宝塚大劇場雪組公演『ボー・ブランメル~美しすぎた男~』・『Prayer~祈り~』
樽井美帆です![]()
雪組公演
ミュージカル・ロマン『ボー・ブランメル~美しすぎた男~』
プレジャー・ステージ『Prayer~祈り~』
が、宝塚大劇場にて11月1日(土)から12月14日(日)まで上演されました。
この公演は、雪組トップ娘役・夢白あやさんの退団公演。
そして、今年最後の宝塚大劇場公演です。
退団者は3名。
夢白あやさん、杏野このみさん、莉奈くるみさん。
2026年2月22日、東京宝塚劇場公演千秋楽付で退団されます。
また、東京公演千秋楽の翌日には、雪組組長の奏乃はるとさんが専科へ異動されます。
ミュージカル・ロマン『ボー・ブランメル~美しすぎた男~』
作・演出/生田 大和
世界中で活躍されている作曲家フランク・ワイルドホーンさんが全楽曲を提供されています。
18世紀末。
未だ階級社会が色濃く残るイギリスの社交界に突如現れたボー・ブランメル(朝美絢さん)。
今も“ダンディズムの祖”といわれる人物です。
洗練された美学と卓越したファッション・センスを持つブランメルは、
瞬く間に社交界の注目をさらい、貴族たちの話題の的となり、
ついには皇太子プリンス・オブ・ウェールズ(瀬央ゆりあさん)の耳にもその噂が届くほどでした。
すっかりブランメルの虜になったプリンスは、自身が最も気に入っている“美しいもの”だと
愛人の女優ハリエット(夢白あやさん)を紹介します。
実は、ブランメルとハリエットには大きな秘密があったのです。
平民でありながら、一代で財を築きあげた父を持ち、名門校へ進んだブランメル。
級友たちとの距離は埋まらず、裏ぶれた場末の芝居小屋に入り浸るようになります。
そこで、新進女優ハリエットと出会い、いつしか二人は愛し合うようになりました。
しかし、父を亡くし、遺産を前にしたブランメルの中に、
父がなし得なかった上流階級での成功こそが、未だに自身を苛み続ける父親への復讐だとする
歪な野心が目覚めます。
下町生まれの過去、本当の自分、愛した女性、それらを全て捨て、
美貌とセンスを武器に社交界の頂点に立つべく生み出した男
“ボー・ブランメル”を演じ切る覚悟をきめたのです。
しかし、ハリエットとの予期せぬ再会をきっかけに、人生の歯車が狂い始め……
社交界の頂点を目指し、もがき続けた先に彼が手にしたものとは-。
美貌とファッション・センスでイギリス階級社会を駆け上がった男の、
栄光と挫折を描いたミュージカル・ロマン。
開演前、緞帳が上がると、薄暗い舞台にバルコニーのようなセット。
そのバルコニーがちょっと傾いているんです。
これから始まる物語の不穏な空気や、ゆがんだ心情を表しているかのよう。
ボー・ブランメルの父ウィリアム・ブランメル(諏訪さきさん)が、
ボー・ブランメルの子ども時代リトル・ジョージ(愛陽みちさん)に、
見えない「壁」の向こう側と苦しみを、抑揚の波が大きい迫力の歌でぶつけます。
その周りでは、8人のロココの夢が、
ボー・ブランメル につきまとう父親の執着する心をダンスで表現しています。
この場面のみなさんは、衣装もメイクもグレー、モノトーン。
ロココの夢のみなさんは、生を感じないお人形のような表情。
ウィリアム・ブランメルとリトル・ジョージが苦しむ様子を、
バルコニーの2階から、朝美絢さん演じるボー・ブランメルが苦し気に見つめています。
朝美絢さんが演じていらっしゃるのはボー・ブランメル。
平民出身の青年。
類稀なる美貌と卓越したファッションセンス、そしてウィットに富んだ言動で、
イギリスの社交界の花形となっています。
人々が色とりどりに豪華に着飾っている夜会に登場したブランメルは、
ブランメルの時代の燕尾服姿。
中のシャツは白、そして燕尾服は黒。
みんながかぶっている鬘もなし。
そんな誰よりもシンプルなスタイルが彼の美貌をより輝かせています。
