梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ月組公演 『ブエノスアイレスの風』-光と影の狭間を吹き抜けてゆく…-

樽井美帆です

 

梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて、5月18日(水)から5月26日(木)まで、

月組公演『ブエノスアイレスの風』-光と影の狭間を吹き抜けてゆく…-

が上演されています。

 

出演は、主演の暁千星さんをはじめ月組生25名と専科から凛城きらさん。

作・演出は、正塚晴彦さんです。

 

日本青年館ホールにて、5月3日(火)から5月10日(火)まで上演され、

続いて梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演されています。

 

暁千星さんは、宝塚バウホール以外の劇場で初主演。

また、東上公演初主演です。

 

暁千星さんといえば、みなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか?

かわいい笑顔、明るいオーラ、キラキラ王子様、丸いクリクリした愛らしい目、

弟的な雰囲気・・・などではないでしょうか?

 

今回の公演では、今までのそのイメージを封印です!

 

新たな暁千星さんの魅力に引き込まれる舞台。

 

『ブエノスアイレスの風』-光と影の狭間を吹き抜けてゆく…-は、

紫吹淳さん主演で1998年に月組で初演。

2008年には、柚希礼音さん主演で星組公演として再演。

そして、今回月組で再び上演されています。

 

作・演出の正塚晴彦さんはプログラムに、初演、再演をご覧になった方も、

今回、このカンパニーで創り上げる『ブエノスアイレスの風』を、

真っ白な気持ちでご覧いただけたら幸いですと記されています。

 

月組と星組にご縁のある作品。

5月26日の千秋楽翌日付で、月組から星組に組替えとなる暁千星さんが主演されることも、

またご縁を感じますね。

 

舞台は、1900年代半ばのブエノスアイレス。

長く続いた軍事政権が倒れ、総選挙によって新しい大統領が選出された頃。

反政府ゲリラのリーダーで政治犯として囚われていたニコラス(暁千星さん)が、

特赦により7年振りに出所しました。

新しい人生を歩みだそうとしているニコラスは、職を求めて街のタンゴ酒場にたどり着きます。

そこでダンスの才能を買われ、タンゴ酒場の花形ダンサーであるイサベラ(天紫珠李さん)の

パートナーとして雇われることとになりました。

イサベラと心を通わせるうちに、ニコラスの新しい人生はうまくいきそうに見えたのですが、

かつての闘争仲間でニコラスの親友だったリカルド(風間柚乃さん)が現れたことで、

事態は少しずつ狂い始めます。

目標を失い新しい生き方が見つけられず追い詰められているリカルドは、

昔のようにニコラスと共に戦うことを望んでいたのです。

「時代は変わった」と諭すニコラスの言葉を受け入れることができないリカルド。

実はリカルドはニコラスにも内緒で、妹のリリアナ(花妃舞音さん)と共に、

銀行を襲撃する計画を立てていたのです。

それはやがて悲劇の引き金となるのですが・・・。

 

開演5分前、舞台上の街頭に灯りがともりアルゼンチンタンゴの調べが流れてきます。

 

暁千星さんの開演アナウンスに続き、美しい歌声が聞こえてきます。

 

『ブエノスアイレスの風』といえば、名曲「ヴィエント・デ・ブエノスアイレス」。

舞台はこの「ヴィエント・デ・ブエノスアイレス」で始まり、

「ヴィエント・デ・ブエノスアイレス」で終わります。

 

タンゴ酒場の歌手フローラがソロで歌うナンバーです。

初演は矢代鴻さん、再演では音花ゆりさんが歌われました。

今回は、晴音アキさんが歌っていらっしゃいます。

 

晴音アキさんは、歌声だけではなくたたずまいも表情も美しいですね。

低音も高音も美しく響く愛がこもった本当にステキな歌声。

晴音アキさんの歌声は、いつもその場面をステキに彩りますよね✨

 

この公演には、常にといっていいほどバンドネオンの調べが流れています。

バンドネオン弾きを演じたのは、大瀬いぶきさん。

場面によって様々な印象の音色として胸に響きます。

 

そして、いつも舞台のどこかでタンゴが踊られています。

 

また、舞台の照明は常に暗く、夜空には星がたくさん輝いています。

 

場面によって柱や壁に変化するセットの中に様々な色の照明が灯り、

少ない転換で場面の雰囲気が表現されていました。

 

スーツやドレスなどの衣装の色も明るいものではなく、

暗めの舞台に落ち着いた美しさを漂わせていました。

 

舞台上の人物の動きも多くなく、会話のやりとりで魅せる正塚晴彦さんのお芝居の魅力が

堪能できました。

ええ、ああ、まあ、うん、そうかという言葉ではなく相槌が多いんですよね!

