雪組トップスター 望海 風斗さん 退団会見
宮村 裕美です
2月18日(火)、大阪市内のホテルにて
雪組トップスター 望海 風斗さんの退団会見が行なわれました。
会見の様子をお伝えします。
まずは、宝塚歌劇団の
小川友次理事長のお話から。
「望海は三拍子そろった男役として
頑張ってくれていました。
トップになってからは、望海の人柄、
人としての部分、人格。
そこがさらに作品に重み、重厚さ、
あるいは素晴らしいものを
入れてくれていっていると思っています。
『ドン・ジュアン』から歌に磨きがかかり、
『ファントム』では、真彩とのハーモニー。
二人のハーモニーは、
三拍子以外の人としての部分が
舞台に表れているという風に、
私自身も感動しました。
本当に、歌唱力、歌の部分、
コンビという面では、私の知っている限り、
平成、そして令和と代表する、
宝塚歌劇団を代表する
トップスターという感じがしています。」
小川理事長は、このようにお話されました。
その間、望海さんは、
うんうんと頷き、落ち着いた様子で
小川理事長のお話を聞いていました。
そして、まず望海さんのご挨拶から。
「昨日発表させていただきました通り、
10月11日をもって宝塚歌劇団を
卒業させていただくことになりました。
私自身、本当に男役が大好きで、この宝塚の舞台
に立っている時間が人生の中で
一番幸せな時間だなと感じておりましたので、
そんな中決断するということには
とても勇気がいりましたが、
応援してくださる皆様に最後の日まで
男役を楽しんでいる姿を
お届けできたらいいなと思っておりますので、
どうぞ10月11日までよろしくお願いいたします。」
ファンの皆さんへ向けての言葉を
最初に仰るところが、
ファンの方を大切にされている
望海さんらしいなと感じました。
ここからは、会見での質問をお届けします
【退団を決めた瞬間やきっかけ】
「退団を決めた瞬間は、
トップという立場にならせていただいた時に
自分の中では2020年というのが
一つの区切りだと思っていて、
その中でひと作品ごとに
自分自身も、組も、ひと作品あるごとに
何かを得て成長していくという段階で
『壬生義士伝』(宝塚大劇場)の
お稽古と公演中です。
特に公演中に、袖で組の仲間が
舞台に立っている姿を見たときに、
皆がとてもキラキラと
舞台に息づいている姿を見て、
心が震えたと言いますか、
とても尊いものを見ているな
という感覚があり、涙がツーっと
出てきた瞬間がありました。
その時に、とても
幸せな気持ちにまりました。
毎日幸せでしたが、
なんとも言えない幸せな瞬間があり、
そういうことなのかなと
1つのきっかけになりました。
あとは、自分自身の夢として、
自分が目指す男役が今の
『ONCE UPON A TIME IN AMERICA
(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)』
で集大成がお届けできるんじゃないかということを
感じたので、最初に決めていた
2020年で卒業しようと思いました。
また、色んな奇跡、色んなことが重なり決断しました。」
【組の皆さんには
どのような形で退団を伝えたのか?】
「組の仲間に伝えたのは、一昨日の
東京のお稽古が終わった後です。
みんな、次の大劇場作品が
発表になった時点で
少し覚悟はしていたようで、
なんとなく大劇場公演の終わり辺りから、
私自身も感じていました。
みんなも、いつ告げられるんだろう。
という状態だったようです。
ただ、私がみんなに伝えて、
とても早い退団ブルーが訪れました。
伝えるまでの数日がすごくツラくて。
言ってしまえば
カウントダウンが始まってしまう、
みんなと作品を作ることが
できなくなってしまうという寂しさが
押し寄せ、なかなか伝える時に
みんなの顔を見ることができませんでした。
まず私が先に泣きました。
私自身が最初に泣いてしまう
という感じでした。」
“私が先に泣きました”と答えられた後、
ハハッとにこやかに笑う姿が、
とても望海さんらしかったです
【退団者は鐘が鳴ると
いいますが、望海さんは?】
「先ほどお話した、袖でみんなの姿を見ていた時に、
心が震えた瞬間が、鐘だったのかな?