朝美さん演じるブランメルは、お顔が豪華。
プリンスも目をキラキラさせて『美しい顔』だと大絶賛。
朝美さんと瀬央さんの同期のほのぼの感が漂っています。
優雅なお辞儀は、美しいけど尊大な感じ漂い、私は野心も感じました。
話し方も、ボー・ブランメルの時は抑揚をつけ、語尾は大げさに表現し、
ジョージの時は自然な話し方と使い分けていらっしゃいますね。
本当の自分を見せないブランメルが、服が乱れるからと狩りを嫌い、
高い声で「ヒャ~!」と叫んだり、銃声がするたびに「ヒャ~」と耳を押さえ
逃げ惑う姿は愛嬌があって微笑ましく、本当のブランメルの顔を見ることができて
何だかうれしい気持ちになりました。
自分の正体を明かしたブランメルは、自分の栄光ではなく、
ハリエットを守ることができた喜びと安堵感、疲れた中にもホッとした表情。
その表情に、見ていた自分の緊張感も解き放たれたように感じました。
夢白あやさんは、ハリエット・ロビンソン。
プリンス・オブ・ウェールズの愛人の女優。
ブランメルのかつて恋人。
とても華があってゴージャス、まさに大輪の花。
表情もドレスの着こなしもうっとりするほど美しく、
色白で発光しているお肌、清潔な色気をまとう
夢白さん演じるハリエットが登場すると目が離せなくなります。
役も女優ですが、宝塚歌劇の娘役さんの中でも夢白さんは『女優』という雰囲気が
より強く漂う方だなとあらためて感じました。
劇場の楽屋で歌う場面。
華やかな中にしっとりした美しさも増され、
とにかく美しい。
夢白さんの新たな歌声を聞かせていただきました。
朝美さんと夢白さんは、お二人とも目と呼吸のお芝居が素晴らしいなと
あらためて感動しました。
人前では、お互い自分を偽っていますが、二人きりになり、
本当の自分に戻った時はお顔の距離が近くてドキドキ😍
ハリエットの窮地にデボンシァ公爵夫人の夜会に駆けつけたブランメル。
プリンスの怒りの矛先をハリエットから自分に向かわせるため、
ハリエットを誘導するかのように言葉を発し、
その気持ちを汲み取ったハリエットが
「私が愛したのはボー・ブランメルではありません!」と言い放った時、
「よく言ったハリエット!」と言わんばかりの優しくうれしそうな目と笑顔が忘れられません。
社交界から追放され、新たな人生へと向かう前に、ハリエットの姿を見届けるため
劇場に現れたブランメルは真っ白な衣装。
真っ白は今のブランメルの心を表す最高級の衣装なのでしょうか。
社交界の人々からは無視されますが、晴れやかな笑顔。
マントの中から取り出したのは、真っ赤な薔薇の花束。
別れと愛の花束でしょうか・・・
ハリエットの楽屋に花束を置き、ハリエットのカーテンコールを見守るブランメル。
歌う歌詞は、ハリエットを思うブランメルであり、
夢白さんを思う朝美さんでもあり・・・
ブランメルが銀橋を渡りきると、ロバート・ジェンキンソン(華世京さん)に促され、
真っ白なドレス姿のハリエットが、薔薇の花束を持って、銀橋を一人で渡ります。
舞台でハリエットを見つめながらブランメルが歌う中、下手の花道へ去るハリエット。
ブランメルが歌う舞台には青空の映像。
最後はピンク色のとても明るい光に包まれる舞台。
幕開けとは正反対です。
真っ白なシルクハットを捨て、一人舞台奥に去るブランメル。
ブランメルとハリエット、朝美さんと夢白さん、
どちらにも見えて、境目が分からなくなる
ドラマティックで最大の愛が表現されたラストシーンに涙しました。
瀬央ゆりあさんは、プリンス・オブ・ウェールズ
イギリスの皇太子、のちのジョージ4世。
金色の豪華な飾りがたくさん付いた赤い衣装に白い鬘姿のプリンスは、
瀬央さんの明るいオーラと重なりあって、発光しているかのよう✨
大きな瞳をクリクリさせ、国のことを考えるより、美しいものが好きという無邪気なプリンス。
全身とお顔で喜びを表現する姿は、可愛らしくて何とかしてあげたくなる一方、
