宝塚バウホール花組公演 ミュージカル・ロマン『儚き星の照らす海の果てに』
樽井美帆です
宝塚バウホール花組公演
ミュージカル・ロマン『儚き星の照らす海の果てに』が、
3月21日(金)から上演されています。
希波らいとさん、宝塚バウホール公演初主演です。
希波さんは、2017年に入団された103期生。
2021年『元禄バロックロック』で新人公演初主演、
2023年『うたかたの恋』で2度目の新人公演主演。
そして今回、宝塚バウホール公演初主演となりました。
またこの作品は、演出家・中村真央さんのデビュー作です。
歌劇3月号によりますと、中村さんは映画の『タイタニック』が大好きで、
いつか宝塚歌劇で上演したいという想いがあったそうです。
デビュー作で早々に夢を叶えられたんですね!
中村さんが希波らいとさんの芸名の意味を込めてつけられたタイトル
『儚き星の照らす海の果てに』。
希波らいと⇒ライト⇒照らす💡
出演者は、花組28名のみなさんと
専科の一樹千尋さん・英真なおきさんです。
20世紀初頭のイギリス。
北大西洋を舞台に、豪華客船による旅客輸送の覇権をめぐる
熾烈な競争が繰り広げられていました。
「世界で一番大きな船を作り、人と人を繋ぐ架け橋になりたい」
そんな夢を少年の頃から描いていたトーマス(希波らいとさん)は、
一流の造船会社へ入社し、仲間との絆を深めながら、設計士の道を着実に歩んでいました。
時は流れ1907年。
トーマスの人生を変える出来事が舞い込んできます。
イギリスの大手海運企業の社長イズメイ(夏希真斗さん)から、
世界最大規模の豪華客船の造船企画が持ち込まれたのです。
そして、長年の夢を叶えるために走り出したトーマスは、運命的な出会いを果たします。
幼い頃、いつか自分の造る船に一番に乗せると約束した少女ヘレン(二葉ゆゆさん)との再会。
二人の心は再び惹かれ合い、幼い恋心は確かな愛へと変わっていくのでした。
重なった偶然の連続に、トーマスは世界一の豪華客船を造る決意をさらに固くしますが、
現実は理想とは異なり、多くの困難が立ちはだかります。
信念を貫き、限られた条件の中で最善の答えを探し続けるトーマス。
人々の期待と熱狂を集めるタイタニック号。
信じる未来のためにトーマスが選び取った道とは。
1912年、いよいよ、人々の夢と希望、そして無数の運命を乗せたタイタニック号が出航します。
開演前、優しくてドラマチックなBGMが流れてきます。
幕が開くと、無数の星が輝く青い舞台でスポットライトを浴び、船の設計図を見つめる背中。
希波らいとさん演じるトーマスです。
ダークグレーのスーツ姿で、手には船のおもちゃを持ち、夢を歌います。
優しくふんわりとした雰囲気が印象的です。
遠くを見つめる瞳の輝きがとてもステキ。
自分の造った豪華客船で、大海原を航海している未来に思いを馳せているかのような瞳。
私は幕開き早々、希波さんの瞳の力で大航海の夢を見させていただきました。
希波さんの瞳は、人に夢を見せ、人の想像力を高める力をお持ちですね。
劇中でも、英真なおきさん演じる造船会社の会長ピリーから
「真っ直ぐな瞳がすべてを物語っているよ」と言われています。
そんな希波さん演じるトーマスの周りには、白い衣装のHalleyというダンサーたちが、
彼を優しく見守るかのように笑顔で踊っています。
トーマスがみんなと一緒に楽しく夢に向かって仕事をしている様子が描かれているオープニング。
オープニングだけでも、トーマスが人に優しい人物であることがよく分かります。
舞台の上からは、船の設計図が何枚も吊り下げられていて、
これは時に映像を映し出すスクリーンになります。
そして舞台上には、階段状のセットがいくつか置かれていて、
側面には船の設計図が描かれています。
宝塚バウホール公演での舞台セットは、大劇場公演に比べると舞台の大きさからどうしても
小さめなイメージや、舞台機構の違いから場面転換が少なめなイメージですが、
今回の公演は本当にバウホールなの?と思ってしまうほど、
大がかかりな舞台転換が何度もありました。
階段状のセットが移動し組み合わさると、なんとタイタニック号の舳先になるんです!
