宝塚大劇場雪組公演『ベルサイユのばら』-フェルゼン編-
樽井美帆です
雪組公演
宝塚グランドロマン『ベルサイユのばら』-フェルゼン編-
が、宝塚大劇場にて7月6日(土)から8月11日(日)まで上演されました。
1974年の初演から50周年を迎える今年2024年、
10年ぶりに『ベルサイユのばら』が宝塚大劇場の舞台に甦りました✨🌹
プログラムの演技指導の欄には、初演でオスカルを演じられた榛名由梨さんのお名前が✨
また、宝塚大劇場での新人公演は、昨年9月に行われた
月組公演『フリューゲル-君がくれた翼-』以来、11カ月ぶりに上演されました。
この公演で、雪組トップスター彩風咲奈さん、
野々花ひまりさん・希良々うみさん・有栖妃華さん・聖海由侑さんが退団されます。
宝塚グランドロマン『ベルサイユのばら』-フェルゼン編-
~池田理代子原作「ベルサイユのばら」より~
脚本・演出/植田 紳爾、演出/谷 正純
革命の火が燃え上がるフランスを舞台に、
スウェーデンの青年貴族フェルゼンとフランス王妃マリー・アントワネットの
許されざる恋を中心に、オスカルやアンドレなど魅力的な登場人物たちが織り成す、
甘く気高い愛の物語。
宝塚大劇場公演中には、ちょうどパリオリンピックが開催されていました。
ベルサイユ宮殿など、『ベルサイユのばら』の舞台となっている場所も
競技会場となっていましたね。
客席に入ると、両サイド花道にピンクのばらやろうそくのセットが迎えてくれます。
『ベルばらだぁ~!』と開演前からテンションが上がります!
鐘の音とともに、雪組トップスター彩風咲奈さんの宝塚大劇場公演最後の爽やかな開演アナウンス。
ミラーボールが回り、迫力のある序曲が響き渡ります。
幕が開くと舞台には、ピンクと水色の衣装があふれています。
小公子と小公女、バラの少年と少女が燭台をモチーフにしたシャンシャンを持って、
可愛らしい声で歌い『ベルサイユのばら』の世界に導いてくれます。
電飾文字『ベルサイユのばら』のフォントにもテンションがあがります!
『ベルサイユのばら』には、こんなにもたくさんの曲があったんだとあらためて実感。
プログラムには9曲掲載されています。
革命の最中に散ったオスカルとアンドレを思い、
白い薔薇を手にフェルゼンが歌う新曲『セラビ・アデュー』。
「私の中にあなたは生き続ける」・「あなたの中に私は生き続ける」という歌詞は、
フェルゼンからアントワネットへ、アントワネットからフェルゼンへ。
また、すべての登場人物に通じる歌詞ですよね。
そして、退団される彩風咲奈さんからのメッセージにも聞こえました。
フィナーレでも感動的に歌われました。
豪華な輪っかのドレスもたくさん登場しますが、
華やかな柄の生地を組み合わせて作られていることが私は印象的で、
新しい令和の『ベルサイユのばら』を感じました。
ロザリー・野々花ひまりさん、ベルナール・華世京さんを中心に、
怒りの頂点に達した市民の怒りを迫力あるダンスで表現する第二幕のプロローグ。
赤・白・青のトリコロールの照明の中、トリコロールカラーの布を付けた黒い衣装で踊ります。
激しいリズムや色彩にも新しい『ベルサイユのばら』を感じました。
『夢幻』の場面では、トゥシューズを履いたバラの精がピンクのばらのつぼみのセットを開くと、
中からフェルゼンとアントワネットが登場。
ポスターで着用されている柔らかいふんわりとしたピンクの衣装です。
星空が静かに輝き、白いスモークがたかれ、とても幻想的な場面。
初めて話を聞いてもらって、おかわいそうにと寄り添ってもらえたアントワネットが
初めての安らぎを得たように幸せそう。
そんなアントワネットを優しく包み込むフェルゼン。
二人で幸せそうに踊る姿は、本当に美しかったです。
貴婦人・令嬢たちの「オーホッホッホッ」という高笑いや、
オスカルを見て「キャー」と歓声をあげる姿も『ベルサイユのばら』ならではですよね。
彩風咲奈さんが退団公演で演じたのは、スウェーデンの伯爵フェルゼン。
