梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 花組公演 ロマンチックコメディ 『Liefie(リーフィー)-愛しい人-』

宮村裕美です

 

7月17日(水)~7月24日(水)まで日本青年館ホール、7月30日(火)~8月1日(木)まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演されました

花組公演

ロマンチックコメディ

『Liefie(リーフィー)-愛しい人-』

 

作・演出は生駒怜子さん。

 

この公演の主演を務めたのは、聖乃あすかさん。

聖乃さんは、これまで、宝塚バウホールにて上演されました、2021年の『PRINCE OF ROSES』、2023年の『舞姫』にて主演を務められ、今回が初の東上公演主演となりました。

 

この公演にて、初の東上公演ヒロインを務めたのは、七彩はづきさん。

七彩さんは、新人公演でヒロインを務めた経験はありますが、今回別箱公演にて初めてヒロインを務められました。

 

聖乃さんと七彩さん、とっても柔らかで優しい空気感がお似合いで、穏やかなこの物語にぴったりなお二人。

 

出演者は、28名の花組の皆さんと専科より一樹千尋さん。

 

オランダの小さな街で、新聞記者として働くダーン。

誰もが思わず笑顔になるような、世界を明るくするような、そんな“言葉”をダーンは探していました。
そのために始めたのが「あなたに伝えたいこと」の掲載。

その取材を通して自分の求める“言葉”に辿り着けるとダーンは信じています。
掲載紙が発行されると、ダーンは必ず幼馴染のミラが働くカフェを訪れます。

大人になるにつれ、どんどん笑わなくなったミラ。

ダーンが“言葉”を探す理由とミラが笑わない理由とは…という物語。

 

この公演は、セットが少し特殊で多くのイスが舞台セットとなっています。

それも、一つの大きなセットに本棚やイスなど様々なものが組み合わさっており、出演者の皆さんがその空いたスペースに椅子を戻すということもありました。

 

また、舞台の頭上に吊るされたイスがたくさんあったりと、この物語でイスは何をイメージされているかというと、居場所を表しているそうです。

 

聖乃あすかさんの愛称、“ほのか”に合わせて、歌詞やセリフに「ほのぼのやろうぜ」というものがあったり、「せーのっ!」と、聖乃さんに合わせてのセリフがあったりと、クスッと笑えるチャーミングな言葉が散りばめられたアットホームな空間が広がるこの公演。

 

リーフィー1

 

聖乃あすかさんが演じたのは、ベーグ新聞社で働く新聞記者ダーン。

とにかくたくさん歩く、足で稼ぐタイプの記者で、街の人たちとも仲が良く、新しい情報も見逃しません。

幼なじみのミラを大切に想っていますが、ミラがこれ以上傷つかないように、そばで見守り支えています。

 

クールでかっこいいというキャラクター性よりも、大切に想うミラのためにどんなことも全力で、言葉の力を信じ、真摯に自分の道を進む姿が、聖乃さんの本来持つ、まっすぐで誠実な優しい印象にぴったりな役でした。

 

意識していない優しい気遣いにミラはキュンとするのですが、なかなかふたりの距離は縮まらず、そんなふたりに周りがやきもきとするところもあるものの、絶妙な二人の距離感が可愛らしく、二人のぎこちないやり取りに見ていて笑みがこぼれます。

 

リーフィー2

 

七彩はづきさんが演じたのは、祖父のカフェで働く、ダーンの幼なじみミラ。

幼い頃に両親を事故で亡くしており、自然に笑うことができません。

難しい心境を抱え、自分と葛藤する中で、ダーンの優しさが自分だけのものならいいのにと、恋する乙女なリアクションがとても可愛らしく、守ってあげたくなるヒロイン像でした。

 

登場シーンでは、お一人で登場されてそのまま歌われるなど、初めてのヒロイン役で緊張もあったかと思うのですが、緊張を少しも感じさせない、透明感のある透き通った歌声が非常に素敵で印象に残っています。

 

