宝塚大劇場星組公演『阿修羅城の瞳』・『エスペラント!』

樽井美帆です

 

星組公演

ミュージカル『阿修羅城の瞳』

ファンタジック・タペストリー『エスペラント!』

が、宝塚大劇場にて4月19日(土)から6月1日(日)まで上演されています。

 

この公演で、星組トップスター礼真琴さん、

白妙なつさん・紫りらさん・二條華さん・都優奈さんが退団されます。

 

また、この公演は第111期生の初舞台公演でもあります。

公演に先立って、第111期生の口上が行われます。

美稀千種組長のおごそかな111期生紹介アナウンスに続いて幕が上がり、

黒の紋付・緑の袴姿で舞台に並んだ111期生が登場します。

毎回代表三名が口上を述べますが、一言一言大切に心を込めた口上。

宝塚歌劇団団歌を歌う111期生の歌声は、晴れやかで感動的。

そして、「清く正しく美しく」の部分のリズムの取り方がとても元気な印象でした。

 

111期生口上

 

 

ミュージカル『阿修羅城の瞳』

原作/劇団☆新感線「阿修羅城の瞳」(作・中島かずき)

原作演出/いのうえひでのり

潤色・上演台本・演出/小柳奈穂子

 

次々と革新的な作品を生み出し、絶大な人気を誇る劇団☆新感線の代表作の一つ「阿修羅城の瞳」。

人と鬼との壮絶な恋物語を、いのうえ歌舞伎と呼ばれる斬新でダイナミックな演出で描き上げた伝説の作品が、

宝塚歌劇の舞台に登場です。

劇団☆新感線と宝塚歌劇による、初のコラボレーション作品となります。

 

人を喰らう鬼が密かにはびこる、文化・文政期の江戸の街。

千年余の長きにわたる人と鬼との闘いの果て、鬼の王・阿修羅の目覚めの時が近付いていました。

鬼を祓うため幕府が組織した“鬼御門(おにみかど)”の腕利きとして“鬼殺し”と称された

病葉出門(わくらば・いずも、礼真琴さん)は、五年前のある事件を契機に鬼御門を辞め、

鶴屋南北一座に身を寄せていました。

ある時、出門は鬼御門の副隊長・安倍邪空(あべのじゃくう、極美慎さん)から逃れようとしている

謎の女・闇のつばき(暁千星さん)と出会います。

何かに導かれるように出会った二人は、強く惹かれ合っていきますが…。

それは阿修羅の目覚めに関わる、解くに解けない縁だったのです。

 

舞台には燃える炎の映像とパチパチと響く燃える音。

オーケストラボックスから、そして花道から鬼がうじゃうじゃ出てきます。

そして、星組トップスター礼真琴さんのカッコイイ低音ボイスの開演アナウンス。

宝塚大劇場で聞く最後の開演アナウンスです。

 

銀橋で迫力の立ち回り。

礼真琴さん演じる病葉出門が、次々に鬼を斬っていきます。

 

鬼を斬って、礼さんが刀を軽く振ると、かすかに“ヒュン”という音が入るんです。

本当にささやかな小さな動きにも関わらず、礼さんの動きと音が合っているので、

音響さんの技術に感動してしまいました。

そのかすかな音で、出門がどれだけたくさんの鬼を斬ったかを想像することができました。

 

何度か使われる“チョン”と響く拍子木の音が印象的。

そして、鬼の動きがとても不気味で怖かったです。

 

礼真琴さんが退団公演で演じているのは、病葉出門(わくらばいずも)。

安倍晴明の一番弟子、鬼殺しを担う幕府機関、鬼御門(おにみかど)のかつての一員です。

 

頭の高い位置で髪を結ったスタイルがとても凛々しくて、

このヘアスタイルに近かった『眩耀の谷』・『柳生忍法帖』などでの礼さんを懐かしく思い出しました。

 

着物で踊る礼さん。

足さばきがかっこいい、腰の入りが頼もしい、また踏ん張った時の足元やふくらはぎが、

それも衣装の一つかと思うほど美しいです。

 

強い出門が女性に振り回され、ピクッとしたりアタフタしたりと可愛らしい一面も、

礼さん演じる出門ならではかなと微笑ましく思いました。

 

ビブラートをきかせたような、歌うようなセリフの言い方が特徴的。

そしてセリフの量が多いです。

どこで息継ぎをしているのかと思ってしまうほど、セリフが長いです。

これも劇団新感線の特徴なのかなと感じますが、

最後まで挑戦し続ける礼さんには尊敬しかありません。

 

礼さんの立ち回りは、跳躍力もスゴイ!

激しく歌いながらの立ち回りからは、礼さんの身体能力の素晴らしさと、

真摯に芸と向き合い精進してこられた姿を最後まで見せてくださったことに感動しました。

 

暁千星さんが演じているのは江戸を騒がす女泥棒・闇のつばき。

今回は男役の暁さんが女役を演じられるということでとても楽しみにされている方、

多いのではないでしょうか?

