たからづかブリーズサンデー「川柳の時間」ブログ版
「川柳の時間」
今週、ご紹介した投句とお時間の関係でご紹介できなかった句を紹介する
「川柳の時間」ブログ版です。
今回の担当選者は、茉莉亜まりさんです。
今週もたくさんの投句をいただきまして、ありがとうございます。
せばさん
「さらばこの苦しみお茶を一気飲み」
「涼しさに騙され夏を許したる川柳は」
多舵洋さん
「箱詰めにされて揺れてる尾てい骨」
「台風の進路相談員不在」
のんびりあんさん
「ピアノ線をほどく 茘枝が届いた」
「片方の靴だけ期限すり抜ける」
一橋悠実さん
「コルクボードに貼られた君がまだ笑う」
「スイッチを足で押してるのが女」
「言い訳が輝いていて嗤えるね」
猫又さん
「二三枚着込んでいるわ猫の皮」
「揺り籠に戻れぬ程に伸びた羽根」
「落ち込んだ合図のサンバホイッスル」
さこさん
「虹色のボーダーライン越えて咲く」
城水めぐみさん
「滴ると不協和音になる果実」
月波与生さん
「持ち上げてみると一番軽い人」
「沈黙の多い電話の叫び声」
「たいせつなものに名前をつける旅」
徳道かづみさん
「正解は出さずに夏を終わります」
「あれは夢あれは幻にぎり飯」
「何処にでも行ける気がした夜の駅」
入り江わにさん
「ひな桔梗外来種の中ひっそりと」
「虫の声短い秋と知るような」
涼閑さん
「小鳥がと言うと静もるヒナの声」
「ディレンマのふりこの振れの船明かり」
「すれすれを躱して空の風の盆」
赤片亜美 (あかびらあみ)
「東京は九月に夏の後産を」
宝島一さん
「スマホ替え ライン同窓会に 集う喜寿」
恵庭弘さん
「タイの蛍は 青白く光る」
「イギリスのデビッドボウイはオッドアイ」
「『地球の出』アポロ8号撮影す」
「ボクの頃『体育すわり』はまだ無くて」
「モンローは赤毛を金髪染めていた」
川端日出夫さん
「あと少し眺めていたい鰯雲」
「早足で夏は静かに消えていく」
「台風に稲穂の先も眠れない」
今月の気になる作品
月波与生さん
「たいせつなものに名前をつける旅」
=名前をつけようと旅に出る。
旅を続ける。
旅の途中できっと、たいせつだから名付けずにおくことにして、
帰路に着く。
多舵洋さん
「箱詰めにされて揺れてる尾てい骨」
=尾てい骨はヒトが獣であった名残り。
箱に詰められてもずっと揺れ続ける。
名残りのかけら。
せばさん
「美しきひかりで死んでゆく人よ」
=人はだれしも逝く時に美しいひかりになるという。
その時までを美醜を行き来する。
その懸命もまた美しい。
涼閑さん
「星月夜 無音のBGMとして」
=月ほどのあかるさで無音の音楽を奏でる星たち。
背後に見えなくとも在る月は通奏低音を。
心の中で響く音とともにしずかな夜。
みなさん、今週もたくさんの投句、ありがとうございました。
次回は夕凪子さんが担当します。
なお、来月は「10月」がテーマです。
次回の茉莉亜まりさんの登場は、10月4日となります。
10月の香りのする十七音字のドラマをお待ちしております。