができてとてもしうれしかったです。
人間に扮した悪魔フラウロスを演じられた聖乃あすかさん。
人間の時はフェデリコの秘書・ラウロの姿です。
赤のヒョウ柄のスーツにめがね姿の美しき悪魔。
人間の姿の時と悪魔の姿になった時では表情、特に目が違います!
永久輝さん演じるアザゼルは全身を大きく動かしていますが、
フラウロスは少ない動きで表現しているように感じました。
肩の使い方に悪い人オーラがねっとりと出ていました。
悪魔に変身してからは赤くて長いツメで攻撃的な目とお芝居。
声量も大きくなり、語尾もねっとり。
見た目だけではなく、声の表現でも人間に扮している時と悪魔に変身した時を
演じ分けていらっしゃると感じました。
ラストは、アザゼルとエレナが銀橋で二人の未来を歌いあげ、
新しい花組の魅力の虜になった客席を駆け抜けていきました。
スピード感のあるトップコンビが通り抜けたあとには、心地よい風が感じられました。
レヴュー グロリア『Jubilee(ジュビリー)』
作・演出/稲葉 太地
『Jubilee』は記念祭や祝典を表す言葉。
宝塚歌劇110周年、そして永久輝せあさんと星空美咲さんの新トップコンビ率いる
新生花組誕生をお祝いするレヴューです。
花園の紳士・希波らいとさんが奏でる角笛が奏でるファンファーレでスタート。
「彼がここに生まれる、夜明けとともに、ここから新たな日がはじまる」と
美しいコーラスに乗せてせり上がってくるプリンス永久輝せあさん👑
組子のみなさんも一斉に舞台に駆けだしてきます!
永久輝さんは白い衣装、ピンク・グリーンなどのラインストーンでお花がデザインされた輝く衣装。
新たなプリンスの登場です✨
華やかな笑顔とビシッとキリッとした永久輝さんの背中が新たなプリンス感にあふれています。
星空美咲さんも白いドレスでスカート部分はチュチュ、
ピンク色の立体的なお花の飾りが付いています。
頭にも白いリボンとピンクのお花が付いていてお人形さんのような可愛らしさ。
組子のみなさんの衣装はパステルピンク。
男役さんの変わり燕尾のジャケットの裾にたっぷり軽やかなフリル、
娘役さんのドレスのスカートの部分はチュチュになっていて立体的なお花の飾りがついています。
専科の凪七瑠海さんもピンクの衣装で、キラキラの笑顔で優雅に舞い、
愛が詰まった歌声も響かせていらっしゃいます。
みなさんが踊ると衣装と手に持った羽根扇がふんわりと舞い、舞台がピンク色の花園のよう🌸
クラシック音楽がアレンジされたものが使われているショーでした。
Secret Garden(秘密の祝祭)
黒いスーツの永久輝さんと赤いスーツの男役さんが秘密の祝祭を繰り広げます。
待ってましたのスーツ姿の永久輝さん、とても新鮮でステキでした😍
うつむいた時に、ちょっと苦しそうに眉間にしわを寄せるのがなんともセクシー。
細かくリズムを刻むダンスですが、みなさんのダンスがスマートで繊細で優雅。
最後は、オラオラ言いながら銀橋と花道にズラリと並んでポーズ。
花男のみなさんの色気と迫力にクラクラです。
一人の旅人と美しい極楽鳥の場面。
旅人は凪七瑠海さん、極楽鳥は美羽愛さん。
エメラルドグリーンの宮廷服に白いロングブーツ、金髪ロングヘアの凪七さん。
銀橋に座って優雅に歌う凪七さんは、まさにおとぎ話の王様のよう。
指先まで美しく優雅な動き。
極楽鳥の美羽さんを見つめる瞳は、とても優しく愛にあふれていました。
みなさんの衣装も照明もゴールドで眩しい場面。
永久輝さんの美しい男役姿、明るい笑顔。
花組のみなさんがその周りで明るく華やかに元気に歌い踊ります。
ゴールドの衣装の永久輝さんが途中でパープルのベルベット調の衣装に着替えられますが、
とてもよくお似合いで本当に上品!
