声とラッパ~青木さんと林さんの新しい展開

2023年2月19日(SUN)17:30~「サンデー・トワイライト」

今回の放送は、「声とラッパ」と題して、ちんどん通信社の林幸治郎さんと歌手の青木美香子さんの新しい展開の話を中心にトークを進めます。

今年67歳になる林幸治郎さんは、60歳の還暦を迎えたとき、「これからは今の年齢からマイナス50歳として自分を捉えよう」と思いつき、その計算式でいえば今は17歳。まさに青春の入口に立っている状況だと。それはナイスアイディアだ!とばかりに谷泰三にいうと、氏は27歳の青年期真っ只中。これから何でもできる年齢に戻るわけです。

こうした林幸治郎的発想が面白くて、筆者は「消極的ポジティブ思考」という印象を受けました。消極的というのはマイナス的な意味ではなく、自分から進んで求めない、つまり我欲を前に押し出して自分のポジションを確保しよう!というのではなく、与えられ、供されたものを受け入れて、そのなかで精一杯陽気に朗らかに自分のできることをやろう!という姿勢。それを「消極的ポジティブ思考」と考えるわけです。

林幸治郎さんのこれまでの活動は、自分から提示や希求して何かをするというより、状況が林さんに「困っているんで何とかしてくれないか」と持ち掛け、普通の人ならあっさり断ってしまうような事象にも「いいですよ」と受け入れ、環境は厳しいにも関わらず楽しんでしまう。そしてそれを観ている人も喜んでしまう。そうした場面が何度も何度もくりかえされて来たのが、林幸治郎ちんどん通信社だったのではないかと思うのです。

例えば、新型コロナが渦を巻いて街を襲っていた2020年夏。道頓堀にあるZAZAという小さな劇場は、予定していた演目の団体の運営の都合が悪くなり、ちんどん通信社にお鉢が回ってきました。「外出も規制されているこんな時期に舞台をやっても客が来ないんじゃないか」と普通なら考えるところが、林さんはそうは考えなかった。そして演芸ショーを上演したわけですが、当然のことながら客の入りは悪い。時には一人もお客様が来ない時もあったそうです。劇場運営側が、「お客さんがゼロなので上演はやめましょう」と当然の顔をして林さんに申し伝えたところ、「いや、お客さんがゼロでもやりまっしょう。いや、ゼロだからこそやりましょう」と応えました。林さんの胸の内には、このZAZAという場所、ここはもともと中座のあった場所であり、現実のお客がいないとなると、この地に眠っているあちらの世界の人々が、「これは俺たち、私たちのための席だ」とやって来るかもしれない。その人たちに向かってちんどん演芸ショーをするのが大事なんだ……そういう発想があるのです。これは並みの芸人にはできない発想です。これも、「林幸治郎流消極的ポジティブ思考」であり、非常に素晴らしい生き方の流儀だと思うのです。

さて、「声とラッパ」というのは、ある日カラオケボックスに出かけた青木さんと林さん。歌う青木さんの横で林さんはトランペットを吹いてみたそうです。金管楽器などはフラット音が基音になっていることが多いわけですが、青木さんの歌に合わせてトランペットを吹いていた林さんは、歌(声)とトランペット(ラッパ)だけで表現するのも面白いのではないかと思いつき、カラオケボックスで練習をしたそうです。その結果、「声とラッパ」という表現形式を観衆の前で披露してみてもいいんじゃないかと考えました。まだ具体的なことは何も決まっていないそうですが、今年どこかで「青木美香子+林幸治郎の声とラッパ」というコンサートが実現するかもしれない……と、そんな話をしてもらっています。

2023年のお二人の展開、どうかお楽しみに。
また、真雁さんの「カフェ・グリーンTIME」、京都ケンプトンからのお知らせもぜひお聴きください。