宝塚大劇場花組公演『蒼月抄』・『EL DESEO』
樽井美帆です![]()
花組公演
グランド・ラメント『蒼月抄(そうげつしょう)』-平家終焉の契り-
スパイシー・ショー『EL DESEO(エル・デセーオ)』
が、宝塚大劇場にて2月14日(土)から3月20日(日)まで上演されています。
日本物のお芝居とラテンショーの二本立てです。
鈴美梛なつ紀さん・湖春ひめ花さんが、5月31日東京宝塚劇場公演千秋楽付で退団されます。
グランド・ラメント『蒼月抄(そうげつしょう)』-平家終焉の契り-
作・演出/熊倉 飛鳥
この公演は、演出家・熊倉飛鳥さんの宝塚大劇場デビュー作です。
琵琶の音とともに緞帳が上がると、満月が照らす海に浮かぶ一艘の小舟。
乗っているのは、琵琶を爪弾く四条の局(朝葉ことのさん)、後高倉上皇(天城れいんさん)、
そして船頭(極美慎さん)。
船頭は菅笠を深くかぶっていますし、お声も変えておられるので、
極美慎さんだと気づかない方も多いかもしれません。
描かれているのは、平家が滅んでから四十年後の壇ノ浦。
舟の周りには、壇ノ浦に沈んだ多くの霊を表す海つ霊(わたつみ)が舞っています。
壇ノ浦の戦いの時にはまだ幼かった後高倉上皇に、平知盛の妻・明子の後年である四条局が、
平家の終わりと愛した人の物語を話して聞かせはじめるという、
心地よい静寂と悲しみをたたえての幕開けです。
平安時代末期。
平家の生き残りをかけて奔走する、平家最後の総大将として一門を率いる知盛(永久輝せあさん)、
早くから平家の没落を予言した妻・明子(星空美咲さん)、
戦を嫌い民を救おうとする重衡(聖乃あすかさん)、
刀こそが忠義と信じる教経(極美慎さん)。
やがて迎える運命の地、“壇ノ浦”。
蒼く満ち、やがて欠けゆく月の下で、平家一門が紡ぐ栄枯盛衰、栄華と誇り、
愛と別れを描く作品です。
冒頭はゆったり華やかにお話しが進みます。
この冒頭の平和な時の流れと、後半の止められない滅亡という運命との対比が、
避けることのできない深い悲しみを表現しているように私は感じました。
一ノ谷の戦い場面では、鵯越の断崖絶壁が、大階段で迫力満点に表現されています。
宝塚歌劇ならではの表現ですよね。
宝塚市には、源義経に由来する「十万道路」という道路があります。
宝塚市北部の西谷地区と宝塚駅前を結ぶ県道33号の一部を「十万道路」と呼ぶのですが、
これは、義経が一ノ谷の戦いへ向かう途中、十万の兵を引き連れて通ったという
伝説に由来しています。
義経は、宝塚を通って一ノ谷の戦いへ向かい、平知盛らと戦ったんですね。
青い衣装の平知盛・永久輝せあさんがせり上がり、プロローグがスタート。
武家なのに公家のようにも見える衣装。
色とりどりの衣装の武士たちが猛々しく居並びます。
刀を持っての舞も、勇ましいだけでなく優雅さが漂います。
永久輝せあさんは、平家の若き武将・平知盛。
父・清盛に最も寵愛された、知にも武にも長けた武将です。
一生懸命で誠実な知盛。
優しく心地良い永久輝さんのお声からも誠実さが伝わってきます。
母の仇である平家には嫁がないという明子の心を、その誠実さで溶かしていくのでした。
永久輝さんは、説得上手な役や、相手の懐に入り込むのが上手い役を、
いつも魅力的に演じられますね。
自分の思いと、父への思い、平家への思いで葛藤する知盛。
優しい人だからこその苦しみを、永久輝さんは情感たっぷりに表現されています。
最期の戦、壇ノ浦の戦い。
ともに海に沈むという明子に、平家の名を残すために生きのびてほしいと思いを託す知盛。
「海に沈んでも、この思いは波に残そう」と、とても優しく告げるその姿に、
自分が亡きあとも明子を思い続けるという深い愛を感じました。
大きな船のセットが登場し、勇ましい音楽、眩いライトを浴び、紅色の衣装で登場。
壇ノ浦の戦いの日は、金環日食がおこり「闇夜のようになった」という記録が残されているそうです。
知盛の背後には、縁に輝きがわずかに残った金環日食が再現されていますね。
平教経・極美慎さんから「兄者、先に行っておるぞ」と託され、
一人残って必死に戦う知盛。
引立烏帽子も脱げ、髪を結っていた紐も切れ、髪を振り乱して戦う知盛。
ただ諦めて滅びたのではなく、必死に戦い、守り抜いた最期だったと感じました。
「見るべきものはすべて見た」という最期の言葉を口にした永久輝さん演じる知盛は、
目に涙をいっぱいにたたえ、愛と誇りに満ちあふれ神々しい姿です。
星空美咲さんは、公家の娘で知盛の正室・明子。
星空さんの澄み切った声が、ハッキリものを言う聡明な明子にピッタリ。
遥か彼方の知らない世界をともに見たいという夢を語る知盛によって、
自分の気持ちと生き方を見つけた明子。
「政に使われる女ではなく、見たい景色ができました」
という強い意志を宿した言葉から、明子が生きる意味を見つけた瞬間を感じました。
母の仇である平家の知盛と結婚するくらいなら、