第2幕では、タイタニック号が出航してから最後を迎えるまでが描かれています。
タイタニック号のお話しは有名ですので、悲しい結末を迎えることになるのは
みなさんご存知ですよね?
第2幕の展開を想像して幕間休憩中もドキドキしていたのですが、
中村さんは見事に優しく美しく描かれました。
波の映像や音も使われていますが、Dianという役名の波をイメージさせる
白い衣装のダンサーたちが登場し、タイタニックの最後を表現していました。
また、公演全体を通して群舞やコーラスが多く、
常に舞台上に多くの人がいることも印象に残っています。
衣装もカラフルだけれども優しい色彩でした。
希波らいとさんが演じていらっしゃるのは、
造船会社ハーランド・アンド・ウルフで働く設計士トーマス・アンドリューズ。
一つ一つの動きや目線が丁寧で、相手が安心する優しい笑顔です。
英国紳士らしい上品で洗練されたスーツやベストを着こなす希波さん。
足が長いです🤩
白いズボンに水色のベスト姿は、最高に爽やかでした。
色合わせやネクタイの締め方、ベストに鎖のような飾りが付いていたりと、
設計士というお仕事柄トーマスはオシャレにも敏感なのかなと想像することができました。
第2幕のタイタニック号の船内での黒燕尾姿。
白いマフラーをかけた姿はとてもかっこよかったです。
タイタニック号の生みの親として最後を見届けることを決意したトーマスは、
覚悟を決めた厳しい表情に。
そんな中、幼い頃の夢や愛するヘレンのことを思い出し、再び優しい表情になっていきます。
激しい波の音の中、命を燃やすように歌うトーマス。
希波さんが歌に込める熱を感じました。
白い衣装のダンサーDianらによって、トーマスの美しき旅立ちが描かれました。
スモークがたかれ再び蘇ったタイタニック号の舳先で、笑顔で伸びやかに歌うトーマス。
彼の夢はまだまだ続いているんだなと感じる美しいラストシーンでした。
ヒロインは二葉ゆゆさん。
ヘレン・ライリー・バーヴァー。
リネン会社の社長令嬢でのちにトーマスの妻となります。
宝塚バウホール公演初ヒロインの二葉さんは、希波さんと同期生。
同期生ならではのあたたかい空気感、幼なじみ感があふれていました。
優しくて、どんな時もトーマスに勇気を与える存在。
あたたかい笑顔でいつも明るく優しいヘレンは、
トーマスにとっての希望の光だったんだなと感じました。
ヘレンのあたたかさと清らかさが二葉さんの笑顔や声、佇まいから伝わってきました。
タイタニック号と夫トーマスの最期を知り偲ぶ場面では、
美しい涙を流しながらもトーマスに優しく語りかけていらっしゃいました。
声に愛がこもっていました。
二葉さんは、4月4日付で宙組へ組替えとなります。
イギリスの海運企業ホワイト・スター・ラインの社長ジョセフ・ブルース・イズメイを
演じられたのは夏希真斗さん。
歩き方、歩いている時の手の振り方、人を見下す目つき、メラメラした目の輝きが
本当に見事にイズメイの人間性を表しているなと感じました。
人の指図は受けない、人の意見は聞かない、自分のことしか考えていない、自分が絶対。
タイタニック号が沈む時にも、乗客のことを考えるのではなく
自分が一番に助かるために救命ボートに乗る。
夏希さんは身長175cmなので、存在感的には大きいのですが、
その身体の大きさと釣り合わないほどの人間性の小ささを見事に表現されていました。
「あなた本当にもうだまってて!」と心の中で腹立たしく思ってしまうほどに。
口ひげさえも腹立たしく思えるほどのイズメイでした。
愛乃一真さんは、
トーマスと同じ造船会社で働く親友モーリス・オサリヴァン。
