宝塚大劇場星組公演『記憶にございません!』-トップ・シークレット-・『Tiara Azul -Destino-』
樽井美帆です
星組公演
政界コメディ『記憶にございません!』-トップ・シークレット-
カルナバル・ファンタジア『Tiara Azul -Destino-』
が、宝塚大劇場にて8月17日(土)から9月22日(日)まで上演されました。
この公演で、星組トップ娘役・舞空瞳さん、
煌えりせさん・紅咲梨乃さん・水乃ゆりさんが退団されます。
政界コメディ『記憶にございません!』-トップ・シークレット-
原作/映画「記憶にございません!」 ©2019フジテレビ 東宝
映画脚本・監督/三谷 幸喜
潤色・上演台本・演出/石田 昌也
三谷幸喜さん脚本・監督により2019年に上映され、
大ヒットを記録した映画「記憶にございません!」が舞台化されました。
憲政史上最低の支持率を叩き出した総理大臣・黒田啓介が、
記憶を無くしたことで巻き起こす騒動の数々を描いた政界コメディ。
史上最悪のダメ総理と揶揄される黒田総理は、ある日選挙の応援演説中に投げつけられた
石が頭に当たったことで記憶を失ってしまいます。
子どもの頃のことは覚えていますが、政治家になってからの記憶がそっくり抜け落ち、
妻・聡子をはじめ、家族や自分を取り巻く人々のことが分からなくなり困惑と恐怖を覚えます。
前代未聞…現職総理の記憶喪失に、首相秘書官の井坂らは、
この状況をトップ・シークレットとして扱い、黒田に無理やり政務を続行させます。
一方黒田は、記憶を失ったことでこれまで自分が行ってきた(らしい?)
不倫、汚職、暴言等、数々の悪行を知り唖然。
政治家としての初心を思い出し挽回するために、冷え切った妻・聡子との関係を元に戻すために、
国民の為に襟を正し、真摯に政治に向き合っていく黒田でしたが、
生まれ変わった彼の言動が様々な騒動を巻き起こしていきます。
開演前、舞台両サイド花みちには、選挙ポスターの掲示板が映し出されています。
よ~く見ると立候補者は星組のみなさん。
とても個性豊かな表情で、名前と楽しい公約が書き添えられています。
また開演5分前には、舞台にタイトルと国会議事堂が映し出されます。
「有権者のみなさま、本日はようこそ宝塚大劇場にお越しくださいました。」と、
星組党の礼真琴さんとしての楽しい開演アナウンス。
指揮の西野淳さんのお名前が紹介され、西野さんがスポットライトを浴びてお辞儀をしようとすると
「総理~!」という厳しい女性記者の声😲
西野さんは、危ない危ない巻き込まれたら大変という表情と仕草で、
オーケストラボックスに消えていかれます。
極美慎さん演じるフリー・ライター古郡祐を中心に、
街の人々が政府への不平不満を歌いあげるオープニング。
空手をされていたからか、勇ましさも感じる美しい立ち姿の極美さんです。
赤いじゅうたんがひかれた官邸の階段が大階段をつかって再現されています。
この階段から登場した礼真琴さん演じる黒田総理と閣僚のみなさんが、
真顔でキレキレのダンスを披露するという現実では絶対にありえない状況がとても面白い、
宝塚歌劇版ならではの場面ですね。
国民の不満をよそに、暁千星さん演じる首相秘書官の井坂や大臣たちとともに
献金マンボ「ウ!」「ハ!」と高圧的な態度で歌い踊るのですが、
スーツ姿でビシッと踊る姿はかっこいいです😍
全体を通して、突然歌い踊る、でも細かい動きまでみんながキレキレというところに、
星組のコメディ魂を見た気がしました。
礼真琴さんが演じたのは総理大臣・黒田啓介。
記憶を失くす前のダメ総理時代の
「記憶にございません」・「秘書に任せております」・「誠に遺憾です」という言い方は、
本当に絶妙に腹が立つ表情と言い方をされる礼さんなのですが🤣、
記憶を失ってからの表情と声、動きが全く別人!
あごを突き出して必死に走る姿はまさにコメディでかわいいんです!
