たからづか8丁目35番地(水)『川柳の時間』

s-IMG_20230629_083356_618

『川柳の時間』

七夕を前に、街のあちこちに短冊が揺れています。
梅雨明けもまもなくでしょうか。
きょうは山崎彫科さんがおやすみということで、金曜朝8時から12時まで「笑福亭瓶吾と愉快な仲間たち」に
ご出演の東村(とうむら)洋子さんとお届けいたしました。

「川柳の時間」はエフエム宝塚youtube公式チャンネルでの同時生配信でお届けしています。
チェンネル登録をしておたのしみください。

番組内でご紹介できなかったお作品の抜粋はこちらです。

 

まな板の茄子夕立遣り過ごす  カッシュママ

夏の夕餉の仕度。夕立どきに料理の主ところんとした茄子。家の中だから遣り過ごすのは心をざっと過る雨。
止んだら茄子は家族の食卓に。主の孤独と夏の恵みと。

 

童心に返り撫子抱きしめる  川端日出夫

可憐な撫子が幼き日の思い出とともに揺れる。ぎゅっと抱けばしおれてしまう。幼子のこころでそっとそっと。

 

土用凪寡婦になったという葉書  徳道かづみ

死別なら波、それも怒涛だったろう。あるいは解放されての凪ならば祝うこともあろう。いずれにしても凪。
届いた葉書は主のしずかなはじまりを告げていたのだろう。

 

火を消して行方不明の消防士  浪速のマッキントッシュ

火を消してここぞと身を隠したともとれるが、おそらくは正義による犠牲。声高に叫ばれるそれではなく、命を守るという正義。
消防士に限らない。正しき犠牲を払う人々がどうかみな、無事で戻りますように。

 

沈みゆく苦界の底にある浄土  猫又夏梅堂

石牟礼の著作の限定的苦界から、人間それぞれが生きる苦界へと拡がりゆく。底にしずかに在る浄土。
生きてそののち辿りつけるだろうか。生きて在るあいだに、心ひとつでたどり着けるだろうか。

 

ロゴスからミュトスへ夏の蔦伸びる  高良俊礼

夏の蔦の勢いが現実を、分別、理法を色濃く覆ってゆく。ものがたりへ。幻想へ。いのちの気配の濃い夏。その神話がはじまってゆく。

IMG_20230629_083356_618
キャプション奈良豆比古(ならずひこ)神社の樹齢千年を越える樟。
毎年10月8日には猿楽の原点である翁舞が奉納されます。【茉莉亜まり】