宝塚大劇場宙組公演 ミュージカル『アナスタシア』
樽井美帆です
宙組公演 ミュージカル 『アナスタシア』が、
宝塚大劇場にて2020年11月7日(土)~12月14日(月)まで、
東京宝塚劇場では、2021年1月8日(金)~2月21日(日) まで上演されました。
約1年ぶりの宙組宝塚大劇場公演は、
2020年の宝塚大劇場ラストを飾る公演となりました。
ミュージカル 『アナスタシア』
潤色・演出/稲葉 太地
アカデミー賞で歌曲賞、作曲賞にノミネートされた1997年公開のアニメーション映画
「アナスタシア」に着想を得て制作されたミュージカル。
帝政ロシア時代の最後の皇帝ニコライⅡ世とその一族は処刑されたが、
末娘の皇女アナスタシアだけは奇跡的に生き延びていたのではないかという
「アナスタシア伝説」にもとづいたロマンティックな作品は大好評を博し、
2017年の初演から2019年3月までブロードウェイでロングラン上演されました。
2018年のスペイン、北米ツアー公演を皮切りに世界各国で上演されてきた話題作が、
2020年春に上演された日本公演に続いて、宝塚歌劇版として登場しました。
詐欺師でありながらも純真な心を持つ青年ディミトリと、
アナスタシアによく似た記憶喪失の少女アーニャが繰り広げる愛と冒険の物語。
宝塚歌劇での上演にあたって、ブロードウェイのクリエイティブスタッフにより、
真風涼帆さん演じるディミトリ役に新たに楽曲『She Walks In』が提供されました。
開演5分前、緞帳が上がり、美しい雪そして雪の結晶の映像が
舞台上の幕に映し出されました。
音楽は録音でしたが、オーケストラボックスの指揮台には、
指揮者の御崎惠さんがいらっしゃいました。
生演奏時と同様に、舞台上の生徒のみなさんに向かって指揮をされていました。
ミラーボールが回り、本のページがめくられる映像が映し出され、
いよいよ物語がスタート。
幕が開くと、マリア皇太后を演じる寿つかささんと少女時代のアナスタシア天彩峰里さんが、
王宮の寝室の小さなベッドに座っています。
『神々の土地』で初めて演じた女性役と同じ役を演じる威厳に満ちた寿つかささん。
表情や仕草が愛らしい少女そのものの天彩峰里さん。
二人の美しい歌声、二人だけの優しい時間が流れます。
パリへの移住を決めた祖母マリア皇太后に、一緒に連れて行ってほしいと訴えるアナスタシア。
でも皇太后は、アナスタシアにオルゴールを手渡し、
このオルゴールから流れる音を聞いたら、あなたを心から愛している私を思い出してと、
パリでの再会を願って去って行くのでした。
この美しく穏やかな時間から一転・・・
瞬く間に時は流れ、舞台では豪華絢爛な王宮の舞踏会が開催されています。
アナスタシアは17歳の美しいプリンセスへ成長。
ロシア皇帝一家の美しい白い豪華な衣装は、見どころの一つですね。
アナスタシアの父親ニコライⅡ世を演じた瑠風輝さんの長い足にもうっとり
そんな美しい白い衣装が赤く染まり、
大きな爆発音と共に全ては暗闇に包まれていくのです。
真風凉帆さん演じるディミトリが、かっこよくバーンとオケボックスから銀橋へ登場
1曲あたりの時間が長く、音を長く伸ばすところも多い難解なナンバー。
ささやくように歌いだす真風涼帆さん。
それがとてもワクワクし、冒険の始まりを感じます。
長い手を広げながら歌い上げる真風涼帆さんの優しさ溢れる包容力が
本当にかっこよかったです
斜め掛けのカバン姿にもキュンとしました
星風まどかさんが演じたのは、皇女アナスタシアによく似た記憶喪失の娘アーニャ。
何かに怯える自分と戦いながらも、本当の自分を見つけるため、
何も恐れず気高く勇敢な姿、常に前向きで愛らしい姿にくぎ付けになりました。
星風まどかさんは、物語の途中で変身する役がこれまでにも多く、
またそれが似合いますね!
