宝塚大劇場花組公演『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』・『Fashionable Empire』
樽井美帆です
花組公演
ミュージカル『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』
ショー グルーヴ『Fashionable Empire』
が、宝塚大劇場にて6月4日(土)から7月11日(月)まで上演されました。
東京宝塚劇場では7月30日(土)から公演が予定されていましたが、
公演関係者から新型コロナウイルスの感染が確認されたため、
7月30日から8月14日の11時公演までが中止となりました。
14日15時30分公演から再開されましたが、ふたたび8月20日から9月3日の公演が中止となっています。
なお、8月26日に予定されていた新人公演も中止となりました。
そして、心配されていた千秋楽9月4日の公演が行われることが8月30日に発表されています。
ミュージカル『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』
作・演出/生田 大和
ピアノの魔術師と称され、19世紀初頭のヨーロッパで絶大な人気を博したピアニスト、フランツ・リストが主人公。
自己とは、自分とは、そして自分らしく生きるとは何かを問いかけるミュージカルです。
超絶技巧に彩られた情熱的な演奏と、女性達を虜にしてやまない類まれな美貌でパリのサロンを席巻し、
瞬く間に時代の寵児となった彼が追い求めたものとは…。
運命の恋人マリー・ダグー伯爵夫人とのロマンスを中心に、最大の好敵手でもあるショパンとの友情を交えて描く物語です。
形や場所を変えて舞台上に常に存在するピアノ。
そして、斜めに倒れ掛かっている柱のセットも、まるでリストのもろさを表しているようで印象的でした。
幕が開くとそこはパリにあるジョルジュ・サンドの屋根裏部屋。
夕日が差し込む大きな窓。
セットは、グランドピアノ、ソファ、小さな机。
二人の人物は、物語の主人公フランツ・リスト柚香光さんとジョルジュ・サンド永久輝せあさん。
ソファで寝ているリストにサンドが近づき、自分が吸っていたたばこをリストに渡します。
「今何時だ?」と問うリストに対して、「じき夜になるわ」などと決してはっきりと時間を答えないサンド。
何時とはっきり答えることは彼女にとって野暮で美しくないこと、そして少しでもリストと一緒にいたい気持ちの表れでしょうか。
柚香光さんのフランツ・リストは、口元・目元に野心と苦悩があふれていています。
髪を左側だけ耳にかけていて、髪をかき上げる仕草がセクシー。
ピアノを弾く時もこの髪がステキに揺れ動き、美しく乱れます。
ピアノを弾く場面は横顔になることが多いのですが、その横顔がとてもステキです😍
顔に髪かかるので、その隙間からしか顔が見えないのですが、人は見えないものほど見ようとしますよね?
その髪の間から垣間見えるお顔の美しさにうっとり😍
サロンでの演奏では、登場しただけで貴婦人たちから歓声が上がります。
弾くのをもったいつけて、ポーズをとるだけで貴婦人たちが卒倒しそうなくらい歓声を上げるのですが、
客席の私たちも心の中で歓声を上げていましたよね💖
リストの美しく輝く汗を受け取ろうと大きな花瓶など思い思いの器を持ち、
豪華なドレス姿の貴婦人たちがリストの汗を追いかける姿はとても楽しく面白いかったです。
もったいつけてなかなかピアノを弾かないリストに対して「早く弾け!」とせかすダグー伯爵・飛龍つかささんに向かって「シッー」とリスト。
この柚香光さんの「シッー」は世界一美しい「シッー」でしたね💖
リストに「シッー」と言われてしまったダグー伯爵・飛龍つかささんは今公演で退団されます。
お髭姿がとても渋いダグー伯爵でした。
