宝塚バウホール 雪組公演 バウ・ミュージカル・プレイ 『Sweet Little Rock ‘n’ Roll』
宮村裕美です
現在、宝塚バウホールで上演中の
雪組公演
バウ・ミュージカル・プレイ
『Sweet Little Rock ‘n’ Roll』
今回の公演にて初のバウホール公演
主演を務めるのは、縣千さん。
ヒロインを務めるのは、夢白あやさん。
この公演の脚本・演出は中村暁さん。
物語は、シェイクスピアの
「から騒ぎ」を下敷きに、舞台を1950年代の
アメリカに移してハイスクールに通う若者たちの恋模様を描いた作品。
1985年に月組で上演されたこの作品が、
2022年版にリメイクされています。
この公演を一言で表すなら、
まさに青春ミュージカル!
とにかくキラキラとした
輝かしくて眩しい学園生活が繰り広げられ、
アメリカのハイスクールって
こんな感じなんだろうなと想像できる
とてもポップな世界観です。
その世界観を表すように、開演5分前には
舞台の幕が開き、目の前の舞台には
大きなジュークボックスが。
そして、そんなジュークボックスには
雪の結晶もデザインされています。
幕が開いて、縣さんが飛び出すように
軽やかに踊りだすのですが、
パッションと若さ溢れるはじける踊りに
元気をもらえるのはもちろん、
その明るさと元気さに
ついついマスクの下でも笑顔がこぼれます。
今回の公演は、どの場面も衣装が鮮やかで、
娘役皆さんの踊った時に
ふんわりと広がるスカートはもちろん、
ロックンロールな男役皆さんのリーゼント姿など
皆さんのビジュアルが
かっこよさと可愛さに溢れて、
どこを見ても幸せになれます
逆に言うと、いつもの公演以上に目が足りません。
そんなとっても楽しい
出演者皆さんによるダンスの後は、
縣さん演じるビリーが、リールハイスクールに
転校してくるところから物語は始まります。
夢白あやさん演じるシンディーは、
とってもキュートなのに理想が高く
大人ぶっているところに
まだまだ子供なところがあり、
縣さん演じるビリーとは、顔を合わせば喧嘩ばかり。
しかし、世話好きなフットボール部のコーチ
真那春人さん演じるフレディ先生は、
ビリーとシンディーはお似合いのカップルでは?
と、閃きます。
喧嘩ばかりの二人はどのようにして距離を縮めるのでしょうか。
ということで、甘酸っぱい青春物語そのものですよね。
心には熱いものがあってもかっこをつけ、
クールを装うビリーを演じるのは、縣千さん。
シンディーに対して気取った態度を
取りつつも、メアリーにアタックできない
ロバートのために
二人をくっつける計画を立てたり、
ロッキーとミリーの仲が危うくなるも
原因を解決しに行動を起こしたりと、
仲間のために動く、芯はとっても熱い
仲間思いな性格で、それでいて優しさを持っています。
フレディ先生たちの計画によって
シンディーが自分のことを好きだと勘違いして、
シンディーに分かりやすく優しくなる姿や
素直なところがこれまた可愛らしく、
縣さんのチャーミングなところが役として活きていました。
かっこをつけたり悪ふざけしてみたり、
舞台に生きるその姿は
まさに男子高校生そのままのように、
ナチュラルに学生として日常を送る姿が印象的でした。
ビリーとお似合いなはずなのに
喧嘩してばかりのシンディーを演じるのは、夢白あやさん。
男の子に対する理想が高く、
見た目はキュートなのに
かなり高嶺の花感が強く
普通の男の子ではひるんでしまう
ちょっぴり強めの女の子。
どの衣装もまるでお人形のように着こなし、
とびきり可愛らしいシンディーに
私もついつい夢中になってしまいました。
しかし、華奢な体や可愛らしいお顔から
飛び出す言葉は、かなり激しめです
そんなシンディーも、ビリーが自分のことを
想ってくれていると知ってからの姿は、
背伸びせず等身大の素直で可愛い女の子で、
二人が笑いあう姿には幸せが溢れていました。
なかなか想いを伝えられない
ロバートを演じるのは、彩海せらさん。
音彩唯さん演じるメアリーが好きなのですが、
奥手なロバートは見ているだけで手いっぱいです。
しかし、勇気を出して声を掛け、
ビリーたちの作戦通り…とはいきませんが
