梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 宙組公演 ミュージカル・ロマン『大逆転裁判』 -新・蘇る真実-

宮村裕美です

 

7月19日(水)~7月26日(水)まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

8月1日(火)~8月8日(火)までKAAT神奈川芸術劇場にて上演されました

宙組公演

ミュージカル・ロマン『大逆転裁判』-新・蘇る真実-

 

脚本・演出は鈴木圭さん。

 

この公演の原作、「逆転裁判」は法廷を舞台に、無実の罪に問われた依頼人を救うべく事件の真相を暴いていくゲームです。

今回の公演は、宝塚歌劇×逆転裁判第4弾ということで、「逆転裁判」シリーズの主人公・成歩堂龍一の先祖、成歩堂龍ノ介を主人公とした大ヒット作「大逆転裁判」を舞台化したものとなります。

 

この公演にて、初の東上公演主演を務めたのは、瑠風輝さん。

 

同じく東上公演初のヒロインを務めたのは、山吹ひばりさん。

 

出演者は、瑠風さん率いる28名の宙組の皆さんと専科より汝鳥伶さん。

 

 

物語の舞台は、大英帝国。

成歩堂龍ノ介は、船中の事故で亡くなった親友・亜双義一真に変わり、司法留学生として大英帝国の地に降り立ちました。

その夜、龍ノ介と法務助士・御琴羽寿沙都は航海中に出会ったシャーロック・ホームズに、バッキンガム宮殿で開催される、仮面舞踏会に誘われます。

 

しかし、そこでは龍ノ介と同じく舞踏会に招待されていた語学留学生、夏目漱石が殺害される事件に遭遇してしまいます。

そして、殺人犯として連行されたのは、驚くべきことにホームズでした。

ホームズに弁護を託される龍ノ介。龍ノ介はホームズを救うべく、真実にたどり着けるのでしょうか…。

 

 

原作がゲームというのもあり、出演者の皆さんの独特な動きや仕草がまさにゲームに登場する人物たちそのもので、その動きと効果音が相まって、いつも以上にキレのある動作が多いように感じられました。

 

また、色んな場面で証拠品となるアイテムなど、映像が効果的に使われるのですが、私が特に映像の中でも面白いなと感じたのは、夏目漱石役の凰海るのさんが四字熟語を言うたびに、背景のセットに効果音と共に達筆な四字熟語が描かれるところがとても印象に残っています。

 

そして、音や映像・照明と細部にまでゲームを再現したかのような細部へのこだわりが感じられ、立体的で躍動感のあるストーリー運びだったように感じました。

 

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瑠風輝さんが演じたのは、帝都勇盟大学の学生 成歩堂龍ノ介。

弁護士を目指し、司法の勉強をしています。

とても真面目で、法廷などで緊張すると目が泳ぎ一見少し頼りなさげな様子がありながらも、依頼人を信じる真っ直ぐな心で、真実にたどり着きます。

 

ゲームから飛び出してきたかのような、大きめなリアクションがお芝居にはまり、とても躍動感のある動きが新鮮でまた新たな瑠風さんの魅力を感じることができました。

 

大きめな表情や動きがキャクター感があるのはもちろん、繊細な心の動きをセリフとセリフの絶妙な間合いで表現するなど、瑠風さんの真っ直ぐさが役と合わさり、ただ真面目な人物というのではなく、一生懸命さがリアルに伝わってくるところも魅力の一つでした。

 

女性に慣れていないところから、寿沙都との微妙な距離感は微笑ましく、ホームズに振り回されながらも懸命に真実と向き合う姿はかっこよく、龍ノ介自身の人柄の良さが感じられました。

 

そして、瑠風さんといえばやはり爽やかで伸びやかに広がる声が魅力的ですが、今回もそんな声が活きた役でした。

 

難しいセリフや長い説明セリフなど、集中力が必要な場面でも、ナチュラルに落ち着いた声でつっかかることなくスラスラと声を発し、聞いているこちらも内容がスッと自然と入ってくる感覚がありました。

また、セリフを発する声はもちろん、劇場中に響き渡るような広がっていく歌声もとても素敵で、瑠風さんの歌声は心に真っ直ぐと飛んでくるような印象を受けました。

 

