宝塚音楽学校 第108期生 文化祭
樽井美帆です
3月11日(金)・12日(土)・13日(日)の3日間、宝塚バウホールにて
宝塚音楽学校第108期生文化祭が行われました。
各日、12時・16時公演の全6回公演です。
本来、2月25日から27日に行われる予定でしたが、
新型コロナウイルスの影響で2週間延期されての開催となりました。
生徒のみなさんが、初めて実際の観客の前で公演を行うのがこの文化祭。
2年間の音楽学校生活の集大成です。
コロナ禍ということで、今年の文化祭は例年とは少し違った形での開催となりました。
例えば、受付などを担当する予科生のお仕事はなし。
予科生の合唱もありませんでした。
2020年春に入学した108期生は、合格発表が受験番号の掲示ではなく、
公式ホームページでの発表となりました。
緊急事態宣言下で4月の入学式は延期。
その間、リモートでストレッチやバレエの基本的な動きなどを学んだそうです。
2カ月遅れで6月入学式が行われましたが、会場は音楽学校の講堂ではなく宝塚大劇場のロビー。
そして、恒例行事であるすみれ募金も在学中のこの2年間、
1度も開催されることはありませんでした。
修学旅行も行き先は毎年北海道でしたが、兵庫県内に変更。
夏休みや土曜日・日曜日などでカリキュラムをやりくりし、
定期的に検査を継続しながらの学校生活、コロナとの闘いを続けながらの2年間でした。
卒業式も2年間学んだ学び舎の講堂ではなく、宝塚バウホールにて3月14日(月)に行われました。
入学式も卒業式も、音楽学校以外の場所で行われ、これまで通りとはいかなかった
108期生のみなさんの音楽学校生活でしたが、文化祭では何の心配もない
素晴らしいパフォーマンスを披露されました。
文化祭は3部構成で例年と変わらない構成でした。
影アナウンスも生徒が担当します。
溌剌とした素晴らしいお声、心がこもった感動的なアナウンスでした。
【第1部】
1.日本舞踊 清く正しく美しく
心地よい緊張感の中、文化祭の幕が上がりました。
岡原ゆづきさん・北山花音さんが交互に美しいソロを歌われました。
深みのある華やかで美しい歌声。
コーラスも声に厚みがありずっと聞いていたいと思えるほど美しい響きでした。
心ひとつに動きを合わせ、周りの息づかいを感じながらの舞でした。
108期生のみなさんは、登場されると舞台上がパァッと明るくなるパワーと元気、
可愛らしさを持っているなという印象を持ちました。
2.クラシック・ヴォーカル
クラシック・ヴォーカルでソロを披露できるのは二人のみです。
今年は、男役さんお二人。
岩崎杏珠さん『カタリ・カタリ』
前奏の時から美しい表情で魅せる岩崎杏珠さん。
蘭寿とむさんのようなパッションを感じる目力にも引き込まれました。
清涼感のあるスパーンと潔いカッコイイ歌声でした。
糀屋美咲さん『星は光りぬ』
袖から舞台に出てくるところから雰囲気をまとっていました。
ビブラートをきかせてのクレッシェンドが見事で、心の叫びが伝わってきました。
とてもドラマティックな歌声で、将来レット・バトラーを演じていただきたいなと思いました。
1曲の中で、色々な声や様々な表現方法を取り入れていらっしゃいました。
3.ポピュラー・ヴォーカル
ミラーボールが輝き、色とりどりの照明に照らされる舞台で宝塚歌劇の名曲が次々に披露されます。
1.「ザ・レビュー」よりアイ・ラブ・レビュー
岩崎杏珠さん・大塚あかりさん・佐々木結萌さん・元木ひかるさん、
男役さん4名を中心に全員で。
マイクの動きも心ひとつに合わせ、イキイキとした表情で明るい歌声が響き渡りました。
