川柳の時間
川柳の時間
賀状着く筆圧強き鏡文字 林かずき
やっと文字が書けるようになった年齢の子が書く「鏡文字」。幼い子から届いた賀状。「筆圧強き」から懸命に書いた様子が伺えほのぼのします。しみじみと大きく育てと祈らずにはいられない。
色褪せた記憶を抱いて生きている 玉山智子
ここまでの月日の中に澱のようにたまる思い出。決していいことだけではないけれど、捨てられない記憶。もっともっと色褪せるだろうけど、ずっと一緒に歩いていくだろう記憶。
公園のボートが浮いている奈落 川端日出夫
行きついたのは誰もいない冬の公園。ただボートが浮いている。どん底か、行き着いた果てなのか。ならば這い上がるだけ。たまさかの風にボートの影が揺れる。
母という二十六歳差の女 徳道かづみ
同性だというだけで分かりあえ、分かるから嫌悪する。母と娘の微妙な関係。今日は年嵩の「女」として見る娘。この親しい先輩から受けた恩愛。学ぶこと、お返しすることがまだまだたくさんある。
語彙と語尾霜降りぬ間に崩れ去る 高良俊礼
言いたいこと、言わねばならぬこと。言い切ってしまいたいこと。冬から春になるように、時には言葉は無力になる。こうして歳を重ねるのもいい。
住み慣れた町の何処でも亡妻に会う 二朗
公園の横の道。八百屋の前。ファミリーレストランの片隅。明るく笑う妻がいる。会いたい時は町に出る。いつでも亡妻と会える町にこれからも暮らしていくのだろう。
新年の公園。今年も御投句お待ちしております。よろしくお願いします。凪子。