ミラーボールが輝く中ピアノも七色に輝き、ジャンプしながら弾いたり、背面弾きをしたり、歌い踊るアイドルのようなリスト。
このリストのピアノや音楽への向かい方が、自分の音楽に謙虚に向き合うショパンの弾き方とは全く異なり、
まさしく「何のために音楽を」の違いが表れていました。
柚香光さんの細く美しい指から奏でられるピアノの音色は、繊細で優しくあたたかく心に響きました。
ジャケットの裾を跳ね上げてピアノの椅子の座る仕草も最高にカッコよかったです✨
ワインを本当に美味しそうに飲むリスト、悩んでいる時によく頭やあごをさわるリスト。
すべての動きが美しく一瞬たりとも目を離したくないリストでした。
マリー・ダグー伯爵夫人の星風まどかさん。
楕円の輪っかの豪華なドレス、高さのある豪華な白い鬘姿の星風まどかさんはとても新鮮。
喜び、悲しさ、絶望・・・
マリーの切ない気持ちが、星風まどかさんの繊細な表現を通して痛いほど伝わってきました。
強い決意を持ったマリーの目など、力強い星風まどかさんもとても新鮮でした。
リスト・柚香光さんとマリー・星風まどかさんの距離感がステキでドキドキが止まりません。
本来の自分自身、人生を取り戻すため、二人で手を取り合ってマリーの居室の大きな窓から走り出ていく二人の姿と、
大きく開いた窓が希望に満ち溢れていました。
ジュネーヴの森で、白い衣装で追いかけっこをするリストとマリー。
マリーを台に乗せる時、降ろす時、必ず足元を見てあげているリストの優しい眼差し。
深い愛で結ばれた二人の距離感もステキですが、
長い時間が流れ再会し、黒い衣装でベンチに座る二人の間にある距離。
離れていた時間も感じますが、取り戻せない時間でもない絶妙な距離だと感じました。
その時は一生懸命で分からないけれども、振り返った時に気づくことってありますよね?
二人が再び幸せな時を過ごせたことを願わずにはいられませんでした。
水美舞斗さんが演じられたのはフレデリック・ショパン。
リストと対照的な人物として描かれています。
常にリストを思い、穏やかで優しい笑顔で見守り語りかけます。
自分は何のために音楽をしているのかを一度は見つけたリスト。
そんなリストに安心したような笑顔で歌う水美舞斗さんの歌声にあわせて踊るリストとマリー。
明日への希望を宿した水美舞斗さんのあたたかい瞳と笑顔は本当に美しかったです。
たくさんの勲章を手に入れ豪華な衣装をまとったリストはショパンの元へ。
勲章や衣装が豪華であればあるほど、本当に哀れでかわいそうなピエロにリストが見えます。
そんなリストに、命の炎が消える直前まで最後の力を振り絞って自分と向き合うことを伝えたショパン
残り少ない命の時間を使ってでもリストに生きろと話すショパンの説得力は、静かな中にも迫力を感じました。
ラストシーンでは、リストと関わった人々が笑顔で登場しますが、ショパンだけは笑わず無表情。
それまであたたかい眼差しでリストを見つめていたショパンが、最後に見せた表情。
深いものがありますね。
永久輝せあさんは女流作家ジョルジュ・サンド。
クリクリのショートヘア、赤い衣装、赤い口紅、そして声も素敵。
客席に向かって斜めに立つ姿が美しく、常に足や手などどこかが優雅に曲線を描いていました。
永久輝せあさんの醸し出す色気、強さのバランスが絶妙で、愛する人を思う気持ちと自分のプライドの狭間で揺れ動く
気持ちの表現がとても美しく、ずっと見ていたい魅力的なジョルジュ・サンドでした。
今公演で退団される音くり寿さんが最後に演じられたのは、リストのパトロンにして愛人ラプリュナレド伯爵夫人。
巻き舌ですごんでせまる姿は、貫録がある中にも可愛らしさもありますよね。
音くり寿さんのこれまでのすべてが詰まった魅力的なラプリュナレド伯爵夫人。
素晴らしい才能を自分のものにしたい、自分のものとしてみんなに披露したいという気持ちが正直にあふれていて、
ちょっと応援したくなってしまいました。