時々ピョンと飛んだり、常にアタフタして動きがクネクネ。
声も高くなり、話し方もかわいくソフトになります。
それに合わせて周りの動きも一気にコメディに。
放っておけない、かまってあげたいオーラ全開の礼さん演じる黒田総理。
気づけば客席の私もガッチリ心をつかまれ、奮闘するその姿にエールを送っていました。
この公演で退団される舞空瞳さんは、総理夫人・黒田聡子。
夫婦のこれまでの思い出写真が映像で映し出される中、
深くて美しい声で情感たっぷりに銀橋で歌う舞空さん。
これまでにまだ聞いたことがない舞空さんの歌声。
とてもかわいい姿の中に母親として姿が、表情や声、視線に感じられました。
一体どれだけの表現の幅と進化する力をお持ちなのかと、
最後の公演をもってしても新しく新鮮な姿を見せてくださった舞空さんを見て思いました。
夫の愛をサプライズで知った時の笑顔も可愛すぎて、
この舞空さんの笑顔にこれまでたくさんの幸せと元気をいただいたことを実感しました。
選挙活動で、着物姿で夫とともに手を振りながら銀橋を歩いていく時の
はじける笑顔がとても可愛くて、一人一票じゃ足りない!たくさん投票したい!と
思ってしまいました😄
選挙カーの上にあがる時、黒田総理が妻に手を差し伸べる姿に愛があふれていました。
黒田総理が聡子を見つめる優しい眼差しが、
この公演が最後となるトップコンビ礼真琴さんと舞空瞳さんのお二人に重なります。
自慢の夫と妻と、自慢の相手役。
これまでお二人が出演してこられた作品のキーワードを盛り込んだセリフから、
一瞬にしてお二人の舞台が思い出されます。
インドでの自転車修理、ジョージアへの旅、キラキラ星の連弾、バスティーユにエジプト・・・
「全く記憶にないの?」と不安気に尋ねる聡子に、
「記憶にございます。」と答える黒田総理。
抱き合って喜ぶ無邪気な二人の姿は愛にあふれていました。
首相秘書官の井坂は暁千星さん。
銀ぶちメガネにスーツ姿が知的でクールでかっこいい😍
メガネに細工がされているのかと思ってしまうくらいキラッと光って見えるんです!
暁さんのオーラをメガネが反射してしまっているのかもしれませんね✨
抑揚なくパーッと話すところに、井坂さんの隠しているシャイな人柄を私は感じました。
もともと可愛いお顔立ちの暁さんが、真面目な表情をすればするほど
なぜか面白味が増すという不思議な魅力がコメディに活きていましたね。
専科から出演されている輝月ゆうまさんは官房長官の鶴丸大悟。
白髪交じりのもみあげが北大路欣也さんのようで完璧✨
本当に七変化される方ですよね!
相手が思わず「すみません」と言ってしまう、なんともいえない威圧感と視線。
海外の貴族でもなく会社員でもなく、間違いなく政治家をイメージさせる
スーツの着こなしと歩き方がお見事でした!
詩ちづるさんは、事務秘書官・番場のぞみ。
詩さんといえば、これまで演じてこられた可愛らしい役の姿が思い浮かびますが、
今回は新しい姿を見せていただきました。
シャキシャキしたコミカルな動き。
しっかりしていて落ち着いているかと思えば、絶妙な間で切りこんでくる面白い番場さん。
アタッシュケースを重そうに持つ詩さんのお芝居が素晴らしく、
どれほど重いのかと想像し笑ってしまいました😆
息を呑んだり、息を止めるという言葉にならない間合いのお芝居や、
ほどよく力が抜けているコメディならではの空気感に引き込まれ、
たくさん笑いあっという間に感じる楽しい1時間35分でした。
コメディならではのBGMや効果音が、宝塚大劇場で聞けたことも楽しかったです。
カルナバル・ファンタジア
『Tiara Azul -Destino-(ティアラ・アスール ディスティーノ)』
作・演出/竹田 悠一郎
アルゼンチンのグアレグアイチュで行われるカルナバル本番を挟んで、
当日のお昼から翌日の朝までをストーリー仕立てで綴るレビュー作品。
演出家・竹田悠一郎さんの宝塚大劇場デビュー作です。
Tiara Azul(ティアラ・アスール)は、青色のティアラ。
Destino(ディスティーノ)は、スペイン語で運命、目的地、進むべき道という意味の言葉だそうです。
開演前、舞台には星座や流れ星、顔の付いた太陽が映し出され、
アルゼンチンはどんなところかなとイメージしながらワクワクしていると、
パーカッションがリズムを刻みだし星座が動きはじめます。
暗くなった舞台が一気にパッと明るくなると、
舞空瞳さんを銀橋センターにして男役さんがずらり!
