宝塚大劇場花組公演『鴛鴦歌合戦』・『GRAND MIRAGE!』

樽井美帆です

 

花組公演

オペレッタ・ジャパネスク『鴛鴦歌合戦』

ネオ・ロマンチック・レビュー『GRAND MIRAGE!』

が、宝塚大劇場にて7月7日(金)から8月13日(日)まで上演され、

東京宝塚劇場では9月2日(土)から10月8日(日)まで上演されました。

なお、10月3日(火)から5日(木)の公演は中止となりました。

 

また、東京宝塚劇場公演千秋楽付で、

副組長の航琉ひびきさん・和海しょうさん・春妃うららさんが退団されました。

 

 

オペレッタ・ジャパネスク『鴛鴦歌合戦』
~原作 映画「鴛鴦歌合戦」(c)日活株式会社 監督/マキノ正博 脚本/江戸川浩二~
脚本・演出/小柳 奈穂子

 

1939年公開の日本映画「鴛鴦歌合戦」は、片岡千恵蔵主演のオペレッタ映画。

日本映画史にその名を刻む傑作オペレッタ喜劇、初の舞台化となりました。
堅苦しい宮勤めを嫌い、木刀削りをしながら貧しくとも気楽に暮らしている

長屋住まいの浪人・浅井礼三郎と、隣家に住む傘貼り職人の娘・お春、

料亭香川屋の娘・おとみ、親同士が勝手に約束した許嫁・藤尾が恋の鞘当てを繰り広げます。

引く手あまたで困り果てる礼三郎はお春に想いを寄せながらも、

気のないそぶりでやり過ごしていました。

そんなある日のこと、藩政には見向きもせず骨董収集にうつつを抜かしている

お殿様・峰沢丹波守がお春を見初めてしまいます。

礼三郎とお春の恋の行方はいかに・・・

 

トップスターによる開演アナウンスでは、演出家名・作品名のあとに

音楽指揮の方のお名前が紹介されます。

この公演では、お芝居・ショーともに佐々田愛一郎さんが指揮を担当されました。

トップスターさんによって「愛一郎」さんの言い方が違うので、

私のいつも密かに楽しみにしています。

「愛」という部分に、みなさん反射的に愛をこめてしまわれるのではないでしょうか?

柚香光さんに、あんなにも素敵にお名前を紹介される佐々田愛一郎さんがうらやましいです💗

 

チョンパでのオープニング✨

大階段、舞台、花道に、傘が描かれた赤・水色・黄色・緑など

色とりどりの着物姿の男役さんと娘役さん。

手には紫色やピンク色の傘。

舞台に傘の花が咲き誇ります!

様々な色に輝く大階段!

まるで日本物のショーのような華やかさでした。

 

花咲藩の城下町では、人々が3年ぶりの歌合戦開催を喜んでいます。

3年という年月に、コロナ禍を過ごしてきた私たちの日々を思わず重ねてしまいました。

 

お話しは、ゆっくりと独特の間合いで心地よく進みます。

そして、BGMと舞台上の人物の動きがピタリと合っていることにより、

喜劇らしい楽しさが増していたように感じました。

コミカルで大げさな動きや、何事にも大まじめな登場人物たちにたくさん笑わせていただきました。

 

トップスター柚香光さんは、木刀削りで生計を立てる貧乏浪人・浅井礼三郎を演じられました。

お芝居でもショーでも「静」の美しさを感じさせてくださる柚香さん。

激しく動いているにも関わらず「静」を感じる不思議な方ですよね。

 

カランコロンという下駄の心地よい音をさせながら感激の客席下りがありました!

 

柚香さんの自然な言葉と語尾は、ベルベットに包まれているような心地よさ。

「あるもんだぜ」の「ぜ」に、たくさんのトキメキをいただきました💖

 

「ハッハッハッ」という笑い声の、息と声の割合が絶妙でカッコよすぎました!

