宝塚バウホール 宙組公演 バウ・ドリーミング『夢現(ゆめうつつ)の先に』

 

宮村裕美です

 

現在、宝塚バウホールで上演中の

 

宙組公演

バウ・ドリーミング

『夢現(ゆめうつつ)の先に』

 

本来は、1月5日(木)〜1月16日(月)までの

公演期間でしたが、公演関係者から

新型コロナウイルスの陽性が確認されたため

1月6日(金)〜12日(木)の公演が中止となりました。

 

1月13日(金)より公演は再開され、

また、それに伴い1月17日(火)〜21日(土)の追加公演の実施も発表となりました。

 

 

今回の公演にて初のバウホール公演

主演を務めるのは、鷹翔 千空さん。

 

作・演出は生駒怜子さん。

この公演は、宝塚歌劇団演出家

生駒怜子さんの宝塚バウホールデビュー作です。

 

 

悪夢にうなされるのが日常となっていた“僕”。

 

いつものように夢を見て

同じように終わりをむかえようとした時

突然声が聞こえました。

“彼”は「明るい夢の世界へ行こう」と

僕を暗い場所から強引に連れ出してしまいます。

 

彼の夢の世界は、今まで

僕がいた場所とあまりに違いすぎて

戸惑う僕でしたが、彼はおかまいなしに僕を連れまわします。

 

そして、そこには僕が密かに想いを寄せる“彼女”にそっくりな女性の姿も。

彼は一体何者なのか。

なぜ僕は何度も同じ夢を見るのか。

夢と現が交差する中、真面目に生きようともがく僕が辿り着く先は…。

 

この作品は、鷹翔千空さん演じる“僕”が

夢の世界と現実を行き来する物語です。

 

僕は、ある雨の日に傘を貸してくれた彼女に一目惚れしてしまいます。

しかし、傘を返すこともできず何もできないまま1か月が経ってしまいます。

 

彼を含め、夢の住人の皆さんが

一歩踏み出すことのできない僕に、

どうすれば彼女と距離を縮めることができるのか

アドバイスをたくさんしてくれます。

 

一人一人の個性が際立つ

夢の住人の皆さんとの夢の世界、

そしてその世界と対比されるのは

彼女が働く現実の世界の象徴となる花屋。

 

花屋で働くみなさんも、声に出さずとも

表情や全身から伝わってくる

細やかなお芝居が魅力的ですので

これから観劇される方は、

舞台の端から端までお一人ずつ注目して観ていただければと思います。

 

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悪夢にうなされる青年、

僕を演じるのは鷹翔千空さん。

 

最初は、夢の住人に好き放題言われ戸惑うも、

みんなから彼女との恋を応援してもらい

進捗報告をする時の様子が

それはそれは可愛らしく、

ついつい口を出したくなってしまう納得の愛らしさがあります。

 

夢の世界ですら、

彼女そっくりな女性に話しかけられると

飛び上がるように驚くなど、彼女に対して

どう接すればいいのか全く分からないという、

初々しさも可愛らしさの一つです。

 

そんな僕ですが、一歩ずつ着実に成長していき

見た目も言動も物語が進むにつれてスマートになっていきます。

 

しかし、彼女に対して

常に一途で誠実なところは変わらず、

また夢の中でしか会うことのできない

彼を気に掛けるなど

本来持っている優しい心はそのままで、

そんな彼の成長にも心を動かされる作品です。

 

ほんわかとした

優しい空気感をまとっている様子は、

鷹翔さんご自身の持つ

ふんわりとした柔らかさが役に重なり

彼女がつい気になってしまうのも納得の

どこかほっておけない愛くるしい魅力に溢れていました。

 

そんな、どんな時も真っ直ぐ素直に

彼女と向かい合っているのがわかるからこそ、

実は彼女と一緒に働きたいという動機で、

彼女と同じ花屋で働く店員

大路りせさん演じるフランクも、僕と彼女の恋を応援したのだろうなと感じます。

 

 

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“僕”が密かに想いを寄せる女性、

彼女を演じるのは山吹ひばりさん。

 

僕よりも年上というのもあり

可愛いのはもちろん、

ちょっぴり頼りなさげな僕を自然とリードし

包み込むような優しさや落ち着きがあります。

 

