梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ花組公演『DEAN』
樽井美帆です![]()
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて、花組公演『DEAN』が、
11月17日(月)から23日(日)まで上演されています。
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティの一つ上の階、アプローズタワー1階ガレリアには、
毎年クリスマスツリーが展示されます。
今年は宝塚歌劇の舞台衣裳を使用した豪華な111thアニバーサリーツリー✨🎄
5組カラーのカラフルなモチーフ、そして宝塚歌劇の舞台衣裳をアップサイクルした
オーナメントが使用されています。
展示は、12月25日(木)まで。
花組公演『DEAN』の主演は、極美慎さん。
2014年『宝塚をどり』で初舞台を踏まれた100期生。
入団12年目です。
新人公演の主演は2度つとめていらっしゃいます。
2022年、『ベアタ・ベアトリクス』でバウホール公演初主演。
今年2025年、『にぎたつの海に月出づ』でバウホール公演2度目の主演。
そして、今回の『DEAN』は、12月3日(水)から11日(木)まで、
日本青年館ホールで上演されますので、東上初主演公演となります。
潤色・演出は谷貴矢さん。
出演は、花組30名のみなさんです。
極美さんは、今年8月、星組から花組に組替えになりました。
9月1日の宝塚歌劇111周年記念式典にも花組生として舞台に立たれましたが、
作品・公演として花組生として舞台に立たれるのは、今回の『DEAN』が初めてです。
極美さんが演じるジェームズ・ディーン、
花組のみなさんと極美さんがどんなお芝居をされるのか、
宝塚歌劇で何度も再演されている作品が、今回はどんな風に上演されるのか、
気になることが満載ではないでしょうか。
この作品は、1976年にロンドンで初演。
宝塚歌劇では、1981年に大地真央さん主演で宝塚バウホールにて初上演。
1991年に安寿ミラさん、1998年に絵麻緒ゆうさん主演で再演。
今回27年ぶりに甦りました。
歌劇『11月号』には、
「極美慎主演による新たな『DEAN』をというオーダーがあり、
台本も一から、曲やセットなども全て新しくしています。
令和バージョンの『DEAN』をお楽しみいただけたら。」
と谷貴矢さんの言葉が書かれています。
1950年代、ハリウッド映画界に彗星の如く現れ、
「エデンの東」・「理由なき反抗」・「ジャイアンツ」、
わずか3つの主演作だけを残して、24歳で夭折した稀代のスター、
ジェームズ・ディーン。
類まれな資質と、若者独特のナイーブさを併せ持ち、破天荒な言動で時に人を惑わせながらも、
彼の底知れぬ魅力は関わる者すべてを虜にしました。
幼い頃に経験した母との死別、父との確執、生涯で唯一愛した人ピア・アンジェリとの恋・・・。
内に宿る衝動、葛藤と戦い続けたディーンの心の真実は、一体どこにあったのか・・・。
青春の象徴と謳われるジェームズ・ディーンの魂の物語。
開演前の舞台には、半円形のセットが置かれており、はめ込まれているガラスは所々割れています。
映画のフィルムの一コマには、星空と赤い文字で書かれたタイトル『DEAN』が映し出され、
時々、流れ星が見えます。
「花組の極美慎です」という開演アナウンスは、
少し苦悩をにじませる太いお声で、すでにジェームズ・ディーン寄りの極美慎さん。
続いて本物のジェームズ・ディーンの映像が映し出されます。
天城れいんさん演じるディーンの追っかけカメラマン・パットが、
ストーリーテラー的な役割を担っています。
角度によっては、鉄骨に見えたり映画のフィルムに見えたりするセット。
単体で使われることもあれば、つなげてドーム型にして使われることもあります。
要塞のようでもあり、鳥かごのようでもあり、プラネタリウムのようでもあり。
そして、ところどころガラスが割れています。
舞台には、客席に向かって傾斜がついた円形の八百屋舞台が設置されています。
極美慎さんが演じるのはジェームズ・ディーン。
青く輝く星空の中、黒いロングのピーコートを着た後ろ姿での登場。
襟を立ててポケットに手を入れて、華やかな曲のイントロで振り返ります。
とても美しくてドラマティックな曲。
1曲の中で様々な表情を見せる極美さん。
すべての表情に意味があることが伝わってきます。
ゆっくりと様々な方向に、美しく顔を動かされます。
はにかんだような笑顔が最高。
その笑顔が切なくてキュンとなります。
ジェームズ・ディーンの生涯を、詳しくはなくても私たちが知っているからでしょうか。
ジェームズ・ディーンといえば・・・の衣装の着こなしや仕草が、
極美さんのジェームズ・ディーンとして息づいています。
ジーパン姿は、ほぼ足と言えるくらい足が長い!