クイーンズデイの場面では、バランスを崩したミラをダーンが受け止めたり、恥ずかしくなったミラに、熱でもある?体調は大丈夫?と、ダーンがミラのおでこに手を当てるなど、とにかく優しいダーンにドギマギとするミラ…。

コロコロと豊かに表情が変わる七彩さんミラですが、どのリアクションも本当に可愛らしかったです。

 

リーフィー3

 

謎の青年、レオを演じたのは侑輝大弥さん。

限られた出番の中でも、周りの皆さんとは少し離れたセットの上で嘆く姿に、怒りややるせなさ、寂しさ・羨ましさなど負の感情がフツフツと湧いているのが歌声や表情から強く感じられます。

 

ミラと同じ境遇で、幼い頃に家族を失っているのですが、悲劇のヒロインとして周りに支えられ、見守られながら生ているミラと、悲劇のヒロインにはなれず、1人孤独に生ている自分を比べ、ミラに恨めしい気持ちを向けます。

 

自分の気持ちを抑えることができず、ダーンに殴りかかってしまうのですが、その後、峰果とわさん演じる大工のハンスに、殴った手が痛かっただろうとレオの気持ちを受け止めてもらい、最終的にはミラとダーンに謝り、和解することができます。

 

峰果さんハンスは、親方でありながらもまるで親のようにレオを見守り、上手く言葉にできないモヤモヤとした気持ちを抱えていたレオですが、これからは街のみんなとも共に仲良く過ごしていけるであろう、カフェでの晴れやかな良い表情が印象的です。

 

子どものヤンを演じたのは、初音夢さん。

ダーンたちが暮らす街へ最近引っ越してきた子どもですが、やんちゃで元気いっぱいで素直なところが子どもの可愛らしさそのものです。

 

舌足らずな話し方や、落ち着きのない様子など、幼い様子がとても自然であり、かつリアルに再現されており、初音さんの演技力に驚きました。

 

周りの皆に「いい仕事したでしょ?」と、褒めてほしそうに誇らしげに言う姿も非常に可愛らしく、客席を元気いっぱいに走り回る姿もチャーミングでした。

 

ベーグ新聞社の新入社員、ピーターを演じたのは、鏡星珠さん。

新入社員ということで、いつか自分も大きく取り上げられるような記事を書きたい!と、夢を見ています。

若さゆえのガムシャラで全力な初々しさたっぷりで、ダーンに付いてへとへとになる姿には、愛され気質な末っ子っぽさが滲み出ており、先輩たちから見守られ、ここから成長していく姿がみえました。

 

真澄ゆかりさん演じる、ダーンとミラの幼なじみのアンナにアプローチをする姿も可愛らしく、ちゃきちゃきとしたしっかり者のアンナと、天然っぽいふんわりさんなピーターの今後も気になってしまいました。

 

今回の公演のフィナーレ前は、ちょっとした時間が設けられており、この演出がこれまでにあまりなく、斬新です。

 

ダーンとミラ、互いの気持ちを伝えあいハッピーエンドで幕が閉じた後、準備に少し時間が掛かるということで、組長の美風舞良さんが、お話しをおこない、場を繋いでくださいます。

 

あくまでも物語の役である、ダーンが働く新聞社のマイラ社長としてお話ししてくださるのですが、通し舞台稽古の際には「まもなく巴里祭ですね!」と、パリの歌を歌い出し「準備できました〜」と、翼杏寿さん演じる秘書のアンジュに歌を止められてしまい、「歌いたかったわ…!」とはけていく姿がチャーミングでした。

 

フィナーレの始まりは、娘役皆さんが、階段でポーズを取られているところから始まります。

 

真澄ゆかりさんが中心となり、娘役の皆さんが踊られるのですが、衣装がなんとパンツスタイル。

しかし、普通のパンツスタイルではなく、一見ロングスカートにも見えるような、黒と赤が貴重となった衣装。

柔らかな素材のため、娘役の皆さんが踊られるたびに足元の布が品よく動く様子が美しく、花娘のこんなかっこいい場面を見たかった〜!と思える素敵な振り付けです。

 

