小説家の鳥山まことさんをお迎えして
12月14日(日曜日)午後5時30分からの「サンデー・トワイライト」は、
鳥山まことさんをお迎えします。
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鳥山まことさんは宝塚で生まれ育ち、現在は建築士として明石にお住まいですが、
なんと2025年度の野間文芸新人賞を受賞された小説家でもあります。
受賞作『時の家』は、
一軒の家を中心に、そこに住み暮らす人たちのことが時間軸を跨ぐ形で描かれています。
家と人の内的な繋がり、住むことで精神世界に僅かだけど確かな情動の変化をもたらし、
記憶の再生が起こり、物語が深く進みます。
しかも、時間が移動するのでその背景にある「家」がクローズアップされるという、
読んでいて不思議な遠近効果があります。📚
小説の中に「取手」が登場します。
家の中にはこの「取手」や「へこみ」や「縁」などがあり、
住人はそれらを手で触れることによって思考したり、空想したり、記憶再生させたりします。
建築士である鳥山さんらしいこの触覚感が小説のあちこちにちりばめられていて、
読んでいてこちらもどこかに触れてみてしまうような感覚になります。
取手を握って開けると、小説の中の世界へ導きこまれてしまいそうな感覚です。📕
触れるということでいえば、
例えば、ギターやヴァイオリンなど手で触れるネックがある楽器を弾く方なら、
自分の楽器ではないものに触れた時に感じる「差異」というものがあるでしょう。
この触覚の差異がやがて馴染んでいくこと、
これは手の指がその形を記憶するのか、ネックがこちらの指を受け入れるのか、
能動なのか受動なのか、
あるいは中動態でうまく双方が「ぴったりとハマる」のか。
楽器の場合ならきっと
これだ!」という運命の出会いのように感じて思わず購入してしまうのでしょうね。
人間は時として、勘違いで手に入れるものがあると思いますが、
その直感する能力が日々を彩ることも大事なのかもしれません。📘
脇道に逸れてしまいました。
📗
鳥山まこと著『時の家』は講談社から発売されていて書店に並んでいます。
家が醸し出す香気、触感、気配、たたずまい、精神への揺動など、
さまざまなことを読んでいて感じる小説です。
登場する人物もそれぞれに共感を抱ける人々や、
出来事として記憶されている阪神・淡路大震災のことなど、
小説の舞台が兵庫県の、とあるどこかの街であることがわかります。
透視図のようなクールな文体で描写された情景にいきなり柔和な関西弁が飛び出してくるのですから、
これも読者として愉しめると思いました。
ぜひ、書店で手に取りレジに向かわれてください。