とは、思いました。」
【明日海りおさんを見送るときは、
どのような気持ちだったのか、
今改めて思うことは?】
(『壬生義士伝』のころに退団を決め、
同期の明日海さんを見送るときには、
すでに退団することを決められていた
ということから、この質問が出ました)
「明日海がやることを見ていましたね。
千秋楽などは、どういう風にするだろうと
見ていました。
同期ですが、
花組にいてトップになった姿も
近くで見ることができました。
長い間、組を引っ張っていく姿を見て、
尊敬の気持ちが強くなると言いますか、
退団のその瞬間まで組を想い、
そして、男役を全うしようとする姿を見て、
勇気をもらいました。
そのため、彼女が退団するときは、
見られないことも寂しかったですが、
でも次は自分なんだという想いもありつつ、
大変さも半分くらい分かっていたので
お疲れ様という気持ちもありました。」
【入団前、宝塚を目指した自分に、
今ならどんな言葉を掛ける?】
「“目指してくれてありがとう”
ということと、
“今、想像していたよりも幸せだよ”
と伝えたいですね。」
【ここまでの宝塚生活を振り返って、
一番の転機・思い出・出来事は?】
「一つ一つが転機になりましたが、
一番大きいのは
組替えです。
作品として自分の中で大きかったのは、
『ドン・ジュアン』です。
ドン・ジュアンの公演が終わったときに
本当にやりきったと思えた作品でした。
それぐらい“毎日が生ききった”
という経験をさせてもらえたことが、
大きかったですね。
それから毎作品毎作品
そのような気持ちで過ごすことができて、
『ドン・ジュアン』を経て、
どのような公演でも
“ほんとにこれで辞めても悔いはない”
と思える感覚で、
毎作品挑みたいという
きっかけとなったものは、
『ドン・ジュアン』ですね。」
【宝塚はどのような場所か?】
「小学生のころから憧れて。
ここに入るんだと思っていました。
今までの人生全てが宝塚であるので、
宝塚がどういうところか
うまく言えないですけど。
でも、この世界に出会えたことが
私は幸せだったなって思います。
ここまで来るのに苦労したことや
大変なこともたくさんありましたが、
その都度たくさんの方に
背中を押してもらい、支えてもらい、
引っ張っていただきました。
人の温かさを勉強させてもらった
場所でもありますね。
人がとても温かくて、皆さん
宝塚が大好きな人たちが集まって、
作り上げている世界なんだと、
その一員になれたことが、
本当に幸せだと思います。」
【どのような男役像を目指してきたか?】
「型ももちろん男役としてありますが、
にじみ出てくる人間性が、
きちんとその役に漂えるような男役を
目指したいなと思いました。
そして、男役が大好きな気持ち、
男役を研究、追及することが大好きな気持ちを
ずっとずっと持ち続けていたいなと
思っていたので、ここを目指したい
というよりも、まだまだ何か違う
自分がいるんじゃないかな、
もっと違う表現ができるんじゃないかな、
そのような好奇心を持ち続けて、
まだ未知のものを見てみたいな
という思いでやっていました。」
【歌が上手いトップコンビとして、
二人の中で自負やプライドは?】
(年頭の会見にて、小川理事長が
歴史上指折りの歌が上手いトップコンビ
と仰っていたことから、出た質問です)
「歌に関しては
言っていただくことは多いですが、
心が一番大切なので、
お芝居にしても、踊りにしても、
何事に対しても、
心を一番大切にしていきたい
というのが大きかったです。
もっともっと深いものを作っていけるように
というのを考え、話しながら、走ってきました。
ただ、数々の作品のことを振り返ると
本当に様々なことがありましたが、
常に同じところを向いて、
一緒に戦ってきてくれたことは、
有難く、感謝しています。
最後まで一緒に元気に
そして成長していけたらなと思います。」
【真彩さんに対する想い】
「私自身が退団を決めて、真彩に
『この作品で退団します』と伝えたときに、
「私も一緒に退団していいですか?」と
その時に聞かれました。
一緒にスタートして、
一緒にゴールを目指していく
というのはとても有難いなと彼女には思いました。
そして、退団するその日まで
お客様に喜んでいただけるよう、
一作ずつ確実に成長していこう
という話をしました。
彼女もそのような思いで
これまでやってきてくれているので、
とても心強いなと思います。」
【最後までどのような
トップコンビを目指していきたいか?】
「とにかくお芝居ではその役として、
そして、その作品全体を
引っ張っていけるようにということと、
見ていただいている方や、
応援していただいている方に、
成長していく姿を
ずっと見守っていただきたいな
という思いがあります。
でも本当に真彩とは
手をつないで歩くというよりも、
戦いながら走っていくような感覚で
ずっとやってきました。
彼女も下級生ながらも
しっかりと付いてきてくれていて、
色々大変なこともあったと思いますが、
ここまで一緒に戦って、
力を発揮してくれました。
私自身が
自分一人では見えなかった景色が
本当に広がったと思うので、これからも
まだまだ、もっとできるのではないかな
という気持ちを大切に、
お互い相手のことを思いやりながら、
そして
応援してくださる方のことを想いながら
成長し続けたいなと思います。」
【聖火ランナーへの思いは?】
「お話をいただいた時は、
びっくりしたのと、私走れませんと!
ただ、200mですと言っていただいて。
こんな機会はないですし、
そのようなお話をいただけるということは
本当に幸せなので
とにかくやれることは
全て挑戦していきたいなと思います。
そして、公表された時の
周りの方の反響がとても大きくて。
生まれ育った大好きな横浜で
聖火ランナーを務めることが
できるというのは幸せなことです。」
“私走れません”と言った後の笑顔や、
聖火ランナーのお話をする望海さんが
非常にお茶目で可愛らしかったです
【退団後の予定は?】
「これからゆっくりと
自分が何をしたいのか、
向き合っていきたいなと思っています。」
【結婚の予定は?】
「ありがとうございます。
結婚はもちろんないです。」
最後に、レビュー・ステイションからの
質問をお届けします
【退団公演では、
どのような歌声を届けたい?】
「私にとって歌というものが、
自分の一番奥底にある想い、
深くにある言葉にできない想いを
一番伝えられるものだと思って、
今まで歌と向き合ってきたので、
本当にその時に感じたものを
歌に乗せて、お届けできたらいいなと
思っています。」
【生田先生との退団公演の話し合いは?】
「だいぶ前から生田先生とは
ショーを作ってみたいというお話も
色々していましたので、それが
自分の退団公演で、させてもらえる
というのはすごく嬉しいです。
生田先生の初めてのショー作品に掛ける思い
というものは、ものすごく熱いものがあるので、
退団公演だから、というよりも、
宝塚の一つの作品として
素敵なショー作品になるようにと、
色々とお話はさせていただいています。」
退団会見中、穏やかににこやかに、
一つ一つの質問に対して、
丁寧に真摯にお答えくださった望海さん。
望海風斗さんは、
ミュージカル・シンフォニア
『f f f -フォルティッシッシモ-』
~歓喜に歌え!~
レビュー・アラベスク
『シルクロード~盗賊と宝石~』
この公演の東京宝塚劇場の千秋楽、
10月11日(日)をもって、
宝塚歌劇団をご卒業されます。