 

礼三郎のことが大好きなお春とおとみは、一歩も譲り合わず歌で喧嘩を表現。

最後は「イーッ」と可愛いふくれっ面の二人。

そんな二人の様子に慌てふためくことなく、自分が原因となっているにも関わらず、

涼し気な目元で、「仕方ないなぁ」という表情でお兄さんのように見守る姿もステキでした。

 

山寺の境内で、子どもたちに剣術の稽古をつけている礼三郎。

稽古に励む男の子4人、女の子4人は、今年初舞台を踏み、

花組生として初めての大劇場公演出演となった109期生のみなさん。

目がキラキラしていて、役ではありながらも柚香さんとの関係を表しているようで

とても微笑ましい場面でした。

「まとめてかかってきなさい!」と礼三郎に言われて4人で立ち向かいますが、

片手で跳ねのけてしまう礼三郎。

今はまだまだ太刀打ちできませんが、いつか一人でも戦えるくらいにたくましく成長していく過程を

見守っていきたいですね。

 

花組『鴛鴦歌合戦』2

 

トップ娘役・星風まどかさんは、礼三郎と同じ長屋に住む傘貼り職人の娘・お春。

 

拗ねた時に出てしまうお春の口ぐせ、可愛らしすぎる「ちぇっ」。

このたった3文字に凝縮された見事な可愛らしさ💕

 

どこかレトロな雰囲気を感じる星風さんのセリフ回しがとても心地よく可愛らしく、

気づけば頬が緩んでデレッとしてしまっていました🥰

 

大切なことを小さな声でボソッと言う可愛らしさに、客席からは何度も笑いが起こりましたね。

「お父さん嫌い」というセリフ、普通なら「嫌い!」と強く言ってしまいそうですが、

星風さんは「ボソッ」とおっしゃるんですよね。

その「ボソッ」が逆に思いがこもっていて、お春の父親役の和海しょうさんは

とても悲しそうでした🤭

そんな父娘のやりとりも微笑ましかったですね。

 

走り方も可愛らしく、ちょっと大人で幼さがまだちょっと残っている

星風さんの魅力的なお春は、多くの人を虜にしたのではないでしょうか。

 

実は・・・通し舞台稽古では、プリプリ怒っている時に草履が脱げてしまったお春。

礼三郎に「脱げたよ、草履」と言われてしまったんですよ😀

「ほらほら、仕方ないなぁ」という感じの礼三郎と、

お構いなくプリプリ怒り続けるお春、最高でした✨

 

柚香さん・星風さんの距離感には、いつもドキドキしてしまいますが、

『鴛鴦歌合戦』での私のドキドキポイントの一つは、相合傘の場面でしょうか😍

せっかく相合傘のチャンスがめぐってきたのにすぐに雨がやんでしまって、

まだ雨は降っていると言い張って頑張るお春。

 

星風さんがずっと笑顔で柚香さんを見つめているんです😍

柚香さん身長171㎝、星風さん162㎝、その差9㎝。

お二人の距離感はいつも絶妙!

自然で近くてドキドキします!

星風さんが、柚香さんの顎の下に入り込んで、顎の下から見上げて見つめる感じなんですよね。

 

父親が骨董集めにお金を使ってしまい、お米を食べることができず麦こがしばかり食べているため、

「私の顔、この頃黄色くなってない?」と礼三郎に聞くお春。

「どれどれ」とお春と同じ目線に腰を落として顔を覗き込む礼三郎。

恥ずかしくて耐えられず、礼三郎から離れてしまうお春が可愛い過ぎました。

 

丹波守の家臣たちに捕まえられそうになっているお春を助ける礼三郎。

お春を片手でかばいながら傘を使っての立ち廻り!

着物姿でも足さばきが美しい柚香さん。

着物の裾の翻り方も操っていらっしゃるのではないかと思ってしまいました。

 

追っ手を逃れて手をつないで銀橋へ出てきた二人。

お春の手を優しくとる礼三郎にうっとりしました。

 

骨董集めにうつつを抜かす花咲藩の藩主・峰沢丹波守は永久輝せあさん。

この公演で退団された春妃うららさん演じる麗姫と同期生夫婦を演じられました。

永久輝さんの青天姿が新鮮!

突き抜ける明るさと可愛らしさは、またすぐにでも会いたくなってしまうほど魅力的。

お顔と身体全体で表現されるダメダメお殿様を見ていると、元気になれました。

いつか永久輝さんが演じるコメディ作品を観たいです!