メアリーを助けたことによって、二人はカップルに。
メアリーに夢中な彩海さんロバートも
可愛らしいですが、ロバートに守ってもらい
幸せそうにのろける音彩さんメアリーも
とびきり可愛く、二人の初々しい距離感にときめきます
ロバートとメアリーカップルは、
それはそれは優しく穏やかな空気が流れる
陽の光に包まれたような
とても温かなカップルで、二人が目を合わせて
微笑む姿に、こちらまで微笑んでしまいます。
一途な気持ちはピュアそのもの。
ロッキーを演じるのは、眞ノ宮るいさん。
華純沙那さん演じるミリーが好きなのですが、
無事カップルになるも、そこから事件が起こります。
天月翼さん演じるぐいぐいジョーは、
ミリーのことが好きで、想いを伝えるもあっさり玉砕。
その腹いせに、ロッキーとミリーの仲を
引き裂こうと計画を企てます。
チンピラに憧れているという
眞ノ宮さんロッキーは、リールハイスクールの
生徒の中でも、特にやんちゃな見た目で
リーゼント姿がワイルドなのですが、
笑った時の笑顔は幼さを残し、
かっこよくもあり、可愛さもあります。
そして何より、大好きなミリーに向ける笑顔が
とてもとても甘く、
ミリーの頭に手を添える姿など
頑張ってリードしているところが、
これまたキュンとしてしまう、ロッキーとミリーカップル。
そんなロッキー率いる
一禾あおさん演じるマットと
壮海はるまさん演じるジュニアの3人組が、
かっこいいのに可愛さと面白さを秘め、
とても愛おしい三人組でした。
特に、ロバートとメアリーのやりとりを
遠くからサングラスを掛け、
ビリーと共に見守る姿は、とびきり可愛らしくて印象に残っています。
今回の公演はほとんどの出演者が
高校生役なのですが、魅力的だったのは
高校生たちだけではありません。
上級生の皆さんが演じる、大人たちも
とっても魅力的なキャラクターばかりでした。
リールハイスクールの校長先生、
グッドマンを演じるのは、奏乃はるとさん。
語り部のように、物語の大切なところで
お芝居を締めるのはもちろん、
転校してきたばかりのビリーに
声を掛けるのですが、その言葉たちが心に響く言葉ばかり。
「世の中には理不尽なことが多いが、
それでも美しい瞬間というものもあるんだよ。」
「自分の興味があるものを
別の角度から見る人がいるってことは面白い」
「誰かに出会うことや何かを見つけることで、
そんな(自分をあっとのけぞらせてくれるよう
な出来事があるなんて期待していない)
思い込みが変わるかもしれない」など、
言葉の意味もそうですが、さりげなく
大切なことを言うところに
校長先生の優しさを感じます。
温かく生徒たちを見守る姿は、
まさに雪組組長としての奏乃さんそのもの。
フットボール部のコーチ
フレディを演じるのは、真那春人さん。
とにかく動作やリアクションがオーバーめで、
愛すべきお節介という世話好きで距離感が近めの先生。
生徒のためを思い、様々な計画を立てる姿は
とても優しく生徒思いないい先生。
こんな先生がいたら、
どんなことも相談しやすそうですし
より学校生活が楽しくなりそうですよね。
登場してきたときから個性強めなのは、
教務主任のマクリーンを演じる、愛すみれさん。
とっても陽気でチャーミングで、
たまに勘違いしてしまうような
おっちょこちょいなところもありますが、
フレディ先生同様、生徒に寄り添ういい先生です。
実は…いい仲になるのは、生徒だけではありません。
先生たちのやりとりもとっても可愛らしいので、
ぜひ様々な高校生カップルたちと共に、
見守り・ご注目していただけたらなと思います。
そしてこの公演は、フィナーレがあります。
物語が終わり、一度幕が閉まるのですが、
続いて開いた時には
男役の皆さんが倒れた状態で
音楽と共に縣さんが起き上がります。
設定はなんとゾンビだそう。
心臓の鼓動の音が流れ
この曲は!!と思ったのですが、
韓国のダンス&ボーカルグループ
2PMさんのハートビートを踊られます。
とにかく激しく、縣さん率いる男役さんたちの
キレのある振りが次々に繰り広げられるので、
見ているこちらも息をするのを忘れそうなほど
あっという間の時間でした。
荒々しい振り付けはもちろん、
凛々しくも苦しげな表情と
