兵庫県立芸術文化センター月組公演『稲妻開化譚-イナズマカイカタン-』

樽井美帆です

 

兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールにて、月組公演ミュージカル『稲妻開化譚-イナズマカイカタン-』が、9月13日(日)から22日(火)まで上演されました。

 

兵庫県立芸術文化センターで宝塚歌劇が上演されるのは、今回の月組公演が初めてです。

阪急西宮北口駅直結の劇場。

世界的に活躍する指揮者の佐渡裕さんを芸術監督に、阪神・淡路大震災からの「心の復興・文化の復興」のシンボルとして、平成17年(2005年)10月に開館しました。

客席内の壁面・天井も、観客と出演者が常に舞台に集中できるように、落ち着いた色調に着色した杉の木で統一されているので、劇場に入ると木のいい香りがします。

 

主演は、風間柚乃さん。

東上公演2度目の主演です。

 

作・演出は、齋藤吉正さん 

出演は、月組30名のみなさんです。

 

開演前、舞台の赤い幕が上がると、切り絵風の絵が現れます。

桜の木、蓮の花、白鳥、五重塔、満月などが描かれています。

 

風間さんの開演アナウンスのあと聞こえてくるのは方言です。

幕開けいきなりなので、ちょっとびっくりして耳が追いつかないかもしれませんので、これからKAAT神奈川芸術劇場で観劇される方は、お気をつけくださいね。

 

時代は明治18年、急速な近代化に湧く、帝都・東京。

小さな新聞屋「新聞開化反」の人気記者・東瀬風馬(風間柚乃さん)。

彼が手掛ける内容は、庶民の日常から政治家の不祥事まで多岐にわたり、嘘か真か分からぬそれらの記事は、大衆から人気を集めていました。

実は、風馬には誰にも言えない「もう一つの顔」がありました。

政府高官や商人の家に侵入し、正義の鉄槌を下す「稲妻小僧」だったのです。

戊辰の戦いで二本松少年隊として戦った過去を持つ風馬は、明治の世を憂い、理不尽な世を変えようと、昼は新聞記者として、夜は謎多き怪盗「稲妻小僧」として暗躍していました。

そんな風馬の隣に住むのが、「伊予松山義塾」を主宰する士族の娘・岩城麻里(白河りりさん)。

まっすぐな性格の彼女は、風馬の書く下世話な新聞記事が大嫌いで、顔を合わせればケンカばかり。

ある日、いつものように政府のトップ・伊藤博文の女性関係をすっぱ抜き、世間の注目を集めた風馬は、伊藤の屋敷へ連行されてしまいます。

そこで、「稲妻小僧に盗まれた」という国家機密が隠された黄金の“ツィーアテラー(飾り皿)”を奪い返してほしいと持ち掛けられます。

実は伊藤は、風馬こそが「稲妻小僧」だとすでに見抜いていたのです。

そんな中、風馬のもとに、かつて二本松少年隊として共に戦った幼馴染・田丸信造(彩海せらさん)が現れます。

風馬は、過去に囚われたままの信造の姿に不安を覚えます。

急速な近代化を果たし、光と共に闇を抱えた明治期の帝都東京を駆け抜ける一人の男の生き様を、対立しながらも惹かれ合う士族の娘や、個性豊かな登場人物達を交えて描きあげる、痛快で人情味溢れる物語です。

 

黄色く光る稲妻とともに登場する東瀬風馬(風間柚乃さん)。

三味線ロックのような和風テイストな音楽です。

「一体何者なんだ!」

「人呼んで稲妻小僧!」

主題歌もヒーローもののような胸躍る曲調です。

風間さん、白河りりさん、彩海せらさんの素晴らしい歌声に耳が喜びます。

「稲妻見参!」というキメのポーズもカッコ良く決まるプロローグとなっています。

 

このプロローグの中ほどで、後方から靴音がして、ちょっと振動がありました。

やっぱり木でできている劇場だから、足音が響くのねと思っていたら、なんと風間さんが客席から登場されていました!

ほかにも出演者が舞台から客席通路を駆けあがる場面もありましたが、大劇場とはまた違った造りのため、距離感の近さを実感しました。

 

風間柚乃さんが演じるのは、「新聞開化反」の記者・東瀬風馬。

その裏の顔は帝都を賑わす怪盗稲妻小僧。

とにかく表情が豊かで、真面目な顔とひょうひょうとした表情のギャップに魅了されます。

すべての動きが美しいです。

特に「目の表現力」に引き込まれます。

相手によって見せる色々な目。

朝香ゆららさん演じるゆりに向ける優しい眼差し。

まだ二人の関係に気づいていない時から、本能で見せる優しい眼差しです。

そして、歌声も優しくゆりに寄り添っているように感じました。

すべての真実が明らかになった時、それまで関係が良くなかった父(英かおとさん)へ向ける眼差しにも優しい光が宿ります。

和装も洋装も美しく着こなされる風間さん。

洋装になった時に見せるちょっと照れたような表情もステキです。

グッと前のめりな座り方がカッコ良くて、勇気と覚悟を持って生きる姿が清々しい風馬です。

 

月組『稲妻開化譚』1

 

東上公演初ヒロインの白河りりさんは、伊予松山藩出身の武家娘・岩城麻里。

私塾「伊予松山義塾」の主催者です。

強くて元気で正義感あふれる士族の娘を魅力いっぱいに演じていらっしゃいます。

「ぞなもし」という伊予弁のセリフ回しが心地よく、着物姿で元気いっぱいに動き回る姿も、

風馬に対してプリプリ怒っている姿も愛らしいです。

実は稲妻小僧の大ファンで、ポップなリズムに乗せて「推し活!」と可愛らしく歌うシーンは必見です!