 

花組『鴛鴦歌合戦』1

 

そんな丹波守の弟・秀千代は聖乃あすかさん。

バウホール公演『舞姫』を経て、ますます歌に説得力と存在感を増されたなと私は感じました。

ずっと困り眉の秀千代。

思いっきり「嫌じゃ!嫌じゃ!」と駄々をこねる姿が愛らしく、

永久輝さん演じる丹波守との血のつながりを感じました。

美空真瑠さん演じる空丸とのコンビも可愛かったですね。

 

親同士が勝ってに約束した礼三郎の許嫁の藤尾、美羽愛さん。

父親の綺城ひか理さんに、礼三郎に「抱き着け!」と言われて必死に抱き着く姿が可愛く健気でした。

 

料亭香川屋の娘おとみ・星空美咲さん。

町で評判の美人で強気なお嬢様。

彼女のことが大好きな取り巻きたちをいつも引き連れています。

ちょっと口をがらせて強気な物言いなのですが、可愛らしくて嫌味がありません。

とてもキュートで歌声も美しかったです。

 

そんなおとみにいつも付き添っているのは、天城れいんさん演じる料亭香川屋の丁稚・三吉。

いつも飄々としているのですが、ほかの取り巻きたちとは違って、

丁稚の自分は正式におとみに付いていることが認められている存在なんだという

優越感と喜びを感じました。

口元と表情がとても素直で、心が全部出ている三吉。

「へい」という返事や走り方も可愛かったですね。

天城れいんさんは、この公演で新人公演初主演をつとめられました。

 

全員が勢ぞろいしてのエンディングは、ミラーボールも輝きめでたしめでたしの鴛鴦歌合戦!

めでたく結ばれた礼三郎とお春の末永い幸せを祈り歌います。

 

花組『鴛鴦歌合戦』3

 

登場人物はいい人ばかり。

ジーンとこみあげる感動もあり、あたたかい気持ちになる場面もあり。

そして、思わず笑ってしまう瞬間も何度もあり、

終演後は、とても軽やかで爽やかな気持ちなることができました。

 

 

 

ネオ・ロマンチック・レビュー『GRAND MIRAGE!』

作・演出/岡田 敬二  

 

演出家・岡田敬二さんのロマンチック・レビュー・シリーズ22作目です。

 

6人の娘役さんのコーラスが美しく響き渡りショーがスタート。

煌めく紫陽花のセットの前に、紫陽花の花が施されたアイボリーの衣装の柚香光さんが登場✨

ロマンチックレビューシリーズといえば、娘役さんの大きなつばの帽子!

パステルカラーの優しいピンク・水色・紫・緑色のドレス。

花びらのようにスカートの裾が軽やかに柔らかくふんわり翻ります。

そんな美しい衣装のロマンチックの乙女たちに囲まれて柚香さんが主題歌を歌います。

 

柚香さんと同じ色合いのドレスと大きなつばの帽子の星風まどかさん。

帽子のつばの部分もキラキラ輝き、髪飾りは紫陽花の花。

 

二人で幸せそうに踊ったり、男役さんが優雅に踊ったり、全員で踊ったり。

本当に美しい色彩で、花びらたちの舞踏会のようでした。

 

花組『GRAND MIRAGE!』1

 

柚香さんのナレーションから始まる場面「遥かなるMIRAGE」。

スウェン・ヘディンの探検隊の一員であり、フランス外国人部隊のアンリ・フィリップ中尉は、

ひとり本隊からはずれ、砂漠をさまよっていた・・・

 

帽子の下に白いターバンを巻いた軍服姿の柚香さん。

砂漠の精たちに翻弄されながら踊ります。

打楽器の音のみで踊るダンスは、鬼気迫る感じがしました。

オアシスの幻影が現れ、ミラージュの乙女たちが登場。

オレンジ色のグラデーションの衣装のプリンセスのようなミラージュの乙女・星風さんと喜びにあふれて踊ります。

スモークがたかれ美しく幻想的で吸い込まれそうな場面でした。

 

イタリアの宮殿を舞台にカンツォーネの名曲が歌い継がれていく場面で最初に登場するのは、

赤い衣装の永久輝せあさん。

恋の始まりを喜びいっぱいに「アルディラ」歌います。

 

