宝塚バウホール雪組公演『ステップ・バイ・ミー』

樽井美帆です

 

宝塚バウホール雪組公演

ミュージカル・リフレクション『ステップ・バイ・ミー』

が、8月19日(火)から31日(日)まで上演されました。

 

華世京さん、宝塚バウホール初主演です。

 

華世京さんは、東京都世田谷区ご出身。

2020年9月、「WELCOME TO TAKARAZUKA」で初舞台を踏まれた106期生。

コロナ禍で初舞台が半年遅れとなった期です。

今年、入団6年目。

2022年、入団3年目で「蒼穹の昴」新人公演初主演。

2024年の「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル」で

2度目の新人公演主演をされました。

 

首席で入団の華世さんは、新人公演の主演も、バウホール公演での主演も、

106期生のトップを切ってつとめられています。

 

この作品は、演出家・菅谷元(すがや・はじめ)さんの宝塚バウホールデビュー作。

バウホール公演初主演の華世さんとともにフレッシュなコンビとなりましたね。

 

出演は、雪組29名のみなさんと、専科の英真なおきさんです。

 

2000年代初めのロサンゼルス。

初主演映画の撮影を控える若手俳優・ユージーン(華世京さん)の心は、

晴れやかな夏空とは正反対でした。

出来上がらない脚本、ヒロインの突然の降板、そして何よりも、

ラストシーンのプロムパーティーにまつわる過去の思い出が彼をナーバスにさせていました。

同じ頃、ニューヨークの女子大生・エイミーは毎晩同じ青年を夢に見ていました。

事故の影響で記憶を失っているエイミーは、

ある日雑誌に夢の青年とそっくりの俳優ユージーンを見つけます。

彼の主演映画でエキストラを募集していることを知り、

エイミーはすぐさまロサンゼルスへ向かいます。

撮影現場でめぐり逢っユージーンとエイミー。

その瞬間、ユージーンの胸には青春の日々が鮮やかに蘇ります。

彼女は10年前に他界した学生時代の恋人・リリーに瓜二つだったのです。

エイミーとリリー、二人は他人の空似か幽霊か、それとも…?

大切な人にもう一度会いたいと願う心が生み出した、あるはずのない出会い。

その先にユージーンが辿り着いた真実とは、そして彼らが選ぶ未来は-。

 

晴れやかで溌剌とした、優しい声の華世さんの開演アナウンスとともに幕が上がります。

暗い舞台に、ブロンドの髪をなびかせ、白いワンピース調のドレスで踊る7人のコロスの女。

そこに白い衣装のコロスの男8人加わり踊りだすと、舞台が明るくなり、

白い衣装の華世さんが、舞台の奥から軽やかに登場。

パッと弾けるような、太陽のような明るい笑顔で、伸びやかにみんなと踊ります。

指先までしなやかで美しくて丁寧な華世さんのダンスは、

見ていて楽しいスッキリするダンスですね。

キラキラした笑顔で飛び出して来る姿は希望そのもの。

溌剌さが気持ちよかったです。

一転、不安気な音楽と赤い照明に照らされる舞台。

何かを思い出したような怯えた表情で華世さんは消えていきます。

 

バウホールは、ハイスクールや大学が舞台の学園物青春ストーリーがよく似合うなと

あらためて感じました。

 

若手のみなさんをあたたかく見守り、舞台をギュッと引き締める、専科の英真なおきさん、

組長の奏乃はるとさんら上級生のみなさん。

ステキな配役でした。

 

雪組『ステップ・バイ・ミー』1

 

華世京さんが演じられてのは、映画俳優ユージーン・エバンス。

髪の流れが美しく、最高のバランスに整えられたヘアスタイルが、

後頭部が美しい華世さんによくお似合い🤩

足も長いので、等身バランスが現実離れされていました。

 

感情を抑えられない若々しさと危うさを表現する魅力的な華世さん。

 

ゆったりとした曲を歌われる時、目に色んな思いが宿ります。

目の動かし方もとても美しかったです。

ふとした瞬間に見せる寂し気な瞳と影も印象に残っています。

 

走る、歩くなどのさりげない仕草もとても美しく、

彩風咲奈さんイズムがチラチラ見えたように私は感じました。

 