永久輝さんとベルベット調の衣装、私は今後ちょっとハマってしまいそうです😊
歌とダンスに疾走感を感じていると、花組のみなさんが客席へ。
花組のみなさんと一緒に楽しくリズムにのって楽しいひと時!
キラキラの笑顔と歌声を間近で感じるひとときです。
恐怖に怯えた人々を自由に導く男・凪七瑠海さんとともに
自由な心を取り戻し光へ向かって羽ばたいていく場面。
ゴールドの衣装の凪七さんとシルバーの衣装の花組のみなさん。
すべての動きから思いが伝わってくるダイナミックながら繊細で優雅で丁寧な凪七さんのダンス。
コーラスに決して埋もれてしまわない凪七さんの歌声。
夢と希望にあふれた瞳と美しい舞台姿。
凪七さんの舞台からはいつも、宝塚歌劇の伝統そしてどこか懐かしさも感じつつ、
必ず新しさも感じさせていただいたなと感じました。
大きな王冠のセットが登場する戴冠式の場面。
新たな王・永久輝せあさんが司祭から冠をいただこうとしています。
王は喜びの表情ではなく、自分の前を通り過ぎ、戦いつづけた人々、そんな人々を思い歌い出します。
永久輝さんの表情にグッときます。
冠は自分一人のものではなく、脈々と繋がれた人々、
そして今王の周りに集まるすべてのひとのものであると固い信念を持ち、
大勢の人々と未来を見据える決意をする王。
永久輝さんは白に豪華なゴールドの飾りがついた衣装。
王妃・星空美咲さんは真っ白なドレスにティアラ。
男役さんはアイボリーとラベンダー色の軍服にマントを肩掛け。
娘役さんは紫色のドレス。
夢の世界、おとぎ話のような世界が繰り広げられます。
新たな扉が開くと歌われる中の戴冠式。
王冠をかぶった王・永久輝さんはグッと凛々しいお顔をされていました。
新しい花組の歴史のはじまりを見届けることができた喜びに胸が熱くなる場面です。
大階段の中央に赤い衣装の凪七瑠海さんが一人立ち、赤い衣装の淑女たちに囲まれる
かっこよく凛々しい情熱的な場面。
16人の淑女たちの熱い思いを一身に受け止める凪七さん。
「私の愛したとこしえの花園よ、いつまでも燃えさかれ」
と、凪七さんからのメッセージが熱く歌われました。
凪七さんが魔法の矢を放つと、永久輝せあさんと男役さんが大階段から降りてきます。
赤から一転、黒燕尾の場面。
曲は威風堂々。
エレガントで優雅な音楽に合わせて、永久輝さんを中心に大階段上で
美しいフォーメーションを保ったままダンスが披露されます。
音楽と花組男役のみなさんの気迫が見事に一体化した、感動的な群舞でした。
トップスターさんによって黒燕尾群舞はカラーが変わりますよね。
永久輝せあさんが一人残った舞台に、大階段の上から黒燕尾で降りてこられた凪七瑠海さん。
目と目で語り合いながら踊るお二人。
固く手を取り合ったり抱き合って讃え合ったり。
伝統と思いを託し託されるお二人の絆を感じる美しいダンスでした。
青く輝く大階段を黒と白のドレスの星空美咲さんが降りてきます。
スモークがたかれる中、トップコンビとして大劇場での初めてのデュエットダンス。
新しい王と王妃のデュエットダンスです。
はじめまして、よろしくねという雰囲気の振付もあってとても初々しく感じました。
幸せの絆も見えました。
パレードでは、白とブルーのグラデーションの衣装に、
キラキラの雉羽根が飾られた白い羽根を背負った永久輝せあさん。
凪七瑠海さんは、紫色のストーンが付いた白い衣装で白い羽根を背負われています。
大階段を下りて挨拶をされて、列に戻るため後ろを向く直前の笑顔がステキで、
私は大好きでした。
笑顔と気品ある舞台姿、忘れません。
白とピンクで舞台がいっぱいのお花畑のようなパレードでした。
新トップスター永久輝せあさんを中心とした花組で、
これからどんな花を見せていただけるか楽しみです。
東京宝塚劇場では、12月7日(土)から2025年1月19日(日)まで上演されます。