宝塚大劇場星組公演『RRR × TAKA”R”AZUKA ~√Bheem~』・『VIOLETOPIA』
樽井美帆です
星組公演
『RRR × TAKA”R”AZUKA ~√Bheem~(アールアールアール バイ タカラヅカ ~ルートビーム~)』
レビュー・シンドローム『VIOLETOPIA(ヴィオレトピア)』
が、宝塚歌劇110周年と2024年の幕開け公演として、
宝塚大劇場にて1月5日(金)から2月4日(日)まで上演されました。
なお、公演日程見直しのため、1月1日から4日の公演は中止となり、
1月25日に予定されていた新人公演も中止となりました。
東京宝塚劇場では2月23日(金)から4月6日(土)まで上演されますが、
公演日程見直しのため一部の公演が中止となっています。
また、東京宝塚劇場公演千秋楽付で、
大輝真琴さん・天華えまさん・彩園ひなさん・侑蘭粋さんが退団されます。
『RRR × TAKA”R”AZUKA ~√Bheem~』
脚本・演出/谷 貴矢
2022年に全世界で公開された大ヒットインド映画「RRR」が、
宝塚歌劇で上演されるということで映画ファンの注目も集めました。
舞台は、イギリス植民地時代のインド。
ゴーンド族の守護者ビームは、圧政を敷くインド総督スコットによって連れ去られた
幼い少女を救うため立ち上がる。
総督の姪で美しく心優しいジェニーとの恋や、強く内なる大義に燃える男ラーマとの
熱き友情と葛藤をドラマティックにそしてダイナミックに描いた作品です。
開演前、舞台には、森の中を流れる川やトラや鹿が歩く姿、鳥が飛ぶ映像が映し出されています。
礼真琴さんの力強い開演アナウンスの途中から、これまで宝塚歌劇では聞いたことがないリズムの
コーラスが聞こえてきます。
森の中に、ゴーンド族の少女マッリ(瑠璃花夏さん)の美しい歌声が響き渡ります。
独特の音階と節回しの歌。
インド総督の妻(小桜ほのかさん)がマッリを気に入り、いくばくかの小銭と引き換えに連れ去ってしまいます。
イギリス人の横暴に耐えかねた村人たちは、彼らの守護者である不屈の英雄、
コムラム・ビーム(礼真琴さん)を頼ります。
目が鋭く光る大きなトラのセットとともにビーム登場!
力強く躍動感ある歌声を響かせます。
これまでの公演でも何度かされていますが、頭の高い位置で結った髪型が礼さんによく似合いますよね。
空中でまるで止まっているかのような見事なジャンプには、いつも驚きと感動を覚えます。
これからはじまる舞台へのワクワクが高まるオープニングでした。
礼真琴さん演じるコムラム・ビームは、ゴーンド族の守護者で不屈の英雄。
遠い立場の英雄ではなく、常に仲間を思い寄り添う近い立場の英雄だなと感じました。
心身の強さと、屈託のない明るい笑顔のギャップに惹きつけられました。
インド総督スコットの命令に従い、ビームに何度も鞭を鞭を振り下ろすラーマ。
何度も鞭打たれながらも、決して不当な支配に屈しないビームは、
命を懸けた気高い魂の歌を歌いあげます。
どんなに鞭打たれても、膝をつくことなく耐え続けます。
その魂の歌声は、恐怖に委縮していたインドの民衆の心を動かし一斉に蜂起。
鞭打たれながら歌い続けるビームを見るのはとても辛いのですが、
それは礼さんのお芝居が、本当に苦しみ耐えているというリアル感が伝わってくるからではないでしょうか。
何度も聞こえる鞭の音と礼さんの苦痛の表情。
音響さんと礼さんのお芝居の素晴らしいタイミングとコラボレーションが、
感動の場面を作り上げているのだと思いました。
インド総督スコットの姪ジェニー・舞空瞳さん。
舞台に出てこられるだけで品と心の優しさを感じます。
✨キラキラキラ✨という効果音が聞こえてきそうな美しさ。
素直に思いっきり感動する無邪気なかわいらしさと曇りのない表情。
ジェニーのキッパリした美しい言葉が、舞空さんの声の清らかさにより
心地よさが増したように感じました。
優雅で美しいドレスの着こなしにもうっとりしました。
何事にも素直に感動するジェニーの無邪気さと可愛らしさに、
不屈の英雄ビームがデレデレ、ドギマギする様子がとてもかわいかったです🥰
暁千星さんは、内なる大義を秘め、イギリス警察としての任務を果たす男ラーマ。
強い目力、太い眉毛と口髭とあご髭。
もともとのかわいらしいお顔立ちとの絶妙なバランスがとてもステキでした😍
暁さんにしか出せない雰囲気のラーマでしたね。
長い手足を大きく使っての回し蹴り、熱い血を感じる動きとダンスと歌から、インドの血を感じました。
トップスター礼さん演じるビームから「兄貴」と呼ばれる暁さんが新鮮!
