川柳の時間

たからづか8丁目35番地 川柳の時間

 

炎暑どこまで、です。パーソナリティの山崎彫科さんと茉莉亜まりがお届けしました。きょうのテーマがアイスクリーム、かき氷も可、ということで、きょうの一句は〈炎天の信念邪念かき氷〉をお読みしました。番組内でお読みできなかったお作品の抜粋と講評です。

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なお、「川柳の時間」はエフエム宝塚公式youtubeチャンネルにて同時生配信にてお送りしています。番組のアーカイブはYoutubeに一週間程度のこります。是非チャンネル登録をしてお楽しみ下さい。

すっぴんは無理です泣いているピエロ

         涼閑

ピエロの化粧が板に付きすぎてとれなくなった。とってしまえばうまく泣けない。そのことが悲しくて化粧のままほんとうの涙を流す。

 

立葵うな垂れながら梅雨を待つ

      ヴィノクロ

すっくと天を向く茎に正面を向いて花を付ける立葵。なににうなだれたか。恵みと救いの雨をまっている。また顔を上げるために。

 

三度目の赤信号のような恋

      カッシュママ

止まらなくては。わかったところで心は先に飛び出している。それが、恋。覚悟してからだごと踏みだすか、心だけを渡らせるか。三度目。でもこの人とは一度目。さて。

 

金魚だってあなたに贈る赤い糸

         和音

このはかなく赤いいのちを一緒に飼いませんか。そうして贈られる金魚が赤い糸とすれば、

はかなさはたしかさになるだろうか。

 

炎暑なり『あしたのジョー』のワンシーン

       一橋悠実

 

熱いワンシーンを思い起こす炎暑のさなか。「立て、立つんだ、ジョ-!」と聞こえるか。

立つんだ、ジョ-。立つんだ、わたし。

 

紫陽花のミイラ屹立して炎暑

       徳道かづみ

おおかたは季節が移れば跡形もないのが花。紫陽花は炎天を迎え、消えることなくその乾ききってた姿を晒す。ミイラになってもここにいる。花の気概が見て取れるなら、川柳でのそれは人の気概。

 

たゞいまを云ふためふらり風来坊    

   猫又夏梅堂

三句のご投句は「フーテンの寅」のありようでした。風来坊だけれどさみしがりの人情家。いい人を通してばかりの寅次郎はいまもどこかできっとふらり。

 

秘密だけ抱えたままに冷奴

    川端日出夫

白くゆれながら抱える秘密。ひとたび箸がふれればたやすくもれてしまうか、沈黙のままだれかの腹におさまるか。

 

頌歌秘め浜木綿たちの影は白

    高良俊礼

礼賛の頌歌(しょうか)はひそやかに。真白の花を神事に使われる木綿に見立てられる浜木綿はその影までもが神の御前に穢れなき白でゆれる。

 

○写真のキャプション

大和三山に囲まれて咲く藤原京跡の蓮

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