2.「ムーンライト・ロマンス」よりムーンライト・ロマンス
岡村美佑さん・梶原捺さん・加藤未桜さん。
ストーリーが伝わってくる可愛らしいハーモニーでした。
3.「美麗猫」より美麗猫
猫をイメージさせる振付がキュートでステキでした。
4.「誰がために鐘は鳴る」より幸せの鐘の鳴る日
佐々木結萌さん・元木ひかるさん。
元木ひかるさんは、安蘭けいさんの目力、壮一帆さんの豪快な笑顔を彷彿とさせました。
二人のハーモニーが力強く響き渡りました。
5.「砂漠の黒薔薇」より君の名を呼べば
大塚あかりさん・松平悠寿さん。
ソロももちろん素晴らしいのですが、お二人の声が合わさった時、
より優しい歌声になったことが印象的でした。
6.「小さな花がひらいた」より小さな花がひらいた・メドレー
最初にソロを歌った川上凜オディセさんの歌声は、低音がよく響いていました。
岩永佳那子さんのソロは、高音もよく響く優しくキラキラしたまさしくヒロインの歌声でした。
歌う姿も美しく可愛さも兼ね備えていて、彩乃かなみさんのあたたかい歌声を思い出しました。
7.「エクスカリバー」より未来へ
音楽学校を卒業し初舞台へ向かう状況にピッタリのナンバー。
田中百映さん・野中海玖さんが希望に輝く眼差しでソロを披露し、
全員がコーラスで加わり心を一つにした素晴らしい歌声を響かせました。
瞳や指先からも、キラキラビームが出ていました。
8.「ブエノスアイレスの風」よりヴィエント デ ブエノスアイレス
幕開きの日本舞踊でも素晴らしい歌声を披露された岡原ゆづきさんのソロ。
大人っぽい美しい歌声は、専科の美穂圭子さんのようでした。
9.「哀しみのコルドバ」よりエル・アモール
岩崎杏珠さん・北山花音さん・東郷早紀さん。
特に盛り上がりの部分が聞かせました。
10.「リオ デ ブラボー」よりCarnaval de Rio!!
色とりどりの布を振りながら全員で元気いっぱい歌いました。
11.「皇帝と魔女」より愛の歌
山本菜南子さん。
とても雰囲気のある方。
伸びのある高音がとてもキレイでした。
12.「風と共に去りぬ」よりさよならは夕映えの中で
クラシック・ヴォーカルでソロを歌われた糀屋美咲さん。
将来レット・バトラーを見てみたいという私の夢はすぐに叶えられてしまいました!
オレンジ色に染まる舞台でセリフからスタート。
誠実で優しく爽やかなレット・バトラー。
太くステキな歌声、渋い色気もありました。
13.「ザ・レビューⅡ」よりこの愛よ永遠に(TAKARAZUKA FOREVER)
糀屋さんの『カモーン!』という掛け声で全員が舞台へ。
108期生全員で、清涼感があり元気で明るい希望に満ちあふれた歌声を
バウホールいっぱいに響かせ、第1部が終了しました。
【第2部】 演劇
オーロラの歌声
作・演出 谷正純
A組・B組の2組に分かれて上演されました。
A組の主演は、川上凜オディセさん・山本菜南子さん。
B組の主演は、田中百映さん・北山花音さんです。
取材させていただいた通し舞台稽古はA組により上演されました。
舞台は、18世紀後半。
スウェーデン王国の皇太子クリストフと、皇太子付の近衛兵候補生たちの
2年間にわたる訓練の終盤を描いたお芝居。
水色を基調とした近衛兵の衣装をとても爽やかに着こなしていた男役のみなさん。
2年間の音楽学校生活と重なるようなセリフがたくさん使われていました。
『みんながいるから頑張れるんだ。』
『2年間の訓練も残りわずか。予想以上の結果を得られそうだ。 』
『それぞれの道を歩みだす時は、もうそこまできている。』
色々な考え方を尊重し、仲間を信じる心を一生懸命に表現されていました。
