川柳の時間
「川柳の時間」
蠟梅、紅梅、白梅と、冴え冴えとした冬の景色の中にも春の訪れが香ります。
本日もご視聴、ご投句ありがとうございました。鑑賞担当茉莉亜まりが、パーソナリティの山崎彫科さんとお届けしました。
「川柳の時間」のアーカイブはFM宝塚youtube 公式チャンネルに一週間程度残ります。チャンネル登録をしてお楽しみください。
番組中、山口ちい子さんの句を間違って表記しておりました。
正しくは
氷面鏡(ひもかがみ)映るわたしは誰かしら
です。お詫びして訂正いたします。
以下、番組内でお読みできなかった作品の抜粋と講評です。
バレンタイン出逢った年のワイン買う 玉山智子
二人いて年を重ねる。何年経ても出逢った年を、
その年の二人のさまざまを忘れずに。
同じ名の猫たちが待つ虹の橋 猫又夏梅堂
同じ名の猫。顔も模様もそのからだのさまもみな違うというのに。
猫たちは待っている。虹の橋を渡り、虹の向こうでそれぞれの
名をもらい、かけがえのない一匹となることを。
当たり前に見せかけて咲くボケの花 和音
当たり前の顔をしてボケの花が咲く。
「あなたは知らないのよね。わたしの当たり前
じゃないほうの顔を」と咲く。
母さんが何をしたのよ雪風巻 一橋悠実
ゆきしまきは吹雪。「わたしがなにをしたというの?」
という母の怒りたるや。吹雪が止んで、さて、
ほんとうの理不尽は誰だったのだろう。
残照の水平線に消える船 涼閑
消えてゆく船のその向かう先。
また昇りくる陽の中に
あすへの希望がありますように。
化けの皮剥がされキャベツ白くなる 川端日出夫
化けの皮をかぶっているキャベツがあったとは。
本性を暴かれたヒトは青くなるものだが、
キャベツは白くなるらしい。みつけのおもしろさ。
絶望の地から吹きだす桔梗の芽 徳道かづみ
星のかたちとも見える花、桔梗。
絶望の地からすら吹きだせば、やがて咲くその日の夢をみる。
咲けよ、絶望から。たおやかに。
紫木蓮、予感と同じ音(ね)を孕む 高良俊礼
天に向かって咲く紫木蓮。
花の孕む音は天へ向っての予感。
その紫の花の音へとしずかに心を傾ける。