たからづか8丁目35番地 川柳の時間
12月第1週のたからづか8丁目35番地、今年最後の「川柳の時間」は茉莉亜まりが山崎彫科さんとお届けいたしました。
ことしも一年、ご投句、ご視聴ありがとうございました。
十七音字をかたわらに、みなさんにさまざまな時間が流れたことでしょう。
みなさまにおだやかなよい年末年始が訪れますように。
来年も川柳という十七音字の詩とともに
どうぞよろしくお願いいたします。
深夜来るガラスの靴をはいた猫 涼閑
猫の国の王子? それとも王女? 深夜にファンタジーをしずかに運んでくる猫。出会えたなら夢の中に迎え入れるのもいい。
軒下のネコの瞳に冬の星 たまやまともこ
軒下の猫。帰る家があるのだろうか。寒さに震える野良であっても、その瞳には冴えわたる夜空の星が宿る。
簡単に呑み込んでいる冬景色 川端日出夫
今年に限っていえば、秋が短かった。狂ったような暑さ、その残りがうろついた秋から一気の冬。北国からは雪の便り。日々生きていれば日常をこなし、季節のうつろいを気づけば簡単に呑み込んでいる。
糸を練る 不純物は私ですか 一橋悠実
自身にある違和感。不全感。練るなかであなたは邪魔なのだと判別されるるなら、その糸からは逃げ出して、自信の糸をらしく練りあげるといい。
霜柱踏めば闘志が燃えてくる 徳道かづみ
ざっ、ざっ、ざっ。凍てついた朝の足音に自身がまるくなっていた背が伸びてゆく。闘志が燃えてくる。今日一日を生き切るための。
決戦はハートマークで囲った日 猫又夏梅堂
決戦。あたらしい恋の、だろうか。長く愛する人になにかを切りだすのだろうか。ハートマークで囲む決戦の日。たたかいであるなら、勝利の勝鬨があげられますように。
五年ぶり友との別離氷雨降る みいちゃん
久しく会わなかった友と会う。別れる。冷たい雨にさらされる別離。まだ友としてむすばれている別離であるなら、あたたかな陽射しのもと、またあえますように。
見えるとも 祈りの先に優しさが 和音
優しさはそのものは目に見えない。祈り。そのさきにある優しさはなにとして目に入るだろう。荒れ地に咲き始める花だろうか。木々の隙間から届く木漏れ日だろうか。祈りはやさしさを見せてくれる救いへの入り口。
沈黙は生きて等しく罪を呑む 高良俊礼
黙して黙して罪を呑んでゆく。黙するものは等しく呑み続け、積もってゆく。積もらせるのはおそらく自身。黙する。放つべきは放つ。どこかに届くように、と。沈黙が拓いていく道がありますように。