主演のスウェーデン王国の皇太子クリストフを演じた川上凜オディセさんは、
とても爽やかで誠実な人物を見事に表現されていました。
美しい瞳、あたたかい笑顔、上品な立ち姿、優しい声と話し方、本当に王子様でした。
愛くるしさは姿月あさとさんのようでもあり、
美しく上品な笑顔は明日海りおさんのようでもありました。
ヒロインの宿舎の娘エルヴィラを演じたのは、山本菜南子さん。
健気でかわいいエルヴィラ。
愛するクリストフを、身分をわきまえ少し離れた位置から見つめる表情が切なく、
また抑えきれない愛に瞳を輝かせる表情はとても可愛かったです。
エルヴィラの姉フェリシアは、岩永佳那子さん。
きっぷがよく迫力があり、説得力のあるお芝居。
宿屋の娘にしか見えない見事なお芝居でした。
岩永さんのお芝居をこれからもたくさん見てみたい、とても楽しみです。
クリストフの婚約者ソフィアは、松平悠寿さん。
リボンがたくさん付いたキラキラ輝くピンク色の豪華なとても大きい輪っかのドレスで登場。
浮世離れした雰囲気をまとい登場されました。
嫌味なことを言うのですが、言い方も声も可愛いので、宝塚歌劇の上品さを失わないお芝居でした。
近衛隊員候補生・班長ヤンを演じた伊勢谷和香さん、
付いていきたくなる頼もしい班長でした。
候補生を演じた男役のみなさん、少し頼りないタイプ・面白いタイプ、沈着冷静なタイプなど
それぞれのキャラクターをしっかり表現されていて、とても楽しめました。
お芝居の最後に、『飛翔歌』が歌われました。
作詞は、元宝塚音楽学校校長の小林公平さん、作曲は寺田瀧雄さん。
音楽学校の卒業生のために作られた曲で、今回の文化祭に使用されました。
『この道がいかに厳しく辛くとも、今よりさらに励みつとめて』という歌詞が胸に響く、
とてもステキな曲でした。
【第3部】
ダンスコンサート
1.タップダンス[Footloose]
元気に掛け声をかけながらのタップダンス。
センターをつとめた島見茜さんは、手足が長くスタイル抜群。
華やかでキュートでとても見事なタップダンスを披露されました。
2.バレエ [ジプシー達の踊り]
佐々木結萌さんのジャンプ力とダイナミックな踊り、
井上絢心さんの可憐で美しい舞を中心に繰り広げられました。
3.ジャズダンス [ワタリドリ]
ジャンプしたり羽ばたいたり、全身を使ってダイナミックなジャズダンスでした。
4.ジャズダンス[Tanguango]
力強く指先まで美しく。
男役と娘役が組んで踊る場面では、ポーズのキープも美しかったです。
5.バレエ[メリー・ウィドウ]
のびのびとダイナミックなバレエ、リフトも組み込まれた華麗な舞踏会のような場面でした。
6.ジャズダンス[THERE SHE GOES]
しっかりリズムを刻んで、笑顔で楽しそうに踊っていらっしゃいました。
7.フィナーレ ジャズダンス[喜びの歌~Joyful]
舞台に立つ喜びを笑顔と全身で表現し、とても大きな幸せパワーを舞台から客席に送ってくれました
コロナ禍での2年間の音楽学校生活。
思い描いていた憧れの音楽学校生活を、様々な制限の中送ることになった
108期生のみなさんですが、そんな中でも108期生の絆は固く結ばれ、
時間を大切に日々真摯に芸事に向き合われた日々であったことが伝わってくる、
無事に舞台に立てることへの喜びが全身からあふれ出す姿を見ることができた文化祭でした。
4月23日(土)から5月30日(月)まで上演される宝塚大劇場星組公演
レビュー・エスパーニャ『Gran Cantante(グラン カンタンテ)!!』で
初舞台を踏まれます。