 

特に暁千星さんと風間柚乃さんの会話のキャッチボールが私は心地よくて、

お二人が組むお芝居がこれで最後だと思うととても残念でもあります。

 

そして、この月組公演は、出演者のみなさんがかもし出す、

会話のないところで漂う空気感がとてもステキだなと感じました。

 

主演の暁千星さんが演じたのは、元反政府ゲリラのリーダー・ニコラス。

 

登場は、黒の革ジャケット、黒のズボン、白いシャツ。

髪の色も黒く、左側の前髪を少しだけ垂らしていますが、あとはピタッとなでつけられています。

襟足が長めでセクシー。

お顔の色も濃いオークルにされ眉も太く、とても精悍な雰囲気が漂っていました。

登場の場面から、暁千星さんの新しい魅力を感じます。

 

月組『ブエノスアイレスの風』1

 

求人を見て来たとタンゴ酒場に入ってきて、経営者の凛城きらさんの面接を受けます。

ここへ来るまでは何をしていたか聞かれ「別に」と答えるのがカッコイイ💗

私が面接官なら即採用です!

 

バーテンの彩路ゆりかさんに「諦めた方がいいな、踊れないんじゃ」と言われ、

「踊れないとは言ってない」とイサベラ(天紫珠李さん)のもとへ歩み寄り

タンゴを踊る姿がスマートで包容力があってステキ💘

イサベラが一瞬で、もっと一緒に踊りたいと思ったことに納得です。

 

彩路ゆりかさんは、ちょっと天然な雰囲気のかわいいバーテンで、

登場するたびに舞台上の人物や客席をふわっと包んでいました。

 

バーテンの服装をした暁千星さんもカッコイイですね💛

白いエプロン、白いシャツ、黒のベストでバーカウンターにいる姿。

バーカウンターからちょっと身を乗り出している姿。

モップ掛けしている姿も最高でした!

 

サスペンダーを付けた黒のパンツ、胸元にフリルの付いた白いシャツ姿の暁千星さん。

サスペンダーにはかわいい要素があって、暁千星さんの魅力をより引き立てていたと思います✨

 

マンガから飛び出してきたような等身の暁千星さんのロングコート姿も最高でした。

 

お芝居が中心の作品なので、歌う場面はとても少ないのですが、

暁千星さんの朗々とした歌声が場面を盛り上げ引き締めていたように感じました。

 

歌を歌われる場面は少ないのですが、かっこいいタンゴを披露される場面は多いです。

身体の軸がビシッと美しい、キレキレのダンス。

気持ちがいいほど足もピーンと上がります。

重心の移動が美しくて、暁千星さんのダンスにグイグイ惹きこまれます。

 

月組『ブエノスアイレスの風』2

 

前を向いて表情でのお芝居だけではなく、背中のお芝居もステキでした。

様々な経験や感情を乗り越えてきた男の美しくも悲しい背中を感じました。

 

優しく相手の背中に添えたり、座った時に自分の前で組んだり、

暁千星さんの手のお芝居もステキだなと思いました。

 

相手を諭す時の優しい言い方も大人の男の魅力が漂っていました。

 

過去に大きな出来事があり、自分の力の限界を知った諦めや憂いなどが、

相手を見つめる眼差しから感じられました。

 

色々な経験をしてきたからこそ、過去を背負っているからこその声、眼差し、表情、仕草。

 

大切な人を亡くした経験があるからこその愛や優しさも、お芝居やたたずまいから感じました。

 

リカルド(風間柚乃さん)の妹・リリアナ(花妃舞音さん)への

優しくあたたかい眼差しは本当にステキでした。

最後にリリアナにかける『これからはオレがアニキだ』という言葉のあたたかさに、

リリアナだけだはなくみなさんも胸がキュンとなったのではないでしょうか?