彩風さんは、小学校6年生の時、宙組公演『ベルサイユのばら2001』をテレビで観て
宝塚歌劇に出会いました。
2013年『ベルサイユのばら』-フェルゼン編-に出演され、本公演ではアランとロセロワ役。
新人公演では主演フェルゼンを演じました。
また、2014年には全国ツアー公演『ベルサイユのばら-オスカルとアンドレ編-』にご出演。
演じたのはベルナールでした。
彩風さんにとって特別な思い入れがある作品・役が退団公演になったんですね。
プロローグで、ラベンダー色の宮廷服姿でマリー・アントワネットが大切にしていた
ステファン人形を抱いて登場し、『愛の面影』を歌います。
とても優しく伸びやかな歌声。
上品な足運び、優雅な動き。
マリー・アントワネットに初めて会った時を懐かしむセリフは、
なんて優しい言い方なのでしょう😍
『ベルサイユのばら』への愛が彩風さんからあふれていてました。
優しい潔さも持ち合わせていて、オスカルがあっという間に好きになるのも納得です。
彩風さんは長い手足で、優雅で美しい包容力を表現。
数々の軍服や宮廷服を美しく優雅に着こなされていました🤩
フェルゼンのお屋敷にメルシー伯爵が現れて、王妃と別れて欲しいと懇願する場面。
ソファーに座って一人読書をしているフェルゼン。
座り方がとってもお上品🥰
ガッと足を開いて座るお芝居とは違い、今回はまさにおみ足という言葉がふさわしい座り方。
本に落とす視線も美しかったですね✨
第一幕のラストでは、愛するアントワネットを救うため、
前かがみの姿勢でマントを翻し、客席を疾走しフランスに向かうフェルゼン。
あまりの美しさに息をするのも忘れて、走り去るフェルゼンを見送りました。
夢白あやさんは、フランス国王ルイ16世の妃マリー・アントワネット。
豪華な衣装を身にまとった夢白さんが、華やかで美しいのはもちろんですが、
私が特に印象に残っているのは、メルシー伯爵がステファン人形をアントワネットに返しに来る
静まり返った牢獄の場面。
無音ではなく、虫の声が小さく流れているのが緊張感を高めます。
そんな緊張感の中、豪華な衣装や鬘を身に着けていなくても、
気品を保ち、これまでになく穏やかなアントワネット。
メルシー伯爵と幼かった頃やフランスに嫁いできた時の思い出を話す時は、
少女時代思い起こさせるような無邪気な笑顔を見せます。
思い出話をしながらも、自分が歩んだ道や運命を決して後悔していない強いアントワネット。
とても清らかで魅力的な夢白さんのアントワネット。
断頭台への階段を上る背中は、覚悟と美しさにあふれ、
フランス王妃として立派に最期を迎えることへの喜びさえ感じました。
そんなアントワネットが階段を上りきると、
大階段を覆っていた白い布が取り払われ、大階段に紅薔薇が咲きました。
王妃付きの近衛隊隊長、男装の麗人オスカルを演じたのは朝美絢さん。
とても凛々しくて、白い軍服も赤い軍服もよく似合いです😍
シャープなお顔立ちで現代的な雰囲気も漂わせつつ、
どこかクラシカルな雰囲気を感じる朝美さんのオスカル。
必死で生きていることが伝わってくる声。
任務に就いている時、隊長として存在している時の固い声と、
心許せるアンドレの前で一人の人間として存在している時の優しい声の使い分けに、
オスカルの強さと切なさを感じました。
また、一度は愛してしまったフェルゼンの前や、心許せるアンドレの前では、
首の動き方がしなやかで、人を愛することに喜びを感じる愛らしい魅力的なオスカルでした。
オスカルの幼馴染アンドレを演じたのは縣千さん。
がっちりとしたスタイルがかっこよく、朝美さん演じるオスカルと並ばれた時のバランスが、
本当にマンガから抜け出してきたような美しさでした。
市民への攻撃を始めるよう命じるブイエ将軍と激しくやり取りするオスカルを、
信頼と愛を持って橋の上から見つめる瞳。
過去に傷を負った不自由な目で、懸命にオスカルを見つめるその瞳はとてもあたたかかったです。
アントワネットの後見人でオーストリアの伯爵、メルシー伯爵を演じられたのは、
