宝塚音楽学校 第111期生 文化祭
樽井美帆です
2月21日(金)から23日(日)までの3日間、宝塚バウホールにて
宝塚音楽学校第111期生文化祭が行われました。
宝塚音楽学校創立110周年の年に入学された111期生のみなさんですね。
12時・16時公演の1日2回公演、全6回公演が行われました。
生徒のみなさんが、初めて実際の観客の前で公演を行うのが、この文化祭。
2年間の音楽学校生活の集大成です。
文化祭は、運営に関するお仕事も生徒のみなさんが担当されます。
取材の受付、携帯電話の電源や写真撮影についての諸注意などの
案内が書かれたボードを持って客席に注意を促すのは予科生のみなさん。
一つ一つの動きに心がこもっていてとてもきれいでした。
進行の案内をする影アナウンスも生徒さんが担当します。
文化祭は3部構成で、総合演出は三木章雄さんです。
第1部
1.日本舞踊
清く正しく美しく
初舞台の口上の際にも舞台上に飾られる小林一三さんが書かれた
『清く正しく美しく』の扇のセットが飾られています。
黒の紋付・緑の袴姿、手には銀色に輝く舞扇。
心地よい緊張感と期待の中、『清く正しく美しく』のイントロとともに
文化祭の幕が上がりました。
歌のソロは、娘役の今井絢音(いまい・あやね)さんと南田愛弥(なんだ・まなみ)さん。
ハッとするほど美しく透明感ある歌声。
落ち着いて品があるたたずまいが、心地よい空気感を生み出します。
ずっと聞いていたい、幸せな気持ちになれるお二人の歌声。
なんとも幸せそうな笑顔で歌われる姿が印象的でした。
舞扇をポーンと投げて後ろの人がキャッチするという、
アクロバティックな振りもあるダイナミックな舞でした。
2.予科生(112期生)コーラス
12時公演では、『合唱』・『僕らはいきものだから』
16時公演では、『合唱-もうひとつの-』・『僕らはいきものだから』を
ピアノ伴奏で歌われました。
グレーの制服で登場されたみなさん。
同期生で声を合わせてハーモニーを作る喜びを感じていらっしゃるかのような笑顔。
透明感があって清らかな歌声。
指揮の先生をしっかり見つめ、指揮に的確に反応されていました。
112期生のみなさんがコーラスで作り出す世界観がとてもステキだなと感じました。
2列に並んでいるのですが、1曲目と2曲目の間で、列の前後が入れ替わります。
その移動の動きも無駄がなく美しかったです。
2曲目は軽やかにステップを踏んで歌われました。
「生きるのだ、僕らはいきものだから」という歌詞を歌われるみなさんが最高に輝いていて、
まさに今、自分の夢に向かって走っているんだという充実感と喜びを感じました。
3.クラシック・ヴォーカル
クラシック・ヴォーカルでソロを披露できるのは二人のみです。
今年は、男役さん二人。
小原舞穂(おはら・まほ)さん
オペラ「カルメン」より「闘牛士の歌」
ピアノ伴奏の前奏が終わって前に一歩進んだ瞬間、目にキラリと光が宿りました。
歌声に一本芯が通っていて、凛々しくも優しく響く歌声。
手でも目線でも豊かに表現される小原さん。
とても素晴らしいパフォーマンスでしたので、
ぜひいつかスパニッシュの場面に出ていただきたいなと思いました。
野々川莉央(ののがわ・りお)さん
オペラ「道化師」より「衣装をつけろ」
深く太い響きで、低音から高音まで豊かに歌い上げられました。
道化師になりきり演じながらの歌。
切ない思いも伝わってきました。
愛らしいお顔とお声のギャップもステキでした。
4.ポピュラー・ヴォーカル
宝塚歌劇主題歌メドレーが14曲披露されました。
こちらはステージ上での生演奏、指揮は吉田優子さんです。
色とりどりの照明に照らされる舞台で宝塚歌劇の名曲が次々に披露されます。
今年は「ザ・レビュー」より「アイ・ラブ・レビュー」からスタート。
「誰がために鐘はなる」から「幸せの鐘の鳴る日」を歌われた
新井芽依(あらい・めい)さん・澤田有里(さわだ・ゆり)さん。
男役さんお二人による歌です。
お二人とも声量が豊かでピッチが合っていて、
客席のイスがビリビリするほどの素晴らしい響きの歌声でした。
「砂漠の黒薔薇」より「君の名を呼べば」
娘役の久野愛子(くの・あいこ)さん・男役の山本桜子(やまもと・さくらこ)さん。
お二人ともときめく歌声をお持ちです。
二人の間に愛が見えました。
久野さんは、地声と裏声の切り替えも鮮やか。
山本さんは優しく相手に寄り添う歌声。
手をつないではける姿は初々しかったです。
クラシック・ヴォーカルでソロを歌われた男役の野々川莉央(ののがわ・りお)さん。
「風と共に去りぬ」より「愛のフェニックス」
歌が素晴らしいのはもちろんですが、