 

風間さん演じる風馬と白河さん演じる麻里の全力言い合いが、楽しいし微笑ましいです。

 

月組『稲妻開化譚』5

 

彩海せらさんは、元二本松少年隊士で友の仇を探し続ける浪人・田丸信造。

出所したばかりの無精ひげを生やした姿で登場。

目をギラギラさせて、復讐心と過去に囚われた姿が悲しいです。

陰のある雰囲気も彩海さんステキですね。

苦悩してゆっくりとしゃがみ込む姿も美しく、どんな表情も美しい彩海さんは、本当に素晴らしいタカラジェンヌだなと思いました。

すべては純粋な思いからの行動なんだという説得力が痛いほど伝わってきました。

そして、歌声がますます魅力的になられましたよね。

 

月組『稲妻開化譚』3

 

梨花ますみさん演じる伊藤博文の妻・伊藤梅子。

主人に献身的な良妻賢母。

夫から異常に恐れられていて、いつも絶妙なタイミングで登場する梅子。

ふすまに見立てたセットがスッーと開いて登場されることが多いのですが、表情が何とも言えません。

梨花さんの上品な可愛らしさと貫録が最高で、登場されるたびに思わずクスッと笑ってします。

博文が何か悪いことをしていると、思わず「梅子さん、今よ!」と心の中で思ってしまうのですが、梅子さんはその期待を裏切らず、必ず登場されます。

 

月組『稲妻開化譚』2

 

そんな梅子の夫・伊藤博文は佳城葵さん。

偉大な政治家でありながら、女性にだらしなく妻にビクビクしているお茶目な伊藤博文を好演。

ちょこまか動き回る可愛らしい仕草と、素晴らしい存在感のバランスがお見事です。

 

風馬の父・東瀬想馬を演じる英かおとさん。

元二本松少年隊の隊長で、御維新後は警視庁の警視です。

制服姿がとにかくステキ!

真面目で色気があって、使命感のために生きている姿が魅力的。

真っ直ぐな立ち姿から、誰にも言えない心と信念を持って生きていることが伝わってきます。

背負った過去ゆえの葛藤を見せる演技が味わい深くて感動しました。

 

月組『稲妻開化譚』4

 

妃純凛さんの水沢縁。

岩城家に長く務める麻里の世話役です。

竹刀で新聞をパシッと叩き落とす見事な技と、凛々しい存在感に拍手喝采ですね。

 

自由民権運動を展開する政治家・板垣退助は大楠てらさん。

圧倒的な存在感と、国や人々への温かい優しさを感じさせる包容力が光ります。

 

ゆりを演じる朝香ゆららさん。

優しく清らかで、愛する人のために生きる強さを持つ女性。

朝香さんが表現される大きくて柔らかくてあたたかい愛を、ひしひしと感じました。

本人さえ気づいていない思いにも敏感に気づいて、そっとサポートする優しさ。

包み込むような母性が伝わってきました。

 

槙照斗さんのエドマンド・ジェイムズ。

外国の方の役なので、髪もヒゲも金色にされているのですが、舞台メイクがとてもナチュラル。

でもしっかり外国の方に見えるんです!

動きも言葉も美しく、本当に自然に外国の方に見えて、槙さんの演技力にひたすら見惚れてしまいました。

 

二本松少年隊として風馬が共に戦った仲間の妹ふくを演じる一乃凜さん。

とにかくハッとする美しさをお持ちの一乃さん。

言葉がイキイキとしていて、清らかな心が伝わってきましたし、美しい歌声に心が洗われました。

「伊予松山義塾」で学ぶ女の子も演じていらっしゃいますが、同じ一乃さんと思えないくらいの変わり様です。

可愛らしい役、勇ましい役、悲しみをたたえた役など、一乃さんが舞台に立たれるといつも自然と引き込まれます。

本当に魅力的な娘役さんですね。

 

ロング丈の法被姿で、三味線ロックのような和テイストの音楽で踊るフィナーレ。

風間さん・白河さんのデュエットダンスもカッコ良かったです。

 

建物のセットが、立体的なものではなく絵で描かれていて、ちょっとかわいらしい雰囲気が漂っています。

演出の齋藤吉正さんと言えば、公演終了後もなにがしかのサプライズ演出があり、油断できませんよね。

今回は一幕ラストに、パサッ~という音がして、公演のタイトルと、風間さん・白河さん・彩海さんが描かれた幕が下りてきます!

齋藤さん、今回もありがとうございます。

 

夜風が涼しくなり、夏から秋にうつろうとするこの時期にぴったりな公演。

出演者のみなさんがイキイキされていて、グイグイお芝居に引き込まれた、あっという間の2時間30分。

人情にホロリとし、帰り道に月夜を見上げたくなりました。

 

KAAT神奈川芸術劇場で、10月4日(日)から10日(土)まで上演されます。