トーマスらと一緒にタイタニック号に関わる仕事を楽しくしていたけれども、
自分が会社で生き残るために、タイタニック号の造船企画を持ち込んだ
海運企業の社長イズメイ側につくことを決意。
最初は目をキラキラさせて笑顔で自分の好きな仕事をしているけれども、
自分の心を偽ってでも生き残ろうとするモーリス。
焦りや葛藤を表現する愛乃さんの目はギラギラとした光に変わり、ワイルドでダイナミックでした。
トーマスと同じ造船会社で働くもう一人の親友ジョージ・カミングは美空真瑠さん。
黄色のチェックのスーツがとてもお似合いで、目がクリクリよく動く可愛らしいジョージ。
美空さんが舞台に登場されるとパッと明るくなります✨
とても可愛らしいお顔が、意志を決めて凛々しい表情になるギャップも魅力的。
時に力強く、時に優しく寄り添う、耳と心に心地よいお声が忘れられません。
トーマスをサポートする造船会社の職員 エミリー・スペンサー
七彩はづきさん。
ピンク色の衣装がとても愛らしく、トーマスに恋する乙女の心が見えます。
黒目がちな瞳がキラリと光る魅力的な七彩さん。
可愛らしく健康的で、見ていると元気をもらえる娘役さんですね。
歌声からも愛する喜びと切なさが伝わってきました。
同じ時間の中に色々な思いをしている3組が描かれた場面がありました。
プロポーズが成功し喜びいっぱいのトーマス(希波らいとさん)とヘレン(二葉ゆゆさん)。
愛の喜びにあふれる恋人同士ジョージ(美空真瑠さん)とオリヴィア(真澄ゆかりさん)。
愛する人がもうすぐ結婚することを知ったエミリー(七彩はづきさん)。
とても美しい構図なのですが、エミリーだけが一人で悲しみに耐えている姿が健気でした。
トーマスの幼少期を演じていらっしゃる希蘭るねさんと、
ヘレンの幼少期を演じていらっしゃる花海凛さん。
男役さんが演じる役の幼少期は、娘役さんが演じられることが多いですが、
今回は男役の希蘭さんが演じていらっしゃいます。
希蘭さんと花海さん、本当に自然で可愛すぎるお二人。
無邪気な走り方、立ち方、仕草、笑顔。
本当にずっと見ていたいお二人でした。
タイタニック号の船長エドワード・ジョン・スミスを演じていらっしゃる一樹千尋さん。
白い髪、髭、眉毛に覆われたお顔で制服を着られた一樹さんは、貫録と愛にあふれた船長。
タイタニック号と命を共にすることを決めた船長が、
波にさらわれていく様子はとても悲しい場面でしたが、
そのあと儚き星の照らす海で再びタイタニック号の船上で、
トーマスと再会した時に交わした敬礼と、フィナーレで交わした笑顔の敬礼が、
心が震えるカッコさ!
涙がこみ上げました。
一樹さんが演じられる歴史上の人物は、いつもすごい力を持っていますよね。
フィナーレのご挨拶で、可愛らしく踊っていらっしゃる船長を見てまた泣きそうになりました。
男役さんの贅沢な黒燕尾群舞からフィナーレスタート。
目線がカッコイイ、色気漂う花組男役さんの黒燕尾は最高ですね😍
白いドレスの娘役さんに囲まれて優雅に踊る黒燕尾の希波さん。
豪華客船タイタニック号の中で繰り広げられる舞踏会のようです。
希波さんと二葉さんのデュエットダンスは、白と黒のお揃いのデザインの衣装。
トーマスとヘレンが共に過ごした短い時間を慈しむかのようなダンス。
希波さんの肩の位置で回す高いリフトが美しかったです。
軽やかで若々しい舞台。
春の香りがする花のみちを帰る足取りが軽くなりました。
ほんわかした余韻がここちよく、幸せな気持ちで劇場をあとにしました。
宝塚バウホール花組公演
ミュージカル・ロマン『儚き星の照らす海の果てに』は、4月3日(木)までの上演となり、
千秋楽公演はライブ配信が行われます。