キラキラ輝くブルーのジャケットに白いハットの男役さん、
Tiara Azulたちが居並びます✨
金髪ロングヘアにゴールドのティアラ、
白いタイトなマーメードのような形のドレスを着た舞空さんは、
女神かマーメードのような、現実を越えた美しさ🤩
笑顔で客席を魅了します。
カルナバル・ファンタジアの始まりを告げる華やかでかっこいいプロローグ。
第2章 La Primera Estrella -眩しすぎる星(ヒトミ)-12時
場面のタイトル-眩しすぎる星(ヒトミ)に、舞空瞳さんへの想いが込められていますね。
カルナバル当日の昼、今夜のカルナバル本番が待ちきれない
Tiara Azulのメンバー
イグナシオ・暁千星さん、カルロス・天飛華音さん、エウティミオ・稀惺かずとさん。
今年こそは意中のあの子にTiara Azulを捧げようと、自らをアピールして歌います。
そこへ太陽の娘エリアナ・舞空瞳さんが現れ、魅力的なダンスで男たちを次々に虜にしていきます。
とても元気で楽しい恋の駆け引きダンスバトル。
ショートパンツ姿で激しくキュートに踊る舞空さん。
ダンスをしながらの表情がとっても可愛いです!
このショーの中で、礼真琴さんと舞空瞳さんが手を取り合うシーンが多かったように思います。
舞台からはける時は必ずといっていいほど手をつないでいたように感じました。
カルナバルへ向かうチームを客席降りで表現。
羽根のついた華やかな衣装を身にまとい、しなやかに踊るダンサーたちが客席を通っていきます。
黄色・紫・赤などに色分けされたチームが、熱い掛け声をかけ激しくのびやかに踊り
カルナバルは盛り上がります。
舞台も衣装も色彩にメリハリがあって華やかで元気がでました。
夜が明けようとする街で静かに踊りだす二人
ルカ・礼真琴さん、エリアナ・舞空瞳さん。
はだしで踊ります。
見つめ合い、慈しみ合い、語り合っているかのようなお二人のダンス。
白い衣装のお二人は、時に軽やかに羽ばたく鳥のように見えました。
最後に礼さんが後ろから抱きしめた時の舞空さんの幸せそうな表情が
本当に美しかったです。
黒いスーツ姿の男役群舞で、最後にみなさんがカッコよくポーズを決めると、
ブルーに輝く大階段の中央に白いドレス姿の舞空瞳さんが。
曲は「星に願いを」
まさに星組のプリンセス、舞空さん✨
大階段で様々なポーズを決めて踊られますが、どのポーズも本当に伸びやかで美しい!
同じく白い衣装の礼さんとの最後のデュエットダンスへと展開していきます。
二人だけの時間を惜しむかのようなダンス。
最後は銀橋で、礼さんが舞空さんの頭にティアラを😍
みんなの前で行われる戴冠式!
ひざまずいてティアラをのせてもらって、礼さんを見上げる舞空さんのうれしそうで幸せそうなお顔🤩
尊く美しい時間に涙が出そうになりました。
パレードでもまだまだ熱いカルナバルの熱狂は続きます!
星組のみなさんが踊りながら幕が下りていきました。
振りのスピードが速くて、カラフルでパワフルでエネルギッシュ。
舞台と客席が一緒になって盛り上がり、終わりがくることを感じないショーでした。
星組トップ娘役・舞空瞳さんの退団公演。
星組トップコンビ礼真琴さん・舞空瞳さんによる最後のショー。
トップコンビが組んで踊る場面が多く、お二人がずっと一緒に舞台にいらっしゃるように感じました。
カッコよくてかわいい舞空さん、とびっきり笑顔の舞空さん、
こんな舞空さんを見たかったが全部詰まっているショーでした✨
東京宝塚劇場では、10月19日(土)から12月1日(日)まで上演されます。