川柳の時間

川柳の時間

けさは春を待つ春寒の宝塚でした。

あたたかな陽射しが待たれますね。 鑑賞担当 茉莉亜まりが、パーソナリティの山崎彫科さんとお届けしました。

アーカイブは一週間程度、エフエム宝塚公式youtubeチャンネルに残ります。チェンネル登録をしてお楽しみ下さい。

次回の「川柳の時間」は3月13日、鑑賞担当夕凪子でお届けします。

 

茉莉亜まり今月の一句は  

逢いたいのミモザミモザのありったけ でした。

 

番組内でお読みできなかった作品の抜粋と、鑑賞です。

 

十八歳(じゅうはち)の春に故郷を捨てて 風        徳道かづみ

故郷を捨てた時は自身が意を決して巻き起こした追い風。

捨ててからの風は北風。向かい風。それでもときにそよ風になでられたり、春風が微笑んだことに気づけたなら、また風に向かって歩けると信じて。

目論みは外れたままに梅便り           川端日出夫

目論み通り、となる幸運に恵まれないこともままあります。それでも梅便りが春を告げる。 つぎの目論みをしつらえるもよし、目論みなしに梅の香に導かれるもよし、でしょうか。

ミモザつて星のようには降らないの            とし総子

ミモザはミモザとして降る。根を生やし、太陽を吸い込んで。地に向かって。 もしとおい星が地上まで降ってくるなら、選ぶのはきっとミモザ。ミモザが降るときにそっと紛れるつもり。

ザクザクボリボリ怒る程ではないんだが     一橋悠実

怒る程ではないけれど、なことはままあって、ザクザクしたりボリボリしたり。 サラサラハラハラを溶けていけばいいですね。とどまってザザザザとかバンバンとかにならなりませんように。

夢落ちの夢から醒めたメタフィクション      猫又夏梅堂

作者が作中でものがたりの弁明をしたりかきまわしたりのメタ。夢落ちというのも夢だったといわれると、さて、自分はどんな世界を、なにを見せられていたのやらとなるが、それもまた妙。醒めればものがたりからすとんと現実へ。

お節介を承知でしつらえを変えてみますと、 メタフィクション夢落ちの夢から醒める としてメタフィィクションをより比喩的に用い、中七・下五の律を整え、 夢落ちの夢から醒めた人の姿を浮き彫りにするのも一手かもしれません。

見上げる四角い空にも光る星      和音

四角い空。切り取られたちいさな窓か。天窓か。空に星。そのリアルは動かない。星は四角い空のささやかな希望。そうでありますように。

暗号の蝶を見ぬ間に過ぐ二月     高良俊礼

かすかなる暗号の蝶はどこにいたのだろう。過る気配に気づかなかっただけなのだろうか。気づかないほどにちがう位相で過ごしていたのだろうか。二月が去って、蝶はその気配を増しながら、春という現実を飛び始めるその準備をしているかもしれない。

写真:『mimoza』とし総子さん、城水めぐみさん、茉莉亜まりの3人でつくったzineです。100円で販売中です。茉莉亜まりのX(旧twitter)にてお問合せください。(:茉莉亜まり)

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