宝塚バウホール 月組公演 バウ・ミュージカル 『月の燈影(ほかげ)』

 

宮村裕美です

 

現在、宝塚バウホールにて上演中の

 

月組公演

バウ・ミュージカル

『月の燈影(ほかげ)』

 

作・演出は大野拓史さん。

 

今回の公演にて初のバウホール公演

主演を務めるのは、礼華はるさん。

 

礼華さんをはじめとする28名の月組生と

専科より夏美ようさんと悠真倫さんがご出演されています。

 

この公演は、2002年に花組の彩吹真央さん

蘭寿とむさん主演で上演されました。

そのため、初演はダブル主演という形でしたが

今回は礼華はるさんおひとりでの主演となります。

 

物語の舞台は江戸時代後期。

大川(隅田川)の東岸、川向うは新興地ゆえに

町奉行の手の及ぶところが少なく、

人々を惹きつける歓楽街として独自の発展を続けていました。

 

そこを仕切っているのが、夏美ようさん演じる淀屋辰五郎。

川向うで生きていくためには

広い顔と権力を持つ淀屋には誰も歯向かうことができません。

 

礼華はるさん演じる幸蔵も

あることがきっかけで淀屋に助けられた一人なのですが、

最初は町の平和を保つために人助けをし

仲間の面倒を見ていると思っていた淀屋が、

実は自分が生きやすいように周りの人を思うがままに扱っていることを知り、対立します。

 

ある時、幸蔵に向かって「さっちゃん?」と呼びかける人物が登場します。

それが、彩海せらさん演じる次郎吉。

川向うで出会った幸蔵へ知り合いではないのかと声を掛けます。

 

江戸で一緒に過ごしていた幼馴染の幸は

ずっと行方不明となっており、幸蔵のことを

間違いなくさっちゃんだと思う次郎吉は、

幸蔵のことを知りたいと思い、川向うに足を運び…というのが物語です。

 

あることをきっかけに、江戸で

生きていくことができなくなった幸蔵と

ずっと友に会いたいと思っていた次郎吉との友情。

また、そんな真っ直ぐな次郎吉と惹かれ合う

辰巳芸者 喜の字との恋模様と、

舞台上にはみずみずしく爽やかな紫陽花が咲く

しっとりとした世界観の作品となっています。

 

作品名にもある月が象徴的となり、

夜空に月が美しく浮かぶ場面が何度も登場します。

 

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

礼華はるさんが演じるのは、

向両国の通り者達を仕切る幸蔵。

 

みんなを取りまとめていてリーダー性があるのですが、

決して口数は多くなく、しかしみんなが困っているときには手を貸すという

まさに背中で語る、この時代の男らしさが表現された渋い大人の魅力が詰まっています。

 

普段の礼華さんは優しげなふんわりとした雰囲気をお持ちですが、

舞台上では落ち着きがある礼華さんの魅力と重なり、

大人っぽい言動や影を背負った表情など

その背中には哀愁が漂っており、とてもかっこよく魅力的でした。

 

どの着物姿もとてもお似合いで、お芝居中の歩き方や

踊るときの着物の裾使いなど

自然と着物を着こなし、決してセリフがなくとも

そこに佇んでいるだけでも絵になる色っぽさがありました。

 

また、涼しげな目元が強調された日本物のお化粧により

正面を向いた際のきりっとした少し鋭さも秘めた魅力はもちろん、

特に目を少し伏し目がちにした時の目元が

とても色っぽく印象に残っています。

 

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

そんな陰のある幸蔵と対比するかのように陽のオーラを纏っていたのは、

彩海せらさん演じる町火消の次郎吉。

 

犬みたいだと女性陣にからかわれることに

つい自然と納得してしまう

可愛らしく、真っ直ぐさが魅力のハートフルな人物です。

三味線が上手く弾けなかったり、川向うで

幸蔵と共に暮らしている仲間たちから

「さっちゃんって呼ぶな!」とどれだけ言われようとも

さっちゃんと言い続ける姿など、

思わずクスッとこちらが笑みをこぼすような愛らしさに溢れています。

 

そんな次郎吉ですが、次郎吉自身も幸蔵と同じように

あまり恵まれたとはいえない環境からひたむきに頑張り、

江戸時代の花形である町火消となったという

本人の真っ直ぐさ・芯の強さが感じられる

キラキラとした瞳がまぶしく、町火消としてのきりっとした表情が素敵でした。

 

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

天紫珠李さんが演じるのは、

川向うの辰巳芸者 喜の字。

 

芸者の中でも、辰巳芸者ということで

粋で大人っぽい魅力が必要の役かと思いますが

目線の配り方や指の先まで意識された動きなど

細部まで美しい動きに、目を奪われました。

 

この公演の幕開けは紗幕の奥で月夜に照らされる中、

雅に踊る天紫さんから始まります。

ここから現代とは違う江戸時代らしさを感じられ、

グッと物語に引き寄せられた幕開けでした。

 