女役を演じる暁さんはとても自然。

美しいくも愛らしいつばき。

 

セリフは強いながらも色っぽいんですよね😍

そして、クリクリした目から繰り出される長し目も美しいです。

声にならない息も、色っぽくてかっこいいなと思いました。

 

阿修羅に転生した白い衣装の暁さん演じるつばきが、赤く染まる舞台に立っている姿は、

まるで発光しているかのように美しかったです。

 

転生した阿修羅が、自らの運命を思い銀橋で歌う場面。

声量たっぷりの真っ直ぐのびる歌声に、痛々しい心を感じました。

迫力ある魂の歌声でした。

 

礼さんの出門と暁さんのつばき。

男役同士や男役と娘役という境を越えての、人対人の迫力のお芝居に引き込まれました。

大階段での二人の立ち回りも圧巻でした。

 

星組『阿修羅城の瞳』1

 

極美慎さんは、鬼御門の副隊長・安倍邪空(あべのじゃくう)。

ものすごく高さがあり星型のような鬘も、極美さんが身につけられると自然に見えます!

極美さんは毎公演、どんな衣装も鬘も美しく着こなされますよね🤩

笑顔が豪快でパワフルでオーラがあり、実際よりも大きく見えます。

極美さんが話し出すと、誰?カッコイイ!と必ずそちらを見てしまいます。

芯がぶれない立ち回り、心が見えるお芝居、とても魅力的な邪空です。

 

詩ちづるさんは、十三代目安倍晴明の娘・桜姫(さくらひめ)。

出門への愛が全身からあふれていて、それを惜しげもなく伝えて、

すべてを捧げて役に立とうとする愛すべき姫。

ピンク色の着物と豪華な鬘で登場する詩さんは、舞台を走り回る元気な姫。

声もキャラクター的で、詩さんは色んな声をお持ちだなと感じました。

動きすもべても愛らしい、表情すべてがかわいい、とにかく可愛くて、つぼみのような詩さん。

はちゃめちゃでも上品なのは詩さんの武器ですね。

 

この公演の東京宝塚劇場公演終了後に専科へ組替えとなる

小桜ほのかさんは、美惨(びざん)。

尼姿の鬼、鬼の魁(さきがけ)です。

 

美しい姿、美しい声なのに怖いんです。

大きく息継ぎをしセリフを言われているような気がしたのですが、

それも生気を吸い取られる感じがして妖しく鬼を感じました。

 

小桜さんの美惨、白妙なつさん演じる阿餓羅(あがら)、紫りらさん演じる吽餓羅(うんがら)。

退団されるお二人と専科へ異動される小桜さん、三人の美しい姿とハーモニーは、

間違いなくこの公演の見どころの一つですね。

 

瑠璃花夏さんは、童鬼の笑死(えみし)。

頭にツノがあって、オレンジ色の着物で手まりを持っています。

歌声が美し過ぎて、キレイだけどゾッとする妖しさです。

 

茉莉那ふみさん演じる少女。

幕開け早々に登場し、強烈なインパクトを与えます。

歌声が澄んでいてとても美しいのですが、あまりに澄んでいるので、

この世のもの感がなく不気味さが漂います。

強い出門を惑わせるほどの表情と歌声と危機迫るお芝居に凄みを感じました。

 

星組のみなさんが礼真琴さんと作り上げる最後の舞台。

終わりのない芸の道を真摯に歩んでこられた礼さんと、

最後まで礼さんから学ぼうとされる星組生のみなさんによる感動の舞台となっています。

 

星組『阿修羅城の瞳』2

 

トップスターの退団公演は、毎回ラストシーンの描かれ方が注目されますが、

今回は満開の桜の中、礼さんは爽やかにそして圧倒的なオーラを放たれていました✨

 

 

ファンタジック・タペストリー『エスペラント!』

作・演出/生田 大和

 

夜空に輝く星に、ふとした弾みに見上げた空に、海に生きる多様な生物に、この地球の様々な景色に、

そして人の心の中に、巡る命の中に・・・

エスペラント(=希望を胸に抱く人)たちと共に巡るこの“青い星”の旅。

 

開演5分前、星組カラーのブルーに輝く舞台。

ミラーボールが青く輝き感動的な曲が聞こえてきます。

礼真琴さん最後のショーの開幕を前に、私はもう泣きそうになりました。

 

ゴールドの衣装で、オーラと風格をまとって光り輝く礼さんが登場。

なんて優しいお顔で歌うの、礼さん😭

礼さんの優しい呼びかけで青い星へ向かいます。

 

