宝塚大劇場花組公演『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』・『シャルム!』

樽井美帆です

 

現在、宝塚大劇場では花組公演が上演されています。

 

花組トップスター 明日海りおさんのサヨナラ公演

花組新トップ娘役 華優希さんの宝塚大劇場お披露目公演

新花組トップコンビ明日海りおさん&華優希さんの

最初で最後の大劇場公演です。

 

 

Musical A Fairy Tale -青い薔薇の精-』

作・演出/植田 景子

 

19世紀半ば、産業革命による経済の発展で空前の繁栄を誇る大英帝国を舞台に描かれる、

大人の為のほろ苦く温かなオリジナル・ミュージカル。

自然界の掟に背いた罪で、闇と孤独の中に閉じ込められた“青い薔薇の精エリュ”。

過ぎ行く時の中で、彼の心に残ったものは…。

 

宝塚歌劇団初の女性演出家である植田景子さんの作品。

明日海りおさんの初舞台、2003年『花の宝塚風土記』の

併演ミュージカル『シニリョール・ドン・ファン』も植田景子さんの作品です。

 

大がかりな舞台転換が少なく、照明で魅せる舞台が印象的。

常に美しい音楽が流れています。

柚香光さん演じる、植物学の研究で世に認められているハーヴィー・ロックウッドの周りに、

明日海りおさん演じる薔薇の精エリュを中心とした妖精がいて

常に舞台には大勢の登場人物がいます。

 

鐘の音から舞台はスタート。

1850年代のイギリス、産業革命により空前の繁栄を誇る大都市ロンドンの駅。

人々が行き交う駅の構内かと思いきや、左側は次の仕事へと急かされるハーヴィーらの姿。

右側では、母親が子供たちに本の読み聞かせをしています。

時計にスポットライトが当たり、時の流れがキーワードになっていることを伺わせます。

今公演で退団される乙羽映見さん演じるMysterious Lady(謎の貴婦人)の

とても美しい歌声と神々しいオーラが神秘的。

 

ここで、明日海りおさんの宝塚大劇場公演最後の開演アナウンス。

とても涼し気なお声です。

 

『私の庭へようこそ』と薔薇の精エリュ、明日海りおさん登場!

美しい青のグラデーションの衣装。

抑揚が心地良く、朗々とした情感たっぷりの歌声で劇場の隅々まで魅了します。

 

妖精たちが見えるのは、ハーヴィーと一人の女性シャーロットのみ。

美しく清らかで優しい妖精は、タカラジェンヌによく似合いますね。

色んな性格の妖精たち、おちゃめでかわいいです。

 

花組『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』.jpg2

 

植物研究に力を入れるヴィッカーズ商会で働く植物学者のハーヴィーは、

ある荒れ果てた庭を薔薇園にしてほしいという依頼を受けます。

偶然にもハーヴィーの叔父ニック(水美舞斗さん)が、

庭師として丹精込めて世話をしていた庭だったのです。

 

花組『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』.jpg3

 

その場所へ向かう途中、悪天候に見舞われ深い霧に包まれるハーヴィー。

この世のものとは思えぬ美しさをたたえた薔薇の精霊エリュと出会いますが、

霧の中でまた会おうと告げエリュは姿を消します。

 

翌朝、ハーヴィーたちが老婦人(若草萌香さん)から、

かつては美しい薔薇や花が咲いていたウィングールドの屋敷の庭について話を聞きます。

若草萌香さんの素敵なお話しの仕方と声に引き込まれます。

 

薔薇の精エリュ(明日海りおさん)と、一人の少女シャーロット(華優希さん)の出会いが

美しくも切なく描かれていて、忘れていた何かを思い出させてくれる気がします。

 

花組『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』.jpg1

 

出会った当時のエリュは、白い薔薇の精(聖乃あすかさん)で、衣装も真っ白で髪も金色。

シャーロットの成長とともに、衣装も髪もだんだん青くなります。

乳歯がなくなったら、忘却の粉をふりかけて人間の忘れさせないといけない

という妖精界の掟。

しかし、エリュはシャーロットと別れ難く、その掟に従えずにいました。

エリュの罪を自然界の女神デーヴァも知るところとなり、

エリュは悲しみの色である青に染まってしまいます。

華優希さん演じるシャーロットは、清らかで自由な雰囲気。

エリュが魅了される十分な説得力がありました。

演じる時間の流れも長く、年齢的にもかなり振れ幅の大きい役です。

何色にも染まれる娘役さんですね。

 

9歳のシャーロットの幻(都姫ここさん)が追いかけている猫のトムは、

明日海りおさんの愛猫おこげちゃんにソックリ!

白い薔薇の精・聖乃あすかさんと9歳のシャーロットの幻・都姫ここさん

並びもとても美しかったです。

このお二人は、新人公演主演コンビです。

 

優しい清らかなシャーロットの母親フローレンスを演じている

今公演で退団される城妃美伶さんは、

その清らかな人格がシャーロットにつながっているという十分な説得力がありました。

 

明日海りおさん演じるエリュの、相手を見つめる目の優しさ。

悲しみを知ったあとのエリュの表情。

優しく悲しみを表現できるエリュは、明日海りおさんにしか演じられない役だと

思いました。

ちょっと俺様で、品のあるドヤ顔のエリュも明日海りおさんならではですね。

 

柚香光さんのハーヴィーは、知的な青年。

丈の長い上着の衣装がとてもお似合いで、自分にだけ聞こえる妖精たちの声に

まどわされる姿は可愛いですね。

 

ヴィッカーズ商会社長オズワイルド・瀬戸かずやさんは

口ひげがステキ。

バーンと扉を開けての登場があまりにかっこよくてときめきます。

 

ハーヴィーの叔父で、昔ウィングールドの屋敷で庭師をしていたニック・水美舞斗さん。

秘めた切ない思いを見事に表現されています。

 

明日海りおさんの退団公演なんだなとあらためて感じる場面もありますね。

『Dear friend 誰かのために生きている』と歌う

明日海りおさんと柚香光さんのデュエットは、優しく美しいハーモニー。

 

ヴィッカーズ商会で働く人たちを演じている男役のみなさんの

作業をする時のエプロン姿も珍しくてカッコイイです!