体幹がしっかりされていて、立ち姿が真っ直ぐで美しい極美さんが、
ジェームズ・ディーン独特の肩をすくめたような姿勢をされているのも美しいです。
その肩と背中には、なんとも言えない寂しさを感じます。
たばこの吸い方も様々。
落ち着いている時や楽しい気持ちの時は、軽く指に挟んで。
苦しんでいる時は、顔の下半分を隠すように覆って。
とても切ない気持ちになります。
視線でも繊細に表現されています。
ニューヨーク時代の気心知れている人たちには、真っ直ぐ正面から向き合い目を合わせます。
見せる笑顔も無邪気で可愛い。
でも、初対面や慣れていない人、信用していない人には、斜めからや肩越しに相手を見ます。
距離を取ったり、一枚壁を作っているように。
そして豊かな表情。
表情筋を大きく動かして様々な表情をされますが、どんな表情をされても美しい。
絶望から叫んだり、ほんの一瞬見せる悲し気で寂し気な表情。
はにかんだりかわいらしい笑顔とのギャップに心を揺さぶられます。
様々な表情を見ていると、極美さんとジェームズ・ディーンが重なり、
極美さんとジェームズ・ディーンの境目を感じなくなっていきました。
映画の名場面が再現される中で、ジェームズ・ディーンの人生も重ねて描かれていきます。
映画の中の世界とジェームズ・ディーンの人生がリンクし、
区別がつかなくなっていく不思議な感覚。
絶望し舞台に倒れ込み這いつくばる姿は、見ていて心が辛くなるほどです。
こんなにも美しく、絶望を表現される極美さん。
あらためて素晴らしいなと私は思いました。
感情の起伏、揺さぶりが大きく、本当にパワーが必要な役だと思いますが、
とても心地よい極美さんのお芝居に引き込まれます。
映画監督との関わりも描かれています。
『エデンの東』の監督エリア・カザン(紫門ゆりやさん)に誘導されて役作りをする場面は、
監督の巧みな言葉に誘導され、時に追い詰められ、彼の才能が開花されていくよう。
「理由なき反抗」の監督ニコラス・レイ(一之瀬航季さん)とは、
ともに語り合いながら作品を作っていきます。
極美さんと一之瀬さん、同期生ならではの信頼関係にも見える場面でした。
1幕の終わりのセリフは「さみしい」。
こんなに悲しく辛い「さみしい」を聞いたことがないと思うほどの一言。
心に刺さり、しばらく立ち上がることができませんでした。
コートの襟で顔を包み込んで去って行くジェームズ・ディーン。
人の声が何重にも重なったコーラスと、一人きりで去って行く後ろ姿の対比が印象的。
極美慎さんのお芝居は、真実に見えてきますよね。
2幕の幕開けは、ボーダーのTシャツにジーパン、太縁のメガネ姿。
寝転んで歌っての登場。
1幕でも十分カッコ良かったのに、それを軽々と上回るカッコ良さでの登場に驚いてしまいました😍
赤いジャンパー姿が印象的な映画「理由なき反抗」。
車のヘッドライトが明るく照らす中での、極美慎さんの最高潮に興奮した突き抜けたお芝居。
目はギラギラと輝き鬼気迫るものがありました。
抑えきれないほど激しく高ぶった感情が、ジム・スターク役を演じているのか、
はたまたジェームズ・ディーンの心の叫びなのか、
観ていて分からなくなる不思議な感覚を味わいました。
極美さんの作り出す空気の流れによって、ジェームズ・ディーンが周りの人たちとは
明らかに何かが違うと感じました。
ディーンの生涯唯一の恋人ピア・アンジェリは美羽愛さん。
愛らしく優しさの塊。
ディーンが即座に心を開き愛した人だということが伝わる素晴らしい説得力。
透明感にあふれた清らかな声。
今回のピアの声は、いつもよりふんわり出されているように感じました。
実際目の前にいるんだけれども、もしかしたら夢の中の人物なのかもと思ってしまうほどの透明感。
登場場面は決して多くありませんが、だからこそものすごいインパクトが残りました。
極美さん演じるディーンは、まるで宝物に触れるかのように美羽さん演じるピアに触れます。
映画スタジオのセットでの遊園地ごっこでは、子どもみたいに楽しそうな二人。
わたあめを食べたり、射的をしたり、あまりに二人が純粋に楽しそうなので、
気づいたら見ている自分が笑顔になっていました。
希波らいとさんは、ハリウッドのPR会社社長ベン。
白のストライプのスーツや黄色のスーツを着こなされ、
明るく陽気なオーラが感じられます。
動きや舞台上での佇まい、特に上半身の動きがキレがあってダイナミック。
新たな希波さんの魅力を感じることができました。
ディーンとは正反対の軽い感覚の人物。
それが、歩き方や手の指先の動きまで表現されているように感じました。
今回の宝塚版初登場の謎の少年は彩葉ゆめさん。
ディーンの少年時代の幻影で、フィクション(映画)とノンフィクション(ディーンの人生)を
繋ぐような役割としての存在。
伸びやかで美しい動きで表現されています。
ディーンをにらみつける力強い目と美しい歌声が印象的です。
フィナーレは、赤に近い濃いピンクのジャケットと黒いパンツの男役さん、
同じ色合いのドレスの娘役によるダンス。
ジェームズ・ディーンの赤いジャンパーと、花組のピンクを掛け合わせたような色で、
極美さんの花組デビューをお祝いしているように感じられました。
極美さんとピンクのドレスの美羽さんのデュエットダンス。
出会った頃の二人を思い出すかのような初々しいドキドキするダンス。
優しい笑顔で見つめ合う幸せいっぱいの二人です。
極美さんによって舞台に立つみなさん全員が輝き、
出演者のみなさん全員の力によって極美さんがより輝くという、
相乗効果を感じる公演。
今の極美慎さんと花組のみなさんにピタリとはまった素晴らしい公演です。













