たからづかブリーズサンデー「川柳の時間」ブログ版
毎週第1・第2の日曜日の9時台にお送りしています・・・
「川柳の時間」
今週、ご紹介した投句とお時間の関係でご紹介できなかった句を紹介する
「川柳の時間」ブログ版です。
講評は、茉莉亜まりさんです。
本年もよろしくお願いします!
今週もたくさんの投句をいただきまして、ありがとうございます。
尾崎良仁さん
「処女たちのスマホの中の百八つ」
・・・乙女たちは、自分で何かを体験する前に、
スマホの中ですべてを疑似体験し、満たそうとする。
煩悩をスマホの中に閉じ込めたところが今の世を映しています。
前田邦子さん
「愛されるピサの斜塔の角度まで」
・・・斜いて愛してくれる人。
その「ぎりぎり」の描写が、愛の深さであり、
危うさでもありますね。
中七、下五が全く動きません。
黒田俊さん
「平成の鐘百八つ聞く独り居で」
・・・「鐘」は省いても伝わったかもしれません。
平成さいごの百八つ。
独り聞く。。。
身にひとつずつが染み込んできたのですね。
「ちいちゃく拍手今日の私を誉めてやる」
・・・傲ることなく、ちっちゃく誉めて人は自分を支える。
自分を救っていくのは自分なのですね。
「根っこ温め私の春に会いに行く」
・・・俊さんが人として、この世に張った根っこ。
冬のあいだ、その根を大切に温めたら、
俊さんだけの桜咲く春へ向かってください。
「雑煮供えて塩梅どうって母に聞く」
「歯がゆくて両頬二つ打ってみる」
城水めぐみさん
「雪の降る窓は無口になってゆく」
徳道かづみさん
「おもち食べて『君みたいだね』なんてばか」
・・・恋とはこの「ばか」を許す魔術。
あるいは、オトナになると、魔術にかかりきれず、
自分たちのばかさ加減を知りつつの恋かも。。。
「謹賀新年君が好きですおめでとう」
・・・ど真ん中のどストレート。
句の上だからこそ、書くことのできる。
句だからこそ、受け止めることのできる年賀。
句ファンタジー!
多舵洋さん
「たぶんより欲しい言葉があるのです」
・・・命の不確かな人間は、いつも確かを求めます。
でも、「確か」を得られずに揺らぐ命もまた美しい。
欲しがるところにも、
得られないところにも、
詩が生まれますよね。
「母ゆずりお国訛りの子守唄」
・・・だれの心にも届く十七音字の詩ですね。
母のぬくもり、子の寝顔。
お国言葉をそれぞれに読者が句に訛らせる。
この立ち位置で詠むも川柳。
わたしだけの子守唄を詠んでも川柳。
「今夜から明日の朝への蜘蛛の糸」
・・・だれにも明日の朝が、平穏無事に訪れる保証はない。
今宵の指先から紡がれる糸が、
朝陽を受けて光りますように。。。
芍薬さん
「木に残す実を見定める祖父のゆび」
・・・熟練の指には、その実を間違いなく選ぶ神が宿っているでしょう。
実の未来も見渡して・・・
「白菜を抱きしめるのとおなじだよ」
・・・俵万智さんの「サラダ記念日」に・・・
「うっふんうっふん」という白菜が謳われていましたよね。
わたしを抱きしめよ、簡単だよ!と
わたしを「白菜」としたところ、
かわいく、少しかなしい
「新聞が届いた順に白くなる」
・・・新聞にはどんなニュースがあったのでしょう?
悲劇で白くなるか。
あたたかいニュースで心洗われるか。
「白くなる」が詩の言葉としてよく効いて、
読者の読みが拡がる句です。
みなさん、今週もたくさんの投句、ありがとうございました。
次回は夕凪子さんが担当します。
なお、来月は「2月」がテーマです。
次回の茉莉亜まりさんの登場は、2月3日となります。
2月の香りのする十七音字のドラマをお待ちしております。