たからづかブリーズサンデー「川柳の時間」ブログ版
「川柳の時間」
今週、ご紹介した投句とお時間の関係でご紹介できなかった句を紹介する
「川柳の時間」ブログ版です。
今回の担当選者は、茉莉亜まりさんです。
今週もたくさんの投句をいただきまして、ありがとうございます。
砂狐(さこ)さん
「初雪をポッケに入れてカンガルー」
「字余りの厄病神は愛を説く」
高良俊礼さん
「哀調の和音を孕む海静か」
芍薬さん
「何かしら品切れのある美容室」
城水めぐみさん
「筆洗う わたしの白が迷いだす」
徳道かづみさん
「口笛が違う あなたは誰ですか」
「八百長で負けるあたしの役どころ」
月波与生さん
「こいびとがだんだん雪になる聖夜」
「現実に@を付けて夢とする」
「リハビリが終わる 笑っていいらしい」
榎本ユミさん
「屋上で飛ばない桃を舐めている」
「五本指ソックスだけどシンデレラ」
猫又さん
「聖典に記せる如く捧ぐ贄」
「今日もまた神事のごとく食む朝餉」
「足るを知る心満たさぬ今日のマナ」
涼閑さん
「吹雪いてる嵐どこかが艶っぽい」
「のどごしのいい秋味の熱いキス」
「眠ったらきっと逃げ出す羊たち」
福村まことさん
「蓮開く音に駆け出す儀仗兵」
「影武者を瓶詰めにしたパスワード」
「迂回路に有精卵が立て籠もる」
「素うどんに寝技仕掛ける進化論」
恵庭弘さん
「はやぶさ2 50億キロ 帰還する」
「はやぶさ2 リュウグウからの 玉手箱」
「カプセルを 6段構えで 回収へ」
ことのはももさん
「グリニッジ標準時と腹時計合わせ」
「疫病も出汁にし煮込む寄せ鍋や」
「木枯やマスクの独りおどる道」
川端日出夫さん
「見つめると一目惚れするシクラメン」
「重すぎるお歳暮ならばゆるされる」
「大口を開けて第九を叫ぶ傷」
今月の気になる作品
涼閑さん
「夜よりも夜の気配のする襖」
=日々のあれこれを吸ってきた襖は、
夜気よりもしっとりと濃い気配。
人の気配をも宿しているからだろう。
徳道かづみさん
「血溜まりで泳ぐ女である時間」
=月のものとともに生きる女にはどろりと血溜まりで泳ぐ時間がある。
おおかたは深夜。
人知れずであったり、女を女にしてくれる人とであったり。
福村まことさん
「産道に開放弦の鼻濁音」
=開放弦による音の拡がり。
鼻濁音のやわらかさ。
すべては産道で命を寿ぐふくよかな音。
高良俊礼さん
「水仙が並ぶ霜夜の宙の床」
=冬の花、水仙。
並ぶのはおそらく白、だろう。
しんしんと冷え込む宙の床に並べば、
雪の代わりの香り高きいちめんの白。
みなさん、今週もたくさんの投句、ありがとうございました。
次回は夕凪子さんが担当します。
なお、来月は「1月」がテーマです。
次回の茉莉亜まりさんの登場は、年明け1月3日となります。
1月の香りのする十七音字のドラマをお待ちしております。