相手の心、客席の心を動かすお芝居をされる華世さん。

また、感情をぶつけるお芝居をされても、歌を歌われても、

きちんと感情が計算されコントロールされているからか、

見ていて疲れを感じることなく共感することができるところも、

華世さんの魅力の一つだなと思いました。

 

雪組『ステップ・バイ・ミー』2

 

ヒロインは、星沢ありささん。

バウホール公演初ヒロインです。

ユージーンの学生時代の恋人リリー、

事故で記憶を亡くした女子大生エイミーを演じられました。

 

2022年に入団した108期生。

2024年の「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル」で

新人公演初ヒロインをつとめられました。

華世さんとのお芝居の経験があるということもあってか、

お二人のお芝居の温度感がとて心地よかったです。

ユージーンが大学1年生、リリーが4年生という設定ですが、

弟的な雰囲気が漂うユージーンとしっかり者のお姉さんリリーとして、

とても自然に見えるお二人でした。

 

透明感のある声、知的なおでこ、意志の強い瞳。

そして何より清潔感抜群の星沢さん。

立ち姿が美しい方ですが、横向きに立たれた姿も美しいです。

 

それはそれはキレイな笑顔で相手を見つめられるので、

見ていてとても幸せな気持ちにさせていただけます。

 

清楚な星沢さんに、水色のカーディガンがよくお似合いでしたが、

白い衣装はさらに清楚さと美しさが際立っていらっしゃいました。

 

雪組『ステップ・バイ・ミー』3

 

諏訪咲さん演じるベンを中心としたアメフト部と、

華純沙那さん演じるジェシカを中心としたチアリーダーが登場し、

舞台にはますます青春の甘酸っぱい香りが漂いました。

かっこいいしかわいいし、心がときめきました。

何よりスゴイのは、チアリーダーの技を本当に披露してしまうところ!

 

諏訪さきさん演じるベンは、元アメフト部キャプテンで、

ユージーンの学生時代のライバル。

誰のせいにもせず、自分で選んで生きてきたと堂々と言う男気ある人物。

諏訪さん演じる骨太なベンには説得力がありました。

将来は生まれた家が決めるわけではないという言葉が印象に残っています。

脚本家になってからの知的なメガネ姿もステキでした。

 

華純沙那さんは、元チアリーダーキャプテンでリリーの友人ジェシカ。

金髪ポニーテールが可愛くてキュート。

キレのあるチアダンスも圧巻でした。

ジェシカとして歌われる歌の説得力。

いつも役そのものになる華純さんのお芝居は本当に魅力的ですね。

 

英真なおきさんは、ライアン教授を演じられました。

遺伝性の難病研究に取り組む医学部教授です。

たっぷりの声量とよく響く歌声。

英真さんの動きにはすべて意味があり、

すべての動きから感情が伝わってきて心が震えました。

 

星沢ありささんに向ける眼差しがとても優しく、宝物のように接するライアン教授。

抱きしめてから、頭をほわんと抱きしめる姿に、深い愛情を感じました。

 

ハロウィンパーティーやプロムなど、ショーのように楽しい場面もありました。

 

ユージーンとリリー、二人だけのプロムでのデュエットダンス。

思い出を懐かしみながら、軽やかに幸せそうに踊る二人。

見つめ合って、そっと後ろからリリーがユージーンに寄り添い、

そしてリリーが去って行きます。

去って行くリリーの後ろ姿が潔く美しかったです。

 

教会のステンドグラスのセットがとても印象に残っています。

マリアに抱かれたキリスト。

クローン人間を作り出したことへの思い、神様への問いかけ・・・

今の時代ならではのテーマを題材とした作品。

 

雪組『ステップ・バイ・ミー』4

 

テーマが重くなりそうな時は、気持ちのバランスをとってくれる菅谷さんの演出。

時を行ったり来たりするので、どこで切り替わったの?とちょっと驚いて

ショックを受けてしまっても、

ちゃんと整理して考える時間があって、追いつく時間を作ってくれる、

置いてけぼりにされない演出だなとも感じました。

 

雪組『ステップ・バイ・ミー』5

 

科学、道徳、親子、友情などなど、色々と考えさせられる作品でもありましたね。