 

エリュの言葉『見守っている』・『どんな奇跡も起こせる』は花組生へ、

『君ならどんな花も咲かせられる』は、

次期花組トップスター柚香光さんへのエールの言葉のように聞こえました。

 

とても美しく優しい舞台です。

 

 

レヴューロマン 『シャルム!』

作・演出/稲葉 太地

 

明日海りおさんが花組トップスターとなって初のショー『宝塚幻想曲』を

手掛けた稲葉太地さんの作品です。

 

6人の男役、優波慧さん・綺城ひか理さん・飛龍つかささん

帆純まひろさん・聖乃あすかさん・一之瀬航季さん

可愛いピンクの膝丈ドレス、手にはステッキを持った華優希さん演じるフルフルが幕開きに登場!

午前零時のパリ、若者たちが真夜中の街で踊っていると、

突然マンホールの蓋が開き、可愛い少女フルフルが現れます。

少女に誘われ若者たちが恐る恐るマンホールの中に足を踏み入れると・・・

 

ドラムロールが聞こえてきて・・・

 

そこは地底に広がるグランパレ、光も届かない世界、豪華絢爛な地底の夜。

ベルベット調の素材が含まれた黒い衣装、手には黒の羽根扇を持って

花組のみなさんが踊る中、明日海りおさんが赤いベルベット調の衣装で登場!

ミラーボールもキラキラ、華やかなショーの始まりです。

 

明日海りおさん・柚香光さん・華優希さん・水美舞斗さん・瀬戸かずやさんと

銀橋で歌い継ぎ、銀橋での総踊りへ。

そして、明日海りおさんが一人残って銀橋で歌います。 

 

続いては、地底のキャバレーへ。

赤い衣装の瀬戸かずやさんが地下の支配人。

大人のパラダイス!

 

スーツにソフト帽という衣装でタンゴの場面。

黒いスーツに赤いマフラー、明日海りおさんはパープルのスーツに黒のマフラー。

花組のダンスここにあり!

最後は銀橋・花道に一列にズラリ!

銀橋の端と端で、明日海りおさんと柚香光さんの目力対決!

 

色とりどりの骸骨が踊り出した後は、クラシック音楽にのせて

地底の舞踏会が繰り広げられます。

 

花組『シャルム!』.jpg1

 

シャルム明日海りおさんは、赤いベルベットの肩かけマントの軍服、白いリボンのフェルゼンヘア。

ソワレの紳士たちもマント肩掛けの軍服、色は黄色。

まさに夢の世界

 

水美舞斗さん・城妃美伶さんコンビの美しさにうっとり。

宝塚駅前の宝塚ゆめ広場モニュメント除幕式に列席されたのは、

このお二人でしたね。

 

宝塚ゆめ広場1

宝塚ゆめ広場2

 

柚香光さんを中心とした銃を持ったレジスタンスたちの戦いのダンスの場面。

緊迫感のある激しい振付に息をするのも忘れて見入ってしまいました。

 

その後は一転、白一色の場面へ。

 

『明日へ』・『光』という場面名がついています。

明日海りおさんから柚香光さんへ・・・

歌うのは、今公演で退団される芽吹幸奈さん。

明日海りおさん・柚香光さん・華優希さんが手をつないだり、

花組生が1列に並んで、中央で一人踊る明日海りおさんへ感謝の歌を歌います。

『一緒に咲かせた花』

ふんわり優しく、明日海りおさんの雰囲気にぴったりの場面です。

 

大階段が登場するとパステルカラーの世界。

ピンクの柔らかい素材のドレスの娘役さんに囲まれた

水色の衣装の明日海りおさん。

次々に娘役さんとからんで歌い踊る、まさにカサノヴァ状態ですね!

 

明日海りおさんとお揃いの水色ドレスの華優希さんが大階段を下りてきてデュエットダンス。

明日海りおさんの愛があふれるリード。

軽やかで可愛い印象のデュエットダンスでした。

 

黒燕尾の男役が大階段降りてきて、明日海りおさん最後の黒燕尾のダンスです。

曲は『愛遥かに』、振付は元花組トップスター安寿ミラさんことANJUさん。

シンプルな黒燕尾姿の男役さんが一列に並んで、

胸に手を当て明日海りおさんへの感謝と思いを伝える振付。

明日海りおさん以外が全員去って、まるで行かないでと止めるかのように、

まず水美舞斗さん・瀬戸かずやさんが登場して明日海りおさんと踊り、

最後に柚香光さんと・・・

 

明日海りおさんが一人残って歌う『ケ・サラ』

歌詞に『明日』という言葉が何度も出てきました。

明日は分からないさ

明日を信じて生きよう

ライトとミラーボールが輝く中、歌い上げる明日海りおさん。

素晴らしい歌声と神々しいまでの美しさ。

これまで真摯に舞台をつとめてこられた明日海りおさんの輝きは、

劇場を優しく包んでいました。

 

パレードのエトワールは、芽吹幸奈さん。

城妃美伶さんも一人で歌って階段おりをされました。

 

花組『シャルム!』.jpg2

 

明日海りおさんはゴールドの総スパンコールの衣装、

最後の羽根は、白い羽根にゴールドの雉羽根、ゴールドと黒の花が飾られたものでした。

 

公演は、930日(月)までです。