自分の命も惜しくないと頑なだった明子でしたが、
いつしか失うことを恐れるほどに愛している知盛を見つめる瞳は、
愛でいっぱいに満たされています。
知盛や息子はもちろん、平家を愛していることが伝わってくる瞳ですね。
今回が初めての夫婦役となる永久輝さんと星空さん。
出会ってから間もなく、月の下で語らう二人。
語り合ううちに心が一つになっていく様が見えるお二人のお芝居。
愛が生まれる瞬間を描くお芝居がいつも最高のトップコンビですね。
栄えていた幸せな時代の平家の人々が再び描かれるラストシーン。
青い衣装の知盛と明子。
波が再び二人を結び付けたように感じます。
聖乃あすかさんは平重衡。
知盛の弟で風流を愛する武人です。
とても穏やかでふんわりした優しい笑顔をたたえ、
一目で優しさが伝ってきます。
父である清盛の命を受け、勝利のためやむを得ず、
東大寺・興福寺などの寺社と民家を焼き討ちにした際は、
自分の意に反して焼き討ちを行うことを決断しなければならない苦悩と、
燃え行く様子を絶望しながら見つめる瞳が本当に悲しく苦しかったです。
この公演から花組生として大劇場の舞台に立たれている極美慎さんは平教経。
知盛の従兄弟で、知盛を兄者と慕う平家随一の猛将です。
知盛の息子・平知章(少年知章・鏡星珠さん)に刀の稽古をつける時、
「まだまだよのぉ」というこの一言とヤンチャな笑顔で、
大きい心を持つ根っからの武人であることが伝わってきます。
源義経は希波らいとさん。
新しい義経像を感じました。
希波さんの義経は、血気盛んな若武者。
この作品は、平家目線で描かれているので、平家の敵として見事に映え、
とにかく軽やかですばしっこくて、自信に満ちあふれている義経ですね。
知盛と明子の息子・平知章は、美空真瑠さん。
一ノ谷の戦いでの激しい斬り合いの中、知盛は知章に早く船に乗るよう指示しますが、
知章は「父上は生きて平家を導いてください」と、自分が残って戦う決意を告げます。
まだ幼いながら、必死に武士としての誇りを見せて戦う知章。
美空さんが、まだまだ幼さを感じさせる高いお声で演じられているのが胸に迫ります。
スローモーションで戦う場面が表現され、その場面を背に、
永久輝さんが満身創痍で銀橋で歌う姿は、息をすることも忘れて見入ってしまいます。
永久輝さんの歌声は、明るく華やかな表現をする時にもキラキラ輝いていますが、
悲痛な心の叫びを表現する際にも最高の歌声ですね。
紫門ゆりやさんは、明子の父・藤原忠雅。
平家一門が京を捨て西国へ退く際、明子を平家に嫁がせたことを悔やみ、
実家に戻らないかと問います。
平家の女として子どもたちを見守りたいと、
一門とともに慣れ親しんだ京を後にする覚悟を告げる明子。
本当に悲しそうな表情で「もう何も言うまい」と、明子の強い決意をくみ取り尊重する父。
娘を愛する父の何とも言えない表情が切ないです。
清盛の後継者で知盛の兄・宗盛は、一之瀬航季さん。
優秀で父から寵愛されている弟を持ち、板挟みに苦しみながらもそれを見せず、
常に人を気遣い優しい兄。
ひきつった笑顔が悲しく苦しいけれど、優れた弟をねたむことなく信頼し、
自分の立場をわきまえ周りを信用している広い心を持った美しき武将です。
この公演で退団される鈴美梛なつ紀さんは、
六波羅の屋敷での宴で、白拍子として素晴らしい歌声を披露されています。
後年の明子・四条局は、朝葉ことのさん。
品があり、40年間胸に抱えていた悲しみと苦しみと愛をのせて歌う歌声が美しく、
言葉にも引き込まれます。
平家の最後を描いた作品から、生きることをあらためて学んだように思います。
スパイシー・ショー『EL DESEO(エル・デセーオ)』
作・演出/指田 珠子
暗闇のジャングルから鳥や動物たちの鳴き声、かすかに水の流れる音も聞こえ、
熱帯雨林の世界からの幕開けです。
ラテンショーなので、永久輝せあさんの開演アナウンスはテンションアゲアゲかと思いきや、
低音でミステリアス。
魅惑的なサックスの音色に合わせて、蘭の花“オルキデア”に扮した妖しい雰囲気の4人が登場。
聖乃あすかさん・極美慎さん・侑輝大弥さん・希波らいとさんです。
4人の男役さんが怪しく美しい大輪の蘭の花として銀橋に登場し、魅惑的な歌声で歌います。
紫色のタイトなドレスはマーメードスカートになっており、
足を上げるなどの激しい動きがない分、手と表情で表現されています。
その手の表現で印象的なのが、身に着けている黒いレースの手袋を外す動き。
オルキデアたちの歌声に合わせて、食虫植物プランタ カルニボラの娘役さんたちが踊ります。
スカート部分が、紫・赤・緑色の花びらのように4段ほどのフリルになっています。
客席の私たちも怪しく美しい蘭の花に誘われて、引き込まれていきます。
密林の奥深くに、プランタ カルニボラS・永久輝さんが登場し、
「エル・デセーオ」という掛け声で曲のテンポがアップし、
オラオラとテンションが上がっていきます!