色気たっぷりの皆さんに心を奪われます。
そんな激しいパフォーマンスの後には、
爽やかなブルーの衣装に身を包んだ
彩海せらさんが登場されます。
オシャレな音楽に合わせて
伸びやかな歌声を披露されるのですが
この歌声があたたかく、バウホールの
客席全体に向けるまなざしは、とても優しげで
キラキラとした笑顔がより輝いて見えました
曲の最後には真っ赤なドレス姿の
夢白さんが登場され、彩海さんと夢白さん二人で踊られます。
続いて、夢白さん率いる娘役の皆さんでの群舞。
赤を基調としたドレスに
黒がポイントとなった形で、
左肩に黒いリボンがデザインされており、
背中まで長さのあるリボンのひもが
舞うたびにふわりと一緒になびき、
より皆さんの背中の美しさが強調されていました。
この公演に出演されている娘役全員が
この場面に出られているということで、
脚を高く上げて下ろす際のスカートの広がりや
スカートさばき、手を挙げた際の
指の先まで美しいポージングと、
娘役皆さんの美学がつまった非常に素敵なダンスでした。
中央で踊る夢白さんの麗しい表情や、
体感の強さを感じる
一つ一つのポーズの美しさはもちろん、
周りで踊られている皆さんの表情も魅力的で、
まさに華やかなで煌びやかな空間とはこのことを指すのだなぁと。
そんな華やかな場面の後は、男役の皆さんによる群舞。
衣装は黒燕尾なのですが、首元には
ピンクがアクセントになっており、
黒のリボンが付いていて
クラシカルながらも可愛さも併せ持ったデザインでした。
縣さんがバラを投げるところから始まるという
始まり方も力強く美しいのですが、
脚を高く上げる振りや、男らしいワイルドな
振り付けはもちろん、縣さんの美しい手が活きる
クラシカルな振り付けなど、男役“縣千”の魅力が
ふんだんに詰め込まれており、
まさに縣さんの魅力を引き出す男役群舞。
下級生の皆さんが多いながらも、
気持ちを一つに集中させ
心を込めて踊られているのが伝わってくる、とても素敵な群舞です。
特に印象に残っているのは、
男役皆さんに囲まれ、真ん中で踊っている時の縣さん。
表情、目線、手の角度など、まさに全てに
男役としての魅力があり
瞬きを忘れそうになるほど、視線を奪われました。
この華やかさとかっこよさには、
縣さんがこれまで築いてこられた
男役としての努力とこだわりを感じます。
そしてフィナーレ最後は、デュエットダンス。
裾にはファーがついた、
パステルピンクのドレスの夢白さんが登場されます。
縣さんの燕尾の首元と
ポケットチーフのピンク部分と、
夢白さんのドレスがリンクしており
二人そろって完成形のような素敵な衣装でした。
息のピッタリ合った振りに、まるでこの世に
重力がないかのような高く軽やかな美しいリフト。
デュエットダンスだけではなく、
お芝居中も、何度も何度も
夢白さんを持ち上げる縣さんですが、
どの場面も二人の美しい体勢はもちろん、
表情も完璧そのもので
まさに夢のようなデュエットダンス
これまでの公演にて、様々な場面で
組まれてきたことのあるお二人だからこその、
とても安心するお似合いの空気感で、
幸せそうなお二人の表情に
ときめきで胸がいっぱいになりました
プロローグから、フィナーレまで
縣さん率いる雪組の若さ溢れるバウホール公演。
出演されている皆さんが、等身大の姿で
役として全力で生きる姿が、成長途中の
下級生皆さん自身を表しているようで、
微笑ましくて甘酸っぱくて
かっこよくてキュートで、
まさにキラキラとときめきが溢れる作品でした。
また、下級生の全力で真っ直ぐな姿はもちろん、
そんな下級生皆さんを、とても温かく
優しく包み込むように、見守りながらも支え
舞台を締めてくださった上級生の皆さんと、
まさに雪組の魅力そのものが
つまっているかのような温かな空間にも、
心がぽかぽかとしました。
現在、宝塚バウホールにて上演中の
雪組公演 バウ・ミュージカル・プレイ
『Sweet Little Rock ‘n’ Roll』は、
1月25日(火)までの上演です。
千秋楽、1月25日(火)の14:30公演は、
タカラヅカ・オン・デマンドにて
ライブ配信が行われます。
詳しくは、宝塚歌劇の公式ホームページをご確認ください。