青年たちはマントを翻しキラキラ輝き、乙女たちの目は恋の喜びにあふれ、

恋人たちが熱く歌い踊ります。

まぶしいエネルギーに満ち溢れていました。

 

ラテンの場面「シボネー・コンチェルト」は、今年入団された生徒さんまで全員が踊る場面。

「オーレ」とセクシーに柚香さんがせり上がり。

衣装に使われている色は、ゴールド・ブルー・パープル・白と爽やかながらも

パンツのサイドやスカート、袖に豊かなフリルが使われフリフリなので、

ラテンの熱いムード!

娘役さんは、大きなお花が一つ付いたお揃いのヘアバンドをしています。

 

一之瀬航季さんの右肩に乗って星風さんが登場!

一つ技を決めてから星風さんを一之瀬さんの肩から降ろすのですが、

星風さんのバランスを感じながらサポートする一之瀬さんの優しく頼もしい眼差し✨

大技が成功した後、見つめ合ってニッーっと笑う同期のお二人がステキでした。

 

花組『GRAND MIRAGE!』2

 

難しいリズムの熱いダンス。

軽やかな足さばきから目が離せませんでした。

侑輝大弥さんの目力が、ものすごくイケイケで私は印象に残っています。

 

そして、熱い空間から優しく甘い空間へ。

聖乃あすかさんが、水色の優しい雰囲気の衣装で「She」を歌い、

美しいグリーンの衣装で6名の娘役さんが寄り添い踊ります。

優しくドラマチックな歌声でした。

 

続いては、グッと照明が落とされ夜の街へ。

形が違う5つの四角いセットが登場。

愛を求めさまよう男たちが踊ります。

衣装の色は、黄色、黒、白で、みんなデザインが違うんです。

とてもオシャレでありながら、ちょっとヤンチャな感じも。

黄色いレザー調のジャケットの柚香さんの見事なジャケットプレイを披露!

ジャケットから肩を抜いて、踊るみんなをリズムをとりながら楽し気に見ている姿がステキ🤩

四角い壁状のセットの隙間から、投げキッスをしてシュンと消える一瞬もカッコイイ🤩

毎回、これ以上はないと思わせるカッコ良さを見せてくださる柚香さん😍

でも、毎回それを軽々と超えてこられますよね!

 

6月に亡くなられた羽山紀代美さん振付の「ボレロ・ルージュ」。

緊張感あるボレロの曲に合わせてボレロの男・女が、

規則正しく刻まれるリズムに合わせて凛々しく踊ります。

赤いカーテンが開くと、そこには赤く染まった大階段。

大階段の中央には黒い衣装のトップコンビ。

熱く燃えるような3組のデュエットダンスへ発展していきます。

柚香光さん&星風まどかさん、永久輝せあさん&星空美咲さん、聖乃あすかさん&美羽愛さん。

同時リフトなど、熱い熱い思いを表現されました。

 

「ジュテーム」では、この公演で退団された航琉ひびきさん・和海しょうさん・春妃うららさんが、

大劇場を愛おしむかのように歌声を響かされました。

春妃さんの恥じらうような伏し目が美しく可憐。

航琉さんの後任として副組長に就任された紫門ゆりやさんのロイヤルな優雅さ美しさにもうっとり。

 

トップコンビのデュエットダンスは、ブルーに輝く大階段からスタート。

シンプルな白燕尾の柚香さんと同じく白のシンプルなドレスの星風さん。

大階段の右上では永久輝さんが「ソー・イン・ラブ」を歌います。

3人が織りなす美しい風景。

歌い終わって舞台下手に走り去る永久輝さんもカッコよかったです✨

柚香さんが星風さんに向ける眼差し、触れる指先、動きのサポートなどがスムーズで

本当に夢の世界を見せていただきました💘

 

初エトワール朝葉ことのさんの美しい歌声からスタートしたパレードは、

プロローグ同様、美しいパステルカラーのお花が咲き誇るような優しい華やかさ。

 

季節の花々が彩る花のみちを、足取り軽く主題歌を口ずさみながら帰りたくなる、

幸せな気持ちで胸がいっぱいになるショーでした。