恋のアドバイスをするなど、ビームとラーマの信頼関係が伝わってきました。
だからこそ、ビームの拷問の場面は胸が痛いです。
良心の呵責に苛まれながらも、命令に従ってビームに鞭を振り下ろすラーマ。
暁さんの表情や体の動きから、心の動きが痛いほど伝わってきて本当に辛かったです。
ビームにもラーマにも譲れない信念があります。
どちらの味方もできず、気づいたら手をギュッと握っていました。
赤い軍服姿の暁さんは、凛々しくも麗しくとてもステキでした😍
ラーマの婚約者シータ役は詩ちづるさん。
『1789-バスティーユの恋人たち-』でも、カミーユ・デムーランとリュシルとして
恋人同士の間柄を演じられたお二人。
お二人が恋人同士として並ばれる姿は、とても微笑ましくお似合いなので、
今回またお二人のカップル姿を見ることができてうれしかったです。
15年間会えない間も、お互いを忘れることなく思い続ける二人の愛と絆を感じる歌に感動しました。
男同士の友情が強く描かれていることも、この公演の特徴ではないでしょうか。
肩を組んだり、手を強く握りあったりという場面が多く、熱く力強い友情に胸が熱くなりました。
特にビームとラーマがストップモーションでポーズを決める演出が多く、
かっこよさをじっくり堪能しました。
ジェニファーの婚約者のジェイク極美慎さん。
舞台に登場されると吸い込まれそうになるほど美しいオーラを放っていらっしゃいますし、
ジェニーを大切に思う心にあふれています✨
ジェニーがビームにダンスを教える様子に嫉妬し、色んなダンスを披露します。
スウィング、タンゴ、フラメンコ・・・
それぞれほんの少しずつなのに、足が長くて美しくてかっこいいんです!
見どころの一つは、上演前から話題となっていたナートゥではないでしょうか。
片足でバランスをとり、力強い蹴りのようなステップが特徴的。
はじめはビームとラーマの魂が震えるような踊りに圧倒されるイギリス人たちですが、
やがて誰もがそのダンスに夢中になり、ナートゥの渦に巻き込まれていきます。
ジェニーをはじめ女性たちが「キャー💗」と叫んで感激、二人の名前を叫んで興奮!
客席の私たちも舞台上の出演者の一人になったような気分で盛り上がりましたね!
踊り終わるとビームが舞台に倒れこんで「足が~💦」ともだえていましたが、
その様子はひととき礼真琴さんに戻ったようにも見えました。
森の中での戦いの場面は、ダンス・照明・音楽・セットなどの相乗効果により、
臨場感たっぷり迫力満点に描かれています。
礼さん演じるビームは、身長よりも長い槍を力強く振り回しています。
たくましいその姿に不屈の英雄の姿を見ました。
客席降りもありパワーを浴びることができる感動的な時間を堪能。
2階席にも客席降りがあり、戦いの最後は花火があがり、勝利を祝い活躍をたたえる拍手が
鳴りやまないほどの盛り上がりとなりました。
舞台と客席が一緒になって盛り上がる場面がたくさんありましたね。
ふるさとを大切に思う気持ち、様々な形の友情に触れ、心揺さぶられる熱い舞台でした。
レビュー・シンドローム『VIOLETOPIA』
作・演出/指田 珠子
「Violette(スミレ)」が、110年咲き続ける劇場、Takarazuka。
時代や国を超え、劇場の光と闇を描が描かれている劇場をテーマにしたレビュー作品。
この公演は、演出家・指田珠子さんの宝塚大劇場デビュー作です。
薄暗い森の中の廃墟。
そこに暗い色のコートを羽織った一人の青年(礼真琴さん)が現れ、
すみれの花に耳を澄ますと歌声が聞こえ出します。
廃墟の中から劇場、劇場に棲みつく記憶が蘇ります。
幕開けの総踊りのあと、トップコンビ礼真琴さん・舞空瞳さんが銀橋に残り、
指揮者の佐々田愛一郎さんからラベンダー色の穴だらけの傘を受け取ります。
かつてのレビューの青年と美女が、穴だらけの傘をさして歌うとても微笑ましい場面でした。
裏方の青年(暁千星さん)を中心にバックステージを描いた場面。
密かに花嫁役のダンサー(詩ちづるさん)に思いを寄せ、今夜は何かいいことが起こりそうだと
胸を高鳴らせ踊ります。
オーバーオール姿の暁さんの若々しく溌剌としたダンスは、本当に気持ちいいですね!