可愛い見た目のパリ音楽院の生徒たちの激しいダンスも見どころの一つでしたね。
ショー グルーヴ『Fashionable Empire』
作・演出/稲葉 太地
時代や流行の先端を行く洒落者達が集う“Empire(帝国)”を舞台に、時にクールに、時に熱いビートのうねりで人々を魅了する数々の場面で構成するスタイリッシュなショー作品。
開演アナウンスのあとの柚香光さんの「カモ~ン」という呼びかけに息が止まりそうになりながらショーはスタート。
永久輝せあさんの歌声に導かれ帝国へ入っていきます。
帝国の門が開かれてエンパイアガイ・エンパイアレディが幕開きから激しいダンス。
フードが付いた衣装を、男役さんはカッコよく、娘役さんは可愛く着こなしていらっしゃいます。
柚香光さん・水美舞斗さんは、フードに腕まくりという最強の着こなし🤩
カッコイイとかわいいとの絶妙なバランスにトキメキが止まりません💗
星風まどかさんのショートヘアも新鮮でとてもかわいいです。
主題歌の振付には、花組ポーズも入っていますね。
ちょっとリズムが難しいけど歌ってみたくなる楽しい主題歌。
エンペラー柚香光さんは、珍しい演出の登場。
エンパイアガイ・エンパイアレディが激しく踊る様子を高い位置から見下ろしているのですが、
その姿が色っぽくカリスマ性がありとてもカッコいいので、私は柚香光さんにライトが当たる前から注目していました🥰
柚香光さんの登場場面がカッコイイのはもちろんなのですが、舞台からはける時、舞台から退場される時もステキでした。
通常は走って笑顔で前を向いてはけることが多いと思いますが、今回は違いました。
エンペラーらしくゆったりした歩みではけたり、時に客席へ、時に舞台で踊る花組のみなさんへ美しい投げキッスをして😍
お芝居ではリストの髪型がステキでしたが、ショーでは柚香光さんの髪色がとてもステキでした。
時に銀、時に金、時にブルーに見えました。
柚香光さん・星風まどかさん
水美舞斗さん・音くり寿さん
2組の高速リフトには目を見張りました。
飛んでいきそうなくらいのスピードなのに笑顔、そして優雅にふんわりとおりる姿は、まさに夢。
今公演で退団される音くり寿さん。
素晴らしい歌声はもちろん、キュートに可愛らしくまたカッコよく踊るダンスも堪能させていただきました。
同期生の音くり寿さんと聖乃あすかさんが組んで踊ったり、音くり寿さんの歌声にのせて柚香光さん・星風まどかさんトップコンビが踊ったり。
音くり寿さんと星風まどかさんが、ラインダンスのような振りをしてから笑顔で手をつないではけたり。
100期生の絆に胸が熱くなりました。
水美舞斗さんを中心とした『Club MISTY』
運命の人を探す青いスーツの水美舞斗さんの息をするのも忘れるほど激しいダンス。
飛んで回ってすべって持ち上げられて、水美舞斗さんの身体能力にはいつも驚いてしまいます。
聖乃あすかさんを中心とした『To the Future』
激しく溌剌と元気なはじけるダンスが気持ち良かったです。
トレンチコートをマントのように翻して踊る男役群舞は、花組の男役さんの魅力全開💖
ソフト帽をそでに投げる柚香光さんの動きも芸術的です。
トップコンビのデュエットダンスは、ブラウンがメインでブルーがチラリと見える美しい衣装。
運命の人に初めて会った!みたいな表情で見つめ合うお二人が本当にステキです🥰
デュエットダンス後、銀橋に出ず舞台上でごあいさつをし手をつないではける演出は、最近では珍しく懐かしい気持ちがしました。
エトワールは、今公演で退団される若草萌香さん。
明るくキラキラした歌声が響き渡りました。
パレードでエンペラー柚香光さんが登場される時の曲が、帝王感たっぷり。
お辞儀をした後に王冠形のシャンシャンをかぶる振りが、みなさん個性が出ていてとてもかわいかったです。
楽しいけれどちょっと難しい主題歌のリズムと、花組のみなさんの笑顔がいつまでも心に残るショーでした。