永久輝さんの星空美咲さんへのエスコートも、ラテンなので熱く少し荒々しいのが新鮮。
星空さんの歌も、語尾がラテンの熱がこもっていてかっこいいです。
総踊りのあと永久輝さんが一銀橋に人残り、客席に下りて愛を求めさまよいながら歌います。
この曲がまた永久輝さんにピッタリで「愛がメラメラ」と歌いながら特大投げキッス😍
男役を率いる聖乃さんを中心とした軍団グアイと、
娘役を率いる極美さんを中心とした軍団ボニータのダンス対決「海辺 ダンスオフ!」。
誰が一番イケているかを争います。
聖乃さんと極美さん、同期のお二人の美しすぎるコミカルで濃い場面です。
ANJUさん振付によるスーツでのタンゴの場面。
永久輝さん演じるマフィアが夕暮れの海に現れます。
濃紺のスーツにソフト帽の永久輝さんがカッコイイ!
目深にかぶったソフト帽から見える赤い唇がセクシーで美しく、
誰にも言えない想いを、その美しい唇で表現されているよう。
パーティーが始まり、マフィアのボス・紫門ゆりやさんと、
永久輝さんが想いを寄せるボスの女・星空さんが登場。
ジャケットを脱いで振り回してキレキレに踊るマフィアたち。
それでもスーツがピタリと乱れないところが芸術ですよね。
メキシコの祭りは、濃いピンク色の衣装が華やかでとてもカラフル。
男役さんのツバの大きなメキシカンハットや、
娘役さんの太陽とお花とガイコツが一体化したかのような被り物も楽しいです。
そのカラフルの波が客席へ。
曲は「La Bamba」で盛り上がります!
祭りも終わり熱が引き、また出会えることを祈って、
星空美咲さん・一之瀬航希さん・希波らいとさんが銀橋で「リメンバー・ミー」を歌います。
舞台では、この公演で退団される鈴美那なつ紀さんと湖春ひめ花さんも歌っていて、
お二人にスポットライトが当たります。
祭りの後の静けさと、この歌の優しさによって、旅立つお二人への思いが描かれジーンとします。
ラテンアメリカの危険な砂漠を表現した場面では、
人を喰らうという獣を仕留めるためにハンター永久輝さんが、
猛禽・聖乃さん、蠍・極美さんと命を懸けて戦います。
本当に強そうな獣を迫真のダンスで魅惑的に表現する聖乃さん、極美さん。
必死で戦う永久輝さんのダンスもステキです。
星空さんを中心とした娘役さんが静かなる祈りを捧げていたかと思うと、
ラテンといえばこの曲“EL CUMBAN-CHERO”へとつながっていきます。
編曲が新鮮です。
花組のみなさんらしい清潔感にあふれたラテン。
滝は大階段に布が敷かれ、映像が映されている。
フィナーレを前にもう一盛り上がりです。
永久輝さんを中心とした男役群舞。
ずっとテンポが落ちることのない曲。
みなさん個性豊かな色気を飛ばして来られます🤩
赤い衣装でトップコンビが大階段から手をつないで下りてくるボサノバ調のデュエットダンス。
かけ合いで歌い、大階段の中央で、星空さんの膝枕で横になる永久輝さん。
銀橋では、階段に片足をかけた永久輝さんに、後ろから抱きつく星空さん。
欲望について歌い踊る、まさしく場面名とおり「とめどなくデュエット」ですね。
パレードのエトワールは、この公演で退団される湖春ひめ花さん。
初エトワールです。
透明感ある素晴らしい歌声を、とっても可愛らしく美しい姿で披露されています。
最後の最後まで熱く踊って幕が下りるラテンショーです。
東京宝塚劇場では、4月18日(土)から5月31日(日)まで上演されます。