若い頃に一度結婚を経験したというのもあり、

ただ美しいだけではなく覚悟と度胸があり

その堂々とした姿からはかっこいい要素を感じられ、

まさにいい女と呼ばれる艶やかさが魅力的な天紫さんの喜の字。

 

そんな気の強さが垣間見える喜の字ですが、

次郎吉に向ける可愛らしい笑顔が本当に愛らしく

次郎吉と喜の字のかんざしのやり取りの場面では、

微笑ましいふたりに思わずキュンとしてしまいました。

 

言葉では決して互いに自分の想いを口にはしませんが、

かんざしを手にした際の彩海さん次郎吉の

目元の優しさ、少し緩んだ口元など

その全てから喜の字のことをとても大切に想っていることが伝わってきます。

 

そして、一輝翔琉さん演じる弟の新助を守りたい

家族として大切に想っている姉らしさも天紫さんの落ち着いた雰囲気にぴったりだなと感じました。

 

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

花妃舞音さんが演じるのは川向うの巾着切り お壱。

幸蔵に想いを寄せており、そのひたむきな姿が

とても健気で可愛らしく、コロコロと変わる表情は

愛らしさそのものです。

 

久々に再会した次郎吉のことばかりを考えてしまう幸蔵に向かって、

これまで川向うで共に一緒に暮らしてきた自分たちと次郎吉

どっちが大切なの!と訴えかけたり、

座って三味線を弾く幸蔵に背中をくっつけるなど

甘い声に潤んだ瞳、

可愛さいっぱいの笑顔を見せたかと思いきや悲しげな表情と

全てが可愛くて愛おしい存在でした。

 

 

この公演はフィナーレがあります。

始めは、物語の続きのような空気感の中

礼華さんと彩海さんおふたりで踊られます。

 

手の角度や回るタイミングなど息の合った踊りがとても美しく、

心を通い合わせているのが自然と感じられ素敵でした。

 

礼華さん・彩海さんとして踊られていますが

まるで幸蔵と次郎吉そのもののようで

ふたりの信頼や友情が強く感じられ、

決めポーズまでに

一瞬二人で顔を合わせる瞬間がありますが

この時にお互いの目を見る礼華さんと彩海さんの姿も魅力的で印象に残りました。

 

 

続いて、娘役の皆さんが礼華さんの周りを囲み、踊られます。

 

色とりどりの着物姿の娘役の皆さんおひとりおひとりが美しく輝き、

その場がパッと一瞬で華やかになるのですが

それぞれ礼華さんの隣で踊られる際の

寄り添い力に溢れた、愛らしい表情や仕草がとても可愛らしく

まるで花が咲き誇ったように明るく華やかなひと場面でした。

 

 

そんな明るい雰囲気から、しっとりとした雰囲気に空気感がガラッと変わり

彩海さんと天紫さんのデュエットダンス。

 

こちらも、お芝居の延長線上のような振り付けとなっており

彩海さんと天紫さんが目を合わせて微笑み合う瞬間

幸せな時間が流れ、優しい世界が広がっていました。

 

彩海さんの肩に後ろから天紫さんが手を置き、

彩海さんが振り返りその手を取り

自分の方へグッと引き寄せる振り付けや

小指同士を引っ掛け、ゆびきりの状態で互いを見つめ合い回るなど、

幸せな次郎吉と喜の字を見ているようで

見ているこちらが幸せな気持ちでいっぱいになる癒しのデュエットダンスでした。

 

最後は、これまでとはまた空気感が全く異なり

熱く激しい男役群舞です。

 

火消しとして法被を着た礼華さんを率いての群舞は、

見ているだけで熱さを感じ、まさに若さやパッションが溢れていました。

 

哀愁漂う、抑えたお芝居が光る作中からガラッと纏うオーラも変わり、

はじけるようなダイナミックなダンスに

生き生きとした明るい表情と、

楽しい!という声が聞こえてきそうな輝く笑顔など、

礼華さんの魅力的なギャップに心を奪われました。

 

今回の男役群舞は、同じような振り付けも多く

とてもパワーが必要な群舞だと思うのですが、

舞台上にいる皆さん、おひとりおひとりが

全力で気持ちを込めて踊られているのをひしひしと感じます。

 

全身から溢れ出る熱さが真っ直ぐに伝わってきて、とても心があたたまる素敵なフィナーレでした。

 

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

 

現在、宝塚バウホールにて上演中の

月組公演

バウ・ミュージカル『月の燈影(ほかげ)』は

明日6月25日(日)までの上演です。

 

 

千秋楽の6月25日(日)15時公演は、

タカラヅカ・オン・デマンドにて

ライブ配信がおこなわれます。

 

詳しくは、宝塚歌劇の公式ホームページをご確認ください。