歌っていない間奏など間も味方につけ埋める力をお持ちのスゴイ方だと思いました。
「ブエノスアイレスの風」より「ヴィエント・デ・ブエノスアイレス」を歌われた
娘役の澤木佳奈(さわき・かな)さん。
優しく美しい響きの歌声。
特に高音が感動的で、いつか澤木さんのエトワールをぜひ見てみたいです。
プロブラムのアピールポイントには、「忘れ得ぬ歌声」と書いていらっしゃいます。
「皇帝と魔女」より「愛の歌」を歌われた娘役の小原柚香(おはら・ゆうか)さん。
ゆったりたっぷりの歌声で堂々とした歌唱。
途中からコーラスが入るのですが、
コーラスを味方につけてさらに豊かな歌声を響かせていらっしゃいました。
ポピュラー・ヴォーカル最後は、
「ザ・レビューⅡ」より「この愛よ永遠に(TAKARAZUKA FOREVER)」を、
ミラーボールが輝く中全員で歌いました。
日本舞踊の場面でも感じましたが、
111期生のみなさんは歌声もダイナミックなイメージを持ちました。
第2部
演劇 A MONOLOGUE Vol.V
脚本・演出 正塚晴彦
公演はA組・B組の2組に分かれて上演されました。
通し舞台稽古はA組により上演されました。
中世ヨーロッパのとある国での物語。
豊かな領地を治める伯爵家に、王女と長男との縁談がもちかけられる。
二人は幼馴染であり一見めでたい話だったが・・・
突然緊迫したシーンから始まります。
111期生のみなさんのパワーとお芝居の熱量に、一気に惹きつけられました。
舞台の奥には段数が3段の白い階段。
舞台にはところどころに四角い白い箱が置かれていて、
それがセットとして使われています。
出演者は、舞台の左右に置かれた椅子に座っていて、
自分の出番になると立ち上がってお芝居に参加します。
音楽は一切なし、照明も大きな変化がない中でのお芝居。
セリフと動きのみで勝負する難しいお芝居だと思いますが、
心の動きが見える丁寧で誠実なお芝居だなと感じました。
主人公ロベールの三枝友梨乃(みつえだ・ゆりの)さん。
甘いマスクにマントがよくお似合いです。
ルイ役の光田悠那(みつだ・ゆうな)さんは、
出てこられると舞台と客席に風を起こすかのようなパワーの持ち主だなと感じました。
同期生の中で、親子の役など歳の離れた役を演じるのは難しいのではと思ったのですが、
みなさん見事に演じていらっしゃいました。
慈悲深い息子思いの、主人公ロベールの母親を演じていらっしゃった
南田愛弥(なんだ・まなみ)さん。
元花組トップ娘役の仙名彩世さんのような知的で清楚な雰囲気です。
ドミニクを演じられた今井絢音(いまい・あやね)さんの、
スマートでかっこいい爽やかな色気が印象に残っています。
第3部
ダンスコンサート
イエイ!という元気な掛け声と爽やかな水色の衣装。
「Foot loose」にのってタップダンスからスタート。
光田悠那(みつだ・ゆうな)さん、三枝友梨乃(みつえだ・ゆりの)さん、
南田愛弥(なんだ・まなみ)さん、山神晶(やまがみ・あき)さんを中心とした、
軸が全くぶれないにも関わらず、ダイナミックで心躍るタップダンスが素晴らしかったです。
赤い軍服の男役さんに白いドレスの娘役さんが舞う優雅なバレエ。
躍動感あふれるジャズダンス。
笑顔でキレキレのダンスを踊るみなさんから元気がもらえました。
センターで踊る光田悠那(みつだ・ゆうな)さんのダンスは、
元星組トップスター柚希礼音さんを彷彿とさせるなと私は思いました。
デニムの衣装でのジャズダンスは、躍動しているけれども、
しっかり地に足がついているたくましさを感じました。
伸びやかで美しいダンスでした。
モダンバレエは、黒のレオタードに黒のタイツという衣装に頼ることのない状況で、
激しい曲に合わせてしなやかだけれども訴えかけてくる美しいダンスを披露されました。
フィナーレは、全員でジャズダンス。
曲は「スイングがなければ意味がない」
黒のシャツに黒いズボン。
ゴールドのベスト、ゴールドのリボンが巻かれた黒いハット。
全員お揃いの衣装。
跳んで回って、ステップを踏んだり足を上げたりなどなど、
ダンスのすべての要素が入っているのではと思うくらい激しいダンスなのですが、
111期生のみなさんは笑顔笑顔。
輝く笑顔と光る汗、弾む息が、全力でのパフォーマンスを物語っていました。
初舞台でみなさんの愛くるしい笑顔と会える日が待ち遠しいです。
代表の光田悠那(みつだ・ゆうな)さんは、
「わたくしたちはこれからも、まっすぐ成長する新芽のように、
さらなる未来へ向かって精進してまいります。」と終演のご挨拶をされました。
2年間、真摯に芸事に向き合ってこられた111期生のみなさんの
素晴らしい成果を見せていただけた文化祭でした。