お人形のようにかわいらしい詩さんも魅力的でした。
サーカス小屋を描いた場面では、楽しみなんだけど、ちょっと入るのが勇気がいるような・・・
でも入ってみたい・・・というサーカス小屋のテントの雰囲気がとてもうまく表現されていると
私は感じました。
ヘビに扮した礼真琴さんは、妖しく躍動感あるしなやかなダンスで魅了。
怯えたり操られる雰囲気のダンスに不思議な感覚を覚えました。
極美慎さん扮する妖しい座長も魅力的でした。
天飛華音さん・瑠璃花夏さん・詩ちづるさんの歌声ではじまる場面『宮廷と役者と青春』、
ディープ・パープルの『ハイウェイ・スター』で盛り上がります。
礼真琴さん・舞空瞳さん・暁千星さんが、ものすごい勢いで客席を走ります。
身体能力の高さを疾走される時に流れた風に感じました!
星組のみなさんによる客席降りでは、笑顔とパワーが劇場中に満ちあふれました。
20世紀の退廃的なキャバレーを描いた場面では、舞空瞳さんが黒燕尾にソフト帽姿で登場。
とてもかっこいい舞空さんが魅惑的なダンスで紳士たちを誘います。
賑やかな店内に演出家の青年・礼真琴さんが現れます。
そこにキラキラ輝くドレスを着た美女・暁千星さんが登場!
妖しく愛らしく魅了されていました🤩
鍛え上げられた背中でドレスを美しく着こなしていらっしゃいました。
この公演で退団される天華えまさんを中心とした場面『エントランス・ノスタルジー』には、
自分が毎日働き毎日目にしていた光景を振り返り、懐かしむように歌うというストーリーがあります。
キャメル色のトレンチコートを羽織った天華えまさんが、一人銀橋でAs Time Goes BYを歌います。
笑顔で歌われる天華さん。
歌詞に込められているメッセージに込み上げるものがあります。
最後に軽く会釈される天華さん。
これまでの天華さんに舞台姿が蘇る、あたたかく爽やかで明るい天華さんの魅力が
凝縮されたひとときでした。
ラインダンスは、強気な音符たちと翻弄される指揮者たちによる混乱のダンスという面白い設定。
碧音斗和さん・御剣海さん・稀惺かずとさん・大希颯さんの指揮者は溌剌と輝いていました。
元気でかわいらしいラインダンスでした。
礼真琴さんを中心とした男役群舞は、渋いギラつきを放つ衣装。
少し変わった長方形のようなサングラスを全員かけて大階段から登場。
途中、大階段でサングラス外してジャケット左胸のポケットに直すのですが、
その時の顔がみなさんそれぞれカッコよく迫力満点です😍
パレードでエトワールをつとめられるのはこの公演で退団される天華えまさん。
愛いっぱいの歌声を響かされました。
舞台上の方々と大階段上の方々では珍しく衣装が違いました。
そして、手に持つ小道具にも違いがありました。
舞台上の方々は、劇場の中にすみれの花が5輪デザインされているシャンシャン、
大階段上の方々は白い羽根扇を持っていらっしゃいました。
そして、大階段の方々が、舞台上の方々とは別の振付で踊っていたことも珍しいなと思いました。
不思議なまどろむような心地よさに包まれていると、あっという間に時間が経っているようなショーでした。