たからづか8丁目35番地(水)『川柳の時間』
やっと高くなった秋空にコスモスが揺れます。澄んできた夜空に月がうつくしいですね。
「川柳の時間」は茉莉亜まりが山崎彫科さんとお届けしました。
砂狐さんのリクエスト曲、沢田研二さんの「コバルトの季節の中で」がありませんでしたのでかわりに
「時の過ぎゆくままに」をおかけしました。
番組内でお読みできなかったお作品の抜粋です。
再会を約束してる彼岸花 玉山智子
あの確かな赤。あの一花屹立の花姿。たしかに会える。それはもしかするとこの世ではないにしても。
にごり酒裏切ることもまた正義 徳道かづみ
相手が正義からそれるなら、裏切りが正義。それぞれの正義。なるたけ傷を負わせたくない。負いたくない。それでもときに傷を負わねばわからないこともある。
竜巻を起こさぬやうに飛ばぬ蝶 猫又夏梅堂
竜巻を起こすほどの蝶とはどんな蝶だろう。美しく気高く、飛べば否応なく激しい風を起こしてしまう。そう知ってじっとしている蝶はやがて凍て蝶としてその命を終えるのだろうか。
夕暮れに元素記号が目に浮かぶ 川端日出夫
すいへいりーべぼくのふね。世界は元素で成り立つ。素粒子もある。夕暮れに染まる空。に元素記号を眼に浮かべ、世界をまるごと感じる。
無花果やそれでも声をあげるのだ 一橋悠実
やわらかな無花果。ともすればたやすく潰れてしまう無花果。それでも。それでも声をあげなくては聞こえない。つぶれないよう、たしかな声よ、届け。
語尾惑う街頭にはや秋の雨 高良俊礼
夏のしめり気を含んだまとわりつくような雨。気づけば街頭を濡らす雨は冷たくなった。たしかなことと思って口にすればなにかを忘れている。こぼしている。惑いの中、言葉にせぬことのなかにこそ真はつめたく宿っているのかもしれない。
深い海 愛が行き場をなくしても 一家汀
重いのか。重すぎるのか。相手を包み温めると思ったのに、傷を負わせてしまったのか。愛はときにまちがえる。ときに行き場をなくしてしまう。それでも変わらぬ海の深さは、どんな愛をもじっとしずかに抱きとめてくれる。
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