専科の汝鳥伶さん。
1974年の初演に出演されている汝鳥さん。
初演では、新人公演でメルシー伯爵を演じていらっしゃいます。
これまでに何度も『ベルサイユのばら』に出演され、
ルイ16世、ジャルジェ将軍、ブイエ将軍を演じてこられました。
汝鳥さんの演じられるメルシー伯爵の存在は愛の塊。
セリフとしてではなく、心そのものでした。
フランス国王ルイ16世は、組長の奏乃はるとさん。
弱々しいイメージのない新しいタイプの国王だと私は感じました。
優しさ、強さ、愛にあふれている国王。
アントワネットに彼のステキさに早く気づいてほしいなと思ってしまいました💗
音彩唯さんが演じたジャンヌ。
バロワ家の血筋を騙る貴婦人で詐欺師。
左目の下のホクロを原作に忠実に再現。
迫力の黒髪、鋭い目つき、何か企んでいる悪い人物だと一目で分かる
黒いオーラを放っていました。
出演者みなさんの宝塚歌劇の宝である『ベルサイユのばら』への愛と敬意を
深く感じました。
フィナーレは、『ベルサイユのばら』50周年を記念した、
50人による華やかなラインダンスからスタート。
頭に大きなバラを付け、赤一色の衣装🌹
ラインダンスの途中から、大階段から下りてきた惜別の紳士・彩風咲奈さんが加わります。
フェルゼンの鬘ではなく地毛の短髪姿。
雰囲気が変わってカッコいいんです😍
赤い羽根を背負い、ロケットのみなさんに囲まれて楽しそうに踊る彩風さん。
「ジュエル・ド・パリ!!」でも雪組のみなさんに囲まれ華やかなカンカンを披露した彩風さん。
みんなに囲まれて笑顔で踊る姿が彩風さんは本当にステキですよね✨
フィナーレのはじまりとなるラインダンスからパレード直前まで、
ずっと彩風さんは舞台上にいらっしゃるんです!
衣装替えも舞台上でされています。
舞台上で赤い衣装から白い衣装に早変わり。
大階段から下りてきた青い衣装の男役さんとともに踊り、
続いて同じく大階段から下りてきた青いドレスの娘役さんとともに踊ります。
男役さんとは凛々しい視線を交わしながら、娘役さんとはあたたかい笑顔を交わしながら。
続いて大階段に登場するのは、美しいミントグリーンの衣装の朝美絢さんと夢白あやさん。
次期トップコンビです。
白い衣装の彩風さんと三人で『ばらのスーベニール』に乗せて惜別の舞。
卒業される真っ白な衣装の彩風さんと、初々しい雪組カラーの朝美さんと夢白さん。
託す思いと受け継ぐ思いが交差する神々しい場面でした。
惜別の紳士・淑女が集結し『セラビ・アデュー』に乗せて惜別の紳士・彩風咲奈さんへの思いを
アカペラで歌います。
佐々田愛一郎さんのダイナミックで熱い指揮に合わせ、雪組のみなさんの心ひとつになった歌声。
そんな歌声を背に受け、彩風さんが一人で銀橋に出てこられ、
客席の全方向に向かって手を伸ばします。
彩風さんと雪組のみなさん、そして客席の私たちの思いが一つになる、とても美しい場面です。
一人舞台に残り、軽やかに踊る彩風さん。
踊り終わった彩風さんに、じっくり拍手を送る時間があります。
色んな思いのこもった尊い時間を感じました。
エトワールは赤いドレスの夢白あやさん。
赤いばらのブーケと1本のろうろくがデザインされた豪華なシャンシャンを手に、
役の衣装でのパレードです。
最後に雪組トップスター彩風咲奈さんが、真っ白な軍服のフェルゼンの姿で大階段から下りてきます。
通常ですと、舞台で組子のみなさんがトップスターをお迎えするのですが、
なんと舞台上には誰もいません!
彩風さんが『宝塚我が心の故郷』を大階段で歌われます。
『ベルサイユのばら』の主題歌ではないことに、またまたビックリ!
客席の私たちと彩風さんだけの時間をかみしめていると・・・
客席通路に雪組の男役のみなさんが登場!
雪組のみなさんと一緒に手拍子でリズムをとり、笑顔を交わし、
涙が出るほど華やかで感動的なパレード✨
思いっきり彩風さんにスポットを当てた、素晴らしい愛に満ちたフィナーレでした。
東京宝塚劇場では、8月31日(土)から10月13日(日)まで上演されます。