かっこよく、そして美しく、最後の決めポーズまで全てが鮮やかで華やかでした。

 

また、先ほどまでは子ども役として、幼くはしゃいでいたヤンを演じられた初音さんの可愛さ・美しさ・かっこよさのギャップ萌えには、胸のときめきを抑えられませんでした。

 

その後は、階段の奥から聖乃さんが登場。

深い藍色のベルベット素材のスーツですが、ジャケットやパンツなど、アクセントとしてキラキラとした飾りがデザインされており、聖乃さんご自身のキラキラさと相まって、登場されてこられただけでも、スポットライト以上のキラキラとした輝きを放ちます。

 

リーフィー4

 

一つ一つの動きが上品で、どの瞬間もかっこよくきまっている姿は、まさに花組の男役としての魅力が詰まっています。

 

振りのメリハリや、音楽や振りに合わせた角度や表情と、聖乃さんの男役としてのこだわりポイントがたくさんあり、素敵に見える要素が数えられないほどあることはもちろん理解できるのですが、「もはや細かいことは分からなくとも、全てを吹き飛ばす美しさだなぁ」と、華やかなオーラとその美しさになにも言葉が思い浮かばず、ただただその美しさの余韻に思わず浸ってしまいました。

 

聖乃さんが階段を下りて来られると、上から侑輝さんが登場され、顔を合わせる瞬間など、とてもいい笑顔でアイコンタクトを取られ踊られます。

そこから、男役の皆さんと群舞を踊られ、娘役の皆さんも登場され、最終的には聖乃さんを中心に男役・娘役の皆さんで踊られます。

 

ダンスパートの中には、聖乃さんが娘役皆さんの中心で踊られる際、男役の皆さんは舞台の上手・下手で聖乃さんと娘役の皆さんが踊られる姿を見ており、この構図も素敵な演出でした。

 

そして、聖乃さんがはけられたあとは、侑輝さんが中心となっての群舞です。

物語の中では、孤独の中にいる役というのもあり、なかなかに辛そうな表情ばかりでしたが、フィナーレではとっても楽しそうにイキイキとした表情で踊られていて、ダイナミックでキレのあるダンスも魅力的で、舞台の中央で輝いていました。

 

続いて、デュエットダンス。

まるでプリンセスのような、爽やかなグリーンと白のドレスで螺旋階段の上から登場される七彩さん。

 

手の出し方や視線の使い方、指先まで意識された踊りは優美で満点の愛らしさです。

そして、聖乃さんが登場され、腕を組んでふたりで階段を下りるのですが、本当に夢から飛び出してきたかのような、王子様とお姫様そのもののおふたり。

 

腕を組む前に互いを見るのですが、この時の聖乃さんが、非常に甘く優しい視線を七彩さんへ向けており、爽やかなのに優しい甘さが漂い、この一瞬で劇場中に優しい雰囲気が溢れていました。

 

デュエットダンスの最中も、自然な表情にも関わらず、ダーンがミラのことを愛おしくて仕方がないと思っているその気持ちそのもののような、全てを包み込むような優しい聖乃さんの目元が印象に残っています。

 

そして、同じくそんな優しい空気感に包まれ、のびのびと幸せいっぱいな甘く可愛い表情の七彩さんが幸せの象徴そのもので、やはり聖乃さんと七彩さんの柔らかな輝き、まとっているオーラが似ているなと思えました。

 

リーフィー5

 

デュエットダンスの後も、この公演はまだまだ幸せな時間が続きます。

パレードは、ダーンとミラの結婚式となっており、真っ白な衣装に身を包んだ聖乃さんと七彩さんが皆さんからお祝いされる中で幕が閉じました。

 

ゆったりとした時間の中で、優しく穏やかな人々が紡ぐこの作品、観劇の後には自分の周りの愛しい人について自然と考えたくなる、そんな心温まる公演でした。