つい勢い余って告白してしまった僕が、

「急にこんなことを言って変ですよね…。」

と謝るのですが、そんなことはない!と

フォローをしてくれる姿には、

優しさと同じくらいかっこよさもあり

彼女の誠実さが表れていました。

 

初めてのデートのベンチでの場面など

お互いを大切に想いあっているふたりの姿は、

ピュアそのもので眩しくキラキラした世界が広がっていましたね。

 

彼女は花屋で働いているのですが、

接客しているときの表情や花を選ぶ時の仕草など

花を愛していることが見ていて分かりやすく伝わってきました。

 

懐の深さや安心できる

癒し・温かさを感じる理由の一つには、

寄り添うような優しさに加えて

自分の信念を持ち行動しているという自立が見受けられるからかもしれません。

 

 

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“僕”の前に突然現れた謎の青年、

彼を演じるのは亜音有星さん。

 

まさに天真爛漫という言葉そのもののように、

夢の世界で羊たちと仲良く過ごしているときの

笑顔がチャーミングで印象的でした。

セリフの言い回しなど

声の雰囲気も高めで可愛らしく幼い印象を感じます。

 

しかし、笑顔の先には

どこか寂しげで悲しい顔をのぞかせ、

そんなご主人の気持ちを感じ取るのは

泉堂なるさん演じる白い羊メロ。

 

最初は、花菱りずさん演じるメル

澄風なぎさん演じるメラ

湖々さくらさん演じるメメと、

3匹の羊たちが登場するのですが

そこから、メロ・メイ・メアと

物語が進むごとに羊の数も増えていきます。

 

フードには羊らしいくるりとした耳が付き

レッグウォーマーや衣装全体は

ふわふわさが表現されるなど

衣装が可愛いのはもちろん

羊たちそれぞれの性格が全く違うため、

表情や動きもとても自由で個性があります。

 

きっとその動きは

その時々によって変わるもののように感じるので

何度公演を見てもその公演ごとに

新しい発見があると思います。

 

そんな個性豊かで魅力的な羊たちといつも遊んでいる彼。

彼はある秘密を抱えているのですが、

そのヒントの一つに

彼の衣装にご注目いただければと思います。

 

少しずつ変化していく衣装と物語が

リンクしており、実はそれは

鷹翔さん演じる僕も同じなので

物語の世界観と併せて衣装も非常にこだわられた作品だと感じました。

 

 

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この公演で退団されます

花屋の店員モニカを演じるのは、朝木陽彩さん。

 

こういう店員さんいそうだな~!と、

つい思ってしまう自然なお芝居が魅力的でした。

 

一見、大路さんフランクを

振り回しているかのようにも見えるのですが、

山吹さん演じる彼女への想いが報われない

フランクを一番そばで見守っているのがモニカなんですよね。

 

また、店を任されて

接客しなければならなくなった時の

非常に困った表情や、店長のおごりで

ごはんに行こうとなったときのはしゃぎっぷりと

コロコロと変わる表情すべてが可愛く印象的でした。

 

フィナーレでドレスの裾をなびかせながら

軽やかに踊る姿や

デュエットダンスでのガゲソロは、

より幻想的な世界観が広がる透明感溢れる歌声と

舞台の最後まで魅力的な娘役像で魅了してくださいました。

 

フィナーレで、

鷹翔さんと亜音さんがふたりきりで踊る際には

舞台の奥が電飾でキラキラとしていたのですが、

そんな輝き以上に

フレッシュで華やかさ全開の

おふたりがかっこよく、時折

目を合わせつつ並んで同じ振りを踊る姿が、

物語の延長線上にも感じられ素敵でした。

 

デュエットダンスは、

山吹さんが登場されるところからスタートします。

この最初のポーズを取って止まっている

背中が本当に美しく、

シルエットを見ただけでプリンセスが舞台上に…と思うほど綺麗でした。

 

そこから、鷹翔さんが登場され

ふたりで手を繋いだ状態で階段を下りて

舞台前方に走ってくるのですが、

移動しながらも互いを見つめる時の

幸せそうなおふたりの笑顔に

言葉では表しがたいほどのときめきを感じました。

 

おふたりとも白と水色を基調にした衣装

というのもあり、爽やかさと優しさに溢れた

優雅なデュエットダンスでした。

 

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現在、宝塚バウホールで上演中の宙組公演

バウ・ドリーミング

『夢現(ゆめうつつ)の先に』は

1月21日(土)までの上演です。