梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ月組公演 ミュージカル・ロマンティコ『ELPIDIO』~希望という名の男~

 

宮村裕美です

 

現在、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティでは

月組公演 ミュージカル・ロマンティコ

『ELPIDIO(エルピディイオ)』

~希望という名の男~ が上演中です。

 

作・演出・振付は謝 珠栄さん。

 

この公演にて、2度目の

東上公演主演を務めるのは鳳月杏さん。

 

2020年に梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、東京建物 Brillia HALLにて上演されました

デジタル・マジカル・ミュージカル

『出島小宇宙戦争』が東上公演初めての主演作品です。

 

今回の公演は、KAAT神奈川芸術劇場にて

11月21日(月)〜11月27日(日)まで上演され、

梅田芸術劇場シアター・ドラマシティでは

12月3日(土)〜12月11日(日)までの上演です。

 

 

舞台は20世紀初頭のマドリード。

酒場 Camino(道)に、仲間たちから

ロレンシオと呼ばれる男の姿がありました。

 

アルバレス侯爵と瓜二つの顔を持つロレンシオは

偽の身分証を所持していたことで脅され、

替え玉となるように迫られます。

 

ELPIDIOというペンネームで

新聞に詩を投稿していた彼は

それを続けることを条件に

替え玉となることを受け入れますが、

侯爵の妻パトリシアに偽物と見破られてしまいます。

 

同じ思想を抱くロレンシオと次第に惹かれ合い、

二人は恋に落ちていきます。

 

弱者に寄り添うELPIDIOの詩に

触発された人々が“希望”を胸に行動を始める中、

この世に蔓延する嘘の在り方に対峙する

偽侯爵ロレンシオは、

スペインが抱える問題を如何に解決していくのでしょうか。

 

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鳳月杏さんが演じるのは、マドリードの酒場

Caminoにたどり着いた男 ロレンシオ。

また、ロレンシオと瓜二つの軍の大佐

アルバレス侯爵。

 

酒場の皆からも愛され、ELPIDIOとして

書く彼の詩は弱者の心に寄り添うなど

人として優しさにあふれる人物です。

 

しかし、彼の詩が弱者の人々に響くのは

ロレンシオが実際に経験してきた壮絶な体験や

生きてきた中で感じてきたものが詰まっており、

彼自身どのように進んでいけばいいのか

悩み葛藤しているからこそ、多くの人々に

伝わるものがあるのだと思います。

 

そんな彼を周りの人も自然と支え、見守ることで

ロレンシオは自らの使命を見出していきます。

 

鳳月さんの持つ、自然と周りの人が

付いていきたくなるような明るさや

少し無茶を言っても

叶えてくれそうな懐の広さは、

ロレンシオに通ずるところもあり

ゴメスやアロンソがアルバレス侯爵になりきるようレッスンをしますが

なんだかんだ真剣になりきってくれる姿からは

人当たりの良さを感じます。

 

また、物語終盤では本物のアルバレス侯爵が

登場するのですが、この時に

ロレンシオがアルバレス侯爵を見事に

演じていたことが分かりますし、

鳳月さんの演じ分けの凄さがとても分かりますよね。

 

このことからも、鳳月さんの器用さと

ロレンシオの繊細で器用なところがあるように

見えるも不器用なところが重なり、

ロレンシオは多面的な魅力を持つ人物だなと感じました。

 

 

彩みちるさんが演じるのは

アルバレス侯爵の妻 パトリシア。

 

ただの貴族のお嬢様ではなく

女性進出に力を入れいたり福祉活動に従事していたり、美しく聡明な女性です。

 

彩さんが演じるパトリシアはしっとりとした

落ち着きや色っぽさがあります。

一見、気が強くて

少し恐い女性なのかと感じましたが

そのように強く見えるように振る舞うのは、

あくまでもこれまで何度も

関係を修復しようとするも戻らなかった

アルバレス侯爵に対してだけです。

 

なおかつ、もう冷え切った関係とは言いつつも、

公爵を心から心配する姿からは

本来の彼女の深い愛や優しさが表れています。

 

自分の意志で進むことのできる

自立しているという面での強さはありますが、

それと併せてロレンシオのことを包み込み

支えるような柔らかさもあり

二人が互いに惹かれていくのも納得ですよね。

 

個人的に鳳月さんロレンシオと

彩さんパトリシアの特に好きな場面は、

ロレンシオが自分の過去をパトリシアに

初めて話すシーンです。

 

ロレンシオに少しずつ惹かれはじめている

パトリシアは、本当の彼がどのようなところで

育ち、これまでどのように生きてきたのか知りたくなります。

 

ただ、ロレンシオは

今はアルバレス侯爵を演じている身、

そしてあなたはそのアルバレス侯爵の妻だと

突き放すように言うも、その時

パトリシアからロレンシオに優しくキスをします。

この後、ロレンシオから離れた

パトリシアの手を引いて、自分の元に

ギュッと抱き寄せ今度はロレンシオからパトリシアにキスをします。

 

この時、パトリシアは新聞を持っているのですが

ロレンシオの右手はパトリシアの頬に

そして左手はパトリシアの右手を

優しく掴んでいるのですが

このシルエットが非常に美しく印象に残っています。

 

また、二人が離れて目を合わせる瞬間や

名残惜しそうにパトリシアの手をそっと離す瞬間など一挙一動、この一連の流れすべてが

美しいという言葉だけでは表現できないほど魅力的で

何度も見たくなる場面でした。

 

 

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輝月ゆうまさんが演じるのは

アルバレス侯爵の秘書官 ゴメス。

 