だからこそ周りに利用されやすいという雰囲気に納得です。
大好きなブランメルにウキウキする様子は、今でいう推し活を楽しんでいるという感じでしょうか。
椅子に座って歌う場面で、つま先でトントンとリズムをとるおみ足がとても可愛らしく、
くぎ付けになってしまいました。
自分のプライドや大切なものを守ることに気づいてからの、声や瞳が別人。
赤い照明に照らされ、怒りに満ちあふれた瞳で銀橋で歌う場面は、
怒りを表すかのようなエレキギターの音と瀬央さんの歌声が合っていて、
とても素敵でした。
プリンス・オブ・ウェールズの妃キャロライン皇太子妃は音彩唯さん。
とても華やかで、生まれながらに高貴な人物であることが、
声や表情、体中からにじみ出ています。
誰よりも高貴な立場なのに、本当に手に入れたいものを手に入れることができず、
怒りに満ち満ちていて迫力があります。
怒りに満ちた瞳がガラス玉のように美しいです。
「夜会に劇場に、わたくしをお連れくださいませ。」と、
少し下から見上げてプリンスに強く言う姿から、
本当はプリンスを愛しているのだなと感じます。
そんな一生懸命な様子から、プリンスも自分にとって大切な存在に気づいているようですね。
キャロライン皇太子妃を見守るお付きシャーロット・バリー(白綺華さん)は、
その様子を少し離れた場所から見て、本当にうれしそうに涙をためて微笑んでいます。
キャロライン皇太子妃の苦しい胸の内と愛をずっと分かっていたんだなと、
その微笑みから感じました。
華純沙那さんが演じていらっしゃるデボンシァ公爵夫人。
夜会を主催する未亡人で、かつてはプリンス・オブ・ウェールズの寵愛を受けていました。
デボンシァ公爵夫人を表現するために必要な品、嫉妬、プライドなどなど、
すべてを見事に表現されていたように感じました。
シレッとした中にある裏の顔や、誰も逆らえないという説得力を持った
声や目つきがとても怖かったです。
プリンスから最初にハリエットを紹介された時から、ハリエットを敵とみなし、
歌う時も踊る時もゾクッとするような恐ろしい目をされています。
貫録ある役を、入団6年目も華純さんが見事に演じていらっしゃいます。
ボー・ブランメルの闇を描く場面と、上流階級の人々が集う場面は、照明の明るさが全く違います。
上流階級の人々の夜会は眩しいほど。
ブランメルがこの明るい場にいたいと野心を抱いたことに納得できる照明演出でした。
ファッションもテーマとなっているので、舞台上で着替える場面が多く、
その様子も楽しめます。
朝美さん演じるブランメルがクラバットを結ぶ華麗なる手つきにはうっとり。
ブランメルが鏡に向かってクラバットを結ぶ場面では、
鏡に映る朝美さんの美しい表情が最高です。
その鏡がのちに割れてしまうのですが、その割れた鏡はブランメルの心も表していて、
その割れた鏡に向かってクラバットを結ぶ姿は胸に迫るものがあました。
プレジャー・ステージ『Prayer~祈り~』
作・演出/中村 一徳
様々な想いが込められた歌と踊りを通して“祈り”を捧げ、世界、人々の幸福を願う、
幻想的かつ祝祭的なショー作品。
パイプオルガンの荘厳な曲でショーは幕を開けます。
この公演が終わると、26年間過ごされた雪組から専科に異動される
組長・奏乃はるとさんの歌のソロ、4人の娘役さんのコーラスで幕が開き、
太陽神・朝美絢さんが登場。
ゴールドの飾りが付いた真っ白な衣装。
お芝居は黒髪でしたが、ショーでは金髪の朝美さん。
夢白あやさんは水色の衣装に、金髪のゆるくカールしたロングヘアで女神のような美しさです。
男役さんは水色、娘役さんは紫に近い青い衣装。
華やかに全員で歌い踊ったあとは、主題歌を歌い継ぎます。
銀橋で歌われる方は、次の方とバトンタッチをされるのですが、
縣千さんから瀬央ゆりあさんへのバトンタッチは、「バチン」と音が聞こえるタッチです!
聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼の旅。
巡礼の男・瀬央ゆりあさん、音彩唯さんは女神です。
女神に差し出す瀬央さんの手と見つめる瞳が本当に優しいですね。
ピアノの鍵盤セットが登場し、ショッキングピンクのワンピース調の衣装で、
夢白あやさんが元気にキュートに登場し「乙女の祈り」を歌います。
肩ラインの長さの金髪に黒のベルベット調のリボンを付けていらっしゃいます。
夢白さんのヘアスタイルはいつもステキで華やかすね。
この『乙女の祈り(クラシック)』、登場されるのは5人。
夢白あやさん・壮海はるまさん・紗蘭令愛さん・愛羽あやねさん・莉奈くるみさん。
全員、2017年に初舞台を踏まれた103期生、同期のみなさんです。
夢を叶えようと祈り続けてきた思い出、歩んできた道のりを振り返りながら歌い踊ります。
続いて曲調はジャズへ。
夢白あやさんと杏野このみさん、二人で朝美絢さんを挟み両頬にキス!
退団されるお二人からの愛のプレゼントですね。
縣千さんを中心としたアフリカの祈り。
とにかくジャンプが多い躍動感のあるダンス。
激しく踊った後に歌う絢斗しおんさん。
あれだけの激しいダンスのあとだと感じさせない声量で素晴らしい歌声を聞かせてくださいます。
赤い衣装、セットも照明も赤く輝き、お祭りを思わせるたくさんの提灯にも明かりがともり、
日本の祈りがスタート。
この公演は、宝塚大劇場では今年最後の公演、東京宝塚劇場では年明けの公演ということで、
一年の感謝と新しい年を迎える希望が、「ソイヤ!」という勇ましい掛け声とともに、
熱い歌とダンスで表現されています。
雪組のみなさんの祈りがこもったゴスペルのようなコーラスがものすごい迫力です。
1階席・2階席に客席降りがあり、劇場全体に雪組のみなさんの笑顔と
ノリノリの歌声が響き渡ります。
力いっぱいの祈り、雪組のみなさんも客席のみなさんも一緒になって、
みんなの幸せを祈る場面です。
水墨画のような映像が映し出される中、天女と村人が海の安寧を祈っていると、
荒波の中、木で作られた船が。
勇ましく乗っているのは、朝美絢さんを中心とした舟人たち。
イケメン揃い、海の男の凛々しく厳しい表情は最高ですね!
特に瀬央さんは、立っていらっしゃるだけでダイナミックでストーリーを感じます。
独特のリズムでオギヨチャという掛け声をかけながら踊ります。
韓国民謡が原曲になっています。
韓国ソウルで伝統楽器カヤグムの録音をされたそうです。
勇ましく熱く迫力ある場面。
朝美さんの真っ直ぐで伸びのある声量たっぷりの歌声が、ますます盛り上げます。
夢白さんがベルベット調の赤いドレスで登場し、
一人で銀橋で『忘れないように』という曲を歌われます。
頭にちょこんと乗せたシルクハットも可愛らしいです。
最後の歌詞は「Good Bye」
明るく可愛らしいお別れが夢白さんにピッタリですね。
銀橋で、奏乃はると組長と退団される杏野このみさんと莉奈くるみさんが歌われる場面もあります。
青く輝く大階段で、真っ白な変わり燕尾の朝美さんが歌う中、
上手花道から美しくセリ上がる白いドレスの夢白さん。
最後のデュエットダンスです。
まずは二人で歌いながら踊ります。
大階段には映し出された雪の結晶が輝いています。
夢白さんの美しさが一段と輝く絶妙なドレスですね。
銀橋でも踊り、最後は夢白さんの手の甲に朝美さんがキス。
ちょっと驚きながらもとってもうれしそうな夢白さん。
カゲソロは、次期トップ娘役・音彩唯さんです。
パレードのエトワールは、宝塚市出身の華純沙那さん。
Wトリオにも宝塚市出身の音綺みあさんがいらっしゃいます。
パレードで夢白さんが歌われる歌詞は「大好きな舞台に別れ告げる・・・」。
この公演には、夢白さんへの愛がたくさん詰め込まれていますね。
今年最後の宝塚大劇場公演は、人を思う心と、熱い祈りに満ちあふれていました。
東京宝塚劇場では、2026年1月10日(土)から2月22日(日)まで上演されます。