礼さんの歌声に誘われ、この「青い星」の上に広がる鮮やかな色彩を模した衣装に身を包んだ

美しき人々「エスペラント」たちが現れます。

男役さんは、白が基本の変わり燕尾。

ジャケットの裾が足首まであって、マントのように翻るふんわり軽やかな質感。

ベストの色がピンク・水色・グリーン・パープルと色んな色があります。

娘役さんはドレスのスカートの部分が軽やかでふんわり。

ジャケットの裾とドレスの裾がそれぞれグラデーションになっていて、

ピンク系・オレンジ系・黄色系・水色系などなど。

舞台が七色に輝いて見えます。

主題歌が歌い継がれていきます。

 

星組『エスペラント!』1

 

或る画家の見た景色(色彩のバレエ)では、

 心の中にだけ存在する数々の夢に、自らの手で、筆で形を与えたいと願う画家・暁千星さんが、

白い衣装で光る筆を持って登場。

絵筆に従って踊り、やがてあたり一面に色彩が満ちていきます。

苦悩しながら踊る暁さん、追い詰める極美さん。

暁さんは少し長めの髪、極美さんはリーゼント、この対比も美しい!

この公演後、極美さんは花組へ組替えされます。

お二人の美しい並びはこれが見納めになりますね。

 

摩天楼迷宮~黄昏に舞う、恋の色彩(銀杏並木)

満員電車を表現する際は、あまり宝塚の舞台では見ない表情をみなさんがされているので注目です。

銀杏が黄金色に輝く中、トレンチコートを着た礼さんと

白字に赤い模様の入ったワンピースの小桜ほのかさんが歌います。

銀杏の葉が舞う中、二人で腕を組んで、小桜さんが礼さんの肩に頭を少し預けて去って行く後ろ姿。

美しいけど、退団と異動を感じてしんみり。

 

水族館~海底の魚たち(海底のレヴュー)

赤い衣装の礼さんが舞台の左端で、みんなが踊っているのを、リズムをとりながら楽しそうに見つめる姿が

とてもカッコイイです。

 

地球の化身“Mr.ブルー”として、水色の衣装と銀髪で登場し、客席に降りて歌う礼さん。

ゆったりと動かされる目線がとてもステキ。

慈愛に満ちた壮大な地球の化身です。

 

この公演では、千住明さんが楽曲提供されています。

タイトルは『青い星』。

白いパンツに黄色のシースルーのお揃いの衣装を着た星組生。

礼さんがみんなを大切に見つめ、これまでを思い出し旅立ちを歌います。

歌声が優しく、コーラスもステキ。

みんなの歌声を背に受け歌う礼さんは、とても幸せそう。

礼さんが暁さんの肩に手を置く振付は、星組を託す瞬間に感じました。

 

白い衣装の礼さんが一人舞台に残り、タップを踏み始めます。

宝塚の舞台でタップが踊られることは珍しく、しかも退団公演で礼さんのタップが見れることに

感動していると、そこに第111期初舞台生が登場。

花として咲き誇る過程が表現された衣装。

白い衣装に優しい色彩が使われています。

頭飾りには111期を表現する3本の筆と、「花・月・雪・星・宙」5組のカラーをのせたパレット。

スカート部分は、柔らかで繊細な花びらのグラデーションで立体的になっています。

礼さんは、首席入団の男役の千隼悠(ちはや・ゆう)さんと手を取って踊ります。

95期生と111期生、退団する礼さんと初舞台の千隼さん。

これまでに、初舞台生をトップスターが歌で呼び込む演出はありましたが、

一緒に踊る演出は珍しいですよね。

礼さんを憧れの眼差しと喜びいっぱいの笑顔で見つめ、懸命にタップを踏む111期生のみなさん。

しばらく一緒に踊り、礼さんは111期生に舞台を託します。

礼さんから舞台を託された111期生は元気いっぱい踊ります。

 

111期生ラインダンス

 

初舞台生が銀橋を通って退場すると静まり返る舞台。

青く輝く大階段に礼さんの後ろ姿のシルエット。

黒燕尾で一人歌います。

 

黒燕尾の男役さん、パープルドレスの娘役さんと踊る礼さん。

一人銀橋へ向かう礼さんの姿を意を決したように一瞬見つめる暁さん。

 

クラシカルなスタイルが礼さんにピッタリだなと思いました。

 

星組『エスペラント!』2

 

一人残った礼さんは、美しい音楽で一人ラストダンスを踊ります。

色んな表情で踊る礼さん。

床に触れ、最後のポーズを決めた瞬間は、鳥肌が立つほど芸術的でした。

 

パレードのエトワールは小桜ほのかさん。

初舞台生に囲まれて、鈴のような美しい歌声を響かせます。

初舞台公演は、舞台も大階段もいっぱいに埋め尽くされていて、とても豪華で美しいですよね✨

 

みんなに囲まれて笑顔の礼さん、礼さんに注がれる星組のみなさんの尊敬のこもった眼差し。

礼真琴さんは卒業されるその日まで、星組の力を最大限に引き出して輝かせていかれるのだと思います。

 

星組『エスペラント!』3

 

東京宝塚劇場では、6月28日(土)から8月10日(日)まで上演されます。