アルバレス侯爵の名誉のために、

侯爵そっくりのロレンシオを見つけ出し

替え玉となるように頼みます。

 

偽の身分証というロレンシオの弱みを使って

半ば強制的に替え玉を頼むところからは、

切れ者だというのがよく分かります。

 

この、多くを語らずとも物事をスムーズに進める

敏腕さが自然とにじみ出ているのは

輝月さんの落ち着きと貫禄あってこそ。

 

しかし、ただ仕事のできるお堅い秘書官

というよりも人間味があり、

チャーミングさを秘めているのが魅力的な人物です。

 

そんな落ち着きのあるゴメスと正反対の

ちょっぴり早口でどこか抜けている

アルバレス侯爵の執事 アロンソを演じるのは

蓮つかささん。

 

登場シーンでは、薄暗いところで一切動かず

じーっとしているため、寡黙な人物かと思いきや

ひとたび話し始めるとかなりの勢いで

たくさん話す天然っぷり。

 

パトリシアのことが大好きで

物語の細やかなお芝居から

アロンソがパトリシアのことが

大好きなことはとても伝わってくるのですが、

フィナーレも終わり、最後にご挨拶される

タイミングで彩さんが出てこられた時に、

嬉しそうに彩さんへ向けて

両手でハートを向ける蓮さんが

とびきりキュートで

パトリシアのことが大好きな

アロンソが体現されていますので、

これからご観劇の方には

是非ともご注目いただきたいポイントです。

 

 

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彩海せらさんが演じるのは

酒場Caminoの仲間でロレンシオを兄貴と慕う

セシリオ。

 

無力というのを分かりながらも、今の自分には

何ができるのだろうと思い悩みます。

そんなセシリオにとってロレンシオは、

道を見失うような時には必ず方向を正してくれる

まさに本当の家族のような存在です。

 

そんなセシリオの迸る感情を込めた歌声は

まさに若さそのもので、

力強く前に前に歌声が響き、非常に魅力的な歌声でした。

 

また、ELPIDIOの詩を読む時の声が

とても温かみがあり、セシリオをもまた

ELPIDIOの詩に動かされた人物の一人というのがよく分かりますよね。

 

不安げな様子とは一転、蘭世惠翔さん演じる

エステルと笑顔で踊る姿は本当に可愛らしく、

Caminoのみんなから愛され

可愛がられているというのが非常に納得の

キラキラとした子犬のような光を放ち輝く瞳が印象的でした。

 

 

そんな個性豊かなメンバーが過ごすCaminoの

場面は楽しいナンバーが数多くあり、

食べ物ソングであったり

それぞれの個性がぶつかり合い

カラッと明るく、思わずこういう酒場っていいな

楽しそうだなと思えるナンバーが数多くあります。

 

そんな印象的なナンバーはもちろん、 

この公演は、謝さんが作・演出に加えて

振付も担当されているというのもあり、

よりいつもよりアクロバティックで

大胆な振り付けや、スペインらしい

フラメンコ風の振り付けなど

物語の一部を担う

印象的な振り付けも多く感じました。

 

 

そして、この公演のフィナーレは

Caminoの皆さんが

フィエスタの踊り合戦に参加し

優勝を目指して踊るという物語の延長線上のフィナーレとなっています。

 

まずは、フラメンコを踊るときのような

真っ赤な薔薇を頭と胸元に付け

黒を基調に花柄のスカートの娘役の皆さんが情熱的に踊られます。

 

その後には、男役の皆さんが登場されるのですが

この時のセンターを務める彩音星凪さんは

物語では労働組合員のフランシスコと併せて

黒衣の弱者Aとして踊られます。

黒衣の弱者として時には鳳月さんロレンシオの

影のように踊るのですが、その時とはまた違い

フィナーレでは

熱く色っぽく踊られる姿が見られますので

ぜひ黒衣の弱者の時とフィナーレ時の

踊り方の違いにご注目いただきたいです。

 

そして、白地に黒で花などの刺しゅうが

デザインされた衣装の鳳月杏さんが登場されます。

 

鳳月さんと男役の上級生皆さんで

扇を持って踊るのですが、

扇を広げたときのバサッという音が

見事にシンクロしていました。

視覚でスピーディーさや優美な扇さばき

といったダンスを楽しむのはもちろん、

音楽に合わせて扇の音が綺麗に重なる

心地よい音を聴覚で楽しめる、臨場感たっぷりの立体感のある男役群舞でした。

 

今回のデュエットダンスは、大人っぽく

それぞれが取るポーズは

かっこいい印象なのですが、

二人の表情や空気感は優しく柔らかで

揃って正面を向くときの幸せに溢れた

表情が印象に残っています。

 

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また、しゃがみ込んだ状態で

それぞれの手を合わせて

そこから徐々に立ち上がり、そのまま両手を

押したり引いたりする振付であったり、

いつもとは少し違うリフトなど

アクロバティックな振りが多く、斬新なデュエットダンスでした。

 

 

パレードでは、登場される皆さんが

テンション高く元気に袖から登場されるのは

もちろん、すでに舞台にいる皆さんも

手を挙げたり回したりと全力で

盛り上げてくれる温かな空間の中

順番に登場され、その元気いっぱいな姿と

出演者の皆さんで笑顔を交わし合う姿に見ていて自然と笑顔になれる演出が魅力的でした。

 

 

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 現在、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて

上演中の月組公演

ミュージカル・ロマンティコ

『ELPIDIO(エルピディイオ)』

~希望という名の男~ は、

12月11日(日)までの上演です。