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法務助士として成歩堂龍ノ介をサポートする御琴羽寿沙都を演じるのは、山吹ひばりさん。

 

しっとりとした美しいビジュアルでありながらも、大好きなシャーロック・ホームズに出会った時など、テンションが上がると自然と動きが大きくなり早口になり、何よりも嬉しそうな表情と、飾らない素直な姿が魅力的です。

 

ただ可愛い存在というだけではなく、龍ノ介と共に事件の真相へたどり着くために龍ノ介を支え、健気で真面目な面もまた寿沙都の魅力の一つで、柔らかに笑うナチュラルなリアクションや動きも印象的でした。

 

真実を見つけるために、龍ノ介のことを手助けする寿沙都ですが、法廷の場面では、歌ったり踊ったりと出ずっぱりの瑠風さんに飲み物を渡したりタオルを渡したりと、実際にもサポートする姿が作中自然と溶け込んでおり、真剣な表情で瑠風さんを手助けする山吹さんが健気で愛おしく、その姿はまさに龍ノ介を支える寿沙都そのものでした。

 

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名探偵シャーロック・ホームズを演じるのは、鷹翔千空さん。

英国人らしくオシャレで美しくてかっこいいのですが、言動の端々からは変わり者の一面も見え、どちらかというと頭がキレるという印象よりかは、チャーミングなシャーロック・ホームズだなと感じました。

 

法廷中は、龍ノ介が自らで困難を打ち破れるよう、終始にこやかな表情で龍ノ介のことを見ている、穏やかな表情が印象的です。

しかし、行き詰ってしまった際には解決の糸口をそっと渡すなど、さりげないサポートから、最後には「さすが名探偵!」と、ちゃっかり美味しいところを持っていく自由なところも、つかみどころのないホームズらしく魅力的でした。

 

ホームズと一緒に住み、サポートをしている天才少女のアイリス・ワトソンを美星帆那さんが演じているのですが、まさにマスコットキャラクターのように存在そのものがキュートで心を奪われました。

 

小さくて可愛らしいビジュアルはもちろん、ちょこまかと動く姿からは、その場が自然とパッと明るくなるようで、物語の中でも癒しの存在となっていました。

 

 

バッキンガム宮殿の執務長・ニーナ・ジョーンズを演じるのは、天彩峰里さん。

落ち着いた声にスマートな身のこなしと、その立ち姿を見ただけで彼女は仕事ができる人だろうというのが容易に想像できます。

 

瞳の色が鮮やかブルーで、吸い込まれそうなほど美しく、全体的に赤が主体となったスーツは、ベロア素材がポイントに使われており、頭に斜めにかぶせられた小さめの帽子も可愛く、オシャレです。

 

ヴィクトリア女王のために真面目に働く彼女ですが、ある秘密を抱えており、噓を隠した繊細なお芝居がとてもナチュラルで、動揺したであろうという時の目線の動かし方やセリフの発し方、些細な仕草も美しく、龍ノ介との緊張感のある場面も印象的でした。

 

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成歩堂龍ノ介の親友・亜双義一真を演じるのは、風色日向さん。

龍ノ介と共に大英帝国で学ぶ予定でしたが、船中の事故により亡くなってしまいます。

しかし、熱い心でいつも龍ノ介のことを鼓舞するように登場し、彼の支えとなります。

 

龍ノ介のことをそばで見守り、彼が行きづまった時にはいつも登場するのですが、熱く優しい言葉から龍ノ介のことを信頼しているというのが理解できるのはもちろん、何も言葉を発さなくとも、彼ならきっと乗り越えることができる!という、優しさがありながも自信に満ちた瞳が印象的でした。

 

これまで、あまり瑠風さんと風色さんが同じ場面でお芝居をされるという印象がなかったですが、学年差を一切感じさせず熱い男同士の友情や信頼が自然と感じられ、ふたりのお芝居の温度感が合うという新たな発見ともなりました。

 

 

フィナーレは、瑠風さんの長い手足が活きたスピード感のある群舞、そして落ち着いた雰囲気の中で優雅さとロマンティックさのあるデュエットダンスが魅力的でした。

 

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