ネイビー、そしてピンク色のドレスを着た姿には、心の底からうっとり
『宙は赤い河のほとり』、『El Japón -イスパニアのサムライ-』でも
物語の途中で美しくドレスアップされていましたね。
歌声がとても心地良く、低音から高音まで声量豊かに
ドラマティックに歌い上げられ、ヒロインとして最高に輝いていらっしゃいました
革命から10年の時が過ぎても国民の生活は苦しいまま。
その思いを歌うコーラスは、迫力があり、声の厚みや勢いが素晴らしく
客席の背もたれに押し付けられるかのように感じました。
芹香斗亜さんが演じたのは、ロシア新政府の役人グレブ。
カーキ色の軍服姿が凛々しく、押しがある中に抑えた感情を感じる声とお芝居。
ロシア新政府の役人という重い役ではありますが、
芹香斗亜さんの持つ明るさもあり、とてもいい雰囲気
自分の気持ちと戦う姿には、グレブの抱える思いに胸が苦しくなりました。
歌声の、特にハリのある高音が切なくもステキでした
おちゃめなアドリブの場面は、毎回期待してしまいました。
桜木みなとさんは、ディミトリの相棒で落ちぶれ貴族のヴラド。
ディミトリより年上なのですが、憎めずとても可愛らしい人物。
どこか気楽で楽しいのですが、ディミトリとアーニャの恋に
一番初めに気づいていたのはヴラドでしたね。
フィナーレの始まりを告げ、華やかに歌うエメラルドグリーンの衣装の桜木みなとさん。
キラッキラに輝く姿は、ヴラドを演じている方と同一人物だとは思えない変身ぶり!
アーニャをアナスタシアに変身させるためのレッスンシーンは、
とても速いテンポで展開。
ディミトリ・アーニャ・ヴラド3人の楽しい場面でしたが、
早口言葉のような歌やダンス、そして見事なハーモニーは圧巻でした!
色彩が美しい映像が多く使われており、
映像が動き、盆が回るとまるでアトラクションに乗っているみたいでした。
壮大なナンバーがより壮大に感じられたのも、映像の効果ではないでしょうか。
ロシア皇帝一家のダンスシーンでは、シルエット映像が映し出され、
その華やかな栄華がまるで幻であったかのように感じました。
パリ行きの列車の場面もとても印象的。
列車のセットの中で繰り広げられる歌やパフォーマンスに夢や希望を感じ、
とても胸が高鳴りました。
第2幕は、パリの街並みとエッフェル塔の映像からスタート。
登場人物のファッションも軽やかに
第2幕で大活躍するのが、和希そらさん演じるマリア皇太后の側近で
ヴラドの元恋人リリー。
男役の和希そらさんが女性役を演じました。
ムダのない美しい姿、ハキハキした言葉。
自分の人生を謳歌しながらも、仕える皇太后の信頼も厚いリリーには
憧れも感じました。
ダンスも歌もキレッキレな和希そらさん。
美しい身のこなしや気品あふれる佇まいから目が離せませんでした。
それぞれの人生に様々な葛藤を感じながらも、
愛や思いやりを大切に生きていく人々とともに
ワクワクする冒険を楽しむことができた作品でした。
フィナーレでは、宙組トップコンビのデュエットダンスも
真風凉帆さんが大階段から降りてきて、星風まどかさんが上手花道よりセリ上がり。
真風涼帆さん・星風まどかさんさんによる最後のデュエットダンスは、
宙組カラーのラベンダー色の衣装でした。
この公演が宙組生として初の大劇場公演となった紫藤りゅうさんの品のよいお辞儀、
同じく宙組生として初出演、また星風まどかさんの跡を継いでトップ娘役に就任された
潤花さんの太陽のような笑顔が、パレードで印象に残っています。
宝塚大劇場公演中の11月30日に、星風まどかさんの専科への異動が、
そして東京公演中の2月15日には、7月5日付で次期花組トップ娘役に
就任されることが発表されました。
宙組生え抜き初のトップ娘役だった星風まどかさん。
たくさんのステキな夢を見せてくださったトップコンビ真風涼帆さん・星風まどかさん。
お二人の美しい姿をそっと心の宝箱に