 

この舞台で直接描かれていないこれまで歩んできた人生も想像することができる

暁千星さんのニコラスでした。

 

タンゴ酒場のダンサー・イサベラは天紫珠李さん。

 

ニコラスに出会うまではどこか固い感じがあり、家族の悩みや現実と夢との間で葛藤し、

人との間に壁を作っている雰囲気をまとっていたイサベラ。

ニコラスには何か共通点を感じ心を許し、また居心地の良さを感じ、

一緒に夢に向かって進んでいきたいと思うようになった過程に説得力を感じました。

 

暁千星さんのニコラスと天紫珠李さんのイサベラは、お互い干渉し過ぎず尊重し認め合う、

でも何かあればそっと寄り添う姿と空気感がとてもステキでした。

 

タンゴを踊る時の握り合った手から、お互いへの信頼を感じました。

 

風間柚乃さんはニコラスのかつての同志・リカルド。

 

風間柚乃さんも暁千星さんと同じく髪の襟足が長めでセクシー。

 

世の中の現状を本当は分かっているけれども変化についていくことができず、

自分の心の置き場が分からない。

その葛藤を世の中への恨みに変え、分からないふりをして自分を保とうとしている

そんなリカルドに見えました。

 

キレそうな雰囲気がギラギラした目から漂い、

緊迫感と凄みには、かつての同志で友のニコラスへの思いがにじんでいました。

 

妹のリリアナを見る目は優しく、唯一楽しそうな心からの笑顔を見せるリカルド。

そんな笑顔を見せられたら、リリアナは何も言えなかったんだろうなと思いました。

 

そんなリカルド・風間柚乃さんの妹リリアナは花妃舞音さん。

 

声やたたずまいが可愛いまさに妹!

愛する大切な兄を思うがゆえに、自分の思いや意見を言うことができず、

兄を傷つけないため、間違っていると思っても葛藤しながらついていく健気なリリアナ。

 

兄妹喧嘩の場面がかわいかったですね。

 

月組『ブエノスアイレスの風』3

 

その兄妹喧嘩を少し離れたところで見ているマルセーロ(彩海せらさん)。

彩海せらさんは、雪組から月組へ組替えしてこられ、この公演が初月組公演となります。

彩海せらさんのマルセーロは、フローラ(晴音アキさん)の息子でチンピラなのですが、

ちょっとあたふたしていて表情がかわいいんです。

革ジャンのポケットへの手の突っ込み方や、顔の角度やまばたきの仕方、

視線の角度から悪い感じが漂っていました。

母親のフローラは「あれは本当に悪だから」と言いますが、

実は根っからの悪い子ではないんじゃないかなという感じがしました。

 

刑事・ビセンテは礼華はるさん。

 

とても落ち着いた声やきちんと整えられた髪や口髭、スーツの着こなしや動き、

恋人エバ(羽音みかさん)への思いが先走り過ぎてしまう会話から、

大切なもののために真っ直ぐ突き進む頑固なまでの実直さを感じました。

 

ニコラスのかつての恋人で、現在はビセンテの恋人エバは羽音みかさん。

 

自分の思いをしっかり伝える聡明さを感じました。

新しい恋人には、かつての恋人と真逆の人を選んだけれども、

ニコラスが7年ぶりに目の前に現れた時は心が大きく揺れ動いているのがみてとれました。

 

舞台上には、中心で演じられるお芝居を取り囲むように様々な人物が登場します。

そんな人物たちのそれぞれの人生も感じることができてとても楽しかったです。

 

フィナーレは3組のタンゴから。

それぞれのコンビに個性があります。

風間柚乃さん・花妃舞音さん、礼華はるさん・羽音みかさん、彩海せらさん・天紫珠李さん。

花妃舞音さんが風間柚乃さんを見つめる表情が可愛すぎました💖

 

月組『ブエノスアイレスの風』4

 

暁千星さんが「ヴィエント・デ・ブエノスアイレス」を歌います。

豊かな声量と響きは、胸がギュッと切なくなるステキな歌声。

 

出演者が数名ずつ登場し暁千星さんに駆け寄ります。

 

みなさんが暁千星さんと交わすあいさつがそれぞれ違います。

ステキな笑顔で手を振ったり笑い合ったり。

暁千星さんより上級生の夏月都さんや晴音アキさんは、

よしよしという感じで腕や背中をなでなで(*^-^*)

風間柚乃さんとはお互いを讃えあうかのように肘同士をタッチさせるあいさつ。

赤い衣装で登場した天紫珠李さんとは笑顔で優しく見つめ合っていらっしゃいました。

 

フィナーレでは封印が解けてかわいいキラキラの暁千星さんでした✨

 

全員で「ヴィエント・デ・ブエノスアイレス」を歌い幕が下りました。

 

月組『ブエノスアイレスの風』5

 

暁千星さんは通し舞台稽古時のごあいさつで

「千秋楽まで全員で無事に駆け抜けたいと思います」とおっしゃっていました。

 

千秋楽翌日5月27日の組替えで、暁千星さんは月の王子様から星の王子様になられます✨