川柳の時間

川柳の時間

針供養仇はみんな討ちました   徳道かづみ
 これまでをこれからを精算し模索しつつの供養。大丈夫。仇討ちは済んでいる。春に向かって前進あるのみ。

スーパーマンにならなくていい君でいい  一橋悠実
 あなたはあなた。そのままのいつも通りの君がいい。なんてことない日常が続く、そんな事が一番だと思えるまでの長い道程。

悪人の顔して冬の花鋏  林かずき
 これから咲こうとしている花、今を盛りに咲いている花。まだ小さな蕾まで、こともなげに切りまくる。鉄色の刃をキラリと光らせて。一見悪人に見せて、今のこの美しさを知って、残してくれるのは鋏だけなのかもしれません。

制服の中に初恋とじたまま  玉山智子
 卒業後も大事にとっておく制服。いやいや、閉じ込めた初恋を大事に残しておく。青春の一ページ。

ケチャップが跳ね犬好きのオムライス  猫又(夏梅堂)
 ケチャップまで犬の足跡にしていそう。スキップスキップの春はもうすぐそこまできています。

視覚野の原野に風を放ちおく  涼閑
 脳細胞の奥まで春風を吹き込んで。さあ春です。高く高く飛びましょう。

野山には花に関する音溢れ   高良俊礼
 春風が連れてくる音は花の音。パリリと冬を脱いで花を誘う音があふれる。「花に関する音」とは楽しい。

故郷の山真っ白に みな老いて   凪子

s-image1

s-image0